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Interview with Laget’s Jam Stack(by ANGM RECORDS)

ANGM RECORDSからキャリア初のミニアルバム“遠くの私に名前がない”をリリースしたLaget’s Jam Stack。
バンドからオオタカズタカ(Vocal,Guitar)とアサミミチナリ(Guitar)を招いて、池袋の酒場で結成から現在までのストーリーを遡りながら、今現在内に秘める思いを聞いてみた。

※インタビュー日 9/1時点のもの


「その時はオオタはガレージロックリバイバルをやろうとしてて」

サイトウ 結成してから何年くらい経ちますか?

オオタ 3年ですね。

サイトウ では結成の経緯から教えてください。

オオタ 僕茨城から大学で初めて上京してきて、ずっとバンドを組みたかったんです。茨城だと「バンドやろうよ」って言えるような知り合いが全然いなかったので。
今のベース以外のメンバーが大学の同じ学科、同じコースに入りまして、ちょうどコロナ禍だったんですけど、そこのコースがみんなで仲良くやりましょうよみたいな雰囲気があるところだったので、毎週金曜日にzoomとかで集まる時間を作ってくれてたんです。僕はそこに積極的に参加してて、同学年の知り合いとか先輩の知り合いとか作ったりしてました。その中で自己紹介サイトみたいなのが一年生向けにあって、そこに「ドラムできます」って書いてあったユウミちゃん(Drums)と、長文でいろいろ自己紹介を書いたうえでギター弾けるって書いてるアサミってやつがいると。そこに書いてた趣味が結構渋かったので、もともと目をつけてて、もう友達になる前に俺がバンドに誘った感じですね。ベースは正規で見つからなかったので結成して1年くらいはサポートに頼ってたんですけど、ネットで募集してみたら声をかけてくれたのが今のベースで。そういう流れで現メンバーが揃ったという感じです。

サイトウ ありがとうございます。じゃあその自己紹介サイトを見て、なんとなくいいなって思ってたアサミくんをオオタくんが誘ったとのことだったんですけど、アサミくんは最初そうやって言われた時どう思いましたか?

アサミ 僕も高校からずっとギターをやってたんですけど、バンドは組めなかったんです。それは自分の趣味的な問題もあって、ずっと部屋で一人でギター弾いてて、「大学行ったらバンド組もう」とは思ってたんですけど。それでzoomでオオタとは音楽の話とかしてて、たくさん音楽教えてもらいましたね。僕が全然聴いてこなかったような。ほんと90年代なんてNirvanaしか知らなかったみたいな人間だったんですけど。それこそ今僕らがやってるようなライブハウスに出てるような人たちとかも、正直オオタに会うまで全然知らなかった。そういう新しいものをもたらしてくれた人だったから、面白いなって思っていた部分はありました。

サイトウ じゃあバンド組もうって言われる前からちょいちょいそういう音楽の話はしてたってことか。

オオタ でも2回目のzoomくらいで僕はバンドに誘ったんです。

アサミ そう、誘われて、俺も「やろうよ」とは言ったんです。でもその時はオンラインの状況だし、コロナ禍だし、そんな本気で始まるとは別に思ってなくて。

サイトウ とりあえず「いいね~!」みたいな。

アサミ そう。その後、1年生の最後の3月までスタジオ入ってないので。

オオタ コロナが収まらなくて。

アサミ そう。その間にずっとオンラインで音楽の話が深まっていったという感じだったんですよ。aoniとかは彼から教えてもらいましたよ。

サイトウ ありがとうございます。笑
ユウミちゃんに関してはずっとzoomで話してたとか同じ状況ではないよね?

オオタ ユウミちゃんはずっと話してたわけではないんですけど、なんかで1回だけ話す機会があって、その時にドラムを叩けるっていうのと、ナンバガとかミッシェルとかのコピバンを高校の時にやってたっていうのを聞いて。

サイトウ へ~!そうなんだ!

オオタ エスキベルっていうバンドのドラムのナルシマさんが1個上にいて、ユウミちゃんは直属の後輩だったんで、エスキベルの9月くらいにやったライブに俺が見にいった時に対面で会って、その時にたぶん俺が執拗に言ったんですよね。

サイトウ それはちょっと運命的なものを感じる部分はあるね。メンバーを集める前からラジェスタ用に曲って作ってたの?

オオタ いや、メンバーをバンドに誘うにあたってこの曲をやりたいみたいなものを事前に作ってたっていうのはないですね。そもそもパソコンが高校生の時になくてDTMでデモを作ること自体ができなかったので、僕は弾き語りで曲をちょっと作ってたくらいでした。大学に入るにあたってパソコンが手に入ったので、それでデモを作ってみてっていう。

サイトウ 3月にスタジオ入ったんだよね?

アサミ 初めてのスタジオはそうですね。

サイトウ そのスタジオに持っていけるくらいにはデモは作ってた?

アサミ 1曲ずつ持ってったんじゃないかな?たぶん。

サイトウ 3月の直前に?

オオタ そうです。一人1曲ずつ。

アサミ でもその時はオオタはガレージロックリバイバルをやろうとしてて、僕はそのジャンル自体は知らなかったけど、そういうルーツ的なものはすごく好きだったから、二人ともそういう曲をこしらえていった記憶はあります。

サイトウ オオタくんだけが作ってたわけじゃないのね。

アサミ そうですね。その時点ではまだ歌とかも特に入れてなくて、ほんとオケのデモだけ作ってたっていう感じですね。

オオタ 単純にバンドを始めるにあたって曲を作る工程として右も左も分からない状態だったから。

サイトウ そっか、高校でもやったことなかったもんね。

オオタ 全くやったことないんです。ユウミちゃんだけ経験あるんですよ。

アサミ ユウミちゃんもオリジナル自体はたぶん1、2曲しかやったことないって言ってましたね。

サイトウ じゃあ最初はガレージロックっぽい、それのリバイバルを。

オオタ そう、クランプスみたいな。

サイトウ じゃあ、その時は今のラジェスタみたいな音楽性になるとは誰も思ってなかったんだ。

オオタ そうですね。バンドを始めたいって動機だけだったので、あんまり未来は描けてないって感じでしたね。その時、自分の中で流行ってるものをやりたかったっていう。

サイトウ なるほどね。最初にできた曲は割とそういう感じだったと。それで、曲を作り貯めてって、ライブできるくらいになった時には全く違う音楽性だったんだ。

オオタ そうですね。

サイトウ その初ライブの時にやった曲で今もやってる曲っていうのはもう1個もない?

アサミ 1個もないっす。なんなら音源も1個も残ってないです。あ、いや。

オオタ 2回目からありますね。“蒸発”が。

アサミ それだけあるね。

サイトウ 1回目と2回目のライブは時期的に結構離れてたの?

アサミ 5月と6月。1ヶ月だけ。

サイトウ 1ヶ月で1曲増やしたってことか。

オオタ そうですね。

サイトウ へ~。その辺りで音楽性がガラッと変わったっていうことで、そのターニングポイントになったのが“蒸発”ってこと?

オオタ どうなんだろ。“蒸発”以降、がっつり変わったわけじゃないんですけど。

アサミ 徐々にですね。でも“蒸発”で初めてそれぞれが持ってたルーツの要素を今のバンドサウンドに落とし込むってことができたってことなのかなって思いますね。

サイトウ 俺はラジェスタは“(The Fall) Eden”から入って、いいのか悪いのか、結構統一性のある音楽性だなって思ってるんだけど、“蒸発”から“(The Fall) Eden”までいろいろあったりした?話し合ったりだとか。

オオタ いや、ないですね。

アサミ とにかくたくさんデモを持っていったんですよ。で、たくさんボツにして、いっぱいライブやっていって。

オオタ その段階で“(The Fall) Eden”と“Rapture”がほぼ一緒のタイミングでできて。

サイトウ じゃあ“蒸発”と“(The Fall) Eden”との間に、自分たちなりに時間がかかったってことなのね。

アサミ その間に10曲くらいボツにしたもんね。

オオタ “蒸発”を初めてサブスクに出したので、その1曲でバンドの音楽性を解釈してもらえて、そういうブッキングに呼んでもらえるようになったんですよ。

アサミ やっとそういうバンドとやれるようになったなって思いました。けれども、他の曲は別にそうでもないみたいな時もありましたね。オアシスみたいな曲もあったし。当時SEAPOOLがめっちゃ好きでSEAPOOLみたいな曲作ろうとしたら結局グレイトフルデッドみたいになった時もあったし。

サイトウ それは意味分かんないっすね。笑

オオタ くるりみたいな曲もあったね。

サイトウ まあ“Rapture”とかちょっとオアシスみあるよね。

アサミ ああ。でも“Rapture”が一番90年代っぽいとは思いますね。

オオタ そうですね。俺は今でも“Rapture”が一番好きな曲ですね。

サイトウ なんか“Rapture” とか“モラトリアム”とかは若干UKみを感じるんですよ。

アサミ 最初すごくUKを目指してた感じはありましたよ。ジョイディヴィジョンみのある曲とかもあったし。二人とも結構そこが好きだったし。

サイトウ そういうのが一番色濃く出てる曲とか自分の中ではある?

オオタ うーん。“落涙する夢”に入ってる“down to drain”って曲は今振り返ったらちょっと影響を受けてるかなって思います。“Rapture”もそうなんですけど、結局僕がデモの段階で作り上げてるものの方がそういう感じになる。だんだんスタジオで作るようになっていったんですけど。

サイトウ 別に「俺たちはUKロックが好きなんだ」みたいな聴かせ方をしたいわけではなさそうだね。

オオタ それは違いますね。

アサミ 最初の1年目が謎にそういうのがちょっとあったってだけで。

「統一性のないオリジナリティで納得させたい」

サイトウ 俺も今回ラジェスタのリリースインフォとか書くにあたって、結構ジャンル名とかすごく迷ったんだけど、本人たち的にはジャンル何だと思ってる?

オオタ ロックバンドです。それ以上は言いたくない。

アサミ 最初から一貫してるのは、ジャンルの括りがなるべくないようにしたいっていう。

サイトウ でもCDを買う人とかリスナーとかにどうしても文字で分かりやすく伝えなきゃいけない部分があるじゃないですか。そういう時にジャンル名は言わずとも、こういう音楽って伝える時は何て伝えたい?

アサミ キモいのやってます、って。キモいギターロックやってますとか。

サイトウ まあ、なんか公式で書くとしてよ。

アサミ いや~、書きたくないですよ。たぶん言おうと思えばオルタナティブロックとか、ポストハードコアから影響を受けたギターロック、だとか言えるんでしょうけど、バンド側が言っちゃうと野暮だなとは思いますね。

オオタ 単純に指針として、統一性のないオリジナリティで納得させたい、ですね。

サイトウ あ~、なるほどね。

アサミ 僕らが好きなバンドとかもどっちかというとたぶんそういう存在で、初めはそういう呼び名がなかったことをやってた人たちが徐々に人から言われるようになる。まあオルタナもそうですし、グランジももちろんそうだし、もっと昔を辿ればハードロックもたぶん最初は何て言ったらいいか分かんないから「ヘヴィーブルース」とか「ヘヴィーロック」とか言ってた時代もあったし、「サイケ」だって言われてた時もあったし、みたいな。最初に新しいことをやった人が自分で打ち出してはないんじゃないかなっていう、歴史的に。

サイトウ でも、リスナーが「これってオルタナだよね」とか「これってちょっとハードコアっぽいよね」とか「エモだよね」とか、言ってることに関しては特にムカついたりはしない?

オオタ ムカついたりはしないですね。むしろ好きですね。

アサミ うん、全然。そういうのは好きだし、受け取ってくれてありがとうって感じですね。

サイトウ じゃあ俺がインフォ書くにあたってジャンル名めちゃくちゃ迷ってるのも正解っちゃ正解なんだ。

アサミ 迷ってほしい!笑

オオタ うん、迷ってくれると非常に嬉しいですね。

サイトウ ありがとうございます。
じゃあ、ちょっと論点変わるんだけど、「こういう音楽が好きな人たちに届けたい」とかそういうのはあったりする?

オオタ そういうのはターゲットを定めているわけではないんですけど、自分があまり詳しく掘っていないような音楽を聴いている人たちから「かっこいいです」って言われるのは嬉しいですね。それはあります。自分の好きなものから離れていれば離れているほど嬉しいかもしれないです。

サイトウ その感覚分かるよ。

アサミ(左)とオオタ(右)

サイトウ さっきもちょっと聞いた話なんですけど、最初はみんなでデモを持ち寄ったりしていろいろ作ってたと。で、今は割とオオタくんのデモに?

アサミ 今はデモがあんまりないですね。

サイトウ デモも作ってないんだ。どういう方法で制作してるかをちょっと聞きたいです。特に今回のアルバムに関して。

オオタ 一応俺がある程度デモを作っていったのは“同胞に捧ぐ”って曲と“触れない対象物”って曲ですね。

サイトウ 他はどういう方法で作ったの?

オオタ 「こういうのやりたい」ってその場でリフを生み出して、そこから何かできることもあるし。

アサミ あとは、たまたま俺とオオタが持ってきたリフを組み合わせたらたまたま曲ができたっていうのもありますね。

サイトウ じゃあ口頭で「こういう雰囲気の、こういうビート感の曲が作りたい」って言ったりとか、ギターリフを持っていって「これに合わせてドラム叩いてみて」って言ったりとか、みたいなことかな?

アサミ そうですね。ある程度その流れができたら先に構成考えて、みたいな感じですね。「ここでもう一展開入れたいな」みたいな。で、一回形になって、「ちょっとここ足りないな」ってまた作り変えていく、みたいな感じでやってますね。

サイトウ じゃあその前段階の話なんですけど、「こういう雰囲気の曲を作りたい」とかリフだったりとかを思いつく時のインスピレーションだったりとか、こういう時に思いつくな~みたいなタイミングとかってあったりしますか?

オオタ 僕は2パターンあって、もう面と向かって机に向かい合うパターン。パソコン開いて、曲作ろう!って何度もリフとかバカバカ生み出して、自分の中でボツにしたりとかして作るパターン。あとは音楽以外の文化芸術を見た時とかになりますね。

サイトウ そこをちょっと詳しく聞きたいですね。今回のアルバムのこの曲はこれを見た時に思いついた、とかある?

オオタ そうですね、でも映画とか展示作品とかを見た時にそれに基づいた曲をやりたいってなるわけじゃないんですけど、それが単純に曲がふっと浮かび上がる状態にしてくれてるというか。納得するものが出てくるような状態になれる、ような効果がありますね。特にこの作品からとかはないんですけど。

サイトウ 映画がメイン?

オオタ 映画か展示。現代美術の展示とかよく行くので。

サイトウ なるほど。アサミくんは?

アサミ 僕はやっぱり基本的に家でギターをずっと弾いてるので、その時にたまたまいいリフができて、それを拍子感とか崩していったら一曲分のサイズになって…みたいなパターンが多いですね。今日は曲作るぞとか、自分がこういうフレーズ得意だなみたいなところから曲を作るっていうことはあんまりなくて、どっちかというと思いついたものをどうやってギターで弾こう、っていう方が多いです。

サイトウ 分かりました。ありがとうございます。

「そうやって悶えたり、悩んだりすることで生を実感できる。」

サイトウ ではアルバムのことに関して具体的に話を聞いていきたいんですけど。
まずは“遠くの私に名前がない”リリースおめでとうございます。

オオタ ありがとうございます。

アサミ ありがとうございます。

サイトウ アルバムタイトルが送られてきた時に、すごい名前だな~ってまず思ったんですけど、解説をお願いできますか?

オオタ これは、自分の実存的な不安から来るところで、歌詞のテーマは基本的に生活の描写とか実際に見た風景の描写とは絶対に書かないようにしてて、自分で考えていることとか思い悩んでいることとかを書き出して消化しているっていう感じなんですけど、今回のタイトルに関しては、大学に入ってバンドをやるにあたって、結構自分の中で生き長らえる意味が明確化されたというか。言葉にすることができたんですけど。人間の究極的な不安について考える時に、生まれてきた意味に関しては言語化して自分を律する希望もないなって思ったんですよ。それで、そういう生まれてきた意味とかもこの先生き長らえる理由みたいなものにおんぶにだっこだし、そこに縋(すが)ってるようなものでしか自分は生み出せていないなと思って。生まれてきたのってすごく昔のことじゃないですか。それに起因されて先々の未来の自分の姿を考えた時に、そういう数年後の未来とかの具体的な想像が僕全くできないんです。今の焦燥感に駆られてて。そういう風にしか生きられないんですけど。ただ、僕はそうやって悶えたり、悩んだりすることで生を実感できる。それが好きなので。幸せになりたくない。まあ、そういう現象が起きたことが“遠くの私に名前がない”っていう言葉に込めていますけど、そもそもそれって、そういうこと考えて自分の中で歌詞に変えたりとか、文字に起こしたりするうえでのテーマではあるので、今バンドをやっていくにあたってふと思ったり、考えたことを形にするみたいな。

サイトウ それぞれの曲に関しては、今考えていることを言語化して歌詞にしてるけど、その考えることって何なんだろう、って全体的に考えた時に「これが生きるってことなんだ」ってことを表現したみたいな?

オオタ そうですね。まあ、あんまりポジティブな意味ではないですけどね。そういう状態でしかないというか。

サイトウ その今の状況を表しているのが“遠くの私に名前がない”?

オオタ そう考えています。

サイトウ 面白い。

「やっとバンドになれたっていう感情が大きい」

サイトウ お互い思い入れのある曲をピックアップして、そのエピソードだったり、気に入ってる部分だったりとかを聞かせてもらえたらと思います。

オオタ 僕は“魃”が一番好きです。単純に楽曲として、絶対一人じゃ作れない、なんとも言葉にし難いカオスな感じが曲としてできたのがすごく気に入っているのと、それをライブでやるのが一番爽快ですね。

サイトウ 結構前からやってる曲だよね。

アサミ あれも最初全然違うリフだったかな。全く別の曲でオオタが使おうとしてたやつを「それで始めればいいんじゃね?」って、あのリフになって、そこから付けていった感じだったと思います。

サイトウ ありがとうございます。アサミくんはありますか?

アサミ 僕は“触れない対象物”ですね。あれを本当はずっとやりたかったんですよ。それまでの6曲が特にいろいろやってるから、ギターとか、曲的にも展開とかもそれまでの6曲の方がカオティックっちゃカオティックだし、やりたいことを詰め込んではいるんですけど、やっぱり一番いい歌だなっていうのが単純に。あれだけレコーディングまで本当に決められなくて、自分が。どんなギターを弾いたらいいか分からなくて。結構2ヶ月くらい考える時間はあったんですけど、その間もちょっとイメージはあるけど、完全に一曲分自分のギター作るってなったら、やっぱりそうやってできた曲が結果的に一番いい歌になったのは最初からオオタの強い曲があった上だからだというのは思うんですけど、バンドサウンドがどうこうよりもまず曲だとして、あれが一番美しいというか、今回の曲の中では思ってて、そういう風に「純粋にいいものを作れたな」っていう感触は“触れない対象物”が一番大きくあります。

サイトウ 前回の“落涙する夢”もすごく好きな作品なんですけど、僕は今回のアルバムを聴いてバンドとしてかなり飛躍したなっていう所感でした。前の作品に比べてじゃなくてもいいんだけど他の作品と比べて今回はこういう部分にチャレンジしましたとか、ちょっと前とはこういうとこが違うよっていうのが何かあれば教えてください。

オオタ 今回アルバムを作るにあたって何か“落涙する夢”と変えよう、みたいなことはしてないですけど、活動をしていくにあたって、バンドをやったことがない人たちだったので、解像度が上がった部分っていうのはあるんですよね。いろんなものに対して。それが起因しているんだと思います。

サイトウ 今回アルバムの曲を作るにあたって、一貫して大事にしたこととかってありますか?

オオタ 月並みですけど、かっこよくあることですかね。その段階で自分たちがかっこいいと思えるというか。あと何だろうな。

アサミ 展開の付け方じゃない?今回は。一曲の中で、一曲で終わらせないっていうことをすごく考えましたね。スタジオでみんなで作っている時とかも…その自由度が前と比べて広がったんです。それはバンドにみんなが馴染んできたから。こういうのをここにぶち込んでも成立させられる、っていう、全員のバンドに対する信頼感がたぶんあったから、「このリフなんかに絶対使いたいな」みたいな感じでもっていったやつをちゃんと曲にすることができるようになったっていう。自分的には今回それが大きかったです。

オオタ あとヤナギサワ(Bass)がデモを持ってきたっていうのがでかいですね。

アサミ めっちゃでかい。

オオタ 初めてだったんですけど。

アサミ あの人は好きな音楽からしてめちゃくちゃかっこいい人だから。笑
だってメンバー募集の掲示板に、好きなものは…

オオタ Unwound、mineral、Title Fight、みたいな並びで書いてて。

アサミ 痺れましたよね。その人が作ったリフならそりゃかっこいいだろう、と。

サイトウ いいですね。
たしかにバンド未経験の状態から始めたんだもんね。そりゃ違うよね。

アサミ やっとバンドになれたっていう感情が大きいですね。

サイトウ うんうん。別に特殊能力を覚えたとかではないけど。レベルアップしてカメックスくらいにはなったってことだね。

オオタ そういうこと…なのかもしれない。

アサミ あと個人的なやつですけど、本当にオオタの歌がめちゃくちゃかっこよくなったんですよ。

サイトウ そうだね~。もともと上手だけどね。

アサミ 1年前と比べて、ライブで歌が一番かっこよくなってるんです。だからたぶん曲を多少分かりにくくしちゃっても、ならない。というのも、すごく今回でかかったかもしれませんね。

オオタ 前よりは良くなったという自覚は自分でもあるんですけど。バンドって超難しいなって、バンド始めた時に思ったので、何もかも場で慣れなきゃいけないものとかがすごくいっぱいあるので。それをとにかくこなして…

サイトウ 月3回はライブやってるんだっけ?

オオタ 5回くらいはやってました。今は3回になりましたけど。

アサミ アルバム出してからはね。でもそれまで6回の月とかありましたよ。

サイトウ 今回のアルバムを作ろうっていう話から始まり、制作スケジュールも僕と擦り合わせて、「これくらいにレコーディングしてね」とか「それまでに曲が足りないんだったら足したりしてね」とか話したと思うんだけど、それで今回7トラックできたわけで。さっき「かっこいいものを作りたい」って話をしてもらいましたが、僕は単純に「よくこの短期間で自分の納得いく基準に達するものを揃えられたな」って思ったんですけど…ぶっちゃけボツにした曲なんかもその短期間にあった?

オオタ ありますね。ライブで演奏してたけどやらなくなったってやつ。全然あります。

サイトウ 何曲くらい?

オオタ それは3曲くらい。

サイトウ 3曲はボツにして、でも結果7曲は収録。それはすごいね。

「そのアティチュードそのものに俺はなりたい」

サイトウ 今回レコーディングが終わって、ミックスしたものを聴かせてもらった時に、最初の印象が「ミニアルバム7曲でミックスがバラバラなんだな」っていう。もちろん「こんなんじゃダメだろ」とかじゃなくて、「あ、こんなに曲によって変えるんだ!」という発見っていう感じで。レコーディングエンジニアの意向じゃなくてメンバーの意向なんだろうなとは思っていたんですけど、ちょっとそこのこだわりを聞かせてほしいんですが、いかがでしょうか?

オオタ そうですね。さっき言ったどういうバンドでありたいかってとこの、「統一性のないオリジナリティでありたい」っていうのが関係していて。それってバンドをやりたい人間の理想形じゃないですか。自分のオリジナリティをアティチュードにしたいじゃないですか、バンドって。そのアティチュードそのものに俺はなりたい。形はそれぞれですけど、みんながなりたいもの。「これは完全にこの人たちにしかできない」みたいな。それをこっちも馬力で納得させていくみたいな状態を作りたくて、その中で「統一性のない」っていうのは僕の中ではその一部というか。

アサミ それを一貫させたかったっていう。

サイトウ そのやりたいことは俺には伝わってたよ。「全然ミックス違うけどかっこええし、ええやん!」みたいな。

アサミ 曲ごとに一番かっこいいと思う音になっていれば、それが一貫性なのかなっていう。この曲で目指したいものと、この曲で目指したいものってやっぱりサウンドとしては違うから、そこに忠実にやったらああなったっていう感じですね。

サイトウ そういう価値観がすごくパンクっすよね。

オオタ こっちも聴衆に向けて翻訳したくないんです。

アサミ ですし、その方が届くんじゃないかなとは思ってます。それで伝わらなきゃダメでしょ、とも。

サイトウ なるほどね。その意図を汲んでくれたヨネクボさん※ともいいタッグが組めてるってことだよね。

アサミ そうですね。立ち合いでミックスしたんですけど、その時も「ここ、こうしてください」ってこっちが言った瞬間にバーッとやってくれて、俺らも「これっすわ」ってなるっていう。「自分がこういう音を作りたい」ってよりも曲とかバンドのことを第一に考えてる人なので、それはすごくありがたいですね。ヨネクボさんも俺らの大学の先輩なのでずっと前からラジェスタ知ってくれてて、俺らがどういうことをやりたいかとか分かってくれているのですごくやりやすいです。

※ヨネクボさん…年齢バンドのギターボーカルであり、Laget’s Jam Stackのレコーディング、ミックス、マスタリングを手掛けるサウンドエンジニア。

「対バンの人たちと真っ当に「かっこいいっすね」って言い合えるようになった」

サイトウ 今回初めて全国ツアーを回ることになりましたが、もともとツアーってどういう印象だった?やってみたかった?それとも「よく分からないな」って感じだった?

アサミ どこかでやりたいとは思ってましたけど、今年やるとは思ってませんでした。

オオタ まずそもそも、サイトウさんから「ツアー組もうよ」って言ってくれて。でも「ツアー行くならアルバムくらいのボリュームがいいです」ってミニアルバムに至ったという経緯があるんですよね。あと、ツアーに行った後のバンドがめっちゃかっこよくなってるっていうのはあります。

アサミ みんなツアー行った後のライブはヤバいことになってるよね。そういう意味ではいつかやりたいとは思ってました。

サイトウ 初めてなのに「どこのライブハウスいく」とか、「ここは後輩連れていく」とか、各地で「こういうバンドとやりたいです」みたいな、そういうブッキングを自主的にやっていたように見えたんですけど、その時の苦労とか、これは難しかったなとかあれば教えてください。

アサミ 結構すんなり決まった印象ありましたけどね。むしろこんな上手くいくもんなのか!くらいの気持ちでしたけど。決め方としては、呼びたいバンドとかの前に、まず行きたい場所を決めて、「このライブハウスでやってみたい」もしくは「この地方でやってみたい」というのがあって、その辺りでやりたいバンドいるかな、とか。仙台に関しては前々から東京で何度かやらせてもらってたUmisayaと絶対やりたいというのは思ってました。割と自然な流れではありましたね。

サイトウ 仙台は行ったことはなかった?

オオタ ないです。人生初です。

サイトウ 今回のツアーはほぼ全箇所行ったことないところなのかな?

アサミ そうです。名古屋以外は全部その土地自体初めてなんですよ。

サイトウ お~。それはたしかによく組めたな。笑

アサミ そこは本当にやってきてたおかげなのかなとは思った部分でした。落涙を出して以降、知り合った人がいっぱいいて。メンバーそれぞれがどこかのライブハウスで会った人から繋がった縁もあったし。

サイトウ 大事だよね、やっぱり。地方から来たバンドのツアーサポートをするのもそうだし、単純に遊びにいったりするのもね。足使って広げていくっていうのも、俺はすごく大事だと思う。
ツアーのことでいうと、移動中とかにメンバーと話したりとかして「意外とこういうこと思ってるんだ」とか、そういうの感じたりだとか。

アサミ 絆は深まりますよね。

サイトウ トータルで見て、もちろん回数重ねて演奏が上手くなっていくっていうのもあるけど、なんか言葉にならない意思疎通みたいなものが深まるなとは俺はツアーに対して思ってますね。

アサミ もともと僕ら全然仲悪くないんですよ。各々が各々ではいるけど別にケンカとかはないんです。でも「ツアーやるぞ」って時期くらいから、やっと「来年バンドこうしていきたいな」みたいな話をメンバー内でするようになりました。ほんとこの2ヵ月くらい。「こういうバンドとこういう意味があって、こういう企画をしたい。だからこの時期に作品出せたらいいな」みたいな、具体的な話がバンド内でできるようになってきたなっていう手応えはツアーをきっかけに感じてます。

サイトウ まだ2ヶ所なのにそんないい話が聞けるとは。笑

アサミ だって7日程もあったら、事前に考えるじゃないですか。どう行く?とか、それこそ後輩帯同で行こうとかもそうだし、やりたいことを一回みんなで相談するっていう時間を取れるようになりましたね。

サイトウ いいですね。今2ヶ所終わったところで、現状の所感を聞きたいです。

オオタ 初日の西荻窪は今までとの変わり様ですよね。1年前の企画と比べて。

アサミ 初日は自主企画だったので。それこそ、ようやくバンドやってるなって感じましたね。ラジェスタ見たい、って言って来てくれる人がいるんだって驚いた部分もあったし。単純にライブですごく盛り上がってくれて、みんなリリースしたものを聴いてくれてるっていうのが伝わってきてめちゃくちゃ嬉しかったですね。

サイトウ 素晴らしい。

アサミ これは俺がオオタに聞きたいんですけど。対バンとやっと「憧れてました」だけじゃない領域になってきたなって気はしてるんですけど…

オオタ ああ。単純に前の企画は尊敬する先輩方に持ち上げていただいたみたいなところがあったから。

アサミ そう。だけど今回の初日は特に、透明受胎はちょっと年上ですけど、音速ばばあは同い年だし、2年くらい前に茨城に向こうの企画で呼んでもらったりとか。縁があってこうなったので、すごく対バンの人たちと真っ当に「かっこいいっすね」って言い合えるようになったというのがすごく嬉しかったです。それがやっとバンドになったな、って感じですね。

サイトウ 友達も増えたってことだよね。仙台はどうでした?

オオタ やっぱり地方に行くとその地方の音楽的な特性がすごく見えるなって思いましたね。

サイトウ 人も結構いた?

オオタ いましたね。仙台には仙台のシーンがあって、非常に刺激になりました。

アサミ 結構物販で「今日やってたあの曲好きなんです」とか言ってくれたり。地方にもそういう人がいてくれてるんだって思いました。

サイトウ 仙台って特殊だよね。

アサミ うん。やっぱり色がはっきりしてましたね。

サイトウ 結構仙台の人が東京で企画したりとか、東京の人が逆に行ったりとか、最近多いよね。

オオタ あと、Keeshondが死ぬほどいいライブしてました。

アサミ 怖かったよね。

オオタ うちが連れていったはずなんだけど怖かったです。笑

サイトウ 世代的に近いバンド?

オオタ 2個下ですね。仙台編はそういうのもあって良かったですね。

アサミ 一緒に行けてよかった。彼らもリリースがあってツアーやってたんですけど、あまり地方に行ってなかったみたいだったから、せっかくだから一緒に行く機会作れたらなと思って誘ったんですけど、たまたま仙台行けて嬉しいなって。

全然仲悪くない4人

サイトウ ツアーファイナルが10月12日。初日と比べてだいぶ年上な感じのメンツになってますが、ブッキングでこだわってることとかありますか?

アサミ まず近道っていうのもあって、どっちかというと毎年やってた自主企画の地続き的な感じになってて、尊敬する先輩たちを呼んでガッツリ企画やる…まあ初日はスタジオライブで、同世代で、っていうのとの対比もあって。初日とはまた違う面の企画を見せたいなっていうのがイベント企画のスタートでした、そもそも。

サイトウ これ聞くの早い気はするんだけど、次作品出す時もツアーはやる?

オオタ ミニアルバム以上のボリュームのものができたらやります。

サイトウ 今回のツアーよりも規模大きめで!

アサミ そうですね。もっと遠方行くとか。北海道行きたいっす!

オオタ うん。札幌大好きなので。

アサミ ここ1年くらい札幌のバンドが東京に来てくれた時に一緒にやれる機会がちょっと増えてきたんですよ。

オオタ TattletaleとかDEERMANとか。

サイトウ DEERMANは今度企画に出るよね。

この後もメンバーのルーツの話を聞いてみたりしたが、本編はここまでに。
ツアーファイナルが終わったら記事を書いていくこととする。

10/12は下北沢近道にお集まりいただきますようよろしくお願いいたします。

2024/10/12(Sat)
下北沢近道
Laget's Jam Stack pre.
"『遠くの私に名前がない』 release tour final"

Act(出演順)
chie
TTUD
I have a hurt
alt of the society
Laget's Jam Stack

TICKET 2400 +1Drink
OPEN/START 18:00/18:30

reservation→https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf5o0M29NCpUtrt71yIPFyJEn_r9zIUQo08skINCJZkWNr2OQ/viewform

interviewer
ANGM RECORDS サイトウコウスケ(aoni)

photo
トクタロウ(Sigar Down)

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