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TRPGのススメ

Webサイトの製作練習にコンテンツを作っていたら、思いのほか長文かつNoteを読むような層に届きそうな文章になったのでこちらにも掲載する。
内容はWebサイトのほうと変わらないので、お好みでどうぞ。


TRPGって、何?

テーブルトークRPG、平たくするとテーブルトークロールプレイングゲーム。よく例えるならとして使われるのは、「ルールのあるごっこ遊び」だろう。

クトゥルフ神話の邪神がいる世界、剣と魔法のファンタジーと称されるような世界、近未来のサイバーパンク世界。様々な想像力が張り巡らされた架空の世界にて、その世界で生きる人物をプレイヤーキャラクター(PC)として創り出し、ゲームマスター(GM)と呼ばれる立場の人と共に、プレイヤー(PL)として作り上げた物語をナラティブに組み上げていく。時には同じ立場のPLと共にPCを介して協力したり、PC同士を競わせたり、様々な物語を協力して紡いでいく。

それがTRPGという遊びだ。


もっとも、ただのごっこ遊びならば「言ったもの勝ち」で物語が無秩序となってしまう。
そこで整合性を取るために、ルールブック(ルルブ)と呼ばれる物語の前提となるものを記した本(Webサイト形式の場合もある)を準備し、それを基準として物語を組み上げていくのだ。

『クトゥルフ神話TRPG』で遊んだ様子を録画して編集した記録動画(リプレイ)を、ルールブック発行元のKADOKAWAがYouTubeにアップロードしている。参考資料として見てみるのもいいだろう(動画は1時間近くある。実際にTRPGで遊ぶときも、時間はたっぷり確保しておくといいだろう)。

ちなみにこのルールブックに記された「前提」のパッケージを、システムと呼ぶ。動画には『クトゥルフ神話TRPG』というルールブックが用いられているが、このルールブックには「クトゥルフ神話が現実となっている世界観」で遊ぶための前提知識などが記されている。
このルールブックに記されたものを前提に、PLとGMは物語を組み立てていくのだ。

さて。「言ったもの勝ち」を防ぐために、TRPGにはひとつの「判断基準」が原則として組み込まれている。それはサイコロやトランプなどといったもので、その行動が成功するかどうかを決めるというものだ。

『クトゥルフ神話TPRG』を例に取ろう。『クトゥルフ神話TRPG』において、その世界に生きるキャラクターは「体格」などの能力値と呼ばれるデータと、「目星」などといった技能と呼ばれるデータを持つ。これは、その行動が成功しやすいかどうかを、パーセンテージでデジタルに表現したものだ。
この数字を参考にし、100面のサイコロ(実際は10面のサイコロを2つ振ることで代用することが多い)を振ることで、その行動が成功したかどうかを確認するのが基本となる。
成功するかしないかといったキャラクターの「運命」を、達成値と呼ばれる数字などで可視化するのだ。

ゲームマスターって?

RPGに於いてGMと呼ばれる立場の人物が行うのは、物語やデータ処理などの進行を行う舵取り役である。物語の語り部と称されることも多く、特等席で物語を体験できる立場だ。

PLは動かすPCを介して物語を紡ぐため、「こういうことをしたい」という宣言をすることとなる。それを他のPLが動かすPCなどといった登場人物の動きなどを見ながら、物語上の整合性をとりつつ「こういうことになりました」と物語に反映するのだ。
また物語の敵役を動かすことで物語を盛り立てたりなどといった、物語を組み上げるための「PCを動かす以外の仕事」を基本的にすべて引き受けることとなる。

大変ではあるが、TRPGをする上で欠かせない立場といえよう。

ちなみに独りでゼロから物語の方向性を考えるのではなく、シナリオと呼ばれる筋書きを事前に準備しておくことを推奨するシステムも多い
シナリオは自分で書くこともできるが、TRPGで遊んでいる人が「自分が書いたシナリオを他の人にも遊んでほしい」と同人誌やWebで公開している。ルールブックにも、システムを作ったデザイナーが「こういうシナリオを作って遊ぶといいだろう」という指針として、サンプルシナリオを載せていることも多い。
慣れないうちだったり、時間がないときはそれらを活用しながら遊んでいくといいだろう。もちろん、そのシナリオを遊ぶために人を集めてゲームマスターを誰かにお願いするといった遊び方もよくあることだ。


こぼれ話だが、MMORPGなどには「ゲームマスター」と呼ばれる立場の人物がいる。これは、TRPGの「ゲームマスター」から言葉を借用したものだ。
また、『ドラゴンクエスト』シリーズなどといったコンピューターRPGは、サイコロなどを振る行動やGMが扱うデータの処理などを、コンピューターに任せようという発想から生まれたという。

何人ぐらいで遊ぶの?

正直なところ、これはシステムとシナリオ、GMの気力などによってまちまちだ。参考としてシナリオデザイナーが推奨しているだろう人数もまちまちであり、『ソードワールド2.5』では3〜6人程度、『ダブルクロス』では3〜5人目安などといったプレイヤー人数のバラツキがある。
しかし基本的には、プレイヤー人数を4人程度までにしたほうが、GMのデータやストーリー進行の処理が止まったりしないだろう。『ドラゴンクエスト』などでコンピューターがやっていることをすべて人間が手作業でやるのだ。限界はある。

理論上は、最低でもPLが1人、GMが1人の組み合わせから遊ぶことができる。しかしTRPGの歴史上、その遊び方は2010年以前には特殊な遊び方として見かける程度だった。
現在では、『クトゥルフ神話TRPG』のユーザー作成シナリオなどで、GMがPLと同じルールで作ったキャラクターを出して遊ぶシナリオ(Xではタイマンと呼ばれることの多い)も増えてきている。最近は『アンサング・デュエット』などといった、いわゆるタイマンで遊ぶことを前提としたシステムも出てきた。
自分の環境などを見て、遊びやすいやり方をするのがいいだろう。

ところでどこでやるの?

オフライン(現実で人と向かい合ってやる遊び方)では、カラオケボックスの一室や誰かの家に上がって遊ぶといったやり方、公民館の会議室などといった貸しスペースを利用するのが一般的だ。最近ではTRPGやボードゲームを遊べることを前提としたカフェなどもでてきており、そこを訪れてみるのもいいだろう。
ただし公民館の会議室などといった公共の場所では、サイコロを振ることや「(敵役のキャラクターを)殺す」などといった物騒な言葉を使うことなどという理由で「怪しい集団」と思われてしまった先人たちがたくさんいる。もしもそれらを利用するならば、気を付けるべきだろう。


そういう場所が近くになかったり、そもそもTRPGに誘える友人がいないなどといった理由で、オフラインで遊べる環境がない場合。
今、目の前であなたがこの文章を読んでいる端末から、インターネットに接続してオンラインセッションという遊び方をすることができる。サイコロを振るプログラムを備えたチャットルームを利用して遊ぶやり方だ。

この遊び方の場合、人間の表情などといった情報が削ぎ落とされてしまうので、オフラインとは勝手が違うものとなる。しかし文字さえ打てればTRPGで遊べるので、聴覚に障害を抱えていたり何らかの理由で言葉を喋れないなどといった人でも遊ぶことができるのだ。
文字を用いてTRPGを遊ぶやり方はテキストセッションと呼ばれ、チャットログを保存することでセッションの状況を保存できるといった強みもある。

最近では技術の進歩でボイスチャットを行うことができるようになったことから、これを用いてTRPGを行うこともできる。こちらはボイスセッションと呼ばれ、顔は見えなくても声に気持ちを乗せてロールプレイができるという強みを持つ。
ボイスチャットを行うスペースの機能や『OBS』などといった配信ソフトの機能を活用して録音をすることで、こちらもセッションの状況を保存することができる(ただし録音する際は、一緒に遊んでいる人たちの許可を取ろう)。


さて。どのようなチャットを用いて、オンラインでTRPGを行うことができるか。特に有名なサイトとソフトを紹介しておこう。

まず覚えておいて損がないのは、『ココフォリア』だろう。
利用ユーザーが約20万人という、現在のオンラインセッションに使うツールとして最もメジャーなチャットサイトだ。

オフラインセッションにてテーブルの上に地図やフィギュアを広げるかのように、イラストや写真、キャラクターの立ち位置を管理できるコマなどを置くことができるスペースが準備されている。
そして何より、軽快にチャットやスペース上の画像移動などといった操作ができることが特徴的だ。もちろんチャットルームのログを保存したりといった機能も備えている。

また、どのようにサイコロを振るかのプログラムコマンドをパッケージ化したものも準備されており、それを使うことで「6面のサイコロを5個振りたい、その時に出目の合計が12以上なら成功する」という指示を「5D6>=12」という形で入力して、乱数を出すと同時にコンピューターへ計算させる指示を出す……などといったことができるようになるのだ。
そしてココフォリアは、PCからだけでなくスマートフォンやタブレットからもアクセスすることができる。AndroidやiPhoneなどを問わず、どのような環境からも似たような手触りでTRPGが行うことができるのは、このサービスの強みのひとつだろう。

部屋(チャットルーム)を立てる(GMがシナリオを回す準備をするために行うことが大半だ)ことは、アカウントを作ってログインする必要がある。しかしXやGoogleアカウントを利用してログインが可能だ。
ちなみに部屋のURLは一覧化されず非公開。PL役の人のみにURLを渡すことで、乱入者の可能性を気にせずTRPGを遊ぶことができる。


ボイスセッションはツールとして『Discord』が使われることが多い。
サーバーと呼ばれるコミュニティスペースを準備し、そこにボイスチャット用のチャンネルを準備するだけで大筋のセッション準備は完了となる。『ココフォリア』のチャットルームを併用してもよし、サーバーにサイコロを振るプログラム(ダイスボットと俗に呼ばれる)を入れて『Discord』のみで完結させるもよしだろう。


他にも『Udonarium』というキャラの立ち位置を3次元管理できるTRPG向けチャットサービスサイトや、『TRPGスタジオ』といったプレイ後のセッションログを動画化してダウンロードできる機能を備えたサービスサイトなどもある。今回それらの詳しい解説は、他の解説サイトに譲ることとしよう。

ルールブックはどこに?

さて、TRPGのセッションにおいて必須となるルールブック。書籍の場合は大型書店やボードゲーム専門店、通販サイトなどで手に入れることができる。最近は電子書籍化されたものも発売されており、電子書籍アプリの画面でデータを確認しながら、セッションを行っているチャット窓を開くということも可能だ。

ちなみに、ルールブックの値段はまちまちである。『ソードワールド2.5』『ダブルクロス』といった文庫本のルールブックは1000円を切るが、『クトゥルフ神話TRPG』『シノビガミ』などの大判本となると4000円〜7000円程度と高くなってしまう。しかし「ルールブックを1冊買うことで、何回でも同じ世界を体験できると考えると安いのではないか」と考えるユーザーが多いようだ。

なお2024年現在で最も遊ばれていると言われている『クトゥルフ神話TRPG』は、サブスクリプション形式でルールブックのスマホアプリ化がされている。有料だが、コースによってはサプリメントと呼ばれる拡張データブックも読むことができるので調べてみるのも良いだろう。

どんなシステムがあるの?

筆者がプレイしたことのあるシステムを、何点か列挙してみよう。


クトゥルフ神話TRPG

KADOKAWAより発売されている、アメリカのアナログゲーム会社「ケイオシアム」が製作したTRPG。PLは探索者と呼ばれるキャラクターを作り、近現代アメリカで生まれた創作神話体系「クトゥルフ神話」に登場する邪神やクリーチャーたちが現実に存在する世界で、それらが関わる事件に巻き込まれたという筋書きのコズミックホラーを描く。
現実世界に酷似した世界で、舞台となる国や時代をを問わず遊ぶことができたこと。また古い故にシンプルな設計で柔軟性をもって遊ぶことができることから、汎用性のあるシステムとして現在のTRPGシーンを牽引するようになった。100面のサイコロ(10面のサイコロ2個で代用することも多い)を振って、パーセンテージで表されるキャラクターの技能レベル以下の数字が出れば行動が成功するという判定方法もわかりやすい。
ちなみに「CoC」と略されることがあるが、これは改題前に『クトゥルフの呼び声』というシステムタイトルであったことに由来する。1981年に出たシステムが基になっており、版上げと呼ばれるルールの書き直しを重ね、最新版は『新クトゥルフ神話TRPG』と表紙にある2019年発売の7版だ。
なお画像は「クラシック版」とも呼ばれる、最も普及している6版のものである。遊ぶ際には他の参加者と版を揃えるようにしよう。


ソード・ワールド2.5

KADOKAWAより発売されている、日本のクリエイター集団「グループSNE」が製作したTRPG。PLは舞台となる架空世界「ラクシア」で生まれた冒険者をキャラクターをつくり、魔物退治といった依頼をこなし、先史文明の遺跡を探索したりなどといった冒険を描くシステムだ。
俗にいう「剣と魔法のファンタジー」で、長年「国内で最も普及した国産TRPGである」と呼ばれた、1989年発売の『ソード・ワールドRPG』をシステムの基礎としている。人間以外にもエルフやドワーフなどといった個性豊かな亜人種をPCとして選ぶことができるファンタジーRPGであり、データ面でも「種族特徴」という形で個性をそれぞれ表現しているのが面白い。
一般的なサイコロである6面のサイコロを2個準備するだけで遊ぶことができる。ゲームマスターが示した数字より大きい数字を、サイコロを転がしてを出せるかどうかで、行動が成功するかどうかをチェックする形をとっている。


ダブルクロス

KADOKAWAより発売されている、日本のゲーム製作会社「F.E.A.R.」社が製作したTRPG。現代日本に近い世界を舞台で、PLは「オーヴァード」と呼ばれる異能力者をキャラクターとして作り、バケモノと化した人々や異能力を悪用する者たちから薄氷の日常を守っていく様を描く作品だ。
オーヴァードは能力を使いすぎることで、理性を失ったバケモノと化す運命を背負っている。その運命から抗うために必要なのは、日常を共にする人々との「絆」だ。これを「ロイス」という一種のリソースとして表現しているのが特徴といえよう。
10面のサイコロを使い、一定の数以上を出すことでサイコロを再び振り直す「振り足し」が行える判定方法をとっている。この「振り足し」を行うことにより、ダブルクロスにおいて判定の結果を示す数字は無限に上がっていくのだ。


シノビガミ

新紀元社より発売されている、日本のゲーム製作プロダクション「冒険企画局」が製作したTRPG。PLは現代日本の裏で暗躍するシノビをキャラクターとして作り、忍務をこなす様子を描くシステムだ。この作品におけるシノビは一種の超能力者であり、火を吹いたり背から異形の翼を生やしたりなどといったことができる。
冒険企画局の制作システムは「サイコロフィクション」と呼ばれる基礎設計が共通しているTRPGシステムが複数あり、本作もその一つである。そのため、一度慣れることで「サイコロフィクション」を使った他のシステムを遊びやすくなるのは強みだろう。
6面のサイコロを2つ振り、状況に応じて計算される数字以上の出目を出せば成功するという判定方法をとっている。他のシステムと比べて失敗のリスクを減らしにくく、それが緊張と興奮を生む要因だ。


アンサング・デュエット

KADOKAWAより発売されている、日本のTRPGサークル「どらこにあん」が製作したTRPG。物理法則などといった我々の常識が通用しない「異界」に取り込まれた「シフター」をGMが、「シフター」を現実の世界に連れ戻そうとする「バインダー」をPLがキャラクターとして作り、「シフター」を「異界」から連れ戻す脱出劇を描くシステムだ。
原則としてGM含めて2人で遊ぶこととなり、少人数で遊ぶことに特化したシステムである。登場人物が少ない分、キャラクター同士の掛け合いや交流を濃密に楽しむことが出来る。
「バインダー」は6面のサイコロを2つ、「シフター」は10面のサイコロを1つ振り、一定以上の数字を出すことで成功か失敗かをみる判定方法をとっている。「バインダー」の方が成功率が高いのは、異界に取り込まれ危険な状態の「シフター」と、それを救う「バインダー」の立場をそれぞれ表現しているといえよう。

どのようなシステムがあるのか知りたい時や、購入するシステムに迷っている際に参考となることを願う。

最後に

TRPGは奥が深く、どこまでも追求していける楽しい遊びだ。しかしこれから本格的に遊ぶという人には、気をつけてほしい点が2点ある。

一つ目は、スケジュールにゆとりを持つこと。時間の都合で、複数日にまたがりセッションを行うことも珍しくはない。しかし、その日程を詰め込みすぎることで、心も体も疲弊してしまうことがある。
また「卓修羅」と称されるほどに毎日のようにTRPGの予定を詰め込むと、新しいTRPGの予定を入れられなくなったりしてしまう。TRPGを休む日をつくっておくことを強くお勧めする。

二つ目は、キャラクターを動かすスタイルなどによっては、PCが受けた刺激をPLが擬似体験することもあり、それが原因でメンタルが不安定になってしまうこともある。無意識にPLとPCの境目を曖昧にしてしまい、対人トラブルへと発展することも時たまあるようだ。


スケジュールと心には余裕を持って遊ぼう。

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