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経済産業省が発表した「鉱工業の在庫循環図」をみると、「意図せざる在庫減局面」に入り、製造業は景気回復の兆し。

(出所)経済産業省「鉱工業指数参考図表集 2024年12月速報」(2025年1月31日公表)
(出所)経済産業省大臣官房調査統計グループ経済解析室
「鉱工業指数のしくみと見方」(2019年7月)

2025年1月31日、経済産業省から鉱工業指数の公表がありました。公表された指数を用いて「在庫循環図」を描くことで、製造業の景気動向を把握することができます。一番上の図表は、経済産業省が「鉱工業の在庫循環図」を参考図表として公表したものです。

経済産業省は、「鉱工業指数のしくみと見方」で、「在庫循環図」について、二番目の図を用いて、次のように解説しています。

「景気変動を機敏に判断するには、在庫をみるのが有効です。これは、在庫の変動が生産活動に大きな影響を持っているからです。先ず、需要が好調になり始めると在庫が一時的に減少します。次に企業が先行きの需要の拡大を見込んで在庫を積み増すと、生産活動は一層活発化することになります。逆 に、需要の低迷から在庫が積み上ってくる と、今度は企業は在庫過剰であると判断して在庫減らしのため生産を抑えることから 生産活動は鈍化するでしょう。このように、 在庫局面は、通常「①意図せざる在庫減局面」→「②在庫積み増し局面」→「③在庫積み上がり局面」→「④在庫調整局面」の4つの局面を循環していくことになります。 これを表したのが「在庫循環図」です。現在の在庫局面を見ることによって、今後の生産活動についてある程度予測することも できます」。

もう少し詳しくみてみましょう。「在庫循環図」は、縦軸に「在庫指数」の伸び率、横軸に「生産指数」の伸び率をとり、製造業の生産と在庫の関係を視覚的に表したグラフです。

横軸(X軸)に生産の前年比増減率を示します。ゼロより大きく(プラス)ならば、生産が増加、ゼロより小さく(マイナス)ならば、生産が減少していることを意味します。次に縦軸(Y軸)に在庫の前年比増減率を示します。ゼロより大きく(プラス)ならば、在庫が増加、ゼロより小さく(マイナス)ならば、在庫が減少していることを意味します。

右上の象限は、生産が増加(X軸プラス)、在庫も増加(Y軸プラス)となっており、企業が積極的に生産・在庫を増やしている状態で、景気が拡大しています。次に、左上の象限は、生産が減少(X軸マイナス)、在庫は増加(Y軸プラス)となっており、需要が減退し、生産を減らしても在庫が溜まっている状況で、景気減速の兆候を示しています。左下の象限は、生産も在庫も減少(X軸マイナス、Y軸マイナス)しており、企業が在庫を削減し、生産も抑制する段階で、景気の底打ちに向かう可能性があります。 右下の象限は、生産が増加(X軸プラス)、在庫は減少(Y軸マイナス)しています。在庫調整が進み、生産が持ち直す時期で、景気回復の兆しです。

このまで描いた図に、左下から右上に45度線、左上から右下に45度線を書き入れてみましょう。二番目の図表に示された①②③④の三角形ができました。

図の①②は、生産の伸び率の方が、在庫の伸び率を上回っている局面です。図の③④は、反対に在庫の伸び率が生産の伸び率を上回っている局面です。①は「意図せざる在庫減局面」、②は「在庫積み増し局面」、③は「在庫積み上がり局面」、 ④は「在庫調整局面」です。景気は通常、①→②→③→④の順に反時計回りに動きます。

①の「意図せざる在庫減局面」は、景気回復の兆しが表れる局面です。景気が拡大し始めると、需要が企業の予測を上回り、生産が追いつかずに在庫が減少します。②の「在庫積み増し局面」は、景気拡張期です。景気拡大が続くと、企業は将来の需要増に備えて生産を増やし、在庫を積み増します。③の「在庫積み上がり局面」は、景気後退局面です。景気が後退し始めると、需要が企業の予測を下回り、生産が過剰となって在庫が増加します。④の「在庫調整局面」は、景気後退局面です。景気後退が続くと、企業は生産を減らし、在庫を減らそうとします。このように①→②→③→④の順に反時計回りに動きます。

在庫循環図は、現在の景気局面がどの段階にあるのかを判断することができます。現在の景気局面を把握し、今後の景気動向を予測することも可能です。在庫循環図を参考に、生産計画や販売計画などの経営判断を行うことができます。

さて、今回、経済産業省が発表した一番上の図表「鉱工業の在庫循環図」で、現在の景気動向をみると、④の「在庫調整局面」から①の「意図せざる在庫減局面」に入りかけたように見受けられます。在庫循環だけでは景気判断はできないのですが、これから景気回復の兆しが表れる局面に入っていくように見受けられます。


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