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103万円の壁引き上げで地方税収5兆円減!?

今日も103万円の壁の問題について解説したいんです。
最近よく聞かれる声は、103万円の壁を引き上げて、地方住民税の基礎控除を上げてしまうと地方税収が5兆円も減ってしまって地方はガタガタになってしまう、こういうことを言われるんですが、果たして本当なのかを解説したいと思います。

そもそも地方の財政について語るのが難しいのは、地方自治体っていってもいっぱいあるんです。
非常に豊かな自治体からそうじゃない自治体があるんで、なかなかマクロの議論がしにくいというのがこの問題を難しくしているのかなと。

まずこのマクロで見た時の地方財政がどうなっているのかということを解説したいと思います。
様々な行政経費、例えば子育てとか、地方が担っているような福祉とか、それこそゴミの収集とかいろんな経費があります。
地方によっては地方債という借金をして、公債を発行しているので、それを返していくお金。
国で言うと国債費といって元本償還費と利払い費、その他、大きく言うとガーッと経費があります。
職員の給料とか、あるいは一般行政経費とか投資的経費とか経費の中にも色々ありますけども、ザクッとこうしています。

肝心なのは入ってくる方です。
それをどうやって歳入で賄っていくのかという時に、まず地方独自に持っている地方税です。
地方住民税が典型ですけれども、それが減ってしまうと地方税収が縮んじゃうんで大変だと。
そして経費を賄えなくなる、そういう感じです。

それ以外にも、地方交付税、臨時財政対策債という債券、補助金等が入っています。
地方債を発行して、その他で、歳入面でいうとこういうふうになっています。

ここで注目してもらいたいのが、いわゆる一般財源というものなんです。
主に交付税、国から地方に交付される交付税と地方税と臨財債が一般財源と言われているんですが、これは今ルールがありまして、地方の一般財源については、実質、総額を同額の水準に保つというものがあります。
これは「2021年度のレベルを維持しましょう」というルールがあって、その中で交付税額が決まっています。

仮に地方税が今回言うように、もし落ちたとします。
落ちたとすると、でも一般財源は同額水準を確保するというルールがありますから、当然、交付税を増やすと。
交付税というのは皆さんがご存じの通り、所得税とか法人税とか国税5税のうち、一定割合を交付税に回すとというルールがありますから、この地方税が減ったら、減った分の75%は交付税で面倒を見てくれます。

じゃあ「75%しか見てくれないから残り25%減っちゃうじゃないか」とあるんですが、一般財源を実質、総額を同額にするというルールがありますから、特例加算ってありますけれども、足りないところは特例加算で国が乗せて交付税として措置するので、結局、一般財源の総額は減らないように確保するというルールがありますから、心配ないんです。
だから経費に影響は与えないと。
ここをまず皆さん理解をいただきたいというふうに思います。
これがまず一つです。

そもそも地方税が減ったら大変だって言うんですけど、現状どうなっているのかということをまず簡単に説明したいんです。
足元の地方税収です。
例えば最新のやつで言うと、令和4年は45.2兆円の地方税収が過去最高になっています。
10年前と比べると8兆円から9兆円に増収になっていて、非常に地方税収も増えている。
これは当然なので、国の税収も景気良くなったりインフレで増えたら、それに伴って地方税収も増えますよね。
地方税収が絶好調ということ、過去最高だということ。

あと国もそうなんですけど、最近は多額の上振れが生じています。
つまり「これぐらいかな」と思ったら、非常に沢山税収が入っています。
令和3年なんかは地方税収は予定より約4兆円多めに入ってきているわけです。
10年間の累計で言っても8兆円以上、上振れていると。
国も同じです。
これはインフレなんかの理由もあります。
だから「取り過ぎたものを返すべき」という意味では、地方も同じようなことが起きているわけです。

上振れたお金は何に使っているかというと基金です。
いざという時のために基金を積み立てて、地方自治体の貯金ですね。
これが非常に最近増えてまして、10年間で約5兆円ぐらい基金が増えていると。
お金をいっぱい持ってるのに「足りない足りない」と言ってまた貰おうとしたり、あるいは住民に「返せない」っていうのは、それをどう考えるのかっていうところが一つポイントになってくるのかなと。

あとは当初の計画よりも税収が入ってきたからといって、計画を上回るような支出に使っちゃってるということで、こういうのももう少し厳密に抑えて、それを住民にお返しするという形で減税してはどうかということも考えとしてはあります。

計画を上回る支出を使っても、それでも実質、収支の黒字額が激増しておりまして、10年間で約1.5兆円ぐらい増えてると。
パッと見ると、非常にいい感じなわけです。
実際、地方税収が仮に減ったりすると、国がちゃんと面倒見ますってことになっていて、交付税とか特例加算で、あと臨財債を発行するんですが、ここ3年間、新規の臨財債政対策債は発行せずに済んでるということなんです。
ある意味、地方税収と交付税・特例加算で十分賄えているという財政状況が、マクロで見たときの地方の財政状況です。

最後に是非見ていただきたいんですが、実は「国よりウハウハ」って書いたのは、国はいわゆるプライマリーバランスという、普通の経費を税収で賄えてるかどうかという、国債で賄うものを除いて、一般行政経費をどれだけ税収で賄えてるのかというのがプライマリーバランスなんですけど、国は赤字がずっと続いて来年ようやく黒字になるということなんですが、地方はどうかというと、一言で言うと黒字続きです。
2021年はプラス5.3兆円の黒字。
2022年は6.7兆円の黒字。
2023年度は5.4兆円の黒字。
2025年は予測ですけども、8.8兆円の黒字になるんです。

もちろんプライマリーバランスが黒字化することはいいことです。
全体の債務とか、あるいは新規の臨時財政対策債など地方債などの発行をしなくてよくなりますから。
ただ過度なプライマリーバランスの黒字を達成する裏側で、住民の皆さんの税負担が上がってていいのか、ということなので、5兆円地方税収は減るってけど、5兆円以上プライマリーバランスで黒字続きです。
これをどう考えるのかっていうことを、是非、自治体の皆さんのみならず、住民の皆さん・国民の皆さんに考えていただきたいということなんです。

私は地方の知事会をはじめとした自治体の皆さんが税収減で不安を覚えるのは分かります。
分かりますが、繰り返しになりますけども、一般財源を同額に保つというルールがありますから、交付税とか特例加算で国がちゃんと面倒見ますので、そこはまず心配ないということです。
あと税収が非常に増えていたり基金も増加して、さらにプライマリーバランスが黒字続きになって5兆円以上の黒字を計上し続けている中で、5兆円が減って経費が賄えないからサービスが一気に低下するというのは、私は極端な議論だというふうに思います。

大事なことは、国もそうなんですが、今地方の首長さんが言ってるのは、税金を集めて使う側の立場です。
でもそれは当然払う側がいて、納税者や住民・国民の立場に立ってどういうバランスを取っていくのかという視点がこれまでなかったんです。
だから私たちは今回、103万の壁、基礎控除、所得税・住民税を引き上げることによって、できるだけ非常に税収は国も地方も今いいですから、取り過ぎたものをお返しすることによって、手取りを増やして、生活が楽になって、そして消費も増やして、そのことによって地方経済も元気になっていく。
あるいは働き控えが地方でこそなくなっていって、もっともっとお店が元気になって、売り上げが立って、利益が立って、そしてまさに地方の税収も増えていくような、そういうダイナミックな経済活性化の構造が作れないかということで提案してるんです。

我々、国民民主党はあくまで税金を集めて使う側ではなくて、税金払う側の立場に立って、どういうベストなシナリオができるのかということを訴え、そして政府与党とも、また知事会をはじめとした自治体の皆さんとも向き合ってますので、是非ここは数字に基づいた、そして現行制度に基づいた冷静な議論を促していき、いい着地点を探っていきたいと思います。
どうか、たまきチャンネルをご覧の皆さんにも、難しい話だったかもしれませんけども、基本的な構図をご理解いただいて、是非、後押し応援をいただきたいなというふうに思っています。

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