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コーポレートITのジュニア化〜社内にいる必要あるのだろうか問題〜


まとめ

  1. 企業のIT部門で、スキルやマネジメント力が不足しているジュニアが増えている

  2. 彼らは、自分の興味のあるツールにこだわり、会社全体の課題には興味がない

  3. 結果的に、個人としての成長が止まるだけではなく、企業のIT戦略にも悪影響が出る


1. なぜジュニアは成長しないのか?

最近、企業のIT部門のマネージャーやシニアの間で、「ジュニアが増えていて厳しい」という話題がでる。彼らの問題点は次のようなものだ。

視野が狭く、他部署と話ができない

  • 自分が好きな技術やツールの話しかしない。

  • 経営やビジネスとの連動を想定できず、全体観のあるIT施策を考えられない。

  • コーポレート・ビジネスを問わず他の部署の人やマネージャーとうまく話せない。

技術力が足りない

  • ツールを導入することに夢中だが、基本の技術が身についていない。絆創膏の様な発想が多く、応用がきかない。

  • モグラ叩きの様な施策を行い、後続で別の問題がでたりする。それに対してはスコープ外として興味がない。

マネジメント力がない

  • チームをまとめることができない。体制構築はもちろん、他人への興味が薄い。

  • チームとして問題を管理する力がなく、組織的な運用ができない。

報酬や副業には関心があるが、実力が伴わない

  • 自分の市場価値を高く見積もりすぎる。仕事を選り好みするが、スキルが不足しているため評価されない。

  • 評価されないことを会社やマネジメントの責任とし、他責が強い。不満があるなら転職すれば良いのに居続ける。

  • 本業はそこそこにしながら副業にはたいへん興味がある。

このようなジュニアが増えると、コストは増えるがその割に仕事が進まないという問題が発生する。


2. コーポレートITと経営のギャップ

IT部門は、会社の経営を支える重要な役割を担っている。しかし、多くのジュニアは、ITを導入することが目的になってしまい、経営はもちろん、ビジネス全体を考えられていない。興味自体が無い。

IT投資の判断ができない

  • 経営の視点を持たず、とにかく自分が使いたいツールを導入しようとする

  • その結果、コストに見合わない無駄なIT投資をしてしまう。

  • ベンダーと癒着していると思われても仕方ない様な距離感に違和感を持たない

ビジネスに関心がない

  • 他部署と話さず、自社のビジネスを理解しない。

  • 自社のビジネスが何なのか?業界構造・競合他社は?財務状況は?という基本的な話を理解していない。

  • 結果、ビジネス側から「ビジネスの会話できない事務屋」としてみなされる。

会社全体の方針への連携を考えていない

  • 業務プロセスの改善といった視点がない。

  • 経営層と話す機会がなく、会社の戦略に連動して発想できない

  • IT投資という大きな金額を扱っているという自覚が無い

ジュニアがIT投資に関わることで、投資効率が悪化する要因になってしまう。またツールについて特化したいならばベンダー側にいる方が適切であるが、事業会社の社内にいる価値について考えず興味もない。

「猫に小判」を持たせた結果、お金を垂れ流す状態になるのではないか?

3. IT業界の変化と人材の選別

近年のDX(デジタル変革)ブームやエンジニア不足により、IT業界に適性がない人でも入りやすくなっている。しかし、景気が悪化すると予算が絞られる為に、スキルが足りない人材が問題視されるようになる

過去は選別が厳しかった

  • 以前は、スキルと重たいタスクを回せない人は淘汰されていた。

  • しかし今は、長く続く売り手市場と人手不足の影響で、適性のない人でもIT業界に残りやすくなっている。

エンジニアの市場価値が上がりすぎている

  • DX・コロナバブルの影響で、コンサル・エンジニアの単価(給料)が急上昇。

  • しかし、相応のスキルと見合わない高い報酬を求める人が増え、企業とのミスマッチが起きている


今後は選別が進む可能性もある

  • 不景気になると人件費圧縮・投資縮小の観点から、実力がある人とそうでない人を見極める選別が行われる

  • ジュニアのスキルを正しく評価し選別し、育成または淘汰を進める


4. 育成は可能なのか?

この問題を解決するには、ジュニアを適切に育成し、明確なキャリアパスを示す事が考えられる。しかし、そもそも「シニアは育成できるのか?」という問題がある。もし可能だとしたら、次のような形になるのではないか。

徒弟制度の様な長期的な育成が必要

  • 3年以上の時間をかけ、シニアがジュニアを指導する体制を作る

  • ただし、シニアの負担を減らすため、企業全体で支援する仕組みが必要。シニアにだけ負担を強いても、そもそもシニア側は育成するインセンティブが薄い前提を理解する

  • 育成に足るジュニアを選別し、それに満たないジュニアは育成対象から外す。育成ができる・興味を持つシニアの方が希少リソースになる

キャリアパスを明確にしつつ、救世主願望は持たない

  • 「何でもできるが専門性がない」という問題を防ぐため、スペシャリスト・企画推進・マネージャーの様な細か過ぎず、とはいえ大きすぎないキャリアパス設定が必要になる

  • 全部やる。何でもできる。ハードワークで何とかする。しかもそこそこの報酬でという様な「DX人材」は救世主願望に繋がり機能しない。労働者に創業社長を求めない

ビジネス・経営の視点を学ぶ機会を増やす

  • IT部門の社員にもビジネス・経営の考え方を学ぶ機会を持つインセンティブを置く。

  • 事業会社で自社のビジネスに興味がない人を採用・雇用し続ける理由はない。専門性が欲しいならば必要な分だけ外部委託を使う


結論

  1. ジュニアは技術やマネジメント力が不足し、視野が狭いため成長が停滞している。

  2. IT部門と経営のギャップが広がり、非効率なIT投資や組織運営の問題を引き起こしている。

  3. 適切な育成と選別を進め、ビジネス視点を持つIT人材を育てることが企業成長の鍵となる。


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