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マイナンバーカードの普及率は77%。今後、個人情報保護等の不安感を払拭して普及率を100%に近づけられるか。

(出所)総務省HP「マイナンバーカードの交付状況」のデータを基に筆者作成

マイナンバーカードの全国平均の保有枚数比率が2024年末に77%に上昇しました。1年前の2023年末が73%でしたので4%ポイント上昇、現状4人に3人以上は保有しています。上の図表に、全国平均と都道府県別に挙げていますが、宮崎県が84%、鹿児島県が82%と高い水準にあります。

2024年末保有率「77%」をどう評価するかは難しいのですが、国際的にみると、マイナンバーカードに相当するものが各国にもあります。その普及率と比べてみましょう。

韓国では住民登録証の普及率がほぼ100%、エストニアではIDカードの普及率が90%以上、デンマークではCPR番号の普及率がほぼ100%、スウェーデンではPINコードの普及率がほぼ100%となっています。

一方、フランスでは個人番号制度はあるものの、国民の抵抗感が強く普及率は低く、アメリカでも社会保障番号(SSN)は広く利用されていますが、厳格な本人確認手段としては機能していません。

さて、総務省のHPをみると、マイナンバー制度について解説されています。「マイナンバー制度は、国民の利便性の向上、行政の効率化、公平・公正な社会の実現のための社会基盤です。マイナンバーは、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関が保有する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されます」。

マイナンバー制度の導入の3つのポイントを説明すると、
①国民の利便性の向上 
これまで、市区町村役場、税務署、社会保険事務所など複数の機関を回って書類を入手し、提出するということがありました。マイナンバー制度の導入後は、社会保障・税関系の申請時に、課税証明書などの添付書類が削減されるなど、面倒な手続が簡単になります。また、本人や家族が受けられるサービスの情報のお知らせを受け取ることも可能になる予定です。

②行政の効率化 
マイナンバー制度の導入後は、国や地方公共団体等での手続で、個人番号の提示、申請書への記載などが求められます。国や地方公共団体の間で情報連携が始まると、これまで相当な時間がかかっていた情報の照合、転記等に要する時間・労力が大幅に削減され、手続が正確でスムーズになります。

③公平・公正な社会の実現
国民の所得状況等が把握しやすくなり、税や社会保障の負担を不当に免れることや不正受給の防止、さらに本当に困っている方へのきめ細かな支援が可能になります。

健康保険証とマイナンバーカードが一体化され、健康保険証が廃止されるなど、政府はマイナンバーカードの利用範囲拡大や利便性向上に向けた取り組みを進めています。それでも、日本のマイナンバーカードの普及率が何故100%に近づかないのでしょうか。様々な要因が絡み合っていると考えられます。

まず挙げられるのが、個人情報保護に対する懸念です。マイナンバーは非常に機密性の高い個人情報であり、その管理体制やセキュリティ対策に対する国民の不安感が根強く残っています。過去に個人情報漏洩事件が発生したことも、不信感を増幅させる要因となっています。次に、プライバシー侵害への懸念です。個人の行動履歴や属性が政府に把握されることへの警戒感も存在します。

 過去に住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)という全国的な個人情報管理システムが導入された際、情報漏洩やプライバシー侵害への懸念から国民の反発を招き、普及が進みませんでした。この経験が、マイナンバー制度に対する警戒感を強める要因の一つともなっています。

国民の意識として、これまではマイナンバーカードがなくても、他の本人確認手段や行政サービスを利用できるため必要性を感じにくく、日常生活に支障がないと感じる人も多かったと思います。

しかしながら、現在は併用が認められている健康保険証の廃止が本格的に進むと、日常生活に支障が出てくるため、マイナンバーカードの普及率が上昇すると予想されます。個人情報保護等の不安感を払拭して、普及率100%に近づけられるでしょうか。


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