「アセットオーナー・プリンシプル」によって、企業年金は運用力の向上を期待できる?
日本経済新聞は、金融庁が企業年金が運用を委託するアセットマネジメント会社などに対して、一斉にモニタリング調査を始めると報じました。
アセットマネジメント会社は、確定給付年金型企業年金(DB)、企業型確定拠出年金(企業型DC)、個人型確定拠出年金(iDeCo)の運用を受け持っていますが、これらの業務の実態調査を実施するとのことです。
この背景には、政府が、「新しい資本主義」の一つとして打ち出した「資産運用立国の実現プラン」(2023年12月公表)に基づいて策定した機関投資家向けの行動規範である「アセットオーナー・プリンシプル」(2024年8月公表)があります。
「アセットオーナー・プリンシプル」は、アセットオーナーが受益者等の最善の利益を追求するために、透明性と説明責任を高め、運用力の向上を図ることを目的としています。
企業年金は、従業員の老後のために積み立てられた資金の運用を行う典型的なアセットオーナーです。積み立てられた資産をより高い収益を得るために様々な金融商品に投資します。この投資先の選定や、運用会社への指示など、運用に関する決定権を有しています。運用によって得られた収益は、最終的に元従業員である企業年金受給者に支払われます。そのため、企業年金は、安定的な年金給付を行うために、適切な運用を行う責任を負っています。
企業年金の運用は、例えば、企業型DCであれば、信託銀行や銀行、生保、証券、損保などが受託しており、多くの場合、その傘下の運用会社であるアセットマネジメント会社が運用しています。金融庁は、これらの運用会社が、加入者である受益者本位の運用を行っているか、運用目的が明確か、運用に関する意思決定プロセスが透明で、適切なガバナンス体制を構築しているか、資産運用に伴うリスクを適切に管理し、損失を最小限に抑えているか、という点などを調査することになるとみられます。
「アセットオーナー・プリンシプル」による効果としては、投資家への信頼向上、長期的な資産形成への貢献、資産運用が効率化することによる経済全体の効率化が期待されています。