キッチンの片隅で
キッチンの片隅で
キッチンでケーキを切り分けていると
「不器用なんだね」って
やっと切り分けたケーキは、
お皿の上で倒れる
バタン
バレたか
そう、小さい頃から
みんな、わたしの手元
見ていられないって言いながら
横から手を出すの
手が小さいから下手なんだねー
って言いながら
姉はシャンプーをしてくれたし
大きなお皿をしまえないと
そっと受け取って片付けてくれる
小さいからね
まだ無理なんだよ
その呪文は
細い路地裏を道草するみたいな
訳には行かず
その呪文は
浜辺でずっと歌っているみたいな
訳にも行かず
しなびたほうれん草の様に
元気を無くす
そんなこと出来なくて
どうするの?
大人になったら困るよ?
一方で
色とりどりのドロップスの様に
わたしを包む
プルタブが開けられないとか
舐めている飴が甘すぎると言って吐き出すとか
おにぎり一個食べるのもやっととか
土星の周りでグルグルまわる惑星の様に
出来ない事はいっぱい
だけど
色とりどりのドロップスの様に
わたしを包む
寒いから気をつけて
そう言いながら
コートのボタンを止めてくれる
また来てね
そう言いながらバグをする
見えなくなるまで手を振る
透き通ったスープをひとすくい
器に注ぐようにわたしを
救い上げる
さあ、ケーキを食べよう