政治団体の収支報告書の問題について
浜田聡
今回は公認会計士の"さとうさおり"さんとお話をしようと思います。
よろしくお願いします。
きっかけは先日から"さとうさおり"さんが政治家・国会議員のいわゆる裏金問題についていろいろと発信をされていたということで、その中で政治団体の収支報告書においてその仕組みが端的に言ってしまうと会計責任者になすりつけができてしまうシステムがあるんじゃないかということを指摘いただいて、私は非常にこの指摘は面白いなと思ったわけです。
実は先ほどまで総務省の方とお話をさせてレクをいただいていたわけなんです。
我々が"さとうさん"の今回の政治団体収支報告書の疑問に関して「これどうなんでしょう」というところで総務省の方とオンラインZoomでレクをいただいたというところです。
その後でせっかくなんでコラボしましょう、ということです。
政治団体収支報告書で会計責任者になすり付けができるという仕組みで、"さとうさん"の先日のTwitterでは問題が大きく3つあるんじゃないかということでした。
まず一つ目、代表に提出権限がない。
オンラインでの提出の時に代表に権限がなくて、あくまで会計責任者が提出権限あるということでした。
もう一つがソフトの使い勝手が悪い。
Excelのマクロを使用ということでした。
あと会計ルールの裁量が広すぎるというご指摘でした。
非常に面白い指摘だなということで、今後これに関しては国会で適宜取り上げていこうとは思っています。
先に他の議員さんとの兼ね合いと言いますか、他の議員さんもやっぱりこういう問題意識をお持ちの方は多くて、その中で日本維新の会の奥下たけみつさんのツイートと、それと橋下徹さんがやり取りされていましたので、そこが面白かったんです。
奥下さんは今、日本維新の会の衆議院議員なんですけど、かつては逢沢一郎さんであったり橋下徹さんの秘書をされていた、その方が3月1日に言われてたんです。
それに対して引用リツイートの形で橋下さんです。
こういうやりとりがあって、非常になかなか素晴らしいところかなとは思います。
確かにブーメランを気にせず確かに吠えまくられていて、ということです。
"さとうさん"の指摘も非常に面白かったです。
さっきのレクもいただきましたけれど、何か感想ってありますか?
さとうさおり
やっぱり指摘した通りそこが穴になってるんだなっていうのが、まず一つ目の感想です。
最初に書いた「代表に提出権限がない」っていうのは、私が普段やっている税務関係の仕事ではありえないことです。
税理士には、むしろ責任はほぼないんです。
その会社にとって、あくまでも代表取締役が国税の書類・申告書の場合は責任を持って提出する。
何か問題があれば代表者と税理士の間での争いなので、それと全く違う、むしろ代表に責任がない、会計責任者だけが責任を負うっていうのは、やっぱりここおかしいなと。
浜田聡
私も個人として毎年確定申告してますし、法人も毎年確定申告してるわけですけれど、確かに税理士さんにはお任せしてますけど、税理士さんに責任といいますか、税務調査が来た時、あるいは指摘された時は、最終的にその人・法人の責任になるっていうのは当然なので、これに関しては会計責任者に責任がいくっていうのは、なかなかいかがなものかなとは思います。
さとうさおり
税務調査の場合でも任せてる社長さんが怒って「これ税理士の責任だろ」って言って国税不服審判所ってところにあげてそこで争うんですけど、そこの結果でももちろん代表者が責任を負う「税理士と争うのであれば、それは個人的にやってください」ってことが明確に何件も判例あるので、こっちの政治資金規正法に関してはよっぽどおかしいんだろうなって思いますし、総務省のレク聞いてても、代表者に提出権限がないのは、そもそも紙提出をする時も「代表者がチェックしてください」っていう法律自体そのものがないから、紙提出でも代表者はチェックを強制されてないんだっていう、そう言われてみればそうだなと。
浜田聡
確かに該当するところあえて言えば、政治資金規正法第19条の15ってところになるんですけれど、でもこの他の条文も含めて代表者に責任があるっていうわけではない感じです。
さっきも総務省と話して、たびたび国税というかe-taxは幅広い国民が使っているわけで、それを政治家の方も使えば、ある程度解決というか、国民と国会議員・政治家の意識の違いというところは解消できるのかなっていう感じはしましたけど。
さとうさおり
技術的にも不可能ではない、金額的な問題だとは仰ってましたが、今の形式審査をしている人件費を考えると、明らかにe-taxのようなシステムを導入した方が将来的なコスト削減を見込めると思えるので、そこが言い訳にはできないだろうなとは思います。
浜田聡
さっき3つの指摘の2つ目のソフトが使いにくいってところとも関わってくるのかなと思いますけど。
さとうさおり
Excelのマクロのすごい使いづらいもので、あれをそのまま使い続けるんですかというところに関しては、法律改正がというところで回答は返されたんですが、おそらくシステム自体を使いやすくするのは法律改正がなくてもできるところなので、そこは総務省がある程度、法律改正しない範囲でも改められるところなのかなとは個人的には思いました。
浜田聡
私も個人の自分の確定申告については税理士さん任せなんでe-taxの使い勝手とかわからないところはあるんですけど、別にe-taxと同じシステムをこの政治団体収支報告書でもいけそうな感じですか?
さとうさおり
全然いけると思います。
7割も今e-taxを国民が使ってるので、確定申告にあたっては。
浜田聡
この政治団体収支報告書は管轄総務省で、e-taxの方はおそらく国税、つまり財務省ということになるけど、その辺の縦割りのところを横串を通すというか、そんな連携みたいなのは国会の方でも提案していってもいいのかなと思いました。
さとうさおり
本当にそう思います。
あとはこれ法律がそうなってしまっているからしょうがないなと思うんですが、形式審査でかつ全件チェックをしているじゃないですか。
5万件近く。
それも相当非効率だなと思っていて、例えば国税の調査の場合って、受け取ったらその時点では形式調査も何もしてないんです。
あらかじめ不正がありそうなところをシステム上でピックアップして、そこに税務調査に行って、かなり絞ったところに対して税務調査をするという方式をとっているので、総務省のように形式とはいえ全件調査っていう、5万件全件調査やること自体が法律からしていけてないなというふうに思ってます。
浜田聡
効率が悪すぎるかなという感じですか。
さとうさおり
悪すぎます。
10何名導入してるって言ってました。
総務省だけでも。
浜田聡
確かに全件チェックするよりは相手が出してきたのも「これだ」と、これをオンラインに公表すれば政治団体の評判みたいなのは国民がチェックできる、そっちの方が適切かなと思います。
さとうさおり
本当にそう思います。
税務調査の場合は形式なんてどうでもよくって「実質はこれだ」って言われたら、実質に従って会計処理を変えないといけないんですが、こっちの政治資金規正法の収支報告書の場合は逆で、実質はどうでもよくって形式さえ揃ってればいいってものなので、そこをどうにかチェックしたとしても数字の整合性を合わせたとしても全くこれは国民にとって有益な情報ではないなと思うんです。
浜田聡
この辺は政治家側と、政治家の側でも特に国会議員ですか。
国会議員と国民の意識の乖離みたいなところは、非常にそこが根本的な問題なのかなとは思います。
さとうさおり
議員立法っていうことを知って、それは総務省に対してモノを言ったとしても責任の所在が総務省ではないじゃないですか。
それが難しいなと思います。
浜田聡
だから議員立法なので、結局は国民がしっかりと政治家側にその判断をしていくと。
具体的には、最終的には選挙ですけど、そんなところかなと思います。
さとうさおり
散々私が実務とか会計とかやってるんで、おかしな点がすごい見えてくるんです。
3つ目の指摘にあった「会計ルールを自分で作れる」ってところなんですけど、そこに関しても同じような、例えば講演会をやっていたとしても国政政党の中でも会計処理が違うのが見て取れるんです。
収支報告書を見ていると。
これはむしろ会計ルールがある意味が無いし、例えば総務省の管轄のところだけだったらいいんですけど、これが国税庁にまたぐような法律に触れるところの場合、権力者の裁量によっては税務調査をわざと入れることだってできるじゃないですか。
そういったところがかなり問題だなと思ってます。
浜田聡
今回この問題を取り上げてみて、総務省と財務省という全然違うところの差なのかなと思いました。
確かに国民寄りに合わせていくのであれば、財務省のところも管轄ももう取り入れてほしいなと思います。
さとうさおり
話してて思ったのは、法律が改正しないとっていう話は多かったんですけど、マニュアルとか手引きのところにもう少し判例というか例示を取り入れてほしいなっていうのがあって、法律の条文の中に例示列挙をあげろって言ってるわけじゃなくて、手引きの中に例えばっていう例を入れるだけでもいいんですって話をしたら、それを総務省として法律改正がなくても可能っていう話があったので、それくらいはしてほしいなっていうのは感想としてあります。
浜田聡
話が若干飛びますけど、先月に参議院本会議があって、共産党の小池晃さんが面白いことを言われてたんです。
国会議員の自民党の裏金疑惑の議員に対して、それらに対して「全員税務調査かけろ」ということを提案してたんです。
それはなかなか面白いなと思いましたけど、私としては裏金議員のみならず国会議員全員に例外なく税務調査してみると、それはそれで確かに700人で大変ですけど、ただ一方でそれをすれば国会でスキャンダル追及みたいなのがかなり減るのでは。
さとうさおり
まさに同じことを思ってました。
やっぱり税務調査入ることに対してビクついて財務省に対して物を言えなくなったりするので、であれば「そもそも入れてしまえ」っていうのは理にかなってます。
浜田聡
よちなみに冒頭紹介した奥下たけみつ議員が「先日うちの実家に税務調査入りました」ってことを言ってそれが話題になってました。
国会議員関係にも税務調査は入るんだと。んです。
小池晃さんの指摘とか非常に面白いなとは思います。
さとうさおり
確かにそれは、全員に税務調査は入るべきだと思います。
その前に収支報告書で何か悪いことがあったら国民の目に晒されて一気に刑事事件化するじゃないですか。
その前にワンクッションがないんですよ。
税務調査だったら税務調査して修正っていうのがあるんですけど、収支報告書の場合は国民の目に晒されて、国民の熱量によって刑事事件化したりだとかしなかったりだとかそういう裁量がかなり持たされてしまっているので、ワンクッション調査を逆にしてあげてもいいんじゃないのかなって思います。
一発刑事は重すぎるなとは思います。
浜田聡
政治資金規正法というのも、規正の正が「正す」になってますから。
制約の「制」じゃない、これも漢字を時々間違える人もいるんですけど。
さとうさおり
過去の歴史からあるのでしょうがないと思うんですけど、政治資金規正法の正って「正しい」の方のせいじゃないですか。
制約するものではない。
でも歴史とともに、例えば寄付金については制約、制限の方の「制」がかかってたりだとか、法律の中でもまたがってしまっているっていうものなので、そこのルールによって、ただ正しいの方のルールしか該当しないと思ってたら、いつの間にか自分のやってる会計行為って制約の方の「制」に引っかかっちゃうことなんだって。
例えばなんですけど、寄付金って制約がかかってるじゃないですか。
でも借入金って制約がないじゃないですか。
借入金を借り入れます、もう返せる状況にはないです、ってなった時には、それって寄付金としてみなされるんです。
そうなったら寄付金の制限の方の制約に該当しちゃうじゃないですか。
意図しない法律違反に引っかかってしまうっていうことがあり得るので、そういう漏れはかなりあるなっていう。
浜田聡
借入金に関しては立花さんが使う、と言うと語弊があるかもしれないですけど、とにかく先ほど言われてたように借入金にしてしまうと都合がいいっていうのは確かにあります。
さとうさおり
制約がかかってないですよ、あそこに関しては。
浜田聡
確かにガーシーさんへのお金とか、そういうのも貸すとかそういう形にしてますから。
さとうさおり
そこがもうガバガバなんで、結局寄付のところにキャップかけてても全く意味ないんです。
浜田聡
立花さんはそういう法律なので、それがいい悪いか別として、そういうのがあるからそれに従ってそれを利用しているというだけで非常に重要なところだと思います。
さとうさおり
逆にそれがないと小さな政治団体は発展しようがないので、借入金のところにキャップかけられてしまうと現実的には辛いっていうのはあります。
小さい政治団体は。
浜田聡
本日、総務省とお話されてましたけれど、さっき簡単にお話が聞きましたけれど、他に何かありますか?
さとうさおり
日本税理士会連合会の出していた声明で、今私たちが会話したようなことを日本税理士会連合会っていうところのホームページ上に突如声明として現れたんです。
でもそれがどこ宛てなのかっていうのが書かれてなくて。
もしかしてこれをただ声明として出しただけで、関係省庁に出しているものではないんじゃないかと、そういう疑問があったので、今日の総務省の担当の方に聞いたんですけど、その担当の方は自分たちは承知してないと。
浜田聡
確かにそれ見ました。
さとうさおり
こういうものが出された時には、議員の事務所に適宜「こういうのありますよ」っていうのは報告があるもんなんですか?
浜田聡
時々届きます。
いろいろと届くんですよ、要望についてなんで。
これ全国会議員に送ってもいいかなと思います。
さとうさおり
国税庁が管轄してて、日本税理事会連合会を置きなさいって法律で定められてて国税庁の管轄なので、なんともそこの税理士と本体の国税庁とはいえ財務省の言いなりなので、そことのせめぎ合い中、なんかポンと空中に出すような形で放り投げられたのか、もしくはどこか総務省の担当部署に投げられたのかわかんないんですが、書いてあることはまっとうなことです。
浜田聡
私も読んでて何書いてあるのってよくわからないところが正直あるんです。
私自身が国会議員関係・政治団体作ってますけど、秘書の方に任せているというのもあって、よくわかりにくいところもあります。
要望に関しては自分のわかる範囲では妥当なところも多いと思いましたので、それは適宜国会の方でも取り上げていこうかなと思っています。
さっきのレク中での報告なんですけど、政治団体の収支報告書で会計責任者になすりつけるができる仕組みの一つとして、代表に提出権限がないということに関しては法改正した方がいいと思ったので、どういう法改正が考えられるかっていうのは参議院法制局に相談してみます。
法制局の見解など来たら適宜報告はしようとは思っています。
さとうさおり
その前段階で法律改正の前でも閲覧権限はつけるべきじゃないかっていう話はさせていただきました。
それが法律改正なくても閲覧ならできると思うので。
浜田聡
つまり責任者が出す前に議員がチェックですか。
オンラインでこれができてないんです。
さとうさおり
ちゃんと会計責任者が提出したかどうかすらチェック項目がないので。
なので、そこもかなり問題だなとは思ってます。
総務省のレクを初めて体験したんですが、質問責めにしてもいいもんなんですね。
いろいろお答えいただきました。
ここの税理士会連合会のところは、引き続き私も個人的にも気になっているところがあります。
あとは質問主意書に載せる項目をどうするかみたいなところですよね。
浜田聡
質問主意書の原案いただけたらと思います。
さっきコメントで連座制はどうなってんだってありました。
連座制が実際ないですから。
ないに等しい状態ですから。
さとうさおり
確かにそもそもこの法律の前に、もっと大前提として連座制があるだろうって話ってことですよね。
浜田聡
選挙の時は時々問題になりますけど。
さとうさおり
形骸化されている法律ってことなんですね。
浜田聡
でも根本な原因としてやっぱり縦割り行政で、政治家が総務省の管轄で一般国民が財務省の管轄みたいな、そういう大きな違いがあるんだと思いましたけど、そこを擦り合わせていければなと思います。
私自身は政治団体の会計みたいなことを作業を実際にやってなかったので、わからなかった・気づかなかったんですけど、実際にやられたから気づいたというのがあってそこは非常に重要な意見だなと思います。
ソフトがめんどくさいとか言うのは、党内でも同じ意見だって言う人いました。
さとうさおり
実際ソフトを使ってる人は多くて、それで提出はしていないって仰ってました。
途中までは作成するけど、最後のちょっとした質問だとかをしたいがために印刷をして、それを窓口に持っていくっていう。
全くオンラインの意味がないような使い方をしているっていう、そういう現状があるっていうことでした。
浜田聡
皆さんの熱意と言いますか、そういうところも感じることができましたので、今回皆さんとご意見など共有できて非常に意義があったかなとは思います。