すぐに罰される女たち
ネタ合わせの為、四人で集まったときのことです。
田辺さん「じゃあみんな集まったことですし、ちょっと休憩しましょうか」
私たちは早速休憩することにしました。
あんりちゃん「いや~、酒寄さん!聞いてくださいよ!私この前とんでもないうっかりやっちゃいました!」
あんりちゃんはそう言って、漫才のように話し始めました。
あんりちゃん「ある番組にぼる塾で出演して、私が進行役だったんです」
私「うんうん」
あんりちゃん「次回のゲスト紹介のときに事件は起こったんです」
私「なになに?」
あんりちゃん「スタッフの人がカンペを出してくれて、私、それをそのまま何も考えずに読んじゃったんです」
私「うんうん」
あんりちゃん「本当だったら、『【細かすぎて伝わらないモノマネ】で有名な〇〇さんです!』って紹介だったんですけど、カンペにミスがあって、途中が抜け落ちていたんです」
私「うんうん」
あんりちゃん「私、こう言ってしまったんです!
次回ゲストは、あの『伝わらないモノマネ』で有名な〇〇さんです!って!」
私はすごい悪口だと思いました。
あんりちゃん「はるちゃんと田辺さんがすぐに気づいてくれたら良かったんですけど、二人は私の失言の後、
イエエエエエエ~イっ!!ふーうっ!!
ってすっごく盛り上げてくれて!!二人は私の言葉なんてちゃんと聞いてなかったんですっ!!」
田辺さん「そうなの」
あんりちゃん「だから全員が滅茶苦茶失礼なやつらになっちゃって!!」
私「やだ、気がつかなかったの?」
私は田辺さんとはるちゃんに聞きました。すると二人は、
はるちゃん「それが全く気づかなかったです」
田辺さん「私はあんりを信頼してるから」
あんりちゃん「人の話聞いてねーだけだろ!」
私は人の話はちゃんと聞こうと思いました。
あんりちゃん「でもスタッフの人がおかしいって気がついてくれて。収録だったので、撮り直しできたんです。生放送だったらと思うと震えました」
田辺さん「失礼すぎるわよね。先輩芸人に似てないで有名って」
はるちゃん「しかもそいつの仲間がいえええい!!とか言っちゃってね」
あんりちゃん「私、その日は他にもうっかりやっちゃって。中継で繋がっている芸人さんに自慢の食べ物を紹介してもらうってときに…」
私「うんうん」
あんりちゃん「『自信ありますか?』って聞くところを、
『時間ありますか?』
って!時間あるから今出演してるんだよ!!」
田辺さん「『ないです』って言われてそのまま帰られたらどうすんのよね!うけるーっ!!」
田辺さんはこのミスに関しては他人事なので大笑いしていました。
私「あんりちゃん疲れてるのよ。収録で良かったね」
あんりちゃん「はい。…でもやっぱり神さまは見てるんですよ」
私「もしかして…」
あんりちゃん「そうです。神さまが我々を失礼な奴らって思ったのかすぐに罰が当たりました」
ぼる塾が何かやらかした話を聞くと、大抵神様からの罰がセットでついてきます。
私「また何かあったの?」
あんりちゃん「今回は本社の自動販売機で飲み物買おうとしたら、お金だけ吸い込まれて出てきませんでした」
私「あらっ!」
あんりちゃん「しかも、一回で止めておけば良かったんですけど、『別の飲み物ならいけるかも』って思ってしまい、新たにお金入れてさっき出てこなかったお茶じゃなくて紅茶に変えてボタン押してみたんです」
田辺さん「あんりはギャンブラーだよっ!他にも自動販売機あるのにさ!『紅茶ならいけるかもしれない!』って言ってわざわざ金だけ盗られた自動販売機にもう一回チャレンジしたんだよ!」
私「結果は?」
あんりちゃん「やっぱりお金だけ吸い込まれて出てきませんでした」
あんりちゃんはため息をついて続けました。
あんりちゃん「それを見ていた田辺さんが自動販売機の会社に一筆書こうって言いだして。【ぼる塾あんりです。お茶と紅茶の代金を払ったのに商品が出てきませんでした】って!」
田辺さん「だって!あんりのお金戻ってきてないんだよ!お茶で140円で紅茶で140円!280円はでかいよ!!色んなもの買えるよ!!」
あんりちゃん「そうなんですけど…なんか、お茶が出てこないのにこいつ紅茶も試したのかよ!なんでチャレンジするんだよ!って思われるんじゃないかって…」
田辺さん「あの日もこんな感じであんりがもじもじしちゃってさ!あんたが書かないと故障の発見が遅れて自動販売機の会社の人も困るし、同じような被害者が出るかもしれないよって言ったら、やっと、『わかった』ってあんり言ってくれて」
田辺さんは基本変な人ですが、ちゃんとしています。
田辺さん「あんりは私にこう言ったの。『わかった。一筆書きます。その代わり田辺さんと連盟にさせてください』って!」
あんりちゃん「【ぼる塾あんりと田辺です。お茶140円と紅茶140円の代金を払ったのに商品が出てきませんでした】って書いたら、二人で試した感じが出て、私が二回チャレンジしたことがバレないじゃないですか」
田辺さん「私は良いよって名前貸したの。…あれ?待って!よく考えたら我々の一筆を読んだ会社の人が、
『あんりがお茶を押して出てこなかったのに田辺のやつが、『紅茶ならいけるかも!』ってわざわざお金入れたのかよ!あいつギャンブラーかよ!』
って思うかもしれないってこと?」
あんりちゃん「そうですね」
田辺さん「マジかよ!まぁいいか」
私はこのとき世界一軽いマジを聞きました。
あんりちゃん「これが今回の神から私への罰です」
私「絶妙に嫌な罰だね」
田辺さん「あんりは良いよ!私なんてとんでもない罰をもらったよ!」
私「田辺さんも何かあったの?」
田辺さん「最近ぼる塾で台湾ロケに行ったんだけどね…」
田辺さんは悔しそうに顔を歪めながら6Pチーズを取り出して齧り、そして話始めました。
田辺さん「帰りの空港で私茶器のセットを買ったの。より台湾茶を楽しみたくて」
私「あら、素敵」
田辺さん「私お金足りなくてあんりとはるちゃんからお金借りてまで買ったのよ」
私「うんうん」
田辺さん「そのセットに茶盤っていう道具がついててね。まぁ簡単に言うと、上がすのこ状になってる箱でお湯を捨てられるの。お茶を美味しく飲む為にお湯をかけて道具を温めたりするんだけど、そういうとき温め終わったお湯をどこに捨てるか困るでしょ?」
田辺さん「その茶盤があれば、その場でお湯を捨てられるからいちいち台所に捨てに行ったりしなくて大丈夫なの」
私は世の中には便利なものがあると思い、「便利だね」と言いました。
田辺さん「便利なんてもんじゃないよ!動かなくて良いんだから!…そう…動かなくて良いはずだったのに!」
私「どうしたの?」
田辺さん「私ね、昨日、早速お茶飲もうと思って喜び勇んで買った茶器セットを使ったの!そうしたら…」
私「そうしたら?」
田辺さん「お湯を捨てられるはずの茶盤が浅すぎて捨てたお湯が溢れてきたの!まじそこら中びしょびしょ!お湯捨てられなかったの!」
あんりちゃん「わざわざ台湾からお金借りてまで持ち帰ってきたのに」
田辺さん「まじ悔しすぎる!私お湯捨てたくて茶器セット買ったのに!」
私「いや、お茶飲みたくてでしょ」
田辺さん「いや、私はお茶飲みたいんじゃなくてお湯捨てたくて買ったのよっ!!それ以外ある?!」
私は田辺さんのお湯を捨てたい欲求の強さに心打たれました。
はるちゃん「田辺さんよっぽどお湯捨てたいんですね」
田辺さん「私ほどお湯を捨てたい人もいないよ」
あんりちゃん「お湯捨てたい選手権あったら日本代表間違いなしですよ」
私はどんな選手権だよと思いました。
田辺さん「マジ私世界大会で活躍できるよ!もう、悔しすぎて即行で新しい茶盤をネット通販で買ってやったよ!だから今私は茶盤を二個所有していることになるの。だから…」
田辺さんは私の目を真っ直ぐに見て言いました。
田辺さん「あんたお湯捨てられないほうの茶盤いる?」
私は人からの贈り物に対し、初めて心の底から「いらない」と言いました。はるちゃんは神様から何も罰せられなかったそうです。
おわり
*
あんりちゃんが、「あの後、すぐに自動販売機の会社の人が動いてくれました」って自動販売機の会社の人の仕事の速さを教えてくれました。そんな私たちの日常が本になりました。「酒寄さんのぼる塾生活」好評発売中です!詳細はこちら↓
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