[B4UT Advent Calendar 2021]【RiJ目前号】今日から走れる!RTA概論
こんにちは。B4UT3rdのあんでぃと申します。アドカレ3度目の𝐎𝐌𝐄𝐘𝐎𝐆𝐎𝐒𝐇𝐈 𝐓𝐈𝐌𝐄いくぜ!
このアドカレの他の記事はここから読めます。ぜひ。
さて、今回のテーマはRTAです。音ゲーと何も関係なくてすみません。
RTAとはReal Time Attackの略で、基本的には「ゲームをいかに早くクリアできるか」を競う競技です。近年ではその知名度はだいぶ上がってきており、実際にYouTubeやニコニコ動画には超難度の技を駆使するプレイヤーによる動画が溢れています。
しかし、こう思っている方はいないでしょうか。
「RTAって聞いたことあるけど難しそう…」
「見る分にはいいけど自分で練習する時間はないなあ…」
確かに、ある意味でこれは正しいです。本気で記録を出そうと思ったら高度なテクニックにもチャレンジせねばなりませんし、そのためには莫大な練習量が必要になることでしょう。
ですが、これはあくまで全国トップを目指して争う段階の話。そのレベルのプレイを見てチャレンジを諦めてしまうのは、全一の動画を見て音ゲーをやめてしまうようなものです。もっとカジュアルなゲームプレイの一形態としてRTAを紹介する、というのがこの記事の趣旨になります。
これは自分のお気持ちなのですが、「できるだけ早く」という志のもと、タイマーをつけてゲームをプレイすればそれはもう立派なRTAです。
完璧な走りができる必要などありません。スピードを自分なりに追求する段階で、通常プレイでは味わえない面白さが体感できるはずですから。
この記事では、RTAとは?というところから始め、RTAの面白さ、プレイの際の手順など、基本的なところを解説していきます。これを見れば今日からあなたもRTA走者!
0 筆者プロフィール
僕が走っているのは「New Super Mario Bros. U Deluxe」のRTA(さらっと言いましたが、RTAをする際には「走る」という動詞を使うのが一般的です。ちなみに英語ではRTAのことをspeedrunningと言います)。ステージを順番にクリアしてピーチ姫を救出する、スタンダードな2Dマリオのゲームですね。カテゴリーは100%、つまりスターコインや裏ゴールを含めた「完全クリア」です。後で解説しますが、他にも「any%」や「All Castles」といったカテゴリーが存在します。
![](https://assets.st-note.com/img/1638855346967-RfQYzMo7M7.jpg?width=1200)
自己ベストは4時間10分程度、普通にやると4時間30〜50分というところでしょうか。世界記録は確か3時間20分くらいだったと思うので、だいぶ下手な部類に入ります。これでもだいぶ上手くなった方です(最初の頃は5時間切れたら上手かった)。
実は3年になってから大学が忙しくなったり音ゲーの方に真摯になったりしてそこまで走れていないのですが、いつか3時間台出してみたいですね。ちなみにDSの方のマリオも一度100%RTAを試みたのですが、3-2が苦手すぎて諦めました。あの揺れるキノコなんやねん…
![](https://assets.st-note.com/img/1639015399247-2klzQtLL9e.png)
1 RTAとは
最初に述べたとおり、RTAとは「いかにゲームを早くクリアするか」を競う競技のことを指します。Real Timeの名のとおり、ゲーム内のプレイ時間ではなく現実世界での時間経過がカウントされます。したがって、正式に記録を出す場合基本的にトイレ休憩などもカウントされることになります(ただし、あまりに長時間におよぶRTAではルールで何時間あたり何分の休憩をとっても良い、という内容が定められていることがあり、その場合タイマーをストップすることが許容されます。また、後述しますが趣味レベルなら別に途中で区切ってやっても構わないでしょう)。
上でルール、といいましたが、同じゲームのRTAを走るにしても、「カテゴリー」と呼ばれる幾つかの部門があります。もっとも一般的なのは「any%」と呼ばれる、ルートや条件を問わずとにかく早くエンディングに到達することを目指すカテゴリーですね。
そのほかにも、僕の走っているような完全クリアを目指す「100%」の他、そのゲーム特有のカテゴリーが存在することもあります。例えば「スーパーマリオオデッセイ」では、特定の条件を満たしてマリオの着せ替えを入手し、マリオの乳首を撮影するまでの時間を競う「Nipple%」というカテゴリーが存在します。
![](https://assets.st-note.com/img/1639022590016-Qd4h7gRi4S.jpg?width=1200)
また、バグの使用を許可するか否かによって「glitched」「glitchless」といった下位区分が付与されたりすることもあります。特に、ポケモンやドラクエなどのRPGではバグを用いるかどうかで数時間単位の差が生まれることがあり、そうしたゲームにおいてはこうした分類がされがちです。逆にアクションゲームにおける壁抜けなどは「テクニック」として扱われることも多く、このような分類がなされないこともしばしばです。
2 なぜRTAか
・自力で何かを成し遂げる達成感
RTAで求められる能力は、通常プレイで求められるものとは大きく違ってきます。
ゲームの流れに従ってクリアを目指す、というだけではなく、自分の技量に見合ったルートを構築し、ミスをした際にはどうやって傷を最小限に収めるかを考え、といった風に頭を働かせ続ける必要がありますから、通常プレイに比して自分の関与する領域が大きく、それゆえに達成感も相応のものになると言えるでしょう。
RTAは言うならば自分との戦い。走れば走るほど「ここはまだ縮められるな〜」というところが出てきますから、本当に無限に遊べます。この辺りを乗り越えて記録を出せたときの喜びは、音ゲーマーの皆さんであればよくご存じではないでしょうか。
・ゲームの知らなかった側面を知れる
僕の考えるRTAの最大の長所はここです。
タイムアタック、という普段と違う楽しみ方をしようとすると、必然的にそのためのテクニックを取り入れることになります。
その段階で、「ここ通れたんだ…」「ここでそのアイテム取れたの!?」「この技にこんなシナジーが…」みたいな新しい気づきが生まれてきます。
たびたびマリオの例で恐縮ですが、まずはこちらをご覧ください。
こちらはNew Super Mario Bros. U Deluxe(以降マリオU)の1-2の様子。これから土管に入って地下ステージが始まるところです。
![](https://assets.st-note.com/img/1640014325569-lqBWIGwG5K.jpg?width=1200)
一見なんの変哲もないようですが、実は、
![](https://assets.st-note.com/img/1640014485171-LrvyE8QCgs.jpg?width=1200)
この上、登れます。
登った先を進んでいくともうゴールなので、特定のパワーアップアイテムを入手し、ここに登ることで10秒程度でこのコースを突破することができます。
他にも、一見難しそうなこんな場所も…
![](https://assets.st-note.com/img/1640014605491-bbk56mZhw7.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1640014619865-mcLWuBXUUT.jpg?width=1200)
横を通り抜けることができます。
このように、通常プレイでは知り得なかったような内容が、「早くクリアしよう」という特殊な目標を立てることで見えてくることになります(実際、僕はRTAを始めてトッププレイヤーの動画を見るまでこんなことには全く気がつきませんでした)。
せっかく買ったゲーム、知り尽くさずにいてはもったいない!
RTAを通して、知られざる領域に目を向けてみませんか?
3 実際に走ってみよう!
お待たせしました。それでは、実際に走る際の手順を大まかに説明していきたいと思います。最初にも書いたように、この記事はカジュアルにRTAを楽しもう、という趣旨の記事ですので、そのために大切なことなども合わせて書いていこうと思います。本気で記録を狙う、とかになると話は変わってきますが、そこはご容赦ください。
3−1 ゲームを決めよう
大前提。
自分が好きなゲームであればなんでもいいです。アクションが苦手ならRPGなどを選択する手もありますし(こちらはこちらで奥が深いです)、基本的にそこそこマイナーなゲームであっても困ることはありません。なんだかんだで動画は転がってるので。
3−2 カテゴリーを選ぼう・ルールを確認しよう
上でちょっと述べましたが、同じゲームであってもいくつかカテゴリーが存在し、それぞれでルールが違います。したがって、ゲームを決めたらカテゴリーを決めることになるのですが、その際調べなければならないのが以下の二点です。
・存在するカテゴリーとそのクリア条件
「any%」は大体どのゲームにも存在していますが、他はゲームによってまちまちです。また当然ですが、カテゴリーによってクリア条件は変わってきますので、細かいところまでしっかりと確認する必要があります。
・いつタイマースタートで、いつタイマーストップか
時間の計測を開始する地点、そして終了する地点はゲームによっても、カテゴリーによっても様々です。マリオUの例で言うと、「any%」ではラスボスであるクッパに最後の一撃を加えたところでタイマーストップですが、「100%」では条件を満たすと出現する特殊メッセージが画面に表示されたところでタイマーストップになります。
で、それを調べるときに役立つサイトがこちら。
「speedrun.com」です。
これはもともと正式に記録を提出するプラットフォームなのですが、実際にはここに記録を提出しているプレイヤーはそう多くなく(動画撮影とかが色々と面倒なため)、ルールの確認だけして各自で走っているプレイヤーも多数います。
![](https://assets.st-note.com/img/1640050991374-thmDzy5076.png?width=1200)
アクセスしてみるとこのような画面が表示されると思います。
画面上のツールバーみたいなところに検索フォームがあるのがわかるでしょうか。ここにゲーム名を打ち込むと、たいていのゲームは出てきます。出てきたサジェストをクリックすると、各ゲームの個別ページに飛びます。
引き続きマリオUの例で説明を続けていきますが、ゲーム別の個別ページはこのようになっています。
![](https://assets.st-note.com/img/1640051314411-F0Bo8koWsP.png?width=1200)
世界レベルのプレイヤーによる記録がずらりと並んでいますが、まず見るべきはそこではなく、画面中央のカテゴリー一覧です。
図ではAny%、All Castles、100%の3つのカテゴリーがあることが分かりますね。
カテゴリーを選択したら、横の「View Rules」というボタンを押してみましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1640051545072-KAHVjIHxSB.png?width=1200)
すると、以下のようにカテゴリー別の詳細なルールを見ることができます。
![](https://assets.st-note.com/img/1640100879087-xgXOscxf6F.png?width=1200)
「Game Rules」がカテゴリーを問わず当該ゲームに共通のルール、「Category Rules」がカテゴリー特有のルールを指します。特にTiming starts〜とTiming stops〜という言い回しには注目しましょう。それぞれ計測開始時点と終了時点がどこに当たるのかを説明してくれています。
※ただし、マイナーめのゲームだとこのような説明がないこともあります。その場合、トッププレイヤーの動画を見て判断することになるでしょう。次に説明しますが、基本的に何をやるにせよトッププレイヤーの動画を参考にすることになるので、そこでやることが一つ増えるだけです。
こうした情報をもとに、やるカテゴリーを決めましょう。基本的に「any%」から手をつけるのが手軽でおすすめですが、他のカテゴリーもそれぞれ違った面白さがあります。通しで数時間かかるようなカテゴリーでも趣味範囲なら分割してプレイすることも可能ですから、自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。
3−3 チャートを組もう
チャートとは、「最速」を目指すための道筋のこと。すなわち、もっとも効率の良い攻略ルートのことです。
いくらRTAをやると言っても、これを一から自分で作っていては時間がいくらあっても足りません。そこで、一般的にはすでに存在しているチャートを参考にすることになります。
やり方は大きく分けて二つ。
・YouTubeで動画を探す
一番分かりやすい方法です。「(ゲーム名)RTA WR」などと検索すれば、多くのゲームでなんらかの動画がヒットするはずです(WRはWorld Recordの略)。これをもとに自分でルートを書き留める、というのが一つでしょう。
・speedrun.comを活用する
先ほど見たspeedrun.comの個別ページには、「Guides」という、新規走者向けの手引きが掲載されているページがあります。
![](https://assets.st-note.com/img/1640135879203-i0o9HzW2GE.png?width=1200)
ここを見ると、トッププレイヤーの方が既にチャートを電子ファイルでアップロードしてくれているので、それをそのまま使う手もあります。ただし、テクニックの詳細までは書いてくれていないことも多いですし、またなぜそのルートになるのか、というところも割と分かりづらいです。この場合でもある程度は動画に当たった方が良いでしょう。
3−4 タイマーを用意しよう
タイムアタックですから、当然計測のためのタイマーも必要です。
といっても、規約でどれを使え、と決まっているわけではなく、別に携帯のストップウォッチを使っても構いません。ですが、RTAに特化したタイマーというものはやはり存在します。実際に便利ですし、気持ち的にもRTAしてるなー、と思えるので、ここではその代表である「LiveSplit」について紹介していきます。
公式サイトはこちら。
![](https://assets.st-note.com/img/1640137040786-JcAp2aFxhD.png?width=1200)
このように、区間ごとの計測ができるのはもちろん、自己ベストと比べてどのくらい早いか遅いか、といったことも視覚的にわかりやすく表示してくれます。上の例だと「Hero's Sword」と名付けられた区間を自己ベストより4.7秒早く通過した、ということになります(ちなみに、このように細かく区切られた区間のことを「セグメント」と呼びます)。
ただ、Mac環境での動作が割と怪しいのが欠点です。Macユーザーの方には、このLiveSplitのブラウザ版である「LiveSplit One」をお勧めします。僕もこちらを長らく使っていましたが、特に支障はありませんでした。
使用法についてもざっくり解説します。
Oneの方ではページを開くと、左側に以下のような画面が表示されるはずです。
![](https://assets.st-note.com/img/1640138744462-bPSfDU6E03.png)
一番上の「Splits」というところをクリックし、画面上部の「+Add」というボタンを押します。するとこのように新しいファイルが作成されます。
![](https://assets.st-note.com/img/1640138884555-7RfxR7jM8B.png?width=1200)
左端のファイルのアイコンをクリックし、画面左の「Edit」を押すと下のような編集画面に移行するので、ここでゲーム名や区間などの情報を設定します。
![](https://assets.st-note.com/img/1640138985617-fFHNOiwAQZ.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1640139081080-Kbug0plPqr.png?width=1200)
終わったら「OK」を押して保存します。
使う際には「Splits」から使いたいファイルを先ほどの要領で開き、「Back」でホーム画面に戻ります。すると、ここで作った区間がタイマーと一緒に表示されるはずです。
![](https://assets.st-note.com/img/1640139240550-lmTA1wSbJm.png)
他にも細かい機能はたくさんあります(レイアウト調整など)が、それらは使いながら慣れていくとよいでしょう。ブラウザ版でない普通のLiveSplitのインストール方法に関してはウェブ上にたくさん記事が転がっていますので、そちらを参考にしてください。
3−5 Let's Play!
ここまでやったらあとはプレイするだけです。
大事なことは「まず走り通す」ということ。一発目が失敗だらけなのは当たり前です。むしろ最初のタイムが酷ければ酷いほど伸びしろが生まれ、よりRTAを楽しめると言ってもいいでしょう。実際に僕も最初はミスをしまくり一周6時間に達しようかという勢いでしたが、それゆえに更新の余地が無限にあり、それがモチベーションになっていました。
最後に、「カジュアルにRTAをプレイする際のコツ」みたいなものを二点ほど挙げておきます。
・最初から無理なテクニックにチャレンジしない
RTAのテクニックの中にも難度があり、トッププレイヤーが採用しているからといってそれをそのまま採用しようとするのは危険です。先ほどチャートを組む際にトッププレイヤーの動画を参考にしよう、と言いましたが、何もこれは全てを真似しろ、という意味ではありません。
参考にできるところは参考にし、これは無理だな、と思ったらその箇所は普通にプレイした方が良いです。高度なテクニックに挑戦するのは、基本動作を磨き、簡単目のテクニックをこなせるようになってからでも遅くはありません。
・時間がなければ分割する
ここまで何度かほのめかしてきましたが、時間がない時には「今日はこの区間まで、明日はこの区間まで」みたいな感じで区間を分割して楽しむのも一つの手です。厳密にいうとこれはRTAではなく「TA」(タイムアタック)に分類されるものですし、こうした記録は正式な記録としては認定されませんが、趣味で楽しむ分には問題ないでしょう。先ほどのLiveSplitのように全体を区間で分割したタイマーがあるとこういうときにも便利ですね。
僕がRTAを(ある程度)気軽に勧めるのはこの手があるからです。下準備が済めば一日数十分しか時間が取れなくても大丈夫ですし、これによって達成感が大きく損なわれる、ということは個人的にはありませんでした。
もちろん、記録更新のためにはある程度の練習量は必要ですし、チャートを組むにもそれなりの時間はかかります。が、世間で思われているほどRTAは選ばれしものの遊びではない、ということが伝わればいいな、と思います。
4 おわりに
ここまで読んできて、少しでもRTAに対する関心が高まったそこのあなた!
自分で走ってみよう、とは言いましたが、とはいえまずは雰囲気を掴みたいですよね。ということで。
「RTA in Japan」を見てみませんか?
RTA in Japanとは
・年に2回開催されるRTAの祭典
・様々なゲームにおける国内トップクラスの走者が揃い踏み!
・全編Twitchで無料配信、YouTubeにはアーカイブも残る
・配信収益は毎回どこかしらに寄付される(今回はコロナ対策機関)
といった感じのイベントです。
このRTA in Japanが、今年の冬は12月26日から始まります。
31日まで計6日間、総勢90人程度の走者による華麗なプレイを見ることができます。個人的な推しは28日にBowser's FuryをプレイするPlutoさんですかね。
公式サイトはこちら↑
年末はRTAを見てモチベーションを高め、そして春休みにでも試しに何かしらのRTAを始めてみてはいかがでしょうか。きっと、新しい楽しさを発見できるはずです。
久々にこんな長い文章を書きました。それでは。