ある冬の朝のはなし
おきた?
おきた
おはよう
ねえねえ、プラモデル始めるのやめにした
お、そうなの
代わりにキーボードを買おうと思う
??????
最近何かつくりたいんだよね、と言って半月程プラモデルを検討してた彼はぐるりと方向転換をして、突然キーボードを買うと言い出した。
しかもいつも寝起きはぼおっとしている彼なのに「楽しいこと、思いついちゃったんだよね!」と言わんばかりのにこり顔で、それでね、とするする話を続ける。
「音楽、つくってみようかな。」
彼が言うにはこうだ。プラモデルを検討していたけれど、1歩踏み出せなかった大きな理由は作った後どうするか。プラモデルを作りたい欲はあるけれど、作った物を飾りたい欲は特にない。すっかり煮詰まってしまったので立ち返って色々考えてみたところ、どうやら自分は「つくること」がしたいらしい。そこで「音楽」に辿り着いた。制作物をストックするのに物理的な場所はいらないし、過去にバンドをやってて音楽は好きだしその上ゲーム音楽も好きな自分にはしっくりくる。だからまず、キーボードを買う。
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一緒に過ごして7年。知る限り彼はとにかく欲のない人だ。したい事も、ほしい物もあまりない。
外出は私が「ここ行きたい!」ってところに一緒にお出かけするくらいだし、身の回りの買い物は年に5つあるかないかだと思う。穏やかでにこにこしているけれど、シャイで無口なタイプ。家で黙々とゲームしてるのが好き。
そんな彼が、起きてすぐの布団の中で「音楽、つくってみようかな。」とわくわくしながら話しかけてきた。びっくりも、びっくりである。と同時にすごくわくわくした。
これまでわたしから彼に「これ見て、つくったんだよ。」と話しかけていたけれど、これからきっと彼から「これ聴いてみて、つくったんだよ。」と話しかけられるのだ。今からとても待ち遠しい。
きっと素敵な音楽ができるよ。たのしみだな、心から。