恋に落ちた瞬間。
2012年、夏。
私はセラピストとして活動しながら
スピリチュアルな世界で謳われる
「愛と光」に矛盾と息苦しさを感じていた。
光に向かおうとすればするほど、
自分の毒々しさ、腹黒さが際立つ。
わたしは、そんなにきれいな人間じゃない。
己の姿を突きつけられて、苦しかった。
他にもトラブルを抱えていた私は
何をしても裏目に出て
にっちもさっちもいかなくなっていった。
そして、猛烈な怒りにまかせて
それまで信じていた天使(という存在)に
日ごと夜ごと、泣きながら悪態を吐いた。
『これ以上、何をどう頑張れって言うんだ。
もう無理だ。
愛だの光だの、なんの助けにもなりゃしない。
私が心から信じられる答えをくれ。
現実的に役に立つものを。
助けろよ。
こんな時に何もしてくれなくて、なにが天使だ。
ふざけんな。』
ひどい。現実逃避もいいところだ。
しかし、当時は必死だった。
日ごと夜ごとの悪態という祈りから、数日。
突然、友人にBUCK-TICKを勧められた。
BUCK-TICK。
髪立てて歌ってた人たちだ。
へぇ、まだ活動してたんだ。
そんな失礼な感想を抱きつつ
動画サイトで勧められた曲を探して、目を奪われた。
なんて黒い。
なんて禍々しい。
なのに、なんて美しい。
中でも「蜉蝣」のミュージックビデオで
櫻井敦司のガラス玉みたいな瞳を見た瞬間、
味わったことのない強烈な想いが湧き上がった。
「この人のことを知りたい!
これまでどんなふうに生きてきたのか。
どんな言葉を語り、何を思い、何を考えているのか。
この人のことを、知りたい!!!」
それが
わたしが櫻井敦司に恋に落ちた「最初の」瞬間だった。
以来、取り憑かれたように作品を聴き漁り
歌詞やモチーフの意味を調べては、読み解いた。
そのたびに、精神世界との共通点の多さに胸が震えた。
この人(たち)こそ、私が求めていた答え。
この人(たち)は、黒い天使。
闇の中で見つけた、わたしのひかり。
そう確信し、安堵して、泣いた。
悪態を吐き続けた天使に、心から感謝した。
***
あれから8年。
私はもうセラピストではない。
他人の人生に口出しするより
自分が感じたことを表現したい。
私が美しいと思う
この人たちの世界を
自分なりに読み解いて記録したい。
役に立たなくても
意味なんかなくても、構わない。
そう思うようになったからだ。
恋に落ちるのは一瞬。
そしてそれは、私に思いがけない変化をもたらした。
あの日落ちた恋は
あれから幾度となく更新され
私の中で光と熱を放ち続けている。
わたしはこれからも
櫻井敦司に
彼らが見せる世界の美しさに、恋をする。
そうやって
「恋に落ちる瞬間」の幸福を何度も味わうのだ。
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