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アイデアがひとを強くする。「アングーと企画書」の話。

こんにちは! ゲームプランナーのハンバレクと申します。
僕はアングーには半年ほど前に入社したばかりなのですが、だからこそ気付いたことをお話しします。それは「アングーと企画書」の話です。

あなたは企画書を書いたことはありますか? ゲームを考えるのが好きでも、企画書を書くのが大好き! という人は、もしかしたら少ないかもしれません。

企画書にはテストのようなイメージがあります。おずおずと提出して、一方的なジャッジを受ける。そこに反論の余地はないどころか、まず興味すら持ってもらえないことも珍しくありません。企画書を書くのが苦手だという方は、企画書にそうした経験やイメージがあるのではないでしょうか。

かくいう僕も、自分の世界を自由に構築できるという意味で、かつては企画書を書くのが大好きだったのですが、自分の書く企画書に見向きもされないということが続き、完全に腐っている時期がありました。

ところが、アングーにおける企画書は、どうやら「テスト」ではないらしいのです。

アングーの企画書に対する姿勢が他と違う、とはじめて感じたのは、最初の出会いーーー採用面接のときのことでした

面接での掘り下げがすごい!

面接でよく使われる会議室。併設されたおしゃんなカフェスペースが採用希望者を誘惑する

前職から転職を考えていた時、僕はいろいろな会社を見てみたいと思っていたので、転職エージェントを4社利用、結果として50社以上にも及ぶ応募を行いました。

ゲームプランナーの方はご存じだと思いますが、プランナーは書類審査の際に企画書の提出を求められることがあります。日本のゲーム業界では伝統的なことだと思うのですが、実は僕が転職で受けた50社のうち、そもそも企画書の提出が必要だったのは、わずかに3~4社でした。

これは中途採用に求めるものが、企画力よりも実績であるとか、現実問題として仕事で企画書を書くことはあまりないなど、いろいろ理由が考えられます。実際、提出を求められた数社でさえも面接で企画書の話をすることはほぼなく、どうやら単なる慣習になってしまっていることが伺えました。そうであれば、企画書提出などパスした方がお互いコストもかからず合理的というものです。

ただ、それでも僕は企画書の提出を求める会社の方が、ゲーム会社らしくて良いなと好感を持っていました。僕がどのようなゲームをつくりたいか知りたいというのは、僕の内面的な部分に興味を持ってくれているということでもあります

さて、就職活動も終盤に差し掛かり、最後に受けた数社の中にアングーがありました。その面接で僕は衝撃を受けました。面接官のプランナーが僕の提出した企画書をすごく読み込んでくれており、ゲームデザイン(ゲームの設計)への鋭い質問や、紙上で表現の難しいゲームのテンポ感などについて、熱心に訊いてくれるのです。

実はこの企画書、転職活動のためにつくったものではなく、数年前にプライベートの時間をかけてじっくり煮詰めた趣味の企画書でした。コンセプトとセールスポイントをまとめた11ページの「企画書」に加えて、ゲームシステムを詳細に解説した16ページの「仕様概要書」なるものをセットにした、ちょっとした力作です。

ですが、この企画書、当時所属していた会社では、企画内容が必ずしも会社にあっていないからか、それなりに新しいチャレンジをしているためビジネス展開やゲームの完成形が想像しづらいということなのか、ほとんど他人から反応すらもらったことがない企画書なのでした。僕自身は企画内容には満足していましたが、今の環境では価値が見出せないと半ば封印していたものでした。

それをほんの気まぐれで数年越しに転職活動に利用したところ、真正面から受け止められ、大変な熱量で読み込まれ、ディスカッションしてもらえたときの僕の気持ちをご想像いただけるでしょうか?

僕は思わず、「面接でこんなにゲームの話をしたのは初めてです…」と漏らしてしまいました。
ゲームデザインの分析をして、議論をするという、それだけ聞けばゲーム会社では当たり前のようなことですが、少なくとも僕の10年近いプランナー経験の中では、ほとんどないレベルのことが面接の場で起こったのでした。

入社してすぐに企画発表会!

ある日の企画発表会。僕は撮影者なので映ってません

アングーに入社して、この会社の企画書への独特な姿勢がますます明らかになってきました。

アングーには社員の交流やスキル向上を促す、さまざまな施策があります。そのひとつが「企画発表会」です。これは新人プランナー向けの施策で、新卒入社の社員は毎月1つの企画を仕上げて、発表しなければなりません。

そしてこの施策の一風変わったところは、新人と同時に、ベテランのプランナーも持ち回りで月に1人ずつ、企画発表を行うということです。

入社してわずか数か月後、早くもベテラン組として僕の発表する順番が回ってきました。ここは当然、気合を入れて望まなくてはなりません。ある意味で改めての自己紹介でもあると思い、スマートフォンの最新技術に取材しつつ、今の市場にはないような新しいコンセプト、かつシンプルで普遍的な面白さがあるような企画を考えました。

などというと、なんだか凄そうですが、企画書が完成した時は、「不安でいっぱい」というのが正直なところでした。企画が他者にどう受け止められるのか、僕はいつも想像がつきませんし、しかも今回は内容に明確な「穴」がありました。

その「穴」とはビジネスモデルです。今日のゲームにはソフトを売って終わりの「売り切りモデル」と、ソフト自体は無料で提供しつつゲーム内でアイテムなどを販売する「運営モデル」の2種のモデルを筆頭に、さまざまなビジネスモデルのバリエーションが存在します。

僕の考えた企画は、先例のほとんどないタイプのゲームだったため、どんな売り方がふさわしいか分からなかったのです。ゲーム内容から率直にビジネスモデルを設計するとほとんどお金は稼げないし、稼げるようなビジネスモデルを当てはめるとゲーム内容が破綻するという有様でした。

そして迎えた、企画発表会の当日。かなり緊張していましたが、直前までプレゼンを改良していたことも功を奏し、上々の反響を得ることができました。

とりわけ僕が嬉しかったのは、まずビジネスモデルの弱さは早々に指摘されたということ(よく聞いてくれているということです)。そして指摘に留まらず、僕の思いつかなかった新しいビジネスモデルのアイデアが、他のプランナーからいくつも挙がったことでした。それはビジネスを拡大し、ゲームの内容も破綻せず、お客さんの視点からみても面白いというアイデアで、僕は本当に感動しました。

自分らしさを出したかったので、かなり風変りな企画だったのですが、アングーのプランナー達はそれを正面から受け止めて、深く分析し、ブラッシュアップするアイデアすら出してくれました。直前までは本当に「全く受け入れられない」可能性も考えていたので、この懐の深さに、安心感を覚えると同時に、周囲の企画力の高さに唸らされる結果になりました。

企画書は必殺技だ!

オフィスに燦然と輝く「アングーくん」。これが好きで入社を決めました(2割くらいホント)

それにしても、新人育成が目的の企画発表会で、なぜベテランのプランナーも発表を行うのでしょうか?

後日、僕は企画発表会を立ち上げた方から、その意図を聞くことができました。それはもちろん、「新人のお手本」でもあるのですが、何より「プランナー同士が互いを理解するのに、一番良いのは企画を見せあうことだ」と考えたからだそうなのです。

さらにその会話を聞いていたディレクターの方(僕の面接官のひとりだった人です)が言いました。

企画書はプランナーにとって少年漫画の必殺技ようなものだと思っています。『邪△炎〇黒×波ー!』と出された技をみれば、そのキャラクターの特徴が瞬時に掴めますよね。よく企画書は名刺みたいなものという例えを聞きますが、自分をさらけ出すことには大なり小なり恥ずかしさも伴うと思うので、そういった意味でも必殺技の方がしっくりくると思います。そういう必殺技同士をぶつけ合えば、お互いを理解出来たり、高め合ったりできそうですよね

この話を聞いて、僕は膝を打ちました。これは「自己開示」の話だと思ったのです。自己開示とは自分の考えや経験、少しプライベートなことなどを、心を開いて相手に伝えることです。僕がかつて趣味として企画を書いていたり、企画発表に向けて「自分らしい企画を出そう」と考えたように、企画書は少なからず単なるビジネスの枠を超えた自己表現でもあります。

相手を信頼して自分をさらけ出す。そうすると相手はそれを信頼して、自身のことを話してくれる。自己開示というアクションには、信頼のループを生み出し、お互いの理解を深めていく効果があります。

「誰もが自分の企画を伝え合う」という企画発表会の狙いは、ゲームデザインのスキルを高めるという表面的な意義に留まらず、いわば自己開示によって相互理解を深める場でもあったという訳です。

必殺技は受け止めてこそ

もう写真のネタがないので、企画書を公開しちゃいます! バーン!(ぼかしてます)

僕が必殺技の例えにひとつ付け加えたいのは、必殺技というのは受け止める側の技量も求められるということです。これは少年漫画というよりプロレスのイメージかもしれません。僕がかつて孤独に書いた企画書を受け止めてくれるひとがいなかったように、アイデアというのは正面から受け止めて、自分なりにイメージを膨らませ、発展させてくれる相手がいないと成立しません。

プロレスラーが避けられる技をあえて正面から受け止めるのと同じように、実は企画というのも避けるのは簡単なのです。「先例がない」「売り上げの根拠がない」などは、必殺技を軽くいなすのによく使われる言葉です。しかし、あるアイデアを正面から受け止めるのであれば、そのように簡単に終わらせることはできず、ゲームデザインやビジネスの知識を総動員してかかる必要があります。このことによって、受け止める側の技量も鍛えられ、日々パワーアップしていくのです

まとめ:企画書というツールで組織を育む

最後までぼかしで失礼いたします。

今回は「企画書を通して相互理解を促す」という、アングーの独特なカルチャーについてお話ししました。

企画書はプランナーにとっての「必殺技」です。自分のとっておきのアイデアを仕上げ、伝えるという行為は、少なからずビジネスの枠を超えた自己開示でもあります

面接の場でも、企画発表会の場であっても、アングーのプランナーはアイデアを正面から受け止めてくれます。企画というのは「切って捨てられたり」「興味すらもってもらえない」こともままあるものですが、アングーのプランナーはそのように「必殺技を避ける」ことを良しとしません。

ゲームの企画を受け止めるというのは、なかなか難しいものです。それはゲームデザインのスキルに裏打ちされた覚悟であり、相手の自己開示を受容することで、信頼感を生み出し、相互理解を深められる、ひいては組織が育っていくという効果を理解しているからこそ、そのような努力ができるのだと思います。

アングーに入る前、すっかり腐っていた時期もあった僕ですが、アングーではアイデアをしっかり受け止めて打ち返してくれる人ばかりなおかげで、最近はアイデアを伝えることが楽しくなりました。どんな反応がもらえるのか、怯えるのではなく、楽しみにできるようになったのです。

もし、今あなたが企画書を書くのが楽しくないと感じているなら、これは単なるテストではなく、自己表現でもあるのだ、と考えてみてはいかがでしょうか。それでも、どうにも周囲の反応が悪く、自己嫌悪のループに陥ってしまうようであれば……もうアングーに応募してみてください! それが一番良いと思います!

P.S. 面接官のひとへ
面接のハードル爆上げしてすみません(笑)


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