腹部大動脈手術(AAA)

AAAの麻酔

1.血腫の広がりによる重症度としてFitzgerald分類

I型:sealed rupture 壁内血腫あるいは破裂口 周囲に限局する小血腫
死亡率1-2%

II型:血腫が腎動脈を超えない 腎動脈分岐部より末梢 の後腹膜血腫 
死亡率 30%

III型:血腫が腎動脈を超える 腎動脈分岐部より中枢側まで及んでいる後腹膜血腫 死亡率 60%

IV型:腹腔内出血
死亡率 90% 病院死亡率は35.1%であった。

2.救命向上への対策

1. 初診医から専門病院までの迅速な運搬手段(ヘリコプターを使用)。
2. 初診医で診断していれば血液型を電話で聴取し, 来院までに血液を準備しておく。
3. 自己血回収装置の準備
4. 迅速な大動脈遮断
5. ヘパリンは,Fitzgerald IV型を除いて,遮断後に末梢の動脈内に2000単位投与。
6. 可能な限り下腸間膜動脈を再建する。
7. 術中にイレウス管を挿入し,腸管内容を可能な限り吸引しておき,術後の腹腔内圧上昇の防止に役立てる。腹壁が一期的に閉 腹できない場合には,無理に閉腹せず,術後数日経過 して腸管の浮腫などが軽減した時点で閉腹することも 必要である。
8. 尿量が少ない場合には積極的にcontinuous hemodi-alysi(s CHD)を施行する。

3.リスク評価

①AAAのrisk factor:
高齢、男性、喫煙、家族歴、動脈硬化、高血圧

②AAA破裂のrisk factor:
女性、高血圧、喫煙、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、家族歴

③AAA術後遠隔生存率に影響を及ぼすfactor :
高齢、心疾患の合併、高血圧、COPD、慢性腎障害、喫煙


AAA破裂のリスク因子はどれか

a.男性
b.喫煙
c.糖尿病
d.慢性腎不全
e.慢性拘束性肺疾患
解答:be
恐らく設問として突いて来やすいのは破裂の「女性」「COPD」、術後遠隔生存率に影響する「慢性腎障害」ではないでしょうか。
血管病の宝庫であるDMがいずれにも関わってないのは意外。

心臓外科過去問2010年

61歳の男性.腰痛が出現し整形外科を受診するが,異常なしとのことで鎮痛剤の投与を受けた.2ヵ月後,通勤途中の電車のなかで突然呼吸困難となり,救急車で病院に搬送された.受診当時の腹部造影CT を別に示す.この時の所見で誤っているのはどれか.

a 肺うっ血
b 拡張期血圧上昇
c 血尿
d 腹部で血管雑音聴取
e 下肢浮腫
解答:b

腹部造影CT より下大静脈が動脈相で造影され、症状とCTから腹部大動脈瘤の下大動脈穿破であることがわかる。突然の呼吸困難は高圧系から低圧系に大量の血液が流れ込み右心不全を起こす。

b.×収縮期血圧と拡張期血圧はともに下がり頻脈を呈する。
ae.心拡大、肺うっ血、頚静脈怒張、肝腫大、下肢浮腫
d.腹部では拍動性腫瘤や同部で振戦触知、血管雑音を聴取する。
c.静脈圧の上昇に伴い腎内静脈圧も上がり血尿が見られる。

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