「心に刺さる実績」こそがデキる新入社員になる秘訣

大企業に8年ほど勤めていた。振り返れば、「新入社員」を卒業して、「中堅」のスタートを切った頃だった。デキる新入社員と平凡な新入社員を分ける大きなポイントは、上司、さらには役員クラスの心に刺さるような「説得力のある実績」を作ったかどうかだ。

ぼくが入社したころ、職場では、たくさんのサーバーのバックアップを手動でコマンドを入力することで取得していた。管理者権限でサーバーにログインし、バックアップを取得し、エラーが無く狙い通りにバックアップを取得できていることを確認し、安全にログアウトする。コマンドを一文字でもミスったり、空白が足りなかったり、ハイフンが抜けていたりするだけでたくさんのエラーメッセージが吐かれてしまう。「すみません、これは無害なメッセージなんです。」「手動でコマンドを入力する際にタイプミスをしてしまいました。」と、多くの部門で説明をするハメになる。「今回は無害で済んだが、場合によっては一大事なんじゃないか?」とつっつかれたりもする。まさに、「これはやってられんわ」と思った。

すぐに着手したのはたくさんのサーバーのバックアップを一気に取得するプログラムの作成である。それによって、手動でバックアップのコマンドを入力するのではなく、プログラムを実行するコマンドを入力すれば、一連のバックアップが一気に走るようになった。もちろんこれだけで完璧ではないが、だいぶマシになった。こうした改善を重ねて行くにつれて、「やってられんわ」を解消するための「9つの観点」が出来た。

とにかく「やってられんわ」と思ったら、文句を言っているだけではダメだ。代わりに、

①難しいプロセスを容易にできないか?
②いつもやり方が異なってしまうプロセスを同じにできないか?
③自ら頭や手を使っているプロセスを、自動にできないか?
④危険なプロセスを、安全にできないか?
⑤苦しいプロセスを、快適にできないか?
⑥つまらないプロセスを、楽しくできないか?
⑦時間がかかるプロセスを、短縮できないか?
⑧お金がかかるプロセスを、安くできないか?
⑨状況依存のプロセスを、いつでもどこでも可能にできないか?

まずこうした観点を持とう。バックアップを手動で入力すると、
・危険⇒それがどの程度の危険なのか
・時間がかかる⇒どれくらい時間がかかるのか
まがりなりにでも、数値化する。

そのうえで、こうした危険や時間のムダを解消するためには、バックアップを自動化してしまえばいい。それによって、
・危険⇒どの程度減るのか
・時間⇒どの程度短縮されるのか
整理する。数字はある程度適当でも、なにも無いより話は断然進みやすいし、あとあと上司も、もっとエラい上司に自慢しやすいぞ(これがデキる新入社員の秘訣である)。

バックアップ自動化のために、いつまでに自分がバックアップの自動取得スクリプトを作る。来月の定期メンテナンスの際に使いたいので、この日このサーバーでテストをする。その結果もふまえて、定期メンテナンス全体の新しい手順書を作成する。この日までに、上司レビューをお願いしたい。とか、そこまで上司に提案すれば、たいていの場合、「よし、わかった」となる。

このような手順を踏んで、成功させる。改善を成功させるということと同じくらい重要なのは、それを「アピールできる状態」にすることだ。考え方のコツは、上司がもっとエラい上司にも容易に説明できる状態にすること。これをやらない、もったいない新入社員がメチャメチャ多い。「エラー件数:〇件⇒〇件」「所要時間:〇時間⇒〇時間」というわかりやすく説得力のある実績を作れば、上司はもっとエラい上司に「こいつはこんなことをして、〇%改善しちまったヤツなんですよ」と、わかりやすく紹介することができる。

所詮、あなたが上司だと思って目の上のタンコブにしている上司は「中間管理職」と言って、下(自分)と上(もっとエラい人)に挟まれた存在だ。その上司に、上(もっとエラい人)と話すときの「オベントウ(説明のネタ)」を持たせてあげる。常にそんな観点を持つと、上司とのコミュニケ―ションもかなり円滑になる。お試しあれ。

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