女性の四年制大学の進学率が急速に上昇。女性の社会進出の促進や社会における価値観の多様化が要因。
先日、大学入試センターによる「大学入学共通テスト」が実施されました。最近は、少子化の影響もあって、大学進学率が全般に高まっています。上の図表は、文部科学省の中央教育審議会大学分科会に提出された資料ですが、「男女別の18歳人口と大学進学率等の推移」を示しています。
四年制大学(短大を除く大学)の進学率を令和5年でみると、男性60.7%、女性54.5%となっており、男性の方が若干高くなっています。ただ、女性の場合、短期大学への進学者も少なくないため、短大も含めた大学の進学率でみると、女性60.6%(四年制大学54.5%+短大6.1%)となっており、男性61.6%(四年制大学60.7%+短大0.9%)と、ほとんど変わらない水準になっています。
ここで、特に注目したい点は、女性の四年制大学の進学率が急速に上昇していることです。四年制大学の進学率は、この10年間で男性54.0%⇒60.7%と+6.7%ポイントの増加に対して、女性45.6%⇒54.5%と+8.9%ポイントの増加となっています。
女性の四年制大学の進学率の急速な上昇は、社会的、経済的、政策的な要因が複雑に絡み合っています。まず、挙げられるのが、女性に対する社会の意識の変化です。男女平等に関する男女機会均等法、女性活躍推進法などの法律や政策が、教育や職場での男女差別を減らす効果を上げたことで、国民全体のジェンダー平等意識が向上しました。
この結果、女性の社会進出の促進が図られ、女性が社会で活躍することが当たり前になりました。そのため、女性に対する教育の重要性に関する社会的認識が向上し、女性が学ぶことを応援する風潮が強まり、高学歴が求められるようになりました。
結婚や出産に関する価値観が多様化し、女性が学問やキャリアを優先する選択肢が広まりました。結婚や出産だけが女性の生き方ではなく、様々な選択肢があるという意識が広がり、自己実現のために大学進学を選ぶ女性が増えています。
家庭環境も変化しています。親自身の学歴が向上し、子どもの教育に対する意識も高まりました。家庭の経済力も向上し、親が子どもの教育費を支える余裕が増えた結果、女性も含めた高等教育進学が現実の選択肢となっています。 少子化に伴い一人っ子が増え、教育への投資意欲が高まったことも背景にあります。
大学教育の内容も多様化し、女性の興味関心に合った学びの場が増えたことも要因の一つと考えられます。社会が高度化し、専門性の高い人材が求められるようになり、大学での専門知識の習得が重要視されるようになりました。女性が理系分野に進出するための奨学金制度などが整備されています。女性の職業選択肢が増え、高度な教育が必要な医療、教育、研究職などの専門職への進出が一般的になっています。現代の労働市場では、高度な教育を受けた人材が求められることが多く、女性が四年制大学を卒業することが、キャリア形成において重要となっています。
このため、これまで短大に進学していた層も四年制大学を目指すようになりました。短大の中には、短期大学部を廃止し、四年制大学に転換を図る例も少なからずみられています。
最近では、政治家、企業経営者、学者など、さまざまな分野で活躍する女性が増加するなど、女性の成功例が目に見えるようになり、若い世代の女性がその後を追おうとする動機付けになっています。これも女性の大学進学率の上昇を後押しをしています。この動きは、女性自身のキャリア形成だけでなく、社会全体の発展にも大きな影響を与えています。