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柔術教則レビュー「橋本知之 蹲踞(そんきょ)ベースシステム」(全文無料)

 今日も今日とて柔術は楽しい。今日は教則のレビュー。蹲踞ベースを身に付けたい方、トップのパスを体系的(システマチック)に身に付けたい方にオススメの教則です。


橋本 知之選手の紹介

名前:橋本 知之(はしもと ともゆき)
生年月日:1993年4月20日
体重:ルースター〜ライトフェザー級

主な戦績:
黒帯
2018 全日本王者
2018 ムンジアル3位入賞
2019 ヨーロッパ選手権準優勝
2020年IBJJFヨーロピアン選手権黒帯ルースター級優勝
2022年IBJJFパンアメリカ選手権黒帯ライトフェザー級3位

内容紹介 (フローチャート)

 蹲踞ベースとは相撲の仕切りの姿勢です。上体を起こしたヤンキー座りみたいな感じです。世界王者のハファエルメンデスやマイキームスメシも使っています。ディフェンスもオフェンスも備えたベースです。

1.蹲踞ベースについて
2.蹲踞ベースからクォーターポジションへの移行
3.クォーターポジションからニースライス
4.クォーターポジションからスマッシュ
5.スマッシュのバリエーション
6.蹲踞ベースから担ぎ
7.蹲踞からのライイイングレッグハグ
8.ライイイングレッグハグからレッグドラック
9.蹲踞からのクロスグリップパス
10.シャローラッソーへの対応
11.シャローラッソーへの対応のバリエーション
12.スパイダーガードへの蹲踞ベースからのパスガード
13.スパイダーの外し方のバリエーション
14.12からのバリエーション
15.スパイダーシャローラッソーへの蹲踞ベースからのパスガード
16.スパイダーラッソーへの蹲踞ベースからのパスガード
17.スパイダーラッソーへの蹲踞ベースからのパスガード2
18.ラッソー、シャローラッソーへの対処のバリエーション
19.ダブルシャロー、ダブルラッソーへの対処
1時間47分

 フローチャートの量が膨大になっていますが、後半は組み合わせるのがほとんどなので安心してください。見てみると思ったほど覚えることは多くありません。やることたくさんありすぎて混乱することはなく、むしろ見るとトップでのやることが整理されます。

パスは組み合わせること(体系的、システム、系統的、連携)が大事

 スプラッシュ代表の木部亮先生の言葉に「シチュエーションによって使う技は変わると思うので、どれが一番というのはありません。その時々で一番適している技を選択するのが大事だと思っています。その意味では本作品でひとつのテクニックと捉えても良いのかもしれませんね。」というのがあります。

 パスは単独ではなく組み合わせることが大切です。枝葉だけでなく幹を作るイメージ。(枝葉のディティールが重要ではないという意味ではない。どっちも大事)

 この蹲踞ベースシステムでは、パスを体系的にシステムとして学ぶことができます。

ガードリテンションのコンセプト・メリット(なぜ蹲踞ベースなのか)

コンセプト

 前提
 
教則内でも橋本選手がいっていますが、相手に襟や袖を引かれておらずトップが両足を持てていたら蹲踞ベースは必要ありません。片袖片襟やスパイダーで引かれているときに使います。

 コンセプト
 教則を見て、自分の考える蹲踞ベースのコンセプトは

「組手争いに自分の膝を参加させる」

 例えば立ち膝ベース(正座ベース)の場合、自分は手2本で相手は手足4本で2対4で組手争いをするのでかなり不利になります。蹲踞ベースをとることで自分の両ひざを使えるので4対4の勝負にすることができます。正座ベースは自分と相手の間に足がないので簡単に前にあおられますし、クローズドにも簡単に入れられます。
 蹲踞ベースは重心が低く安定しており、自分の膝を堤防にして相手のアタックをブロックできる、膝を使って攻めることもできる、必要なら立って横にステップもできる。攻守にバランスの優れたベースです。

 ちなみにスタンドのベースもいいベースで機動力に優れています。しかしデラヒーバフックを作られやすいです。蹲踞ベースはかかととおしりがくっついているのでフックが入りません。そしてどちらかというとフィジカルが強い人の方がスタンドベースは有利です。背筋や下半身、腕力に自信がない人にも蹲踞ベースはおすすめです。

メリット

重心が低くて、膝の堤防(ブロック)があるので前にあおられにくい
・相手との間に自分の足(膝)が入っているので相手の手足をブロックしたり解除したり攻めたりできる。
クローズドに入りづらい
機動力がある。(スタンドベースよりは劣るが、膝をついてないので、立ってすぐステップできる)
・ディフェンスもアタックもできる
・フィジカルやスタミナの消費が少ない

デメリット

・膝や股関節が固い、膝や股関節をケガしてる人には使いづらい
・慣れてないと横や後ろに転がされる

向いている人

・左右にバンバンと飛んだり、走る系のパスが苦手な人
・フィジカルに自信のない人
・瞬発的な技よりも組手を作って手順を追ってやる技の方が得意な人
・スタミナに自信のない人、試合でスタミナ消費の少ないベースを使いたい人

向いてない人
→蹲踞の姿勢がとれないくらい膝や股関節が固い、膝や股関節をケガしてる人、足がめちゃくちゃ長くて相手との間に膝を入れづらい人。

 余談ですが、足首が固い人でも蹲踞ベースは可能です。自分も足首は固いですが使えてます。機動力をあげるためにかかとはあげているので足首は固くても問題ないです。

有効な相手

・デラヒーバを使って来る相手
→デラフックを入れさせない

・上半身を攻めるガード(片袖片襟、スパイダー)でめっちゃ引く力が強い人、足のフレームが強い人
→膝の堤防(ブロック)で足のフレームを解除したり、相手の引きを耐えたりできる。

・クローズドガーダー
→膝の堤防(ブロック)で入れさせない。

相性のいいテクニック・合わせて覚えたい技

 教則内のテクニックだけでも組み合わせとしてかなり強いパスシステムが出来上がりますが、こちらも合わせて覚えておくといいです。

・クラブライド(レッグハグとの連携)
・ハーフパス(蹲踞ベースでガード解除してハーフまで行けたあとの展開)

使ってみた感想

 元々蹲踞ベースは使っていましたが、ガード解除のディティールやパスのバリエーション、組み合わせ方を知れたのでスパーでのパスの精度が上がりました。バリエーションが増えたことで今まではひとつのパスに固執して力勝負になっていた部分を、いろんなパスを組み合わせてテクニックでパスできるようになりました。スパーでパスするとき以前よりもスタミナの消費が減ったので、フィジカル頼みでなくテクニックで効率よく力を使えていると思います

 他の人が使っていた感想としては「バランスが悪くて不安定ですぐ横に倒される」というものが多かったです。これについては、「自分一人でバランスをとるのではなく相手の襟袖を引く力や自分の襟グリップを利用してバランスをとる」で解決できると思います。文章だと難しいのですが「相手の引くグリップにぶら下がる、相手の襟にぶら下がる」イメージです。自分と相手がグリップを離したら尻餅をついてしまうくらいのイメージで重心を落とすと、バランスをとれてなおかつ相手の引く力にこちらの体重で対抗できます。

個人的に好きなテクニック

 レッグハグ(肩でとるレッグドラッグのような形)のテクニックが面白かったです。脇でとる通常のレッグドラッグは強力ですが形に入るのが難しいです。ライイングレッグドラッグもかなり低く入らないといけないのでなかなか取れないことが多かったのですが、このレッグハグなら入りやすく強力です。そこから、かついでパスしたり、レッグドラッグに作り直したり、クラブライドに移行したり、拡張性の高いのもお気に入りです。

 クロスグリップを裾グリップではなくCグリップで作るのも強力で、スパーでかなり決まりました。ただ切られやすいので教則でディティールを何度も確認しました。

まとめ

 パスをシステム(体系的な技術)として身に付けるためにこの教則はうってつけです。のトップで何をしていいか分からない白帯から、パスの精度を上げたい中級者、ディティールを詰めたい上級者、指導をするインストラクターまであらゆる人にとって学びの多い教則だと思います!

2023/12/23 アンディ

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