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「103万円の壁」までは、所得税がかからない。どういう理屈でしょうか。知っておきたい給与所得控除と基礎控除。
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国会では、「103万円の壁」の議論が進行中です。パートやアルバイトの方が、1年間にこの金額以上を給与収入としてもらうと所得税が課せられると聞いているけれど、どういう理屈なのでしょうか。
所得税の計算の中では、所得の分類は、給与所得、事業所得、不動産所得など10種類もあり、原則、それぞれ別々に収入金額からそれぞれの必要経費を差し引き、各種の所得の金額を算出します。それぞれの所得毎に計算方法が決められています。
例えば、個人事業主は、1年間の事業収入からその収入を得るためにかかった必要経費を差し引いて「事業所得」を算出します。しかし、会社勤めのサラリーマンである給与所得者は、給与収入はわかるけど、実際に支出した経費を個別に控除することは困難です。
この背広はお客さまを訪問するために買ったんだけど、この靴も、靴下も、ハンカチも・・・、私用としても使っているけど、といった場合、どこまで必要経費として認めてくれるのか混乱してしまいます。このため、給与所得の算出には、給与収入に応じて一定額を「必要経費」として控除する仕組みが設けられています。
上の図表は、国税庁HPに掲載されているものですが、「必要経費」として、給与収入に応じた「給与所得控除額」が定められています。
では、図表に従って計算してみましょう。例えば、給与収入500万円の人の
給与所得控除額は、5,000,000円×20%+440,000円=1,440,000円、
給与所得は、5,000,000円-1,440,000円=3,560,000円となります。
同じように計算してみると、
給与収入が700万円の人は、給与所得控除額が180万円、給与所得は520万円
給与収入が1000万円の人は、給与所得控除額が195万円、給与所得は805万円
パートやアルバイトをしている主婦などが該当しやすい事例をみてみましょう。
給与収入が150万円の人は、給与所得控除額が55万円、給与所得は95万円
給与収入が103万円の人は、給与所得控除額が55万円、給与所得は48万円
給与収入が55万円の人は、給与所得控除額が55万円、給与所得はゼロ
所得税には、すべての納税者が無条件で受けられる「基礎控除」があります。「基礎控除」の目的は、納税者の最低限の生活費を保障するもので、48万円となっています。少しでも給与収入をもらっている人は、「基礎控除」48万円と「給与所得控除額」の最低55万円を加えた103万円が控除されます。つまり給与収入103万円までは所得税がかからないことになります。これが、「103万円の壁」と呼ばれているものです。