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大阪府・枚方市【街の中の私・私の中の街】

私の街はいわゆる住宅街にある。小さい頃は、黒田川という駅と並行に流れる幅5mほどの川に沿っていつも帰宅していた。Googleマップにはいまも名前が書かれていない。私が小学生のとき、この川にはたくさんの鯉が泳いでいて、黒い魚影が帰り道にいつも見えていた。中学生のときに水位が下がり始め、高校の頃には鯉が水面で口をパクパクさせ、大学でたまに実家に帰るときにはもう干からびていた。川を挟んで駅側には「なんでも屋」というお店があり、「なんでも」の幅に大人になると興味が湧くが子どもの頃は駄菓子や店前の50円自販機に夢中だったので当時の商品の記憶はほとんどない。たばこは置いてあったと思うが、大学生の頃にはすでに閉店し確かめる術はなかった。家の前には「ぐるぐる公園」という球体状の回る遊具があり、それを回すのが大変楽しかったのだが、ある日別の公園で同じ遊具での事故があり、その後全国的に撤去されてしまった。そしてそれ以降その公園をなんと呼べばいいか分からなくなってしまったのだった。小さい頃から通っていた街中華の「赤玉亭」はしっとり焼き飯でニラ玉も美味い。大学合格の頃だったか、一人で行ってゴマ団子をサービスしてもらった覚えがある。いまでもあの焼き飯を食べたいと思うが、おじさんおばさんふたりとも元気だろうか。
家を出て10年が経つ。久しぶりに帰ると、駅前にはやや大きなクリニックができ、誕生日に食べたグランショコラのケーキ屋はなくなり、道の角のクリーニング屋はシャッターが閉まって自販機もない。少し年を取ったという雰囲気を帯びていた。
ふと気になったが、この街にはなぜか坂が多かった。なぜだろう。小学校で急な坂道を6年間のぼり、やっと中学校だと思ったら倍の長さの坂道が登場した。驚きである。ジオラマで見たら結構面白い地形だとは思う。おかげで体は丈夫に育った。坂の途中には「サカミティー」というレストランがあったり、坂下公園という公園もあった。ポジティブかネガティブか分からないが、昔からみんなが坂に対して何かしら思っていたことは間違いない。なにせ学校も初詣の神社も街の図書館も全部坂の上にあるのだ。
こうやって自分の街に思いを巡らせると、まだ行ったことのないパン屋や入ったことのない居酒屋を思い出す。変わっていく街であり、実は知らないことだらけの街なのに地元と呼び続ける不思議さを感じる。


新開地ニューあそび場の創造
安住の地「ライトシティ」



日時:2024年2月9日(金) ~ 25日(日)
場所:新開地アートひろば

あたらしい街にやってきて思うこと。
見慣れない街灯、住宅の明かり。
どれもまだ自分の街じゃない。
いつしか私は住人を名乗り、自分が「街」の一部に変わる。
気が付けばその街が「自分自身」を作っている。

本企画のテーマは「街に馴染む」
安住の地劇団員が考えた関連企画や、訪れた人の手で変わっていく展示空間、そして新作の演劇作品を発表します。
リニューアルした新開地アートひろばで、
安住の地と一緒に、新しい街「ライトシティー」を考えてみませんか?

演劇公演『あかり。』

脚本:武田暢輝
演出:森脇康貴、武田暢輝
〈あらすじ〉
そこに街があった。私たちは街の中で、街の一部として生きていた。
その街に生まれた新生児・灯(あかり)の身体は光をまとっていた。
灯は身体が発光する以外は、どこにも異常はなかった。ただ、光り続けていた。
いつしか街のシンボルになった灯は、この街の一市民になることを夢見る。

詳細はこちら▶ ライトシティー特設ページ


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安住の地
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