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コウモリの空中世界

動物はどのように世界を見ているのだろう。「見ている」といった時点で、自分も視覚世界に縛られている人間だな、と思う。

視覚ではなく、聴覚で世界を把握している動物がいる。その代表がコウモリ。しかもただ耳が良いというレベルではない。自分で超音波を発して、その超音波の反響から餌や空間を探知しているのだ。エコロケーション(反響定位)と呼ぶそう。かっこいいよね。

エコロケーションは10mの距離でクモの巣の糸がわかるくらい精度が高い。エコロケーションで、餌への距離・種類・大きさ、近くにいる他の動物や障害物、コウモリ同士なら仲間かどうかまでわかる。夜行性のコウモリのエサは、やはり夜行性の昆虫。飛んでいる蛾や甲虫を空中でエコロケーションを使って捕獲する。長年の進化の中で、コウモリの超音波を察知して逃げる昆虫が登場してきた。そんな超音波に敏感な「今どきの昆虫」には、超音波の強さを下げて「ささやきながら近づく」という芸当までやってのける。

コウモリというとバンパイヤをイメージする人も多いと思う。実際に血を吸うコウモリはチスイコウモリという。本当に研究者の命名はダイレクトすぎる。チスイコウモリは空飛ぶ哺乳類コウモリおよそ1000種の中ではマイノリティー。そのチスイコウモリは家畜の牛などの呼吸をエコロケーションを使って探しあてるらしい。人間もそうやって見つかって血を吸われることもあるらしいけれど、一回の食事量が小さなスプーン2杯分だから、多めに見ても良い気がする。

そんなこわい可愛いコウモリに世界はどのように見えるのだろう。音だけの世界?いくら想像しても「わからない」としか言えない。でも、多様で微細な音が満ちた世界は、すごく豊かな世界だろうと想像する。

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コウモリは空飛ぶ哺乳類。コウモリの羽の部分(本当は羽と呼んじゃいけない、翼ですね)をよく見ると、翼に放射状に骨みたいなものがある。なんと「指」なんだって。コウモリにはいろいろと驚かされる。

コウモリの反響定位を発見したのは、ドナルド・グリフィン。動物行動学において「認知」というセオリーを最初に提唱した人。人間は人間の見方でしか世界を知らないし、それでは動物の世界を知ることはできない。動物にはそれぞれの動物独自の知覚世界があるなんて、すごい考え方だし、それを理解することは大事なことだと思う。コウモリはそんな大事なことを教えてくれる動物。

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