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いい獣医さんの特徴を獣医師目線で解説

こんにちは!獣医師のあんじゅ(@vets_magazine)です!

「動物病院がたくさんあって、どこに行けばいいか分からない」

「いい獣医さんの見分け方を教えて!」

という質問に答えていきます。

大切なペットの命を預けるのですから、動物病院は慎重に選びたいという気持ち、とってもよく分かります。

よく見るネットの記事では、

  • 自分の家から一番アクセスがいいところ

  • 土日祝日も対応している年中無休のところ

  • 先生やスタッフの感じが良い

  • 保険に対応している

  • 友人の評判がいいところ

みたいなことが書かれていますね。

もちろん、こういったことも大切かもしれません。

でも、どれも本質的ではないような気がします。

見るべきポイントは、なんといっても実際に働いている獣医師の診察の仕方です。

この記事では、動物病院で働く現役獣医師の目線で、「私ならこういう獣医さんに愛犬愛猫の命を預けたい」と感じるポイントをいくつかまとめてみました。

私自身「獣医師として、こうありたい」と意識しているポイントでもあります。

参考にしていただけたら幸いです。

良い獣医師の特徴

身体検査が細やか

  • 動物の体全体をしっかり触って触診しているか

  • 目のウラの結膜の色を見ているか

  • 口の中の視診をしているか

  • 聴診器を使ってじっくり心臓と肺の音を聞いてくれるか

  • 毎回体重と体温測定をしているか

このあたりは獣医師としては当たり前にできなければいけない項目ですが、意外と手抜きな獣医師もいます。

聴診は少なくとも5秒は聴かないと判断できません。聴診器で触れただけで終わり、「パフォーマンスですか?!」みたいな先生もいるので、そのあたりも私は見ちゃいます。

特にワクチンやフィラリア検査などは、犬猫にとっては健康診断の絶好の機会です。

飼い主目線では元気いっぱいで健康そのものに見えていたけれど、獣医師が診察してみたら

  • 乳腺に腫瘍が見つかったとか

  • 耳の汚れがひどくて外耳炎を起こしていたとか

  • 心臓の雑音が見つかったとか

そんなことは日常茶飯事です。

普段からよく動物を診てくれる獣医さんなら、愛犬愛猫の病気を早期発見してもらえる可能性が高いのです。

問診がきめ細かい

この、”問診をしっかりと綿密にしているか”もチェックポイントです。

・食欲はいつから無くなりました?
・普段の何%くらいですか?
・最近お水飲む量とかおしっこの様子、変わりないですか?
・元気はどうですか?
・下痢はどんな柔らかさ?ソフトクリームくらい?それともちょっと床につくくらい?それとも水下痢?
・症状はどんどん悪くなっていますか?
・どこか痛そうな感じないですか?
・他に気づいたことありますか?

こんなふうに細かく綿密な問診を取る先生は、なかなかイケてます。

予防医療の案内をしてくれる

私が子供の頃、愛犬を診てもらっていた動物病院の先生は、「避妊手術をしたほうがいい」なんて一言も教えてくれませんでした。

そのまま避妊手術の存在を知らずに過ごし、子宮蓄膿症という怖い病気になって命を落としかけました。

今と違って簡単に情報にアクセスできる時代ではありませんでしたから、獣医師が教えてくれないと知り得なかったわけです。

避妊去勢手術や、フィラリア予防、ノミマダニ予防、ワクチン、歯磨きやスケーリング、健康診断。

予防医療は

  • 防げる病気を未然に防ぎ、

  • 病気を早期発見し、

  • 早期治療開始に結び受ける

という3点で非常に重要です。

特に動物は声を発しませんから、「人に分かる程度の症状が出始めた頃にはすでに手遅れ」というパターンがいくらでもあります。

積極的に健康診断を勧めてくれる獣医さんは、私に言わせればなかなかイケてます。

歯磨きの仕方を丁寧に教えてくれる

歯周病とは、歯の周囲で悪い細菌が過剰に増殖し、炎症を起こす疾患です。

慢性的に口腔内で炎症が起きているのも体にとっては害となりますし、口腔内の細菌が血流に乗って体中のあちこちの臓器に飛び火することもあります。

歯周病はあらゆる病気の元となるのです。

実際、年に1回超音波歯石除去術を受けた犬は、死亡率が約18%も低下するという研究結果が出ています。
参考文献:Risk Factors Associated with Lifespan in Pet Dogs Evaluated in Primary Care Veterinary Hospitals

歯の手入れの重要性を物語る結果ですよね。

歯磨きの重要性を知っている獣医師、あるいは看護師は、予防医療の重要性をよく理解していると考えられます。

獣医師でも看護師でもいいですが、

歯磨きってどうやってすればいいですか?

と質問してみてください。

普段から飼い主さんに歯磨き指導をしている動物病院であれば、スラスラとわかりやすく説明してくれるでしょう。

専門病院への紹介を行っている

治療や診断に行き詰まったとき、2次病院(大学病院)などへの紹介を提案してくれるかどうかも重要です。

1次診療に携わる獣医師(いわゆる街の獣医師)は内科、外科、歯科、腫瘍科、神経科、内分泌科、皮膚科など、様々な分野の疾患を診察しています。

つまり、どうしても広く浅くになりがちということです。

中には、

  • どうしても1次病院では治療できない難しい病気や

  • 詳しい精密検査が必要な疾患

  • 専門家でないと診察ができない病気

が存在します。

そういう局面にぶち当たった時、自身で診察できる範囲を的確に判断し、適切なタイミングで専門病院を紹介できる獣医師は信頼できます。

逆に、すべての処置を自分の病院で完結しようとする個人病院は、浅い知識と経験で難しい検査・治療を実施してしまって、病状をこじらせたりすることがあります。

手遅れになってから2次病院に紹介して、尻拭いをしてもらったりという事例も、無くはないわけです。

特に2次病院を頼るべき場面が多い疾患として、

  • 神経疾患(MRI検査が必要な場合が多いため)

  • 腫瘍性疾患(CT検査や抗癌剤治療、放射線治療が必要なことが多いため)

  • 整形外科疾患(手術が難しいため)

が挙げられます。

病気の種類にもよりますが、1次病院での限界が多い分野です。

もちろん、担当の先生がその分野に精通した先生であればその病院で治療してもらえばいいですが、獣医師も神ではありませんからすべての分野の専門家にはなれません。

自身の限界を知っていて動物のために勇気をもって他院を頼れる獣医師。一見頼りないように思われるかもしれませんが、私は素敵な先生だなと思います。

ただ、実際に診察を受けている飼い主さんがそこまで見抜くのは難しいかもしれませんね。

少なくとも、2次病院の紹介をされたときは、「おっと、この先生自分ではできないのか・・・。大丈夫かな?」と思うのではなく、「ちゃんとうちの子のことを考えてくれてるんだな。」と思っていただけるといいかと思います。

最新の情報を勉強している

常に新しい治療法や新常識が更新される世界です。

獣医師は獣医師免許をとってからが本番。生涯勉強せよ!

と、大学の教授によく言われたものです。

常に最新の情報を取り入れるためにセミナーに行ったり情報雑誌を読んでいる先生は、勉強熱心で最新のエビデンスに基づいた診療をしてくれるはずです。

普段の診察の中で、

最近は〇〇が△△に効くと言われていて、、、

とかいう話が出てきたら、「この先生はよく勉強している先生なんだな!」

と思っていいでしょう。

あるいは病院のHPのスタッフ紹介の欄に「〇〇大学研修医」「〇〇学会会員」などの肩書きがあったりすれば、積極的に大学やセミナーや学会で勉強している証拠です。

動物病院との上手な付き合い方

ここからはかかりつけ病院を含めた動物病院との上手な付き合い方を解説します。

かかりつけ医は決めておく

たしかに病院ホームページを見ると、専門分野や得意分野が書き連ねられているかもしれません。

歯の得意な先生、腫瘍が得意な先生、外科が得意な先生。

色々書いてあるからでしょう。

  • 足がびっこ引いているときは整形が得意なA病院

  • 予防医療は一番安いB病院

  • 皮膚が痒いときは皮膚病が得意なC病院

みたいに、いくつもの病院を渡りあるいている人をたまに見かけます。

これは正直あまりおすすめしません。

基本的には、どんなときもまずはかかりつけ医を頼るのがおすすめです。

かかりつけ医というのは、

  • その子のいつもの様子を知っている

  • いつもの健康診断のデータを持っている

  • 既往歴(今までかかった病気)を知っている

という点で、大きなアドバンテージを持っています。

例えば、皮膚疾患ひとつ取っても、

  • 何歳から痒みがでたのか

  • いつもの皮膚の色はどうか

  • 今まで試した食餌療法の内容と、その治療反応性

  • 副作用が強く出る薬と大丈夫な薬

こういったことを一番事細かに記憶しているのは、かかりつけ医だったりします。

飼い主さん自身もある程度は覚えているかもしれませんが、かかりつけ医はもっとしっかり記憶、あるいは記録しています。

これは、全く違う病気にかかってしまったときにも、非常に役立つ情報源となるのです。

また、かかりつけ医が複数に散らばっていると、どの獣医師も少しずつ責任感が薄れます。

これは、意図するしないに関わらずそうなってしまうものなのです。

皮膚病だけうちを受診しているから、普段の健康チェックは他院がやってるよね?

どの病院からもこのように思われてしまい、結局だれからも必要な健康診断を勧めてもらえなかったりというのは、容易に想像できるパターンです。

かかりつけ医がいないというのは、そういうことなのです。

よっぽど難しい病気でなければ、多くの開業医さんがちゃんと診察してくれますから、すべての疾患で専門医を求める必要はありません。

あくまでも、治療が行き詰まった時や専門診療が必要となった場合のみ、専門医を紹介してもらえばOK。

かかりつけ医は決めておこう!

セカンドオピニオンは遠慮なく行く

とはいえ、セカンドオピニオンを受けることには、私は賛成です。

私が個人的に、セカンドオピニオンを受診してもいいかなと思うのは、以下のタイミングです。

  • 診断や治療に納得がいかない

  • 治療しても絶望的と宣告された、でも諦めきれない

かかりつけ医で診断してもらったけど納得がいかない、あるいは治療しても予想に反して全然良くならず若干の不信感が芽生えたとき。

これは、遠慮なくセカンドオピニオンにいってもいいと思います。

いまや人間の医療の世界でも動物医療の世界でも、セカンドオピニオンを受けるのは当たり前です。なにも特別なことではありません。

行ってみて、同じことを言われたならば元の病院に戻ればいいし、実は誤診だったとなればその病院で治療してもらってもいい。

1次病院で手に負えない難しい病気だったなら、サードオピニオンを求めて2次病院(大学病院や高度医療のできる病院)に行ってもいい。

大事な家族の命がかかっているのですから、遠慮は要らないと思いますよ。

ただし、信頼している獣医師の指示はしっかりと守るようにしてください。

病気が良くならないのは、「獣医師から出た投薬や食餌等の指示を、飼い主さん自身が正しく実行できていないだけ」ということも、往々にしてあります。

その場合、セカンドオピニオンに行ってもサードオピニオンに行っても、良くなることはありません。

言われたとおりにしたけど、良くならない

これ、本当に合ってるのかな

そう思った時には、セカンドオピニオンに行くべきと考えます。

2つ目の病院候補を準備しておく

かかりつけ医を頼るのがベストではありますが、年中無休でない限り「休診日」があるはずです。

万が一、かかりつけ医が休診の日に体調を崩したときのため、2つ目の候補を決めておくことをおすすめします。

おすすめの決め方は、かかりつけ医に聞くこと。

同業ですから、信頼できる病院をよく知っているはずです。

火曜日が休診日なら、「この周辺で、火曜日にやってる病院でおすすめの病院はありませんか?万が一何かあったときのために知っておきたいです。」と相談してみてください。

夜間動物病院の所在を確認しておく

夜間に開院している病院はなかなかありません。

夜に何か起きた場合は、夜間動物病院を頼ることが多いです。

大体の都道府県では、各都道府県の獣医師会が運営している夜間動物病院があるはずなので、その所在地を確認しておきましょう。

こちらも、かかりつけ医が夜間動物病院と提携していれば、名刺などをもらえるかもしれないので相談してみてください。

まとめ:病院選びは重要!

命を預ける動物病院をしっかりと選ぶことは重要です。

あなたの大切な家族の命を預ける動物病院を選ぶポイントは、設備や立地などよりも、獣医師です。

今回紹介したポイントに注目して獣医さんを観察してみてください!

ただし、ここに書いた条件に当てはまらないからといって悪い獣医師ということは無いですし、逆に条件すべてに当てはまっても優秀な獣医師という確約はできません。
あくまでも、私の主観が入ってますから、参考程度に。

このnoteでは、臨床獣医師として日々動物たちの診療にあたっている筆者が、

  • エビデンスに基づいた正しい知識

  • 適切な予防医療や病気の早期発見のための知識

  • 疾患を抱える犬猫との向き合い方

を飼い主様にお届けしています。

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