教則レビュー リテンションからガードの本質を学ぶ!「松本一郎 GUARD SURVIVOR(サバイバー)」(全文無料)
今日も今日とて柔術は楽しい。今日は教則のレビュー。
松本先生「guard survivor」。
セミナーを映像化した教則です。
ちなみに前作のガードリバイバーも良作。レビュー記事も書いてますのでどうぞ。
正式な教則のタイトルはアルファベット表記ですが、本記事ではアルファベットではなくカタカナ表記で「ガードサバイバー」「ガードリバイバー」と表記します。なんとなく、カタカナのほうが見分けやすいと感じましたので、
1.選手の紹介
松本先生は大会結果も残しているバリバリの柔術家でありながら、国家資格を持つ治療家(柔道整復師)でもあります。体の構造の話が分かりやすかったのも納得。しかも東大寺に勤務する僧侶でもあるとのことです。
五か所で指導をされており、豊富な指導経験に裏打ちされた説明はとても分かりやすいです。
また、服や靴好きで指導者として清潔感のある恰好を心がけているとのこと。本教則のオシャレなジャケットも納得。
2.内容紹介
エビをはじめとした体の使い方、引き込みからシッティングガード、そこからガードを作るまで、攻め込まれたときのリカバリー、距離による構えの使い分け、カウンター(チョイバー)まで、幅広くガードリテンションを学べます
今回はフローチャートにするより距離別に本教則のテクニックをまとめる方が見やすいと思ったのでこの図を採用しました。
また、本教則はセミナーの映像化作品なので各チャプターでは、実際のセミナーでテクニックを実践している参加者へアドバイスを送る場面もあります。これがよい。だれかが上手くいってない部分はだいたいほかの人もできてないため参考になる内容が多いので。
3.ガードリテンションの重要性
ガードリテンションについてはシリーズでいくつか記事を書いています。また、BJJLABさんにてまとめ記事も書きました。
柔術哲学のガードリテンションシリーズ|柔術哲学(アンディ)|note
【柔術上達の第一歩】なぜガードリテンションを身に付けるべきなのか | BJJ LAB - 国内トップ柔術選手の教則、セミナー動画が集まる専門メディア
ガードリテンションを詳しく読みたい方は上記の記事をぜひ。
とりあえず本記事では、以下に簡単にガードリテンションの重要性をまとめます。
一言でいうと「ガードリテンションはガードシステムの一番最初に来る技術」です。ガードリテンション(ディフェンス)ができないとスイープもサブミッションもできないし、そもそもガードを作ることすらできません。
4.GUARD SURVIVORの哲学(コンセプト)
ガードサバイバーでは単なるテクニックの紹介の教則ではなく、リテンションを通してガードの根本的な部分=哲学(コンセプト)を学ぶことができます。
ガードサバイバーの内容だけですべてのパスアタックをリテンションすることはできないですが、ガードサバイバーを通して学んだ柔術哲学はあらゆる場面で使うことが可能です。
(ちなみに全部のパスのリテンションは無理ですがサバイバーの内容だけでもかなりの部分のパスアタックをリテンションできると思います)
ガードサバイバーから学ぶ哲学その1「ガードシステムの土台を作る」「土台であるガードリテンションから自分のターンを呼び込む」
「3.ガードリテンションの重要性」で書いたように「ガードリテンションはガードシステムの一番最初に来る技術」です。
言い換えれば「ガードシステムの土台となるのがガードリテンション」です
せっかくクラスや動画でかっこいいスイープやサブミッションを覚えてもスパーになるとパスされて何もできずに終わる、という経験はだれしもあるでしょう。そこで身に付けるべき技術がガードリテンションです。
その哲学を、本教則で学べます。
以下、教則中の松本先生の言葉
「相手の心を折るんです。下から。」
「リテンションができないと自分のターンが来ない」
いい言葉ですねえ。リテンションから自分のターン(相手のミス、自分のチャンス)を作る。
ちょっと脱線。相手の強みで勝負しない。いいバッターの話。
松本先生の言葉をもう少し掘り下げます。
格闘技に限らず競技では「相手のベストを上回る(相手の強みで勝負する)」ことよりも「相手のミスを逃さない(弱いところで勝負する)」ことが大事です。(まあ、相手のベストを叩き潰す”横綱相撲”はかっこいいし、憧れますが、勝率を上げるのはそこじゃないです。)
野球で打率の高い打者はピッチャーのベストのボールを打つのではなく、失投を逃しません。
ガードは元気で強いベースの相手を倒すよりも、相手がバランスを崩したり膝をついたり疲れてきたときを逃さずアタックするのが大事です。
そのために必要な土台がガードリテンションです。ガードリテンションで我慢できれば相手のミス(膝をつく、バランスを崩す)が必ずきます。
ガードサバイバーから学ぶ哲学その2 「リテンションのゴール(目的)を知る」
リテンションはいろんなことをしているように見えますがやることは二つ。
1)パスボックス(※)を守ること
2)足のフレームを入れること
(相手と自分の間に足を入れる、足の裏を相手に当てる)
(※ パスボックス マイキームスメシ選手が教則で使っていた言葉、ボトムの選手の胴体の部分。ここを守ればパスされない)
パスボックスを守るために、ニートゥエルボー、ニートゥチェスト(膝を引き付ける動き)が大事なのです。膝や膝が伸びたり、距離が離れているのにエビをしたりするとパスボックスが空いてパスされます。
教則で紹介されているリングフレームなどの体の使い方はこのパスボックスを守るテクニックとして効果的です。
相手と自分の胴体の間にフレームを入れればパスされません。
フレームは足(股関節~足裏)、膝(大腿骨分)、手(肩~手の平)、肘(上腕分)頭、肩などがありますが、最も強くて距離も作れるのが足のフレームです。ガードリテンションは最終的にこの最も強い足のフレームを入れること(足の裏を当てること)を目指します。
足に比べると膝のフレームはリーチが短く潰されやすいですが、それなりに機能します。
手のフレームは弱いので簡単に潰されます。なのでメインで使うというよりも「時間稼ぎ」として一時的に相手を止めてその間に足や膝のフレームを入れることが多いです。
教則内のノーズグラブは足の裏を相手に当てて強いフレームを作ることができます。
足のフレームが入っていてもパスボックスが空いている(足が伸びてしまっている)形や、パスボックスが閉じていても足のフレームが入ってない形(かつがれている場合など)はあまり強くないです。両方を達成できるガードリテンションを学べるのが本教則です。
ガードサバイバーから学ぶ哲学その3 「距離をコントロールする」
教則内で、ミドルレンジのノーズグラブとロングレンジのシッティングの使い分けを説明するシーンがあります。
距離によって使うべき技は変わります。リテンションのみならず柔術ではこの距離をコントロールする柔術哲学がとても大事です。
ガードサバイバーではリテンションを通してこの距離の柔術哲学を学べます。
5.なぜGUARD SURVIVORなのか
なぜガードサバイバーがオススメなのか改めてまとめると、
一つはここまで書いてきたように土台であるリテンションができないとガードシステムは成り立たないから
もう一つもここまで書いてきたようにリテンションを通して柔術の本質を学べるからです。
6.相性のいいテクニック・合わせて覚えたい技
本教則のテクニックだけでも有効なガードシステムができますが、さらにあると良いのがこちら。
・ハーフガード
→リテンションの流れでハーフになることが多いので、ハーフからの展開やフルガードへのリテンションも身に付けたいところです。
ハーフについては教則「松本一郎 dawn of KOD」、「松本一郎 dusk of KOD」もおすすめです。リバデラはハーフの一種ですし、距離の作り方やカウンターを学ぶ上でオススメの教則です。またリバデラをやる上でガードリテンションの技術はとても重要で相性が良いのでセットで買うのといいと思います(ステマではないですよ。自分の金で買って自分が良いと思っているので勧めています笑)
・レッスルアップ
→本教則でシッティングガードが紹介されていますが、そこから使えるシンプルかつ強力なアタックです。
・リテンションからの強いマイガード
→本教則の最後の質疑応答でも少し触れています。リテンションでしっかり守った形から相手の体勢を見て自分のガードを作る部分もしっかりと身に付けたいですね。
・トップアタック
→本教則で学んだガードリテンションの知識はトップでも使うことができます。ディフェンスで学んだ「やられたくないこと」「やりたいこと」の逆を意識するとパスのコツがつかめるかもしれません。
→「パスボックスを守って足のフレームを入れる」のがリテンションならば、「足のフレームを突破してパスボックスをこじ開ける」のがパスです。
7.使ってみた感想
先生が教則内で言っていたミドルレンジとロングレンジのリテンションの使い分けを意識すると簡単にパスされなくなりました。
自分のガードをしっかり作ればパスされないですが、ガードを作る瞬間やガードの切り替えのタイミングなど、距離が変わったときにやられてしまうことが多かったです。そのため、距離でリテンションを使い分ける考え方をこの教則で学べたのは大きな収穫でした。
また、相手が動いてくるときを待つ場面と動いて逃げる場面の使い分けを学べたので焦って動いてパスされることが減りました。
ノーズグラブとグランビーロールは形は知っていたのですが、スパーだとパスされることが多かったです。本教則のポイントを意識するとうまくいくようになりました。
8.テクニック紹介
01.エビの使い分け(フレームとニーダウン、柔術立ちまで)
エビの概念が変わるパートです。エビのそもそもの目的、上の手の使い方、下足のエビなど学びがたっぷりです。ガードリテンション以外にも応用が効く体の使い方が学べます
02.03.引き込み、シッティング
これもまた良いんです。シッティングガードの構えや引き込みって意外とクラスでしっかり学ぶことが少ないし動画もガードやパスやサブミッションと比べると少ないです。「引き込んだ瞬間パスされる」「座ってるところから寝るタイミングでガードを作れずやられてしまう」という方は必見
04.05.06.ヒップサイド、クロスレッグ、スパイダーリテンション
「体の使い方」→「引き込み、シッティング」→「寝た形のリテンション」の順番が絶妙です。順を追ってガードリテンションを学べます。寝た後横に回られたとき、ズボンを持たれたときの対処を学べます。
07.08.ノースサウスまで回られた場合 インバーテッド
特に白帯の方はノースサウスのリテンションが苦手なイメージです。日常でまず使わない柔術独特の体の使い方が必要なので。丁寧に順を追ってインバーテッドのリテンションを説明されています。分かりやすい。
09.グランビーロール
個人的に一番勉強になったテクニックです。もどすときの尻(腰)の位置の説明が目からうろこ。今まではグランビーロールしても上の足をさばかれてそのままつぶされていたのですが、このテクニックの尻の位置を意識したら戻せました。
10.サイドエスケープ 上脚のエビ
01.02.のパートでも伝えていたエビ。「リテンションでエビをするな!」と自分の記事でもよく書いているのですが、距離を詰められたときはエビでスペースを作る必要があります。だれでも知ってるエビですが、松本先生のディティールが素晴らしい。上足の位置と両手の使い方が勉強になります。
11.12.ノーズグラブ
ガードリバイバーではそこまで深く掘り下げられなかったノーズグラブの実戦的かつ分かりやすい説明。自分もバンバン使っています。形だけ真似ても簡単に潰されますが、このチャプターのポイントを抑えるとスパーで本当に止められます
13.リングフレーム
前述した、「パスボックスを守る」と「足のフレームを入れる(足裏を当てる)」の二つを達成できるのがこのテクニックです。この動きに名前を付けて技術として確立してくれた松本先生に感謝です。めちゃくちゃ使えます。
14.質疑応答
「あるある」な悩みを解決してくれます。具体的な解決方法だけでなく、哲学や考え方も含めて教えてくれるのがありがたい。
リテンションからガードに戻す際の考え方やタイミングを説明してます。
15.ボーナストラック:チョイバー
チョイバーをやる際にやられるある動きをブロックするディティールが最高です。見様見真似のチョイバーで潰されていた人(俺だ!)は必見。
9.ガードリバイバーとの違い
本教則と前作のガードリバイバーどちらもいい教則ですが、リバイバーはいろんなパスに対する対処を横に広く学べて、サバイバーは相手のパスの最初から最後まで縦に長く学べるイメージです。どちらもオススメ
また、リバイバーのほうがガードごとの緊急回避的なテクニックが豊富です。「パスされそうになってもあと一歩のところでリバイブしてアドバンで止める」みたいな内容が多めです。百科事典的な。
サバイバーはパスごとの対処はリバイバーほど多くないですが、「スタンドから、引き込み、シッティング、ライイング(背中マットついた形)、横に回られたとき、上(かみ)まで回られたとき、」など、リテンションの流れを一通り学べます。ガードリテンションのコンセプト、哲学、流れ、を学ぶにはこちらの方が分かりやすいかもしれません。
サバイバーでガードリテンションのコンセプト(哲学)を学んで、リバイバーでパスごとのリテンションのバリエーションを増やす、という形にすればより深くガードリテンションを理解できます。より厚みのあるガードシステムを構築できます。
まとめ
ガードサバイバーは単なるリテンションの紹介動画ではなく、柔術の本質的なコンセプトや哲学を学べます。
載っているテクニックが有効なのはもちろん、教則で学んだ柔術哲学が見た人の柔術に深みを与えてくれます。
下でそもそも何やっていいか分かってない、スイープやサブミッションなど習ってテクニックをうまくガードで使えない、という人のブレイクスルーのきっかけがこの教則にあるかもしれません。
柔術に悩む初心者から、自分の柔術にもうひとつ深みを出したい中級者以上の方、すべての人にオススメです!
最後に 松本先生のコメント
コメントいただけました!!!ありがとうございます!!!
「クローズドガードを割られるとなす術なくやられてしまう人にオススメです セミナー参加者が復習に活用してもらったのはもちろんのこと、購入していただいた方からも『今まで別々で使っていた技術が繋がった』などと好評をえている教則です 自身がパスされまくった上で考えたリテンション技術なので、何か一つは穴を埋めてくれるヒントがあると思っています。」
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教則は見たいと思ったときが一番頭に入ります。見たいと思った方は早めに見ましょう!
2024/11/18 アンディ
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