動物医療過誤とはどういうものか?
動物医療過誤とは
ペットが医療事故で負傷したり病気になってしまった場合は、動物病院側が治療費と、飼い主の慰謝料について賠償する必要があります。
また、ペットが医療事故で死亡した場合は、ペットの時価の賠償金と、飼い主の慰謝料、葬儀費用を賠償する必要があります。
ただし、動物病院側が損害賠償責任を負うのは、獣医師が平均的な獣医療学の水準を基準とした注意義務を怠った結果、ペットが死亡あるいは障害を負った場合です。
動物病院におけるペットの診療契約では、完全な治癒の結果までを保証するものではありません。
したがって、獣医師が注意義務を果たしており、過失がなかったと認められる場合は、動物病院側に法的な責任は発生しません。
訴訟の事例と判例
新聞記事で広く報道されたものを、ケースとして紹介しています。
ケース1(犬)
愛犬が死んだのは獣医師の処置ミスが原因だとして、動物病院運営会社に220万円の損害賠償を求め、大阪地裁に訴訟を起こしたAさん一家。
愛犬とは生後間もないころから12年間にわたり過ごしてきた。
レントゲンやCT検査の結果、腹部全体に腫瘍があることが分かった。脾臓にも巨大な腫瘍が見つかり、すぐに摘出手術を受けた。
手術から5日後、愛犬はもう長くない、それならば最後の時は自宅で・・と、自宅に連れて帰るため輸血をすることに。
輸血中に愛犬の呼吸が荒くなり、院長は輸血を中止する。その後も自発呼吸の停止と再開を繰り返す状態となった。投薬や心臓マッサージも目立った効果はなく病院内で亡くなった。
輸血を受けた処置室には、200ミリリットルの血液の空パックが残されていた。
外科医であるAさん一家の夫はそのことに疑念を持ち、犬の輸血に関する情報を収集し、人間と犬の輸血の基準に大差がないことを知る。
「人間の医師なら誰でも知っているような基礎的な輸血の知識があれば、こんなことにはならないはずだ」と病院の対応に疑念が募り
愛犬の死は輸血量過多で心臓に負荷がかかったのが原因として提訴に踏み切った。
判決は「速すぎる輸血による過負荷が、犬の容体を悪化させた可能性が高い」と結論づけ、大阪地裁は院長の注意義務違反を認定し賠償を命じた。
ただ、末期がんの愛犬はいつ危篤状態になってもおかしくなかったとして、賠償額が33万円に。
Aさん一家は「なぜあの病院へ連れて行ってしまったのか」と自分たちを責めた。訴訟では自らの医師としての知見を生かして勝訴したが、「家族」を失った傷は癒えていない。
参考記事 : 産経新聞Web版 2016/6/8
ケース2(うさぎ)
ペットのうさぎが動物病院で受けた治療中に起きた事故が理由で、食欲不振となり死亡に至ったとして、飼い主が約134万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。
原告は過長臼歯(噛み合わせの問題で異常に伸びてしまう歯)に対する処置を被告病院に依頼した。
その際に麻酔を施しての処置を希望したが、病院側は説明をせずに無麻酔でうさぎの口を開口器で開口して処置を行った。
処置後、うさぎがよだれを流し、食欲不振が続き、自力採食が困難に、、他の病院でX線撮影をしたところ、左右の下顎(あご)を骨折していることが判明。その後もたびたび食欲不振で入院して治療が必要に。
献身的なケアで、その後食欲が回復、骨折部の癒合が確認されるなど、回復傾向にあったものの、事故直後からうさぎは水分摂取量が激減しており、既往症だった尿中の炭酸カルシウム濃度が上昇。カルシウム泥が貯留する症状が悪化してしまい、急性腎不全を発症して亡くなりました。
原告は家族として大切にしていたうさぎが、獣医師の不適切な処置によって左右下顎を骨折して、その後に死亡したこと、問診・説明に関する注意義務違反、過長臼歯に対する処置上の注意義務違反があるなどと主張し、損害賠償金を請求する訴訟を、東京簡易裁判所に提訴しました。
裁判長は判決理由で、うさぎの骨は軽く繊細で、骨折しやすく、無麻酔の処置はリスクが高いため、多くの動物病院では麻酔下で行っている。無麻酔で処置するにはうさぎの安定的な保定が困難である上、速やかな検査及び処置が必要であること。開口器を使用した治療は開口させる速度や幅など慎重に使用すべきで、十分な注意が尽くされないまま処置をおこなったとして動物病院側の注意義務違反を認め、動物病院に約43万円の支払いを命じる判決を下しました。
原告は「当時5歳のうさぎが歯の治療を受けるために動物病院へ行き、処置中に両顎を骨折するという医療過誤にあい、泣き寝入りも考えましたが、家族同然だったうさぎのために裁判で2年以上にわたり闘ってきました。一審判決で、病院での処置に起因して骨折したことは認められましたが、死亡との因果関係まで認められなかったことは不本意です。このような痛ましい事故が二度と起こらないよう獣医療の質の向上を願います。骨折しなければ今も元気に生きていた気がします。今でもかわいいうさぎの姿は忘れられません」とのコメントを出しました。
参考記事 : 朝日新聞社運営sippo 2016/8/2
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