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「在職老齢年金制度」の見直し案の狙いは、元気で健康な高齢者が継続して働く意欲を持てるようにすること
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2024年12月24日、5年に一度の年金制度改正に向けた厚生労働省の社会保障審議会年金部会の報告書案が示されました。2025年の通常国会での法案提出を目指しています。その中で提示された、元気で健康な高齢者が、65歳以降も継続して働く意欲を持てるようにする「在職老齢年金制度」の見直し案について触れます。
「在職老齢年金制度」とは、基準額以上の給与収入がある高齢者の年金受給額を減額するもので、現行の制度では、賃金(ボーナス込み月収=月の給与+ボーナス×1/12)と厚生年金の合計額が、基準額である50万円を超えると、基準額を超過した分の半分の厚生年金が減額される仕組みです。
今回提示された見直し案は、①基準額を62万円とする、②同71万円とする、③減額を撤廃する、の3案です。「在職老齢年金制度」って、そもそもよくわからないけど、見直しの背景、目的、効果、弊害等について、社会保障審議会年金部会(2024年11月25日)の資料からみてまみしょう。
「在職老齢年金制度」は、現役世代の社会保障負担が重くなる中で、年金の受給権を有する者でも、報酬のある者は年金制度を支える側に回ってもらうという考え方に基づく仕組みです。厚生年金の適用事業所で就労し、一定以上の賃金を得ている60歳以上の厚生年金受給者を対象に、 原則として被保険者として保険料負担を求めるとともに、年金支給を停止することとしています。なお、老齢基礎年金は減額されることはありません。
現行の制度では、65歳以上の在職している年金受給権者の16%が支給停止の対象となっています。「65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)」による支給停止対象者数は50万人、支給停止額は計4,500億円です。
一般の方に「厚生年金を受け取る年齢になった時の働き方」について尋ねてみると、「年金額が減らないように、就業時間を調整しながら会社などで 働く」と回答した人の割合が44%でした。約半分の人が、働くとその分厚生年金が減額される働き損を意識して、継続して働くけど就業時間を調整しながらとしています。
2021年4月から施行された「改正高年齢者雇用安定法」では、企業に対して、65歳までの雇用確保(義務)と、70歳までの就業確保(努力義務)が課されました。また、産業界でも、人手不足を補うために、元気で健康な高齢者には引続き働いてもらいたいという社会的要請があります。
多くの産業に人手不足が生じ、就業者も高齢化していく中、雇用主側に「在職老齢年金制度」の影響をヒアリングすると、「人材確保や技能継承等の観点から、高齢者活躍の重要性がより一層高まっているが、在職老齢年金制度を意識した就業調整が存在している。今後、高齢者の賃金も上昇していく傾向にある中で、高齢者の就業が十分に進まないと、サービスや製品の供給に支障が出かねない」といった旨の声が寄せられています。
「在職老齢年金制度」が、高齢者の就業意欲を削ぎ、さらなる労働参加を妨げている例も存在していることを踏まえて、高齢者の活躍を後押しし、できるだけ就業を抑制しない、働き方に中立的な仕組みとする観点から、「在職老齢年金制度」の見直しが検討されました。
「在職老齢年金制度」を撤廃する案が出されています。そうすれば、支給停止対象者がなくなりますが、ただ、年金財政は悪化するので、将来世代の給付水準が低下するとことを懸念の声も出ています。このため、「在職老齢年金制度」を撤廃する案に加え、基準額を引上げる案が出されました。
現在、65歳以上で基準額50万円を超過して、厚生年金が一部でも支給停止になっている人は50万人、支給停止額は計4,500億円です。今回提示された基準額引上げ案は、①基準額を62万円とする、②同71万円とするの2案です。基準額を62万円に引上げると同30万人計2,900億円、71万円に引上げると同23万人計1,600億円となる試算です。
いずれにしても、元気で健康な高齢者にいつまでも挑戦する気持ちをもって、働いてもらえる環境を作り出すことが、重要だと思います。