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「システムでやるより人手の方が安い」問題~IT投資をどの様に考えるか?~
過度に労働集約性高く、組織が肥大化するのは…
— 中野 仁(Jin Nakano) (AnityA代表) (@Jin_AnityA) August 23, 2020
「システムでやるより人手でやった方が安くない?
人は融通効くし、会社も大きくなるじゃん。
雇用も生み出して社会貢献してる感あるし。」
この疑問の打ち返しに失敗し続けてきた結果でもある。
まとめ
「システムでやるより人手の方が安い」という考えが根強く残る背景には、短期的なコスト感覚がある。
労働集約型の組織は一定の規模を超えると、統制や管理コストの増大が避けられない。
システム投資が企業の成長に与える影響を冷静に考えることで、最適なバランスを見出せる。
1. 「人手でやった方が安い」は本当か?
「システムでやるより人手でやった方が安い」という考えは、多くの企業で一度は議論されるテーマだ。初期投資がかかるシステムより、今いる人材で業務を回した方がコストが抑えられるのでは? という発想は直感的にも理解できる。
実際、人手で対応することで柔軟性が確保され、運用面での調整も効きやすい。一方で、属人的な業務が増えると、標準化が難しくなり、結果として効率が低下するケースもある。
業務の属人化が進むと、品質のばらつきが生じる。
人が増えると、管理コストが上がる。
業務プロセスの整理が後回しになりがちで、長期的な非効率につながる。
短期的には「安く見える」人手運用も、成長する組織では意外とコストが膨らんでいくことがある。
2. 労働集約型組織の課題
営業やマーケティングを強化して売上を伸ばすのは自然な流れだが、その過程で組織がどう変化するかを考えるのも重要だ。
営業を増やせば、予算や戦略の調整が必要になり、管理業務が増える。
管理業務が増えると、ミドルオフィスの負担が大きくなる。
統制が必要になり、バックオフィスの役割が拡大する。
固定費が増加し、それを補うためにまた営業を増やす。
この流れを繰り返していると、「組織の拡大とともに管理負担が重くなる現象」が起こる。気づいたら、「本来の成長戦略とは違うところでコストが増えていた」なんてことも珍しくない。
また、人が増えると「システム化しても仕事が減るだけでは?」という声が出やすくなり、業務の仕組みを変えること自体が難しくなる。
3. システム投資の本質とは?
システム投資というと「コスト削減」のイメージが強いが、本質はそこではない。
1. スケール(成長の加速)
システムによって業務の標準化・自動化が進むと、組織の拡大に合わせた成長がしやすくなる。
例えば、SFA(営業支援システム)を導入すれば、営業の動きが可視化され、育成や戦略の調整がスムーズになる。
2. ガバナンス(統制の強化)
システムを活用すると、業務の可視化と監査が容易になり、リスク管理がしやすくなる。
特に海外展開や多拠点経営では、情報の透明性が競争力に直結するケースもある。
4. IT投資が進まない理由
「事業が安定しているなら、システム投資は不要では?」という疑問は根強い。確かに、
急成長を目指していない企業では、投資の優先順位が低い。
多少の非効率があっても、それで回っているなら問題ないと判断される。
短期的なROI(投資対効果)が見えにくいと、投資の判断がしにくい。
ただし、競争環境が変化し、組織が大きくなると「今までのやり方では限界がある」と感じる場面が出てくる。
5. 「人手 vs. システム」の最適解
では、どうバランスを取るべきか?
1. 人は「人にしかできない仕事」に注力する
システム化できる業務を無理に人手で続けるより、人は創造的な業務や、対人関係が重要な仕事にフォーカスできる環境を作る方が良い。
2. 労働集約型の落とし穴を意識する
企業の成長戦略を考える際、「人を増やす以外の方法があるのでは?」と一度立ち止まるだけで、選択肢が広がることもある。
労働集約型の限界を理解する。
スケールしやすい仕組みを早めに整える。
これを意識するだけでも、長期的に見たときの組織の動きが変わってくる。
結論
「システムでやるより人手でやる方が安い」は、短期的な話でしかない。
組織が成長するほど、システムを活用した方が柔軟な運営がしやすくなる。
「今のやり方を続けるべきか?」という視点を持つことが、最適なバランスを見つける第一歩になる。