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地方交付税は地方財政を過度に国に依存させる問題ある制度!
浜田聡
これまでの参議院総務委員会において、私は地方交付税の数多くの問題点を指摘してきました。
それらは残念ながら全くと言っていいほど改善されておりません。
私はこの地方交付税という制度自体、廃止を含めて抜本的な見直しが必要というスタンスです。
以下そのスタンスで質問をさせていただきます。
なお今回、いくつかの自治体を名指しで問題提起させていただきます。
もしかすると批判を受けるかもしれませんが、そのご批判は覚悟の上で行います。
まず地方交付税をもらいすぎではないかと思われる自治体に関する問題を取り上げます。
今回令和4年度の自治体の決算カードを4枚用意させていただきました。
高知県三原村、高知県大川村、福井県池田町、そして大阪府田尻町です。
前者の3つは地方税などの自主財源の割合が少なく、地方交付税の割合が非常に大きい自治体です。
一方、田尻町については自主財源のみで運営されており、地方交付税を受けていない自治体として取り上げさせていただきました。
決算カードの左に各自治体の歳入状況が記載されておりまして、その中に地方交付税の額や割合が記されています。
今回紹介した三原村は地方交付税85.9%、大川村85.3%、池田町82.9%、そして田尻町がゼロです。
これらの問題に関して早稲田大学や民間シンクタンクで研究員をされている渡瀬裕哉さんの2024年1月9日に興味深いXのポストを紹介させていただきます。
地方交付税の現場の実態。
— 渡瀬裕哉 (@yuyawatase) January 9, 2024
たとえば、高知県三原村では人口1437人(世帯数759)に対し、13億円の地方交付税(更に国・県からの補助金は4億円)
つまり、1人につき約90万円、1世帯につき約170万円の交付税が支払われている。補助金も入れると、1人につき合計118万円、1世帯224万円。…
このように高知県三原村、そして今回紹介した大川村、池田町のように国からの地方交付税で成り立っている自治体が山ほどあり、地方交付税を考える際にはその自治体のあり方を考える議論が重要と考えますが、ここで村上総務大臣に質問させていただきます。
この件に関する大臣の所見をお願いします。
村上総務大臣
一般論で申し上げれば、地方の自立を促進していくためには補助金はもとより地方交付税等の国からの地方への財源移転にできる限り依存しないことが理想であるとは思います。
しかしながら自らの財源である地方税によって財政運営を行うためには地方税の充実を図ることが重要であると考えています。
しかしながら地方税の充実を図り、偏在性の小さい地方税体系を構築しても、なお財源の偏在は残ることになります。
また我が国において、多くの行政分野において自治体の担うべき義務を法令等により定めています。
このため自治体間の財政力格差がある中で、どのような地域であっても国が法令等で定める一定水準の行政サービスを提供できるように財源を保障することは国の責務である、そのように考えています。
仮に単に地方交付税を廃止することになれば、こうした国としての責任を果たすことができなくなるものと考えておりまして、行政サービスを国民の皆様にしっかりとお届けするために地方交付税は必要であると考えています。
浜田聡
方交付税は地方の財政を過度に中央に依存させる結果を招いておりまして、やはり地方自治体の自立と創意工夫を阻害していると言わざるを得ません。
引き続きこの間この点から質問をさせていただきます。
私の提案としては、やはり市町村合併を進めるというのは重要な解決策ではないかと思います。
そしてこの質問を動画などで見ておられる国民の皆様に訴えたいのですが、是非とも皆さんお住まいの自治体の決算カードを検索すれば出てきますので、総務省の方が整えておられますので、是非一度ご確認いただければと思います。
あと総務省へのお願いなんですが、決算カードの公表をもう少し早くいただければとは思います。
よろしくお願いします。
次に地方交付税の不交付団体の話題を中心にして提案の形で質問させていただきます。
地方交付税・不交付団体は基準財政収入額が基準財政需要額を上回り、自主財源で必要な行政サービスを賄える財政力を持つ自治体です。
つまりこれらの自治体は地方交付税から補助金を受け取る必要がないほど裕福であると考えています。
一概に不交付団体を良しとすることに議論の余地があるかもしれませんが、不交付団体を増やすことが地方分権推進の一つであると私は考えます。
そこでまず伺います。
地方交付税・不交付団体の団体数の最近の増減傾向について、概要を教えていただければと思います。
総務省大沢理事財政局長
普通交付税の不交付団体はリーマンショックの影響を受け、平成22年度には42団体まで減少しましたが、その後は地方税収の増加により緩やかな増加傾向にあります。
またここ3年の状況としては、いずれも当初予算ベースではありますが、令和4年度は前年度から19団体増の73団体、令和5年度は4団体増の77団体、令和6年度は6団体増の83団体です。
浜田聡
ありがとうございます。
順調に増加しているように思います。
次にです。
村上総務大臣に伺います。
2点まとめて伺います。
地方分権推進のため地方交付税不交付団体を増やすことを総務省の目標として掲げることを提案しますが、この提案に関するご見解を伺います。
もう一つは大臣の地元である愛媛県内に地方交付税不交付団体がないのではないかと思うんですが、これに関する見解も伺います。
村上総務大臣
個々の地方団体にとっては地方交付税にできる限り依存することなく、自らの財源である地方税によって財政運営を行うことが理想的であると考えています。
一方で不交付団体数が大きく増えるなどして財源超過額が増加することは団体間の財政力格差が拡大するものでもあり、このことをどう考えるかという課題もあると認識しています。
また不交付団体は各団体の普通交付税を公平に算定した結果として決まるものであります。
近年では財政力の高い都市群の団体において高齢化が進展し、基準財政需要額が増加傾向にあることから、不交付団体が増加しにくいといった状況にもあります。
このため現在、不交付団体数の数について数値目標等を示した上での取り組みは行っておりませんけれども、地方の行政サービスをできる限り地方税を賄うことができるよう、地方税の充実確保に努めてまいりたい、そのように考えています。
なおまたご指摘のとおり、近年の算定において、我が愛媛県内の地方団体に不交付団体はありませんが、これは地方交付税法の規定に基づき、普通交付税の基準財政需要額と基準財政収入額が適切に算定された結果であると考えています。
浜田聡
私からは是非、大臣のご努力によって愛媛県内にも不交付団体ができることを願っています。
次に海外の首脳の掲げる政策で注目すべきものを紹介します。
アルゼンチンのミレイ大統領です。
就任以来、国税を90%削減するという大胆な政策を掲げています。
この狙いの主なものとして、州つまり地方の税制・自治権を回復し、各地方が投資を誘致するための競争を促進するというものがあります。
地方が自主財源を確保し経済活動を活性化することが期待されているものであり、日本も地方交付税、つまり国に依存した地方財政ではなく真の地方自治実現に向かって、アルゼンチンのミレイ大統領によるこの大胆な政策を大いに参考にすべきだと考えます。
ミレイ大統領によるこの政策に関する政府の見解を伺います。
富樫総務副大臣
委員からはアルゼンチンの例の紹介がありましたが、経済社会情勢や国と地方の関係、その役割分担は国によって大きく異なることから、単純に比較することは困難であると考えています。
その上で我が国に関して一般論で申し上げれば、先ほどの大臣からも答弁申し上げたとおり、地方税の充実を図ることが重要であると考えています。
一方で地方税を充実した場合であっても、財源の偏在は残ることになります。
また我が国においては多くの行政分野において、自治体の担うべき事務等を法令等により定めています。
地方団体間の財政力格差がある中でどのような地方であっても、国が法令等で定める一定水準の行政サービスを提供できるように、財源を保障することは国の責務であると考えています。
したがって仮に地方交付税を廃止すれば、そのような国の責任が果たせなくなるのではないかといった課題があるものと考えています。
浜田聡
私の問題意識としてはやはり国が取り過ぎじゃないかということです。
その点、アルゼンチンの政策に関しては大いに参考にすべきところがあるのではないかということを申し上げさせていただきます。
次に今国会で話題になっています、いわゆる年収103万円の壁引き上げにおいて、地方自治体から上がる不安の声に関連して質問をさせていただきます。
こういった不安とは相対する興味深い意見を一つ紹介させていただきます。
今回、配付資料として長野県の御代田町・小園拓志さんのXのポストを用意させていただきました。
その中で一つ仰っておられることを抽出します。
国益全体を見渡した時に、全体の税収が減るのはよくないという考え方は一つの見識ですが、それと別に自治体として困るかと言われたら、国がなんとかしてくれる仕組みが現にありますよ、ということはお伝えできると考えております。
— 御代田町長・小園ひろし (@miyotamayor) November 19, 2024
一連のスレッドの中で、地方交付税であったり臨時財政対策債によって地方は全然問題ないということを仰っておられます。
そこで質問をさせていただきます。
年収103万円の壁引き上げによっても地方自治体は困らず国が何とかしてくれる仕組みが現にあるという御代田町長の指摘に関するご見解を伺います。
富樫総務副大臣
一般論として、ある団体において地方税収が減少した場合、基準財政収入額が減少し普通交付税が増える関係にあることは事実です。
一方、地方交付税の総額は国税の一定割合であり、地方税が減税されれば必要となる地方交付税の総額に不足が生じる可能性があります。
また減税により所得税が減収となれば、交付税原資が減少する影響も生じることとなります。
さらに臨時財政対策債については財政の持続可能性の観点からも課題もあります。
いずれにしても、経済や地方税等の税収への影響など様々な論点につきましては、検討や協議が進められているものと承知しています。
浜田聡
時間になりましたので最後の質問です。
今回の改正案では度々行われている単年度限りの算定費目の追加は特定財源となる項目となっておりまして、一般財源とする地方交付税とは目的や性格が合致していないように思われます。
言い換えれば地方自治体への補助金です。
複雑な制度設計をより複雑化していると言わざるを得ません。
であるならば補助金として地方に財政措置をするとした方が地方交付税の簡素化に資すると考えますが、地方交付税に盛り込む理由を伺いたいと思います。
大沢局長
地方交付税は国から地方に18兆円もの巨額の財政移転を行う仕組みであり、一定の精緻さも求められるところです。
このため普通交付税の算定においては、各行政項目ごとに費目を設けて、各費目ごとに合理的な測定単位等を用いて算定するのが基本です。
今回の補正予算に係る対応としては、追加的に発生する財政需要を経済対策に伴って発生する地方負担、公務員の給与改定所要額、臨時財政対策債の償還費、この3つに分けて費目を設けて、これにふさわしい指標を用いて算定をしています。
このように地方交付税の算定を合理的なものとするために費目を設けていますが、費目ごとに使途が限定されるものではなく、地方交付税は全体として使途の自由な一般財源であります。
また地方交付税は基礎数値の報告などの作業がありますが、国庫剰余金と比較して申請手続きもなく、目的に応じて数多くの種類に分かれているわけでもございませんから、事務負担は極めて簡素であると認識しています。
今後も算定の簡素化の観点が重要であると考えていますので、そういったこととのバランスを保ちながら、適切に算定を行ってまいりたいと考えています。
浜田聡
終わります、ありがとうございました。
浜田聡
地方交付税改正案について反対の立場で討論を行います。
地方交付税に関する問題2点あります。
まず地方交付税の算定方法やその透明性についてです。
現在の配分基準や基準財政需要額の算定が適切であるかどうか多くの疑問があります。
特に自主財源比率が非常に低い自治体が存在する現状を見れば、制度の不公平性や効率性に多くの問題があると言えます。
また毎年多額の税金が地方交付税として使われているにも関わらず、その効果や効率が十分に検証されていないという批判も見逃せません。
さらにこの制度は地方の財政を過度に中央に依存させる結果を招いており、地方自治体の事実と創意工夫を阻害しています。
地方交付税の枠組みを根本から見直し、地方が真の意味で自主的に財政運営を行えるようにする必要があります。
例えば地方交付税を廃止し、中央省庁の補助金制度に一本化することで、地方の実際の活動内容や成果に基づいた支援が可能になるのではないでしょうか。
以上のような理由から、私は地方交付税の抜本的な改革が必要であるという観点から、この地方交付税法改正案に反対します。
これは地方自治の本質を見つめ改め直す機会でもあり、地方が自立した財政運営を可能にする制度改革を進めるべきだと私は考えます。
以上で私の反対討論を終わります。
御清聴ありがとうございました。
議長
他にご意見も無いようですから、討論は終局したものと認めます。
これより、採決に入ります。
地方交付税法及び特別会計に関する一部を改正する法律案に賛成の方、挙手を願います。
多数と認めます。
よって本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。