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季節調整値でみると、女性の正規従業員数は上昇傾向。キャリア意識の高まりと環境整備、政府・企業の後押しの成果。
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2つの図表は、いずれも「男女別にみた正規従業員と非正規従業員の推移」を月次ベースで表したものです。どちらも総務省統計局が発表したものです。見比べてみて、どんなことがわかりますか。
上の図表の方が、下の図表に比べて、折れ線がギクシャクしていませんか。下の図表は、上の図表に比べると折れ線の変化が小さいように見えます。
上の図表は、調査した「原数値」を月毎にそのまま繋ぎ合わせたものです。下の図表は、「原数値に季節調整を行った値」(季節調整値)を繋ぎ合わせたものです。少しなだらかになります。経済統計の数値を見る際に使われる「季節調整値」とは、季節的な要因による変動を取り除いた数値のことです。
なぜ「季節調整」が必要なのでしょうか?
経済活動は、季節によって変動するからです。特に、個人消費は、気温や休日の影響を大きく受けます。夏には冷たい飲み物の売上が増え、冬には暖房器具の売上が増えます。年末年始やゴールデンウィークなどの連休は、旅行やレジャー産業の売上に影響します。ボーナス時期や決算月など、社会的な慣習も消費行動に影響を与えることがあります。個人消費の動きを反映して、アルバイトやパートなどの非正規従業員も、年末商戦の時期に増加したりします。
これらの季節的な要因は、11月に比べて12月の売上が増えても、それは毎年のことであって、売上げの基調的な動きはわかりません。そこで、季節的な変動を取り除く「季節調整」という処理が行われます。
季節調整は、過去のデータから季節変動のパターンを推定し、季節変動の影響を原数値から除去することで算出されます。皆さんがよく知るGDP(国内総生産)は、四半期ベースで公表されます。前期に比べ、プラスだったとか、マイナスだったとかと報じられますが、この場合も「季節調整値」で判断されたものです。季節調整値を見ることで、季節的な要因に左右されずに、経済の長期的なトレンドや景気の変化点をより正確に把握することができます。
経済統計では、多くの場合、前期(半期・四半期)や前月と比較する場合は、季節要因を除去した「季節調整値」で判断されます。前年比(前年同期比、前年同月比)は、1年前と景気や経済の状況を比較するものですが、同じ季節同士の比較なので、季節要因は除去されていると考えて、原数値で比較します。
「男女別の正規・非正規従業員の推移」をみてみましょう。上の図表も下の図表も、いずれも月毎の数字を繋ぎ合わせていますが、その基調的な動きをみるためには、「季節調整値」で表された下の図表をみて判断する必要があります。
下の図表をみて、この10年間の変化として最も変化を感じるのは、グリーン色の折れ線で示した「女性の正規従業員数」が上昇トレンドにあることです。女性の正規従業員数が増加しているのは様々な要因があります。
女性のキャリアに対する意識や経済的自立への意識が高まることで、安定した雇用形態である正規雇用を希望する女性が増えています。
社会全体で、育児休業や介護休業を取得しやすい環境整備や、待機児童問題の解消に向けた取り組んだことで、出産・育児後の女性が離職せずに、正規雇用を継続しやすくなっています。
2016年に施行された「女性活躍推進法」は、企業に対して女性の活躍状況の公表や行動計画の策定を義務付けることで、女性の正規雇用を促進する効果があります。企業側でも女性の活躍推進が、企業の成長や経済の活性化に繋がると認識されるようになりました。
また、働き方改革の推進により、在宅勤務やフレックスタイム制度の導入が進み、仕事と家庭の両立がしやすくなりました。長時間労働の是正やワークライフバランスを重視する企業が増え、女性が働きやすい環境が整いつつあることも、女性の正規従業員数の増加の要因として挙げられます。