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呪いの雛人形

呪いの雛人形・・・


・・・といってもホラーではない。


私が雛人形に抱いている気持ちが複雑で、母の呪いを感じている、と言うだけのことだ。


去年の年末、私は雛人形を『供養』に出した。

なのでもうこの世に私の雛人形はない。

どうして?かといえば

私は私の雛人形が好きではなかったのだ。

だって

まんまるなんだもの。



小さい頃、生後半年くらいから肥満時だった私は

自分の雛人形が丸いことを気にしていた。

母の雛人形は、何段飾りか何かの上の男雛と女雛で

細面でスッとしている。

なのに、私の雛人形は、まんまる。

母は、ウエストが細いことが自慢で

「高校生の時、太ってた時からママ、ウエスト58センチなの」とよく言っていた。

母の雛人形は細い。(しかも高そう。結婚して、おうちが狭くなったから、2段目以降は処分したのだとか)

私の雛人形は、まんまる。(値段はそれなりだろうけど、男雛と女雛しかいないパターン)

・・・

嬉しくない。

節分が終わって、雛人形が飾られると、「・・・ああ、今年も・・・」と

落ち込むのだ。



そんなことで?

気にしすぎじゃない?


と、思うだろうか。


人形を見ながら私は

母と買い物に行った時の記憶がフラッシュバックするのである。


母は、ウエストがゴムの服を手に取って

ゴムをギューッと引っ張って伸ばし

「うーん、入らないなぁ」とため息をつく。

買い物に連れて行かれた私は

そんなことより早く帰って本を読みたいのに

私が太っているせいで入らない服を、母が買えない、お母さんかわいそう。

という罪悪感を感じるためだけに

そこにいるのだ。




そんなこんなで

仕事をするために部屋を借り、家を出た私は、もちろん雛人形を置いていった。

母は、律儀にひな祭りのたびに人形を飾リ、おもちやお菓子を備える。

3月3日当日には、蛤のお吸い物、ちらし寿司などをお供えする。


それが

一昨年、実家が引っ越すことになって、荷物が整理され

私の雛人形が私の手元に来た。

もちろん、飾りたくはない。

しかし、「この子が丈夫で元気に育ちますように」的な理由で作られたであろう

この人形には罪はない。

うーん。


悩んだ挙句、飾らなかった。

そして、「人形供養」を検索していた。

でも・・・


この雛人形の困ったことは

一応「親の愛情」の象徴である、と言うことだ。

一応

私の健康やら、幸せやらを願って用意されたものだし・・・

うーん・・・

うーん・・・


悩んで悩んで、


去年、年末にふと思った。

「人形早くしまわないとお嫁に行き遅れるとか言うけど

私お嫁に行かないから

もういいじゃん」


・・・

『女の子』と言うには

とうが立ちすぎてしまった。

お姉さんを通り越し、お母さんにはなっておらず、おばさん、、、

いや、もう、『女』とか言う次元ではないのかもしれない。

時代は変わった。

雛人形が作られた当時の『女の子』像は、もはやこの世には存在しない・・・までは言い過ぎか

少なくとも、もっと多様性を帯びているのだ。

そう

ジェンダーレスな領域に私はいるのだ。

いいじゃん、『女の子』、もう気にしなくて。お嫁に行く?お前が来いや。

体の作りや脳の傾向である性別はあるのかもしれない。

それはあくまでも違いであって

それに囚われ、縛られる必要はないのではないか。

そして


私、自力で痩せられるんで。

去年、原稿太りしたけど

二ヶ月ほど糖質制限して、太った分の体重戻したんで。

お母さん、残念。

あなたが「入らない」と言ったスカートは、多分私もう履ける。

お母さん、あなたはかわいそうじゃない。



その

『呪い』の象徴でもあったまんまるな雛人形を

私はやっと供養に出した。


小さい頃の惨めな気持ちと罪悪感も

一緒にお焚き上げだ。


スッキリ。



蛇足だけど

母は、伝統や儀式、決まり事を非常に気にする人で

そう言うことはしっかりやっている。

でも

私の気持ちを考えるとかより

「お母さんかわいそうでしょ?」の方がついつい勝ってしまいがちなのだ。

まあ、私、自分で振り返ってもちょっと変な子だったから、大変だったのは確かだろう。(今も変だけど)


そんな変な子を育てなければいけない母が

私のせいだけではなく

自ら「悲劇のヒロイン」になりがちな人だ、と、気づいたのは

私が大人になってからだったけど。



そういう経験があったからか

私は「決まりばかりを気にしていて、目の前のことが見えていない」状態に

過剰に過敏に反応して、反発してしまうのだ。

これ

社会生活上、あまり得はしない癖である。

雛人形を供養したことで、私のこの癖も、お焚き上げされる

・・・ことを願ってるけど


どうかなぁ。






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