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阿修羅の偶像(アイドル)第2章第2節

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「いやあ、驚いた。人道は技の宝庫だな。出来試合になると、あそこまで技が多彩になるのか」
 よほど楽しかったのだろう。道中、バルナは延々とプロレス動画の話をしている。
「だが、あの『スープレックス』というのは実践的だな。あれなら真剣勝負でも通用するぞ。おい、ヤクシャ」
「……なんだよ」
「ちょっと跪け」
「……嫌だよ。技かけるつもりだろ?」
「だいたい、お前は無駄に薄らでかいんだ!」
 バルナはいきなり跳び上がり、保(たもつ)の肩に後ろからガッチリと組みついた。
「バカ! やめろ!」
 バルナは力任せに保をドラゴンスープレックスの態勢に持ち込もうと体をばたつかせる。だが、保とバルナでは二十センチ以上も背の高さが違うので、なかなか地面に足がつかない。
「えーい!」
 保は後ろ手にバルナの両手首を掴むと、力任せに組手を振りほどいた。
「うわっ!」
 バルナは驚いた顔で後ろに飛び退くと、
「お前は本当に馬鹿力だなあ……面白い。本格的にやるか?」
 不敵に笑って、両手を構える。
「知らん。さあ、行くぞ」
 保はプイッと顔を背け、道を急ぐ。
「何だ。つまらん。手加減を知らん奴は大歓迎なのに」
 バルナはそう吐き捨てると、道の反対側を歩いている小柄な男性に向かってスタスタと歩いていく。そして、
「おい。藤波、蝶野、棚橋」
 と声を掛け始めた。不審に気づいた保は、しばらく呆然と眺めていたが、
「中澤、竹下、伊橋、秋山、岡田」
 やがて、バルナの意図に気づいた。
 昨日から見ている限り、バルナに自分の名前を呼ばれた人だけが、バルナのことを認知することができる。逆にバルナに名前を呼ばれない人間、バルナがその名を知らない人間は、バルナの存在に気づかないのだ。
「郡司、橋本、星野、関本、高橋、ザ・グレート・サスケ」
 だから、バルナはプロレス動画で覚えた名前を片っ端から呼ぶことで、どれか一つがあの男性にヒットしたら技をかけようというつもりなのではないか……
 保は早足でズカズカとバルナの背中に詰め寄っていく。ものすごい勢いで歩み寄ってきた大男を見て、小柄な男性がビクッと身を震わせた。
「やめろ!」
 保は背後からバルナの肩を組み掴み、持ち上げた。だが、バルナの体があまりにも軽いこともあり、
「……あっ」
 気づいたらもう遅かった。プロレス同好会時代の体癖のまま、バルナを路上に放り投げてしまったのだ。
「ひいっ!」
 小柄な男性にはバルナの姿が見えない、だから彼から見れば、保は完全に挙動不審な大男である。鋭く悲鳴をあげると、足早に駆け去っていった。
「すまん! つい勢いで……」
 保は慌ててバルナに駆け寄る。だが、
「カカッ」
 バルナは愉快げに笑うと、
「実に新鮮だ。これが『痛み』というやつか……」
 そう言って、頭をぷるんと一振りした後、
「ヤクシャ、お前はやはり強いな」
 呟いて、再び悠然と歩き始めた。

「いらっしゃいま……お、今日も来てくれましたね」
 「ガンダルヴァ」のドアを開けると、今日はファルークさんが厨房の中で皿を洗っている。
「昨日は中座して申し訳なかったな」
 バルナが手を挙げてファルークさんに一礼する。
「今日は最後まで頂くぞ。アッチャを」
「了解です。ではアッチャを一つと……ヤクシャさんはどうします?」
「……同じでいいです」
 保は投げやりにそう言った。もう三日連続カレーですっかり食傷気味なのだが、真剣にメニューから他のものを選ぶ気力を無くしてしまっている。
「オッケー、じゃあアッチャ二つね。お水二つ持って来て!」
「そう言えば、」とバルナが店を見回して聞く。
「今日は、緊那羅(きんなら)はどうした?」
「お休みです」
 ファルークさんは店の奥を指差した。客が一人いる、と最初保が思ったのは、ナラキンさんのでっぷりとした後ろ姿だった。昼間からビールのジョッキを傾けながら、チキンティッカをむさぼり食っている。するとその横から、ウルフヘアの若い女性店員が水をお盆に乗せて現れた。
「……いらっしゃいませ」
 女性店員は低い声でボソッと呟いた。声も細ければ手も細く、ピッタリしたジーンズに包まれた両足はマネキンのように長い。小さな顔の目鼻立ちは整っていて、よく見ればなかなかの美人なのだが、大きな瞳がおどおどと落ち着きなく外界を見回しているせいで、やけに地味な印象ばかりを与えてしまっている。
「……どうぞ」
 女性店員は保のもとに水を置いた。見れば細い腕が小刻みに震えている。例によって自分の外見がこの女性に恐怖心を与えてしまったのかと、保は不安になった。すると、女店員をまじまじと見つめていたバルナが、
「お前……迦楼羅(カルラ)か?」
「ひっ!」
 女性店員は驚いて水をこぼしてしまった。
「……あっ! あのっ! 申し訳ありません……い、いらっしゃると思わなくて、あの、服、大丈夫ですか? クリーニング、そう、クリーニング代! 弁償します!」
 女性店員はすっかり恐縮してバルナに平謝りを続けている。するとバルナはまたカカッと笑って立ち上がると、
「心配するな。『冷たかった』だけだ。拭くならここを拭いてくれ」
 そう言って、自分が座っていた辺りを指差した。女性店員は、全く濡れていないバルナの服と、水浸しになっている椅子を見比べながら、目を白黒させている。
「え……何で?」
「あ、ここは自分拭きますんで!」
 ここは女性店員を無駄に混乱させないほうがいい、と判断した保は、間髪入れずにナプキンを取り出して椅子の上を拭き始めた。
「新しい水持ってきていただきますか?」
「あっ! はいっ! すみません! ほんとすみません!」
 女性店員はペコペコ頭を下げながら後ずさりすると、そのまま椅子の角にかかとをぶつけて「イテッ!」と叫びながら店の奥へと駆け込んでいく。その様に苦笑しながら、バルナはファルークさんの方を見て言う。
「あいつが迦楼羅か……これでこちらに来てるはずの天龍は残り一人……どうやら今のところ、完全に『分かってる』のはお前と五部浄だけのようだな」
「私もようやく『分かって』きたのは今生になってからですよ。ま、和尚のおかげだね。ヤクシャさんも、」
 ファルークさんはそう言って保の方を見ると、
「信じられないことばかりで大変だろうけど、頑張ってね」
 すると「こいつは優秀だ」とバルナが誇らしげに微笑む。
「おかげで昨夜も首尾よくいった。お前の店も一安心だろう?」
 するとファルークさんは苦笑を浮かべて、
「ところがそう上手くもいきませんでね」
「あっ! また付きやがった!」
 その時、店の奥でナラキンさんがスマホを見ながら叫んだ。
「おいファルーク! また付いたぞ!」
「あー、もういいよ。ほっときなよ。キリないよ」
 ファルークさんはもううんざりとばかりに頭を振る。するとナラキンは、「ほっとくとどんどん増殖するぞ!」と吐き捨て、聞くに耐えないような呪詛の言葉をぶつぶつと呟き始めた。保はすっかり不安になって、
「……何かあったんですか?」
「高坂の親衛隊の連中ですよ。ネトサポっていうんですか? 高坂が行方不明になった腹いせに、口コミサイトに店の悪評をばら撒いてまして。この店はインド人の犯罪組織の巣窟だ、とか、アホなコメントをつけてくるんです」
「ほう」
 バルナの顔色が変わった。
「どうやら、また『虫退治』の必要がありそうだな」
「ネットイナゴ退治は難しいですよ」とファルークさんは肩をすくめて、
「何しろ相手の名前も所在もわかりませんからね。まあ、これも縁起の一環だとすれば、甘んじて受けいれるつもりですよ。ただでさえコロナのせいで商売あがったりなんです。王子様があちらにお帰りになる頃合いで、どこかに移転するのもよいかな、と思っております」
 ファルークさんは殊勝な顔でそう呟くと、「さて、お待っとうです」と言ってアッチャカレー二皿を運び、テーブルに置くと、そのまま店の入り口に向かいながら、
「この調子じゃ、今日の客はお二人だけになりそうなんでね。今日は貸切にしますよ」
 そう言って勢いよくマスクを剥ぎ取ると、扉にかかった「開店」の札を裏返して戻ってきた。
「その代わり、お二人には是非観ていただきたいものがあります」
 ファルークさんはそう言ってリモコンを手に取り、店の奥に置かれたディスプレイのスイッチをつけると、
「翼!」
 と女性店員に声を掛け、
「『六道輪廻』を」
「『六道輪廻』ですか!」
「『六道輪廻』だと?」
 翼という名前らしき女性店員だけでなく、スマホにかじり付いて呪詛の声を漏らし続けていたナラキンさんまでもが顔をあげ、そう叫んだ。
「はいっ!」
 翼は先ほどまでとは別人のような弾んだ声をあげ、店の奥に駆け込んでいく。そしてすぐにブルーレイのケースと赤いペンライトのようなものを持って現れ、手際よくディスクを取り出してレコーダーに入れた。ナラキンさんはとは言えば、「少し暗くした方がいいな」などと言いながら、甲斐甲斐しく店中の窓のブラインドを閉めて回り始める。店員たちの豹変ぶりに、バルナもさすがに怪訝な顔になって、
「いったい何が始まるんだ?」
「現代の人道では、音曲のみならず歌舞もまた、どこでも楽しめることをお見せしようと思いまして。ではご覧ください。これが、」
 ファルークさんはしたり顔でそう言うと、リモコンをブルーレイに向けた、
「Shangri=laです」
 画面にはステージが映し出され、荘厳なSEのボリュームが増すほどに、ステージを照らす赤い照明が濃くなっていく。やがて、赤い衣装に身を纏った女の子たちがステージ上に現れると、赤いレーザー光線が交錯する中、イントロの電子音が流れ始めた。すると彼女たちは、ステージ上で殺陣をこなすかのようなバキバキの切れ味で踊り始める。
 なるほど……と、保も戸惑いながら、状況を理解し始めた。どうやらこれが昨日店で流れていた「Shangri=la」というグループらしいのだ。
「オイ!」
「オイ!」
 激しく攻撃的なイントロに合わせて、ナラキンさんと翼が絶叫し始めた。その様はまさにアイドルヲタクそのものだが、アイドルグループの方は想像していたのとは全く違う。そのパフォーマンスはアイドルらしく可愛いというより、圧倒的に力強く、勇壮なのだ。

恋愛を避けている私 彼の愛に押し切られ

 歌い出しの女の子の声を聞いて、ものすごく歌が上手いな、と思った瞬間——
 続いて画面に大映しになった女性の姿を見て、保は目を疑った。

冷淡な感情も愛情に染まっちゃったり?

「ええっ!」
 だが保の驚きの声は、赤いペンライトを振り回しながら「レイヤ!」「レイヤ!」と絶叫するナラキンさんと翼の声にかき消されていく。

運命の恋を期待した だけど実際は心通わない 
彼に嫉妬されるたび
執拗な着信や確認に相当ウンザリ 
もう相手にしてらんない

 保はポカーンと口を開けたまま、目まぐるしくメンバーが交互に映し出される画面を懸命に追い続ける。最初は自分の見間違えではないかとも思ったが、彼女の姿が映し出されるたびに、保の確信は深まっていく。

Bluetoothの時代でしょ? 
言わずもがな 人間の感情もね
男なんかの優しさに 女はもう縛られない
Bluetoothの時代でしょ? 
言わずもがな 人間の愛情もね
だけどどっかで信じてる 
君と繋がる消えない赤い糸

Wirelessの時代でしょ? 
言わずもがな 人間の感情もね
男なんかのわがままに 女はもう縛られない
Wirelessの時代でしょ? 
言わずもがな 人間の愛情もね
だけどどっかで夢見てる 
心を繋ぐ見えない赤い糸

アンジュルム「赤いイヤホン」

 そして曲が終わった瞬間、彼女の姿がはっきりと画面に映し出された。半眼のまま口の前で小指を立てて印を結ぶ最後のポーズは、まさにあの弥勒像と瓜二つ——
「……水戸さん?」
 と、保が再び叫んだ時、
「何ぃっ?」
「何ぃっ?」
 ナラキンさんと翼が同時に振り返った。その直後、保は自分がうっかりその名を発してしまったことを激しく後悔する。
「水戸玲耶さん、ご存知なんですか?」
 翼はご丁寧にブルーレイを一時停止にした上で、保を詰問し始めた。
「いや、あの……一度テレビで見て……綺麗な人だな、と……」
 保はとっさに嘘をついた。ここから数キロもしない場所に今水戸さんがいることなど、このヤバい連中には口が裂けても言えない-ーそう直感的に察したのである。
「テレビって……ひょっとして、仏像の?」
「あ、はい。そ、そうです……」と、保は懸命に話を合わせる。
「そうか。じゃあ……」
 と、ナラキンさんが口を顎に当てて考え込む。
「多分、四年前の伊東さんと一緒に出ていたやつじゃないかな」
「は、はい。多分……でも、このグループのメンバーだったとか、そういうことは全然知らなくて」
「レイヤは一年前までこのグループのリーダーだったんだ」
 ナラキンさんは、世界の秘密を打ち明けるような大真面目な顔でそう言った。
「レイヤはShangri=laを最強のグループに育て上げた後、仏教美術の研究に専念するためにグループを卒業した。これは『六道輪廻ファイナル』、彼女の卒業公演だ。だが、既に世の中はコロナ禍に突入し、卒業公演は無観客での開催を余儀なくされた」
「……そうなんです……あたしたちはここに駆けつけたかったのに、ライブビューイングで見守るしかなかった」と翼が無念そうに呟く。
「とにかく、せっかくレイヤに興味を持ってくれたんだ」
 ナラキンさんは翼に目配せを送ると、
「続けてくれ。今日は最後まで観るぞ」
 その時、バルナが勢いよくガッと立ち上がり、低い声で言った。
「……帰るぞ」

 店を出るや否や、バルナは黙って足早に来た道を引き返していく。
「おい、ちょっと待てよ」
 保は慌ててバルナの後を追う。だが、バルナはかまわずスタスタと歩いていく。
「暑い。カレーを食べ過ぎた」
 バルナがぼそっと呟いた。
「おまけにあの連中が大暴れするせいで、あの店の中は暑くてたまらん。あまりに『暑い』というのは、落ち着かなくなるものだな」
 バルナはそう言って唇を歪める。
「だいたい、バルナはあと二ヶ月しかいられないのだ。その間に『仕事』を完遂せねばならん。悠長に歌舞音曲など観ている暇はない」
「『仕事』って?」
「虫掃除に決まってるだろう。『虫』はあと二匹いる。こいつらをあと二ヶ月で片付けなければならん。あの店で張っていればまた飛び込んでくるやも、と思ったが、あの様子では二匹目のドジョウは期待できそうにない」
 やがて二人は、旧街道が二股に別れるところまでやって来た。左に行けば寺に戻る分岐点だ。岐には水天の石像が鬼を足蹴にしている。そういえば、と保は改めて思った。あの夜以来、確かに鬼の哭き声が聞こえなくなっているのである。
「バルナは少し街を歩いて、『虫』を探すことにする」
 バルナはそう言って、右の道を指差した。
「お前は寺に戻って構わない。仕事がある時はまた『呼ぶ』からな」
「は?」
「昨日わかっただろう。バルナは一度歩いた道は絶対に忘れない。心配するな」
「いや、そういうことじゃないよ。目を離したらお前、何しでかすかわからないから——」
「ああ、そうか」
 バルナはカカッと笑うと、
「さっきは冗談が過ぎた。心配するな。『虫』が見えない限り、人道の者には手を出さん」
「……『虫』が見えようが見えなかろうが、」
 保は、ずっと思っていたことをバルナに伝えることにした。
「他人に暴力を振るってはいけないのが人道のルールだ……」
「だが、虫に食われた連中は遅かれ早かれ鬼道に赴く。人道のルールはともかく、バルナのやっていることは法(ダルマ)に適っている」
 バルナの眦が険しくなった。
「輪廻の輪が回るのを少し早めるだけ、と言ったはずだ……お前、龍衆のくせに随分と人道に染まってしまったようだな。五部浄(ごぶじょう)や乾闥婆(けんだっぱ)のようには物分りがよくない。これだから人道など天道の婢女(はしため)に過ぎんのだ。いいか、お前たちがそうやってお人好しなことを言って末法の世に甘んじている間に、あいつらは末法の歪みを全て人道に押し付けて天道でのうのうと暮らしてるんだぞ。まあいい。いつまでもそうやって、」
 バルナは背を向け、歩き出した。
「来るかもわからぬ弥勒を待ち続けるがいい」
「待てよ!」
 保は肚を決めて後ろからバルナに組みついた。暴力を濫用するのは嫌だが、こうなったら力づくでバルナを止めるしかない。するとバルナはカカッと笑って、
「ヤクシャ、お前は確かに強い。だが、」
 次の瞬間、保の視野が反転した。目の前に見えるのは、保自身の顔である。
「お前の顔と腕は、バルナと一心同体なのだ」
 バルナに組みついた保の手の力が抜け、代わりにバルナの両脇からにょきにょきと保の腕が生えてきた。バルナはゆっくりと体をズラし、力なく崩れ落ちる保の体を四本の腕で受け止める。保の腕に、保自身の体の重みがずっしりと伝わってきた。
「しばらく、ここで寝ていろ」
 バルナは水天像の前に保の体を横たえると、
「少し行ったら解放してやる」
 そう言って小走りに駆け始めた。保の視界の中で、保自身の体がどんどん遠ざかっていく。
「さて、この辺りでよかろう。まあ、何度でも同じことを繰り返すだけだ。お前には、」
 バルナはカカカッと愉快そうに笑ったあと、凄むように言った。
「バルナを止めることはできない」
 次の瞬間、保の視界に空が映った。
「バルナ!」
 保は上体を起こして街道の彼方を見た。バルナは住宅街の方に向かって悠々と歩みを進めている。
「八草さん!」
 その時、寺に続く道の奥から、水戸さんが息を切らして駆け寄ってきた。
「大丈夫なんですか! 昨日も倒れたって聞きましたよ! お寺の方もすごく心配していて——」
「……いや、俺は大丈夫です……でも、あいつが……」
 保の指の先をゆくバルナの青い背中を目で追いながら、水戸さんが首を傾げる。
「あの人に、何かされたんですか?」
「いや……」
 保はすぐに思い直した。水戸さんに話したところで信じてもらえるような話ではない。それにバルナの言う通り、ここで同じことを繰り返しても同じ返り討ちを食らうだけで、バルナを止めることは絶対にできないのだ。今、何か糸口を与えてくれそうな人といえば、一人しかいない。
 保は肚を決め、すっくと立ち上がった。


【CM】今回、「アッチャカレー」の参考にしたゾロアスターカレーが食べられる飯能のレストランです。



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