【なんでもゲーム見聞録】第七回 毒入り砂糖菓子みたいな作品『フェアリーテイル・レクイエム』【国士舘アニ研ブログ】
こんにちは。鯖主です。今回もノベルゲームの話です。
さて、皆様は「信頼できない語り手」をご存知でしょうか。古くは100年以上前から使われている物語を叙述する技法の一つです。小説のような媒体で物語が描かれる場合、そこには「語り手」が存在し、読み手は「語り手」の視点と言葉を頼りに物語を読み進めていく訳ですが、その「語り手」が誤った情報を読み手に語ってしまう、あるいは一部の情報を読み手に隠してしまう事があります。そうする事で読み手にミスリードさせる等の効果が見込まれるので「信頼できない語り手」として物語を描く際に度々用いられているのです。
何となく想像は付くと思いますが、この「信頼できない語り手」がミスリードを目的として使われている作品ではネタバレによる面白さの損失が大きい事がほとんどです。また、こういった作品の大半はなるべく読み手に「信頼できない語り手」を察されないような作りをしています。
しかし、中には「信頼できない語り手」を早々に明るみにするによって活かす作品もありまして、今回紹介する「フェアリーテイル・レクイエム」はそんな感じのちょっと稀有な作りをした作品になっています。
(R-18作品なので調べる際や購入する際はご注意下さい。また、本記事ではR-18な要素は一切扱いません。)
この「お伽話症候群」ですが本作品のヒロイン全員が患っているので各キャラクターの癖が強くて中々に愉快で楽しいです。キャラクターの具体例としては「不思議の国のアリス」のアリスや「ヘンゼルとグレーテル」のグレーテルなど。
さて、あらすじからも分かる通り「お伽話症候群」の患者がそのまま「信頼できない語り手」の役割を果たしており、主人公も記憶喪失ということで基本的にはどのキャラクターのどの視点も情報として頼りなさすぎる作品となっています。これによって読み手が疑う事や考える事を半ば強制させられてしまう点はこの作品特有の面白さかな、と思います。私はこのギミックのおかげで新鮮な経験ができて楽しかった記憶がありますね。是非プレイして体験してもらいたいです。
と、ここまで「信頼できない語り手」を軸に話を進めてきましたが、本作のより大きな魅力は別のところにあります。
ノベルゲームユーザーもといエロゲユーザー御用達の「エロゲー批評空間」なるサイトがあるのですが、そのサイトの機能のひとつに「タグ機能」があります。上の画像は「フェアリーテイル・レクイエム」に登録されたタグの中でもジャンルにあたるタグを登録数降順に並べたものです。
「狂気・猟奇」や「ホラー・伝奇」などと何やら不穏なタグが並んでいる横で「ファンタジー」だとか「純愛」なんてタグも並んでいます。
それもそのはずで、この作品はお伽話的な世界を舞台にR18的でそこそこダークなシナリオを織り込んでいる、結構めちゃくちゃなバランスの作品なんですよね。このアンバランスで独特な世界観はこの作品の大きな魅力かつ特徴となっています。
読者様の中には「魔法少女まどか☆マギカ」が頭をよぎった方もいるかもしれませんが、それとも似て非なる世界観なので中々伝えにくいです……。公式ジャンルが「メルヘン・ミステリアスホラーADV(アドベンチャーゲーム)」となっており、大体はこのジャンル名通りの世界観ですね。
また、世界観以外の魅力的な要素としてグラフィックやBGMがあるのですが、本記事では割愛します。本来はグラフィック、というかCG(一枚絵・スチル)は本作品において世界観に次いで評価されている点なので色々語るべきな気はしますが、文字でその魅力を伝えられる気がしないので断念。公式サイトや体験版やオープニングMVでいくらかイラストを覗けるので良ければ。
最後にひとつ注意点を。詳細は伏せますが胸糞悪い展開が若干数存在するので、もし購入やプレイの予定がある方はご注意下さい。
ということで「フェアリーテイル・レクイエム」の作品紹介でした。
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