シーバスフィッシングの思い出
私は釣りが好きだ。
最近までご無沙汰だったが、娘が大きくなり一緒に釣りに行ったことでフィッシングソウルが高まり、再開しつつある。
約8年前に釣りをしていたころと比較すると、大きく変わったのは新居を構えたことによる引っ越しだ。コレによりいままで嗜んでいたシーバスを再開することが困難になった。(市街地から郊外へ)
色々な思い出と、当時のシーバス事情を語ってみようと思う。
シーバスフィッシングの魅力について
いわゆる、鱸(スズキ)のルアー釣りだ。スズキは海の魚と殆どの人が思っているだろうが、コイツの主戦場は実は汽水域だ。真夏は冷水を求めて山まで遡上するほど淡水への耐性がある。
加えて夜行性で嫌光性なので、河口の夜の橋脚が一級ポイントになる。
水のきれいな海岸線へ出向く必要がなく、橋脚狙いというアーバンな環境、大きな魚体とリリース前提の釣り方なので市街地で仕事帰りに日常的に狙えるターゲットとして人気が高い。
産卵で深場に落ちる1月~3月と、水温が上昇する7月下旬~9月上旬は基本的にオフシーズンとなるが、それ以外は安定して楽しめる。偏食家なのでシーズンごとのベイトを模した「○○パターン」と呼ばれる釣り方が嗜好性をそそる。(初期投資が多めで釣果も安定しないので初心者にオススメしにくいが、粘り強い人ならハマる事間違いなし!)
ちなみに夏のシーバスは脂が乗っててガチで美味い。しゃぶしゃぶで食べると出汁が白濁するほどで、これを使った〆のおじやは至高の一品です。
ハイシーズンのシーバス事情
貴方の住む都市に河川は何本あるのか?そして汽水域に掛かる橋はいくつか?実際にgoogleマップで見て欲しい。もちろん、都市や河川の規模によるが、そんなに多くないハズだ。
ハイシーズン(10月下旬~12月上旬)になると、橋はアングラーで取り合いになる。もう、時合(満潮下げ始め)の2時間前から待機、全ての橋で謎のナワバリ争いが展開される。
「シーバスは流れを釣れ!」「シーバスはランガンで釣果を伸ばす!」と上級者ぶっている奴が橋の上流側で固定砲台になるのだ。
ああ、醜い。自然と対峙して日々のストレスを癒すための釣りが、ギスギスした戦場となり、SNSによる承認欲求も相まって、シーバスアングラーは一体、何のために釣りをしているのか、完全に自分を見失っている状態になる。
私にとって不毛な橋脚争いは本当にストレスだった。ホームと呼ばれるエリアに見知らぬ誰かがハイシーズンだけ突然、挨拶もなく土足で踏み込んでくるように感じた。(実際、挨拶しても睨みつけられることもある)
「釣り場はアングラー全員のものだろ?」
そんなことは知っているし、ハイシーズンだけ現れるアングラー個人に対しては別に何も思わない。
このストレスの要因は自分のペースを崩されたことの方が大きいのだと思う。
ウェーディング
こうして、橋脚狙い(いや、縄張り争い)に嫌気がさした私はウェーディングと呼ばれる釣り方を覚えた。ウェーディングとは胸まで繋がった長靴とライフジャケットを着用し、干潮で水位が下がった浅瀬の水の中に立ちこんで釣る方法だ。
ウェーディングで橋脚を狙う事はあんまりない。ウェーディングは干潟のような広く浅いスポットで糸を垂らすため、地形や水位、流れに応じてポイントが変わる。そういう理由で橋脚への固執はかえって効率が悪いのだ。結果、ポイント争いが起きにくい。
ウェーディングは楽しかった。まず、人々に居心地の良さがあった。
「上流側(もしくは下流側)入っても良いですか?」と声をかければ「どうぞ~!」と快い返事が返ってくる。そして20m~30mぐらい間隔を開け、そのポイントの流れを探るのだ。
なぜここまで快い返事が返ってくるかと言うと、彼らもまた、私と同じようにハイシーズンにホームを荒らされた経験からウェーディングをしているためだ。そして、魚を求めて河の中で釣りをする、通年でシーバスを追いかけているシーバスジャンキーたちなのだ。(釣れるハイシーズンだけ竿を振る輩とは覚悟が違う)
上げ潮狙い
ウェーディングはハイシーズンのストレスをかなり軽減した。しかしながらネックとなったのが重装備と釣り場だ。ポイントは必然的に浅瀬になるので場所を選ぶ必要があり、釣り場も遠くなった。
私は市街地に住んでいたため、車を持っていなかった(手放した)。このため、徒歩やチャリで平日の夜に行動できる範囲には限界があった。
また、ハイシーズンの潮の干満時間の都合上、ウェーディングの時間は深夜帯から始まるので「日常的」な釣りではなくなってしまった。
そこで目を付けたのが、陸っぱりの上げ潮狙いだ。
海釣りの基本は「上げ潮狙い」だが、シーバスに限れば完全に「下げ潮狙い」が常識だ。これはシーバスの習性や河川で釣りをするという点で非常に理にかなった狙い方で、実際に釣果も下げ潮の方が良い。
しかし、上げ潮でもシーバスは確実に橋脚に依存しているのでこれを攻略するのだ。「下げ潮狙い」の輩とは時間帯も場所(橋を隔てて上流下流で分断される)も被らないので、近場のランガンも気軽にできストレスが無かった。
オープンエリア狙い
ウェーディングによる流れを釣る方法や、上げ潮狙いのベイトを追う展開に慣れると、陸っぱりで橋が無くてもシーバス釣りが簡単に成立することに気づいた。
ウェーディングができる干潮時と比べて比較にならないほど河川の水量が多いので、ポイントは絞れない。もちろん釣果は下がるが、橋に固執しない分、移動は自由だ。そしてライバルも少ない。
このオープンエリア狙いができるようになると、ハイシーズン以外の釣果が飛躍的に向上した。
デイゲーム
日中は橋の明暗がはっきりしないため、橋に固執しても良い事はない。これもオープンエリア狙いと通ずるところがあるが、ベイトや流れを追って足で稼ぐ釣り方だ。基本的に「ボトム狙い」と「広範囲を探りたい」という要件の結果、バイブレーションや軽量の鉄板を流すパターンが多いかな。
バイブを使うと竿からの情報が多いので、リーリングしてても楽しいしね!
極寒期の釣り
ライバルが全くいないので、色々な釣りが選択できるのが魅力。でも釣果が伴わない事が殆ど。(ちなみに冬はウェーディングで水の中の方が温かいという逆転現象が起きる、あんまりやらないけど)
狙い目は曇った夜の次の日の午後から夕マヅメ。
冬は夜の放射冷却で気温が下がるため、曇った夜の次の朝は温かい。そのため、必然的に水温も下がらず高めになっている。この水温が日中に太陽で暖められた午後がチャンス。
この時期は底の甲殻類を捕食しているので、ボトムべったりのスローな釣りになる。(蟹穴があるような場所は間違いなくコレがベイト、ルアーは小型のバイブが主力)
色々な方法でシーバスを狙った結果
1年を通して「夜の橋脚狙い」に固執しなくなった。いや、時間が無い時はホームの橋でパパっと遊ぶが、時間と足を使って違う景色を見ながら釣るのが楽しくなったのだ。
そして、むしろハイシーズンを避けるようになった。人と交流するのは決して苦手ではなく、どちらかと言えば好きなタイプの人間だが、積極的な交流は釣りをする上で無駄だと思ったからだ。
シーバスのハイシーズンでうんざりした方々も、坊主上等で色んな釣り方をしてみてはいかがだろうか?
「釣れなくても楽しい」それが釣りだろ?