【2017.12.28】伝説のスパイ再来! Tiger Zinda Haiを観てきました!
昔のブログ『Masala Press』に書いていた記事を思うところあって5年ぶりに再掲します! この2017年末はデリーからハイデラバードに行き、この2日後にはRamoji Film Cityでバーフバリのオープンセットを見てあまりの興奮に長い記事を書き、それが巡り巡って弊社の看板企画ツアー『はじめての王国ツアー』になりました。そのときのブログはこちらに全5回で再掲🔻
Ramoji Film Cityの衝撃が強すぎてすっかり追いやられた感がありますが、このときの旅はほんとうに揺さぶられるできごとがたくさんあったな。
以下、再掲です。
帰ってきたタイガー! Tiger Zinda Hai!(タイガーは生きている!)
さて「バーフバリ 王の凱旋」の日本公開を控えて盛り上がっているところ、まったく空気を読まずにお届けしましょう! 重要なネタバレはありません。
12月22日に公開されたばかりのサルマン・カーン最新作“Tiger Zinda Hai”を鑑賞してまいりました。
この冬の一番の話題作といえばランヴィール・シンとディーピカー・パドゥコーンの期待の新作“Padmavati”(注:のちに"Padmaavat"と改題)でしたが、少々物騒な政治問題絡みで公開予定の12月1日が延期になり、どうやらこのまま年を越して春先あたりまで延び延びになりそうです。
そんななか、年末年始はサルマンの独壇場になったといってもいい勢いです。
感想はただただ、
ダサかっこいいサルマン全開! カトリーナは踊っても闘っても美しい!
です。あと、仲間であることを知らせる暗号「トゥ・トゥ・トゥ、トゥ・トゥ・ターラ」、なぜか大ウケにウケていて、これから流行るかも?
あらすじ
2012年の前作“Ek Tha Tiger”(タイガー 伝説のスパイ)で恋に落ちたインドのスパイ、タイガー(サルマン・カーン)とパーキスターンのスパイ、ゾーヤー(カトリーナ・カイフ)は、ともに暮らし8年。ジュニアも生まれ、オーストリアのアルプス山奥で幸せに暮らしていた。
そんな折しも、アメリカ軍の武装勢力掃討作戦が続く中東では、現地で働く25人のインド人ナースたちを武装勢力が拘束、市民病院に人質として監禁するという事態が発生。アメリカ軍の掃討攻撃までの猶予は1週間。
救出に向かうのは……。はるか欧州に暮らす伝説のスパイ、タイガーだ!
実話が元になっている
実話にインスパイアされたということで、武装勢力の描かれ方については昨今の世界情勢を反映した設定になっています。
子どもを使った自爆テロ、捕らわれた少数民族の女性たちへのレイプ等、事実、起きていることを取り上げながらも、そこは救いを持たせた描き方をしていて重くなりすぎずに済んでいます。
武装勢力にしても、かなりのデフォルメやステレオタイプが入り、リアリティという面では欠けるのかもしれません。ただ娯楽映画としては徹底したリアリティの追求はむしろしなくてよいですし、映像の迫力という点では見応え充分以上です。
サルマンのダサカッコよさ全開
予告編にある通り、冒頭はアルプス山中に暮らすタイガーが、ジュニアと雪山で狼に遭遇、というシーンです。
スパイ映画のお約束、オープニング早々の派手な逃走劇。
今回は舞台は雪山、狼たちを相手に「どうだサルマン、カッコええやろう!!」をひたすら見せつける、ド派手な滑走を繰り広げます。
これはもう単純に「めっちゃくちゃカッコいいオープング」としかいいようがありません。
鑑賞はデリーのスカしたエリアにある映画館です。公開直後というのもあり、平日午後にも関わらず300席ある映画館は大入り満員(いったいこの人たちはいつ働くのだ……)。
「誰が救出に行けるというのだ?」
というスクリーン上での問いに、すかさず、
「タイガー!!!」という叫び声と口笛ヒューヒューが客席を飛び交い、やはりサルマン主演作は、南インドと比べると少々取り澄ました感じがするデリーの観客でもお祭りウキウキ感が漂って楽しいです。
永遠のヒンディー語ビギナーのわたくしはいつも念力で話を追うのですが、このときは奇跡的に聞き取れ、満場の観客とももに雄叫びをあげました。
美しきパートナー
そしてカトリーナ演じるゾーヤーにもちゃんと出番が。
実は捕らわれたナースにはパーキスターン人もいるということで、パーキスターン側からはゾーヤーが救出に向かっていました。いい感じの登場シーン。ヒューヒューッ!
印パの友情
かくして、アメリカ軍による総攻撃までのタイムリミット内に、インド・パーキスターン混成チームで救出作戦を敢行することになります。
このあたりもかなり希望的観測込みというか、宿命的に仲の悪い両国がせめて映画のなかだけでも友好を深めようという製作、およびサルマンの意向を強く感じます。
とはいえ、最初は反目し合う印パそれぞれのメンバーが、緊張をほぐそうと会話をする、そのときのちょっとした言葉尻による微妙にピリっとした空気がなんともいえずリアルでした。
お互いの国のことでチクチク傷つけあいながらも一個人としては好きになれる、そんなことを描きたかったのかな。「痛み分け」という仲直りは今の世の中にとても必要なものだと思います。
印パが共通の敵に立ち向かうため結束するという大枠のストーリーは前作もそうですし、サルマン主演の2015年の超大ヒット作Bajrangi Bhaijaan(ハヌマーン兄貴)(注:その後『バジュランギおじさんと、小さな迷子』という邦題で公開)では少女を助けるために印パの善良な人々が協力し合いました。
昨今の印パ情勢はあまりいいニュースがありませんが、映画という世界のなかではしぶとくずっと友好を描いていってほしいと思います。
隙のない脇役たち
脇を固める俳優もいいです。
武装勢力のボスにイランの俳優Sajjad Delafrooz。ブルース・ウィリスの「ダイハード」シリーズで敵役が毎回ブルースよりずっとハンサムなのと同様、サルマン主演作の悪いやつは正統派的にカッコよくないといけません。
絶妙のいやらしさで敵か味方か混同させるのはParesh Rawal。”OMG -Oh My God-“(2012)で、神など信じぬと神に対して訴訟を起こす男の役を怪演した俳優です。
個人的にはNawab Shahが出ていたのが嬉しかったです。”ミルカ”(Bhaag Milkha Bhaag (2013))やシャー・ルクとカジョールのDilwale (2015)などに出ていた目つき鋭い方。
その他、印パ混成チームのメンバーもハンサム揃いですし、ナースの女性陣もそれぞれ眼福です。
病院のナースたちの祭壇にある神様が宗教ごった混ぜで、ヒンドゥー教だったりイスラーム教だったりキリスト教だったり、ナースたちそれぞれの信仰に基づいた祈りを皆で揃って一緒に捧げているというシーンが印象的でした。
地味ですが重要なメッセージで、この作品で一番真面目にグッときたシーンかもしれません。
まとめ
音楽シーンもほどよく、アクションも見応えがあり、全体的にバランスよく楽しめ、最後はスカッと気分よく映画館をあとにできる作品です。
タイトルでもあるTiger Zinda Hai(タイガーは生きている)を大声で叫びたくなるシーンが3回はあります。日本のマサラ上映など、かなーり楽しいと思うなあ。
シメは前作と同様、カトリーナの悩殺ダンスで。ギリシャロケだそうです。美しい。
インド人はエンドロールが始まるや否や一目散に出口を目指すのが通例だったのですが、最近はゆったりと席に座ったままエンドロールを見ている観客も多くなってきたような気がします。とくにこのカトリーナは観ないと損ですねえ。半分くらいの観客が最後まで観ていました。
おまけ
サルマンはダサカッコいい自分の演出がとても上手いです。80年代のサルマンといえば線の細い美青年だったのに、いつからかマッチョ路線に転向。ただし背も低く手足も短く、カッコよさを目指してもダサさは避けられない。
サルマンの熱狂的なファン(男性人気高し)はおそらくその「ダサ」を含めた彼をこよなく愛しているのだろうなあ、と思います。
個人的な思い出ですが、2000年ごろムンバイの国内線空港のセキュリティチェックでサルマン・カーンが並ぶ男性の列の横で女性の列に並んでいたことがあります。
こんな大スターも一般人と一緒にセキュリティチェックに並ぶのだと驚くと同時に、その小柄さも、イキった歩きかたも、なんというかちょっとやさぐれた雰囲気をまとっていてあまりよい印象を持ちませんでした。
思えばこの頃はサルマンが事件を起こしたりと迷走していた時期。
人生にはいろいろな浮き沈みがあります。生きてりゃいろいろあるのよ。間近に見た不良サルマンですが、その後マッチョ路線で蘇り不動の座を築いていくのをちらちらと横目で見ているうちに、ついに私はBajrangi Bhaijaanで大泣きし、そして今日はスクリーンに向かって熱狂しました。
感慨深いです。