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ぼ、僕にだって歳上の威厳ってものが…

ヒロイン:なおまお
    (冨里奈央さん × 五百城茉央さん)





”身長170cm以下の男には人権はありませんwww”


Xのタイムラインに流れてきた身長関連のポストを見てスマホを放り投げる


○○:悪かったな低身長で


見事、成長期を160.3cmのままで駆け抜けていってしまった僕


今の世の中、低身長男子はとても生きづらい


不憫なのはそれだけに留まらず、
僕の男友達は全員が高身長・イケメン


行き場のない劣等感が呼び起こされて、休日の朝からネガティブモードに入ってしまった。




”タッタッタッタ”




1階から階段を駆け上がってくる音が聞こえたと思ったら、勢い良く自室のドアが開けられた。


『おはよう。お兄ちゃん』

○○:おはよう。奈央

『今日もいい天気だね〜』


ノックもせずに部屋に飛び込んできたこの女の子は妹の奈央。


つい最近、高校3年生になった可愛い可愛い妹だ


奈央:そういえばね、お兄ちゃん!

○○:ん〜?なになに

奈央:昨日身体測定があったんだけどね、


奈央:身長が164cmだったよ!






”164cmだったよ”






”164cmだったよ”






”164cmだったよ”





い、妹に身長抜かれただと……。




奈央の方が身長が高いことは薄々気づいてはいた。


気づいてはいたが、その事実を数字で突きつけられるとダメージは大きい


○○:そ、そっか……。良かったな


兄の威厳を保つため、精一杯の強がり


奈央:うんっ!


そんな無邪気な笑顔が見られるなら、強がった甲斐があった。


奈央:でもね、お兄ちゃん。

奈央:クラスの男の子がね、ちっちゃい女の子の方が可愛いって言ってきて……

○○:大丈夫。そいつが奈央の良さを理解出来てないだけだから

○○:心配しなくても奈央は宇宙一可愛いよ

奈央:ほんと?お兄ちゃんありがとう……。

○○:僕の自慢の妹だよ

奈央:えへへ〜。お兄ちゃん大好きっ!


嬉しそうに笑う奈央。やはりうちの妹はめちゃくちゃ可愛いと思う。



僕だって本音を言うと、身長が低いままでいて欲しかった。


ただ今更そんなこと言ったって、僕が伸びるわけでも奈央が縮むわけでもない。


大人しく現実を受け止めよう。



奈央:あ、それとね。

○○:うん?

奈央:茉央もうすぐ私たちの家に着くって

○○:ほんと?会うのいつぶりかな

奈央:4・5年振りとかじゃない?


茉央というのは、僕ら兄妹の従姉妹。

東京の大学に通うため今年の春、大阪から上京してきたらしい

久しぶりの再会になるわけで少し楽しみだ。



”ピンポーン”


タイミング良くインターホンが鳴った。


奈央:あっ、茉央来たかも!お兄ちゃんお出迎えに行こ!

○○:行こっか


奈央に手を引かれながら玄関へと向かった。



──────────────




玄関の扉を開けるとそこには茉央ちゃん


少し大人っぽくなって、益々綺麗になっていた。


茉央:奈央〜!久しぶりやな

奈央:ね、久しぶり!


玄関で抱きしめ合う美少女×2
身内の僕から見ても眼福だ。


茉央:会いたかったで!○○お兄ちゃん


こちらを見たと思ったら、
勢いよく抱きついてきた茉央ちゃん


○○:久しぶり茉央ちゃん

茉央:やっと会えて嬉しいわ

○○:5年振りかな?

茉央:何言ってんねん。4年ぶりや

○○:そ、そうだったね

茉央:もしかして、前会った時のこと忘れたん?



○○:も、もちろん覚えてるよっ

茉央:ならええけど。


本当は最後にいつ会ったか忘れていたけど、何とか誤魔化すことに成功した


これで一安心だ。


ってあれ?
ちょっと待って……。


茉央ちゃん抱きしめられて1つ気が付いたことが


○○:ね、ねぇ。茉央ちゃん

茉央:ん〜?どうしたん?

○○:今、身長っていくつ?

茉央:えーっと……



茉央:最後に測った時は166cmとかやったかな






”166cmやったかな”






”166cmやったかな”






”166cmやったかな”






嫌な予感的中。


奈央だけじゃなくて、茉央ちゃんにまで身長を抜かれてしまっていた。



こ、これじゃあ、いよいよ歳上としての威厳というものが……。



奈央:ねぇ。2人ともいつまでそうやってくっついてるの?


不機嫌そうにこちらを見ている奈央

奈央は超がつくほどのブラコン。僕たちがくっついたままなのが気に入らないのだろう


○○:ああ、ごめんごめん。


離れようとすると、茉央ちゃんはさっきより強い力で抱きしめてきた


茉央:離れへんよ?

奈央:なんでよ。もうそろそろいいでしょ

茉央:奈央はケチやな。久しぶりの再会なんやしええやろ?

奈央:もう沢山くっついたでしょ!

茉央:はぁ、別にええやん。

茉央:────茉央と○○お兄ちゃんはもうすぐ結婚するんやし。

○○:えっ?

奈央:は?


突然の爆弾投下


茉央:もしかして、あの時の約束まで忘れたん?

○○:え、えーっと……。



フルスロットルで記憶のメモリを漁っていると──


それらしき記憶が呼び起こされた。










まお:嫌や。まだ帰らんとって

○○:そろそろ行かないと新幹線の時間間に合わなくなるからさ、

まお:嫌や。絶対、離れへん

○○:また絶対会えるから。ね?

まお:ぜーーったい嫌。

○○:えーっと……。どうやったら離してくれる?

まお:ん〜。じゃあ、次会ったらまおと結婚してな

○○:う、うん。分かった

まお:約束やで








あっ、僕言っちゃってたね……。


新幹線の時間がほんとにやばかったとはいえ、こんな無責任な約束をしていたとは

しかもその約束を茉央ちゃんが覚えているなんて



茉央:ほんまに忘れちゃったん……?

○○:あっ、いや、覚えてるよ。もちろん

茉央:な〜んだ。びっくりさせんといてよ。

茉央:そのために東京の大学にしたんやから

奈央:ねぇ。約束ってなに!


満足気な表情の茉央ちゃんと、不満気な奈央


茉央:さっき言ったやん。○○お兄ちゃんと茉央は結婚するって約束してん

奈央:はっ?お兄ちゃんどういうこと??

○○:えーっと。あはは……

奈央:そ、それなら奈央だって約束したもんっ。

○○:えっ?

奈央:お兄ちゃんは私と結婚してくれるって言ってたもん

○○:そんなことあったっけ?

奈央:あれは11年前─────















○○:────って流石に覚えてないよ。

奈央:お兄ちゃんひどいっ。

○○:奈央はあれだろ、親が撮った兄妹のホームビデオ見たんだろ。

○○:確か奈央が『お兄ちゃんと結婚する〜』みたいな事言ってる映像があったもんな。

奈央:ぎくっ。

○○:あんな小さい頃の出来事、覚えてる訳じゃないじゃん

奈央:で、でも私達の約束は映像証拠が残ってるもん。

茉央:なんやそれ。茉央は証拠がないって言いたいんか?

奈央:だってないでしょ?

茉央:でも、○○お兄ちゃんは覚えてるって言うてたやん。なぁ?

○○:ま、まぁ。うんそうだね……

茉央:ほら

奈央:そ、それは……。


1つの歳の差のせいか
2人の言い合いは茉央ちゃんが優勢


茉央:私たち2人が覚えてれば約束は成立するんやで

奈央:で、でも私達の方が先に結婚するって約束したんだもんっ!

茉央:ふっふっふ。残念やったな奈央。

奈央:な、なに?

茉央:4親等以上じゃないと結婚は無理やで

奈央:私、4頭身以上はあるもん!!!

茉央:奈央は確かにスタイル良いけど、頭身じゃなくて親等やな

奈央:な、なにそれ……

茉央:まあ、茉央も詳しくは分からへんけど

○○:け、血縁関係の考え方みたいなものだね

茉央:らしいで。

茉央:とにかく!兄妹には結婚は無理やけど従兄弟やったらできるねん

奈央:そ、そんなぁ。

茉央:ふっ。残念やったな奈央


奈央はヘナヘナと座り込んでしまった。
この勝負は茉央ちゃんの勝ちみたい


・・・


はぁ。それにしても2人とも朝から元気すぎる。

内容的にも、胃もたれするようなやり取りだし…。

仕事明けの土曜日なのもあって、
再び眠気が襲ってきた。


○○:あ、あのさ……

奈央:なに?

茉央:どうしたん?

○○:昨日夜更かししちゃってまだ眠いからさ、部屋で寝てくるね?

奈央:は?お兄ちゃん何言ってんの

茉央:ほんまやで。誰のせいでこうなっとると思ってんの?

○○:で、ですよね〜。


しれっと逃げようとしてみたが、僕が過去にした無責任発言のせいでこうなっている訳で。

逃がしてくれる訳がない


奈央:あっ、良い事思いついた。

奈央:私もお兄ちゃんと一緒に寝てあげる!

○○:いやいや。大丈夫だよひとりで

茉央:奈央めっちゃ良い事言うやん。茉央も一緒に寝たるわ

○○:えっ、茉央ちゃんまで


さっきまでいがみ合っていた2人だが
今度は一転して、息ぴったり


○○:つ、疲れてるから1人で寝かせて……?

奈央:妹と従姉妹を誑かす最低な兄って近所に言いふらそうかな

茉央:茉央の恋心を4年も弄んでおきながら……。

○○:わ、分かったよ。分かりました。


2人のコンビネーションにあっさり敗北してしまった僕。朝っぱらから3人でお昼寝(?)をすることに




──────────────




奈央:ねぇ、茉央もっとそっちいってよ狭い

茉央:奈央がそっち行きいや


シングルベッドに3人で寝たらこうなるのは必然。左右を妹と従姉妹に挟まれるという謎の状況


○○:せ、狭い……。

茉央:確かに狭いな───って、良いこと思いついた。

茉央: ○○こっち向いてや

○○:ん?

茉央:よしっ。これで狭くない


いきなり正面から抱きしめられた僕

確かにスペース的には余裕はできたが、こんな状態で寝れるわけがない。


奈央:ちょ、ちょっとずるいよ茉央

茉央:へへ〜ん。悔しかったら奈央もやったらええやん

○○:ちょ、ちょっと茉央ちゃん。奈央の事煽ったら……

奈央:奈央だって、負けないから。

○○:ほ、ほら言わんこっちゃない……。


今度は、背中側から奈央に抱きしめられた

身長の低い僕が、高身長の2人に抱きしめられるという変わった状況。


茉央:会った時から思っててんけど、○○お兄ちゃんちっちゃくて可愛ええな。

○○:えーっと……。

茉央:茉央は身長差なんて気にせんで


○○:ほ、ほんと?

奈央:ちょっとお兄ちゃん。何デレデレしてんの

茉央:奈央じゃ癒されへんから茉央が○○お兄ちゃんのこと癒してあげてんの

奈央:奈央だってできるもん。


ムキになった奈央は後ろから頭を撫でてきた。



奈央:お兄ちゃんいつもお仕事頑張ってて偉いよ〜

茉央:今日はゆっくり寝てな

○○:あ、ありがとう

奈央:おやすみお兄ちゃん

茉央:おやすみ○○お兄ちゃん


妹と年下の従姉妹に甘やかされながら、寝かしつけられるという謎のイベント



身長が低いことだって、
悪いことだけではないみたいだ。



〜めでたしめでたし〜

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