呼吸
3日経っても変わらず雨は
同じ強さのままでいた
どうしてか不安が募る
晴れが3日続いても
不安など抱かないのに
雨季はそんなもんさ
それが呼吸なんだ
牛を撫でながら酪農婦は笑う
川縁の痩せた木を頼って
雨を真にうけていた私に
ついて来な、と言ったときと同じく
澱みや迷いがなかった
見えないままでいる月の満ち欠けにも
疑うこともしないで
今夜あたりだね、と言ったその夜遅くに
仔牛を取り上げた
酪農婦は2人の男の子と
抱き合って喜び
傍らで主は満足そうに
黙って葡萄酒を飲みこんだ
母牛のために藁を変えてやると
両の目頭から涙をこぼしている
ように見えた
翌朝、雨は止み
多くの牛は放牧に出かけて
厩舎は静かであった
◇
ノマドシリーズ
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