『話の話』を記述する(その10~屋敷)
つづいて画面は奥に二階建ての古ぼけた屋敷があり、中間部右側にケヤキだろうか、黄色く色あせた葉の数々をつけた木がその葉を散らしている。
手前には黄ばんだ草がところどころに生えている。
秋なのだろう。
ここで散っている葉の中のいち枚は、このあと作品の何箇所かで印象的に登場する。
そのまずは初登場シーン、であるはずなのだが、この葉の散る動きのなんとも稚拙なことに驚かされる。
冒頭の青りんごにしたたるしずくや、乳児のまどろむような眼の開閉に感心しただろう者にとって、この葉が散っていく動きの下手くそさは戸惑わせるものがある。
画面は葉が散る動きだけかと思っていると、古ぼけた屋敷の真ん中が光り始める。
矩形の光は屋敷の内部を照らし出す。
この光は屋敷の外壁を透かしてしまう作用をもたらすらしい。
光は光源から斜め左手前に向けて放射していき、屋敷の内部を少しずつ照らし出していく。
ここでも光が伸び広がる効果が二重露光で提示されて、徐々に光源が通路の先へ先へと照らし出す効果を出している。
光の照らす左右は屋敷の内部の壁を浮かび上がらせ、壁沿いに戸棚のようなもの、その上にコーヒーミルのような用具が確認できる。
光の照らす下部は通路のようになっていて、板張りなのか照らされた通路は縦に幾筋もの筋が陰影をつけて刻まれているのが分かる。
ちなみに平面で出来ているアニメが奥行きを見せるには「斜め奥」の方向に造形することの有効性が、この作品のこの箇所を見ても分かる。
光源はまたもや靄に包まれたような半透明のフィルターがかけられる。
これは靄のような動きをともなっている。
その動きによって光がきらめいていることを示そうとしたのだろうか。
もっと洗練された方法がありそうだがこの武骨な効果が不思議と作品の色調と合っている。
カメラは光源へ向けてズームアップしていき、光で画面が満たされたと思ったとき、光の充満とオーバーラップして、一転、白を基調とする「永遠」と呼ばれるシーンに転換する。
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