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『蔓延するニーズのずれ』人生釣り三昧#53

おはようございます。

ザリガニ取りにハマった小学生の頃、巣穴に直接腕を突っ込む技を覚えて以降、季節を問わずザリガニ取りで無双し続けたかずおかです。

#調子に乗ると腕がボロボロになるよ

さて。

今回は『蔓延するニーズのずれ』というテーマでお話ししたいと思います。
 

僕自身もそうですが企画を進め、物を届けていく過程で色々な会議を通して進めていくのですがその際、話が中々思うようにまとまらない事が多々あります。
 

そんな時の判断基準としてこんな考え方を持っておくのが大事だよねーという話です。
 

それではよろしくお願い致します。


▼ニーズのずれとは?▼

経済学者ピーター・ドラッカーの名言の中に
『企業が考えるニーズと実際のニーズは基本的に剥離している』
という言葉があるように僕らはユーザーが望むニーズを履き違えてしまう事が多々あります。

少し前に読んだ『ジョブ理論』という本がとても勉強になったのですがその中で挙がった例を1つ紹介すると『ミルクシェイクの売り上げを拡大する』というものがありました。
 

このお店のオーナーはミルクシェイクの売り上げを伸ばすために新しいフレーバーのミルクシェイクを増やしたり、値段を安くしてみたり、市場調査を行ったり…

普通に聞いていると売り上げが上がりそうな施策ですが売り上げは思ったように伸びませんでした。
#耳が痛くなる話です
 

そこでアンケート調査を実施したところ「安い」「おいしい」といった反応が返ってきたのでそれをニーズと捉え「味」「値段」「量」についてさらに改良を続けます。
 

それでもやはり売れ行きは変わりませんでした。
#耳がもげる話です
 

そこで雇用されたのがジョブ理論でした。
購入者の動向を観察し、インタビューを行うことで来客者の生活に発生したジョブを捉え「なぜミルクシェイクを買っているのか」を分析したわけです。
 

すると目立った回答は以下の2つ
・平日の朝は「通勤の退屈しのぎ」と「腹持ちが良くて、手が汚れない間食」としてミルクシェイクを雇用している
・休日は子供を喜ばせる(優しい父親と思われる)ためにミルクシェイクを雇っている

 

意外ですよね?
購入者は最初から味や値段に重きを置いていなかったのです。
 

この結果を受け止めたプロジェクトチームはミルクシェイクのフレーバーをシンプルにして、飲むのに時間が掛かるようどろっとした飲みごたえに。

するとあっという間に売り上げは伸びましたとさ、めでたしめでたし。
(他にも参考になる事例が沢山あって勉強になる一冊です)
 

といった感じで紹介しましたが、これが『ニーズのずれ』です。
 

これは遠い世界の話ではなくて我々の身近なところにも蔓延しています。
 

釣具でも「使用感に影響を与えるほどでもない進化」が大々的に宣伝されるケースが多々ありますが本質的なニーズに応えている例は極僅かなのかもしれません。


▼それは本質的なニーズなのか?▼

僕たちは今日もお客さんのニーズに応える為にせっせと働き、さらなるニーズに応えるために企画の立案、進行を目的とした会議を行います。
 

この時に注意しなければならないのが
「お客さんの為にならないことで議論が盛り上がっていないか?」という点です。

お客さんを満足させるために頑張っているはずが全くその目的に近づいていないというケースは本当に多いと思っています。

 
この時に大事なのは
『目指すゴールの為に何をすべきかを話し合う(とにかくジョブを明確化する)』
という事を参加者が共有できているかだと思っていて、逆にそれが分かっていないと本当に話はまとまらないし時間だけを浪費する会議が生まれ続けます。
 

勿論、目指すゴールと解決すべきジョブはお客さんに満足してもらうだけでなく自分たちが快適かつ効率的な業務を行うという場合もあるでしょう。

いずれにせよゴールからの逆算は「そんなの当り前だろ」と思われがちですが出来てない組織は徹底的に出来ていないと感じます。
 

少し話は変わりますが今年の新製品発表で話題になった「ステラ」と「イグジスト」どちらも色々な意味で挑戦的なリニューアルになったと僕は思っています。
 

良くも悪くも唯一無二の機能として20年以上前に物議を醸した密巻き構造の復活。

当時に比べてより一層密巻き仕様となっており、尖った性能をさらに特化させつつ懸念されるライントラブルについてはアンチツイストフィンという新機能で徹底的に改善を目指したステラ。

謳い文句を素直に受け止めるのであれば機能的な進化は圧倒的。

ただ、この時代に出すステラという製品で過去のデメリットを改善できていないのであれば絶対に製品化してないと思うので余計に今作は歴史に残る名機になると思うんですよね…笑

その反面、見た目は前作より良い意味で大人しくなったように感じます。
 

一方、イグジスト。
機能的には各部分が進化しているとは思いますが一般ユーザーが前作と比べて明確に分かる程度の変化なのか?

もっと攻めた言い方をするとステラ以上に分かりやすい機能の進化があったか?と言われれば返す言葉が無い…というのが今回のリニューアルについて思った感想です。
#シンプルに口が悪い
 

ただデザイン面、これについては大きな進化と挑戦を感じました。

これまでもステラとは大きな差を感じていたデザイン、ラグジュアリー感でいうと圧倒的にステラが上かなと僕は感じていました。
 

ところがどっこい今回のイグジストは最先端を感じさせるデザインに変貌。

SNS上では賛否両論ありますが個人的には初代イグジストに匹敵するほど良いデザインに仕上がっていると感じました。
 

最新の電気自動車のデザインを見た時と似たような印象というかなんというか、これまで抱えているユーザーに好まれるってよりこのデザインをきっかけにイグジストに切り替える人が現れるような気がしております。
 

ユーザーにとって衝撃的だったのは前作に比べて大幅な値上げでしょうか。

この背景には各部品に使われる原料費だったり人件費の値上がりがあるんだろうなという事は容易に想像できますが、その分アフターサービス面の充実とサスティナブルな取り組みを大々的に謳いステラとの差別化を図りにきたのは面白いなと思います。

両者既に予約が始まっているようですが世間の反応や釣具店に勤める友人の話を聞く限りだと8:2、9:1ぐらいで初速はステラの圧勝かなという感触です。

ただ長い目で見るとこの比率も変化する可能性は大いにあるかと思うので
『本質的なニーズはどちらが捉えたのか?』

というような考え方で見てみるのも今年は楽しみだなぁと思っています。
(僕は今回の両者を比べた時、本質的なニーズに応えたのはステラだと思っています。)
 

そんなこんなで大手2社のリールについて色々と語ってみましたが僕が携わる釣り糸についても『本質的なニーズ』を見失っていると感じることは結構あります。
 

最後にその辺に触れながら少しずつ動き始めている取り組みについて話して締めたいと思います。


▼今狙っている事▼

ナイロンラインが釣りを劇的に変化させ、フロロライン、エステルライン、PEラインと新しい釣り糸が誕生するたび釣りは大きく変化し進化してきました。

今出揃った主要なライン4種の進化は続いておりますがそれまでの釣りの概念ごと変えてしまうような変化というのは長らく起こっておりません。

ほんのわずかな変化でデータ上は良くなった数値を大々的に謳うものの使用感に劇的な変化が出るわけでもなく一部の玄人を除いて「これ何が変わったのか正直分からない…」という人も多いのかなと思っています。
#コモディティ化ってやつです
 

特に釣り糸は無限に強くなりすぎるのも問題かなと思っていて、PEラインよりさらに数倍近く強いラインが生まれてしまうとラインブレイク時の衝撃にいよいよ人体もリールも耐えられなくなってくる場合が出てくるからです。
(そんな強いラインをずばずばと手元で切られると環境への負担も半端じゃない)
 

そんな背景も踏まえるとシンプルにラインの性能(直強力、耐摩耗性等)で差別化するのも限界があるかなと…
それでも技術者としてここを追求していくのは多少仕方ないとも思いますがそれを続けると益々ニーズのずれが大きくなってしまう恐れがあると思います。

 
既に辿り着いた必要十分な性能に何を付加させればユーザーの本質的なニーズに応えられるのか?
という問いへの解答は自分の中である程度答えが出ていて、あとはそれを形にできるか、そしてユーザーが受け止めてくれるか、という点が多少不安なだけです。
 

やろうとしている事はシンプルな事ですが機能的、感情的、社会的にも筋は通っているので僕の直感は「いける」と判断しています。

そんなわけで詳しい事は色々と目に付くこの場で書けませんが50周年までにバスラインのラインナップを一新したいと思っているのでご期待ください。

理想は3年前後でほぼほぼ変えておきたい、蒔ける種は全て蒔いておき50周年の年(2027年)は大収穫祭にしてやりたいと企んでいます。
 

どんなに自信があったとしてもこれまでの常識から外れる事を試そうとするときは僕でも一瞬不安になることくらい多々あります。
 

それでもやらずに後悔するよりやってド派手に失敗した方が刺激的で面白いなと思ってしまう性分なので挑戦するしかないんですけどね。
 

というわけで今回は『蔓延するニーズのずれ』というテーマでお話ししてみました。
 

きっと皆さんの身の回りでもよくある事なので物事が上手く解決しない場合は一度「この行動は本質的なニーズに応えているのか?」という問いを投げかけてみると良いと思いますよ。
 

それでは今回はこの辺で。
 

でゎでゎ👋

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