ROENTGENツアーを終えて
ROENTGENツアーが終了しました。
このツアーの始まりは、今年の3月。ANTI WIREの大阪公演初日でROENTGENⅡの制作が発表されました。その時は急な発表で動揺しすぎたと同時に、「アメリカを攻め終わったら、みんなが好きなROENTGENの制作に取り組むよ。だから、それまで僕に付き合ってね(意訳)」みたいなことをよく仰っており、HYDEのアーティスト人生最後の作品が「ROENTGENⅡ」だと思い込んでいた私は、HYDEの活動の終止符が見えた気がしてすごく怖くなり、眠れませんでした。
ずっと向こうにあるはずの終止符が、すぐ近くにあった、みたいな、、、ずっと先だと思っていた死期が、蓋を開けると余命半年だった、みたいな(大袈裟)、、、
その気持ちが落ち着かないままに、次の日ROENTGENツアーが発表され、日程を見ると3か月後からスタートするし、そこで新曲も披露されるということで、さらにパニックになると同時に、「ROENTGENⅡってもっと時間をかけてコトコトと煮込むように制作するものじゃなかったのか?」と正直怒りすら沸きました。
終演後、オフィシャルのTwitterを見ると、ROENTGENツアーが「脳内風景を表現するオーケストラツアー」と銘打たれていました。
[STAFF]
— Hyde (@HydeOfficial_) March 7, 2021
2001年HYDEのソロ始動で生み落とされた"静"の真骨頂であるファーストアルバム「ROENTGEN」に原点回帰。
HYDEの脳内風景を表現するオーケストラツアー『20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021』開催決定!!
※詳細は後日発表致します。https://t.co/9qaKScfEjd#HYDE #ROENTGEN pic.twitter.com/HvV4Esad09
ROENTGENⅡ制作の是非はさておき、20周年というタイミングで、大好きな初代ROENTGENでHYDEが見ていた世界を、時を越えて観に行けるのはめちゃくちゃエモかもしれない…(語彙力)と思い、「HYDEの脳内風景を覗いてみたい」「HYDEの眼を自分の眼を重ね合わせ、一緒の風景を見てみたい」という考えに完全にシフトしました(気持ち悪)。
そこから、初代ROENTGENがどういう意図で制作されたのかを理解し、当時のHYDEが思い描いた脳内風景のヒントを探すため、オークションサイトで当時の雑誌を落札し続ける日々が始まりました。
所持していた過去の会報、雑誌、オークションサイトでかき集めたインタビューをファイリングすると、合計数百ページに上る膨大な資料集が出来上がり(爆笑)、熟読するうちに、ぼんやりと、HYDEが観ていた脳内風景や、初代ROENTGENを制作した意図が汲み取れるようになりました。
※ちなみに、ROENTGENを理解するのにより役立ったなと思った雑誌は、SWITCH、ROJはもちろん、「HYDEIST TIMES」の仁ちゃんのコーナー、「News Maker 2002年4・5月号」、「B PASS 2002年5月号」、「What’s in? 2002年4月号」、ROENTGENツアーのパンフレットです。
当時のインタビューで、“シャイだから、本当のことを言いたくない”、“音楽は、それぞれの受け止め方の「ズレ」こそが美しい”、“日本語の原詩はあるけど、発表するとつまらなくなる”と仰っており、ROENTGEN(HYDEの透過)というタイトルをつけつつも、HYDEの脳内風景を直接的に見せるつもりはなくて、その聴き手の受け止め方こそが、聴き手自身を映し出すROENTGEN(透過)になるんだな、と思い、そこにこの作品の真髄があるように思いました。
「HYDEの脳内風景を覗いてみたい」「HYDEの眼を自分の眼を重ね合わせ、一緒の風景を見てみたい」という私の思いは、なんだか野暮だったな~とも思いました。
そして迎えたROENTGEN大阪公演。
当時観ていた世界はそのままに、20年後のアレンジ技術、声楽の技術、研ぎ澄まされた全体をプロデュースする才能が組み合わさることによって、より当時の脳内風景の解像度が上がったような感覚に陥りました。
※初代ROENTGENの各楽曲の感想は以下で熱く語りました。
問題はROENTGENⅡの楽曲たち。いやーーーーーすごかった。特にsmiling、The Abyss、NOSTALGICを聴いた瞬間、まじで色んなもやもやが吹き飛びました。何を思い悩んでいたんだ私は…ってなりました。推しの素晴らしい音楽はオタクの心配を一掃していく。
ただ、final pieceだけは歌い切れていないような感じがして、まさにこのROENTGENツアーのfinal pieceだな…とも思いました(うまいこと言うなや)。
あと、どうやらThe Abyssとfinal pieceは彦が制作したということで、ROENTGENⅡの世界も初代と同様、純度の高いHYDEだけの手で形作られるものだと思っていたので、新たなもやもやが生まれました。
でも以下のインタビューを読み直し、より良い作品を作るには、絶対に人の手を借りた方がよくて、初代ROENTGENの時は「僕の、僕による、僕のための作品が欲しい」という衝動だけでなく、信頼できる人がおらず、人の手を借りることができなかったのかもしれないな…と思いました。また、人の手を借りながら制作していくことを、「新鮮で楽しい」と仰っていたので、そこの意図や思いはファンとして尊重しなければならないな、と思い切り替えることに成功。
そして先日、ROENTGENの千穐楽、広島公演が終わりました。
全曲、素晴らしかった。最後にふさわしい公演だった。
特にずっと心残りだったfinal pieceは、レコーディングを経て技術より気持ちや表現に重きを置いて歌われていたので、「Do you like the scene unfolding in our eyes(この景色を気に入ってくれるかい?)」「I am here with you(僕はここにいる)」というフレーズが、自分に向けられて歌っている気がして(気のせい)、この客席に自分だけがいるような感覚に陥って(気のせい)、めちゃくちゃ泣けました。ROENTGENツアーが完成したな、と思いました。今までのパズルがふっと全てハマったような、そんな感覚に陥りました。
感情が揺さぶられ続けたROENTGENツアー、本当に、本当に素晴らしかった。この一言に尽きる。
ただこれだけは言わせてほしい、ROENTGENⅢの制作待っています!