心臓腫瘍と心筋症
心臓腫瘍
分類:
良性 70%
成人:粘液腫、脂肪腫(心室の心筋内外膜)、乳頭状繊維弾性腫瘍
小児:横紋筋腫,(右室)繊維種
悪性 30%
心筋肉腫(血管肉腫 右房)、心膜中皮腫、原発性リンパ腫
転移性腫瘍
男性:肺がん
女性:乳がん
直接IVC進展:腎臓がん、子宮筋腫、大腸癌
粘液腫
症状:
基本的には無症状
症候性の場合は心不全症状、塞栓症状,不明熱
治療:
手術適応:遊離・塞栓のリスクがあるので、発見され次第、速やかな手術が推薦
術式:
◯40mmの腫瘍を切除において、左房切除のみならず右房切開も積極的に加えるべき
左房切開、右房切開、左房・右房同時切開、Dubost法(両心房から中隔にかけて縦の切開を加える方法)、いずれも腫瘍に用いられる方法ですが、腫瘍40mmと大きいので、十分に腫瘍を観察し、根治的に切除するには左右同時切開が良い
×心房中隔切開の際の結節間伝導路温存のために、Dubostの切開によるアプローチが望ましい
Dubost法は大きい腫瘍を取り除くには良い方法になりますが、結節間伝導路を傷つけてしまうリスクがありますので、温存のために行うというわけではありません。
×腫瘍が房室弁に接している場合、腫瘍の再発防止のために積極的に弁置換を行うべき
過去問
粘液腫について誤ったのはどれか?二つ選べ
a 手術死亡率は5%以上
b 不明熱で発症する
c. 粘液を血中に放出する
d 粘液腫の80%は心房中隔から発生した左房粘液腫
e 発見され次第手術
解答:ac
a ✖︎手術死亡率は5%以上
特別死亡率が高いというわけではなさそうです。良性原発性腫瘍で手術を行なった場合、3年生存率が95%なので、手術死亡率が5%以上ということはないでしょう
×再発と転移がよく見られる
再発率は5〜10%程度、転移はごく稀です
b.◯
c ×粘液を血中に放出する ゼラチン状で比較的脆い型があり、塞栓症の合併率が高くなる。
e ◯腫瘍が巨大化し、僧帽弁に嵌頓すると左房から左室への血流が阻害され、狭窄症様となりますので、拡張期雑音となる。
心筋症
拘束型心筋症:アミオドーシス
拡張型心筋症:サルコイドーシス心筋症 、敗血症性心筋症,産褥心筋症,アルコール性心筋症
肥大型心筋症
心サルコイドーシス(拡張型心筋症)
サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患であり,肺,肺門リンパ節,眼,皮膚に好発する.
疫学:
頻度は不明であり,臨床的には5%程度といわれているが,剖検例の検討ではさらに頻度が高くなる.
わが国では女性は中高年に多く,男性では好発年齢がなく若年者にもみられる
診断:
心臓に限局して発症する心臓限局性心サルコイドーシスもあることから,心筋症として治療されていた症例の剖検や心臓移植後にはじめて明らかになることもある
初期には,肉芽腫性炎症や間質浮腫の存在する部位に一致した心室壁肥厚を認め,
次第に炎症が消褪し病変部の線維化が進むと,
心室中隔基部にはしばしば特徴的な壁の菲薄化を生じる.
左室および右室の局所壁運動低下や心室瘤を認めるが,病変が広範に広がれば拡張型心筋症様の病態を呈する.
18F FDG PETや心臓MRI,病理組織による鑑別が重要である.
病理:
乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫,間質浮腫を伴ったリンパ球浸潤,線維化,微小血管病変と多彩な特徴を有する.
早期収縮機能低下
敗血症性心筋症(拡張型心筋症様)
機序:
過剰な炎症性サイトカインによる心筋細胞の機能的ないしは構造的変化や,心筋微小循環障害による ものと考えられている
敗血症では早期から心筋への組織血流量が増加する一方で,ミトコンドリアなどの超微細構造は崩壊し,心筋細胞や毛細血管壁の浮腫とそれに伴う毛細血管内腔の狭小化により,微小循環障害が顕在化
症状:
敗血症の臓器障害の1つに含まれる
左室のびまん性壁運動低下が認められる(平均EF40%)
EF低下○ EF保たれる方が予後悪い
敗血症の40~50%に生じる
7-10日でEFが改善する
EF低下よりも拡張障害の存在が重症敗血症・敗血症 性ショックの独立した予後予測因子
拡張障害あり ◯
心拍出量は正常あるいは増大×
LVEDVは減少する× 増大
左室拡張SV変化なし
治療
心不全治療は通常と同様
心筋障害の増悪(特に拡張障害)によって敗血症治療 の大量補液が過負荷となり心機能破綻と成り得るこ とから、やみくもな補液は控える。
カテコラミンの使用量を必要最小限にとどめる
Β遮断薬の投与が予後を改善する
予後:死亡率は10%× 50%以上
可逆性 ○生存例は10日で回復
敗血症性ショック発症24時間以内の患者は心係数は正常値以上に増加しているにもかかわらず,
心駆出率は平均で40%と低値であり,この駆出率低下は生存者で顕著であった.特に生存者では代償性心室拡張により心拍出量増加を維持してい
治療開始から72時間以内にびまん性壁運動低下を認めている.死亡例の検討でも生存例より有意に心係数が高く,心拍出量が高いほど重症である
びまん性の壁運動低下(収縮力低下)は可逆性
左室収縮能が低下していない患者はむしろ死亡率が高い.
死亡症例ではLVEFが有意に高く,LVEDVが有意に小さい上に輸液負荷によって是正されにくい.
壁運動低下を認めないことは予後不良因子である
急速な輸液負荷や心血管作動薬投与は敗血症早期であっても心筋障害の進行程度によっては過負荷ともなり,潜在する心機能障害を進行させる危険性がある.
過去問
2015年心臓麻酔
敗血症性心筋症で正しいのはどれ?
a. 初期は可逆性である
b. 心拍出量は正常か増大している
c. LVEDVは減少する
d. 死亡率は10%である
e.右心不全を伴うことが多い
解答:a.
a. 初期は可逆性である○生存例は10日で回復
b.×EF低下, EF保たれる方が予後悪い
c. LVEDVは減少する×左室拡張SV不変あるいは増大
d. ×死亡率は10%である
ICU に入院するような敗血症患者の半数以上が心機能低下 の臨床所見を呈し,臓器不全を伴い,その死亡率は70%から 90%に達し,心機能不全のない敗血症患者 の死亡率20%よりはるかに深刻な数値を示している
e.×
たこつぼ型心筋症
ICUで起こると予後悪い
閉経後の女性(エストロゲンの低下)
アルコール性心筋症
アルコール80g/日5年で心筋障害
断酒しても悪化してたらよく回復困難
ARB効果あり
産褥心筋症
異型プロラクチン説 黒人に多い(黒人1/421>アジア1/2675>白人1/4075>ヒスパニック1/9861 日本1/2万)
半分は回復する
予後不良のリスク因子:
2ヶ月後のLVEF・LVDd≧56mm・心室内血栓・アフリカ系
診断基準:
リスク因子:
多産、高齢、多胎、黒人、子宮収縮薬、慢性高血圧、妊娠高血圧、切迫早産の治療、初産婦が多い?
治療:
心不全治療:βブロッカー、ARB,ACEI(妊娠期不可)、利尿薬
特効薬:プロモクリプチン
心臓移植考慮カテコラミンサポート:IABP,PCPS,LVAD,心臓移植
心不全治療のnon-responderには心臓移植を考慮
過去問
2020年心臓麻酔
周産期心筋症 正しい二つ?
a.人種ごとに差はない
b.心不全治療に抵抗性ならVAD適応を
c.若年出産に多い
d.初産婦で多い
e.半分は回復する
解答:de
a.×異型プロラクチン説 黒人に多い(黒人1/421>アジア1/2675>白人1/4075>ヒスパニック1/9861 日本1/2万)
b.×臓移植考慮カテコラミンサポート:IABP,PCPS,LVAD,心臓移植
c.×高齢、多胎
d.◯
e.◯
心タンポナーデ。奇脈、胸腔内圧との干渉、ARがあれば奇脈はなくなる?
奇脈は自発呼吸の吸気時(Qが増えるので正常時に血圧上昇なのに)に血圧が10mmHg以上低下
胸腔内圧低下右房圧低下でVR増加し右室充満で左室充満が妨げられる
心アミロイドーシスについて正しいものを選ぶ
a.初期は収縮障害が主である
b.心室筋の肥厚を認める
c.心房筋の肥厚を認める
解答:b?
過去問
拘束型心筋症
a.×収縮機能は保たれ,びまん性の左室肥厚,心房の自由壁や中隔の肥厚も認められる
原因不明の心機能低下,拡張不全を示す症例で心電図上のlow voltage,心エコー図でも心筋の肥厚,エコー輝度の増加を示すときは,心筋生検による心アミロイドーシスと診断.
臨床的に高血圧性心疾患や肥大型心筋症が疑われた症例で心筋生検によりアミロイドー
シスであることが判明することもある.
b.○
c.×
過去問
心筋肥大を起こすものは次のうちどれか、2つ選べ
a.サルコイドーシス
b.Fabry病
c.アミロイドーシス
d.緻密化障害
e.周産期心筋症
解答:bc d?
拘束型心筋症: Fabry病,アミロイドーシス
拡張型心筋症:サルコイドーシス 、周産期心筋症
肥大型心筋症: 緻密化障害
過去問
HOCM 流出路狭窄解除について誤ったのは
a.α刺激薬
b.β遮断薬
c.蹲踞
d.バルサルバ負荷
e.容量負荷
解答:d
増強因子: バルサルバ負荷、立位、期外収縮,脱水、労作後、頻脈、PDE5阻害薬、β刺激薬
構造的心疾患Structure Heart Disease
過去問
アクセス(A or V)と推奨されるエコー(TEE or TTE)の誤った組み合わせを選べ
a. Amplatzer Septal Occuluderは経静脈的手技
b. MitraClipは経静脈的手技
c. TAVIは経動脈的手技
d. 経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA) は経静脈的手技
e. 経皮的僧帽弁交連裂開術(PTMC)は経静脈的手技
答:d
b.mitraclipはTAVIと違って、A S Oと同じ
d.×左心室の出口(流出路)を圧排する肥大心筋に流れる冠動脈左前下行枝の枝である中隔枝にエタノールを極少量注入して、肥大心筋を焼灼し、薄くすることによって左室内圧較差を減らす治療法
e.TAVIは経大腿アプローチ、経心尖アプローチ、経大動脈アプローチ
経動脈的:TAVI, PTSMA
経静脈的:A S D,Mitraclip,PTMC
過去問
HCMについて正しいのはどれか?
a.若年HCM患者には中隔焼灼経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)が第一選択である
b.HCMはICD植え込みの適応である
解答:b
開胸にて同時に 修復できる併存心疾患がある場合は,PTSMAではなく、中隔心筋切除術を選択するすべき.
つまり、若年ではまず開心術を考慮
実際には収縮期前方運動によるものではない重症 僧帽弁閉鎖不全症が最も頻度の多い併存疾患
以下に中隔心筋切除術を積極的に考慮すべき症例を記す.
1.外科治療を要する左室流出路または僧帽弁腱索複合体の構造的異常を有する症例
2. 外科治療を要する器質的大動脈弁または僧帽弁疾患を合併している症例
3. 上記 1,2 を除く閉塞性肥大型心筋症でとくに若年・青壮年の症例
4. 閉塞を生じる心室中隔局所の壁厚が 30 mm 以上の閉塞性肥大型心筋症の症例
5. PTSMA による中隔縮小効果が不十分な症例
若年者に対しては,中隔心筋切除術を施行するべきと考 えるが(特別な状況を除いて PTSMA を治療の選択肢とし て考えるべきではない),中高年に対しては,はっきりとし た年齢での線引きがあるわけではない.過去の文献に基づ いて 65 歳未満は中隔心筋切除術,65 歳以上は両者いずれ も選択可能という意見348)もあるが,最近では50歳以下の 症例でもPTSMAの成績は容認できるという報告)もあり, 40 歳以上の症例については,単に年齢だけではなく症例ご とに背景因子やさまざまな検査所見(経胸壁あるいは経食 道エコー,心臓 CT,CMR など ))をふまえて,循環器 内科医,心臓血管外科医などで構成されるハートチームで 議論し,どちらが当該症例にとって有効な治療かを検討す るのが望ましい.
b.ICD植え込みの適応:
ClassI:
心室細動・心室頻拍による心停止の既往 持続性心室頻拍の既往
Class IIa
主要リスク因子のうち下記のいずれかを有する:最近の心原性あるいは原因不明の失神 ・左室壁厚30mm以上の著明な肥大
主要リスク因子のうち下記を複数有する:突然死の家族歴 ・非持続性心室頻拍 ・運動時の血圧反応異常
主要リスク因子のうち下記を1つのみ有する :突然死の家族歴 ・非持続性心室頻拍 ・運動時の血圧反応異常