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風呂戦慄界隈
バイトに受かった。書類の受取やなんやらで店舗にいかないといけない、昨日電話に出たときは明日行けます!!とやる気満々だったが、目を覚ますとどこにも行きたくなくなっていた。外に出るには、風呂に入る必要がある。社会のマナー的な掟である。風呂に入らなければいけないからだめなんだ、風呂が怖い。あと社会も怖い。
浴室に行くと先日の残り湯がまだ張ってあって怒りに身を任せ栓を抜いた。体を洗うだけならお湯が張ってようがどうでもいいと思うかもしれないけれども、真の風呂キャンセル界隈…というのも違う。風呂戦慄界隈は服を脱ぐことを嫌う、このお湯が抜けて空になった浴槽に頭を突っ込んで髪だけ洗うのだ。現在時刻15時、どうして人は、明日にでも!などという勢いだけの発言ができるんだろう。過去を悔やんだ、私はもう二度と、即日だとか最短3日だとかいう言葉に踊らされない。健常な私から躁状態の私へのメッセージ、せめて1日は日を開けろ。
…ここまで書いて私はスマホに手を伸ばす。おいおいとんだクレイジーだぜ、まさかここまで来て???こうなったらもう止まらない、連絡先一覧から受かったバイト先に電話を、今からかける。拝啓、お母様。娘は社会不適合者です、風呂と書類受取を先延ばしにする不幸をお許しください。
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はて。これ風呂にさえ入らなきゃ余裕で間に合うんじゃね?全ては風呂が悪かった、勤務地に赴くのではなく風呂に入ることを諦めた。
こうして風呂キャン界隈は今日も往く、顔を洗って頭にドライシャンプーをかけて、のろのろ着替えて社会に溶け込む準備をする。
余談だがカバンの中にはいつも包丁が入っている、お前らなんてすぐ殺せるという心のお守り。今のところ職質を受けたことはない。現在時刻15時25分、風呂戦慄界隈の躁鬱インターネット中毒社会不適合者はこうやって形成されていく。