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柔術教則レビュー「高杉魁セミナー ギ・キャンピングパス」(全文無料)
今日も今日とて柔術は楽しい。今日は教則レビュー。寝かしつけをしながら教則見ました。めちゃくちゃ良かったです。
選手の紹介
高杉魁
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2022年 JBJJF全日本選手権 茶帯優勝
2022年 ASJJF全日本選手権 茶帯優勝
2023年 IBJJF アジア選手権 茶帯優勝(その後黒帯取得)
2023年 JBJJF全日本選手権 黒帯準優勝
細川顕先生が代表の名古屋のALMA FIGHT GYM HOMIES所属。軽量級の若手の新星。その実力で数々のタイトルを獲得。分かりやすいインストラクションにも定評があります
小さい頃にドラマのSPにあこがれて柔術を始めたそうです。体が小さくやられることも多かったがやめたいとは思わなかったとのこと。当時から競技者としてのマインドがあったんですね。
高杉選手は体が小さかったため、自分の体と相手の体の位置関係など体格差があっても勝てるよう日々考えながら練習しており、特に相手が力の入らないポジションで戦うよう考えていたそうです。
自身も出稽古でお邪魔したときにスパーをさせてもらいましたがめちゃくちゃ強かったです。階級だいぶ下なのにボコボコにされました。。。終わった後の挨拶もさわやかなナイスガイでした。
自分は昨年のJBJJF全日本で試合を生観戦してからファンになりました。自分も名古屋にいたので名古屋の選手である高杉選手は応援してます。さらに元々指導してもらっていた細川先生のHOMIES所属ということで、今回、応援の意味も込めて買いました。もちろん内容もよかったです。
内容紹介 (フローチャート)
チャプター
1.オープニング
2.パス時の脚の抑え方
3.位置取りとレッグドラッグパス
4.キャンピングパス
5.キャンプポジション時の各部位の要点
6.フレームの外し方①
7.フレームの外し方②
8.亀になる相手へのクロスフェイス
9.ラッソーガードへのパス ラッソー側の対処
10.ラッソーガードへのパス キックスパイダー側の対処
11.ラッソーガードへのパス 別バリエーション
12.エンディング
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キャンピングポジション、キャンピングパスは聞きなれないポジションですが、相手の横について遠い側の骨盤を押さえてる形です。(文章だとわかりづらいですね)
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約30分と短めで見やすいです。30分の中にキャンピングポジションの大事なテクニックやコンセプトがつまっています。
前半のキャンピングポジションからのパスはもちろん、後半のスパイダーラッソの解除も勉強になります。ガード巧者が多くパスの難易度が高い軽量級で磨かれた高杉選手のパステクニックは必見です。
キャンピングポジションは英語だと「J-point 」「J-point camping」と呼ばれるようです。ゴードンライアンが得意としています。YouTubeで日本語で「キャンピングパス」「キャンピングポジション」と検索してもほとんどでませんが「J-point 」「J-point camping」ならたくさん見つかります。
おそらく「jeopardy(ジェパディ、危険な)」の「J」を取って「J-point」です。campはキャンプする、陣取る、拠点を作るといったニュアンスです。
キャンピングパスのコンセプト・メリット(なぜキャンピングパスなのか)
コンセプト
教則を見て感じた私の考えるキャンピングパスのコンセプトは
「パスの拠点(ベースキャンプ)を作る」
パスの名前のままですね。。。登山では初日に一気に上るのではなくベースキャンプ(拠点)を張ってそこから頂上を目指します。これをパスでやるのがキャンピングポジションです。
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一気にオープンガードからパスできるのならそれがいいです。もしくはずっと左右に動き続けてパスをするのもいいです。それがいわばベースキャンプをとらずに一気に登頂を目指す弾丸登山タイプ。でも弾丸登山タイプのパスはハードモードです。フィジカルやスタミナに依存します。また、弾丸登山パスを防がれた後はスタミナ切れで逆にこちらのピンチになります。
逆にスタミナとフィジカルに自信があるなら弾丸登山のパスをしかけるのもアリです。たまにいる左右にバンバン飛んで動き続けるタイプの人ですね。でも自分にはあのスタイルちょっと厳しいです。。。
フィジカルとスタミナで確実に上回る自身がないならば、まず拠点(ベースキャンプ)を取りましょう。一気にパスを狙うよりもまずそこを目指すことでリスクを減らし成功率が上がります。
余談ですがキャンピングポジション(J-poit)でなくとも拠点はあります。例えばハーフガードやヘッドクウォーターポジションや片足をマットにつけさせた形などを拠点としてそこから展開を作ることができます。
このキャンピングポジションまでたどり着ければそこからクロスニーや腰切パス(ロングステップ)、膝で弾くニーオン、フレーム突破などのアタックのルートに進めます。
メリット
キャンピングポジションの最も大きいメリットは
「カウンターを受けない」(リスクが少ない)
キャンピングポジションから相手ができるアタック(カウンター)はほとんどありません。キャンプを経由することでカウンターのリスクを減らせます。
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キャンピングパスのメリット
・カウンターのリスクが少ない
・スタミナを削れる
→相手がガードで戻そうとして脚を上げ続けて腹筋を使い続けると消耗する。最終的には脚を上げれなくなった所を仕留められる。
・体重をかけられるので力に頼らずパスできる。
・フィジカル、スタミナ勝負を避けられる。マスター世代にも使いやすい
(フィジカル、スタミナ勝負はリスクが高く運の要素も多い)
・両足+上半身をコントロールするので強力。相手はエビで上半身を逃がすことも足回しでリテンションもできない。
(遠い足→肩と前腕と頭で抑える、近い足→スネか手で抑える、上半身→襟で抑える)
・エントリーしやすい(ノーグリップからでも、ガード解除からでも入れる)
・ノーギでもギありでも使える。
・ハーフガードに捕まえられない
デメリット
完成度の低いキャンピングポジションはデメリットはありますが、ちゃんとした形を作ればデメリットはほとんどありません。
キャンピングパスのデメリット
・解除されやすい
→そこまで固定力はないので解除はされやすい。でも解除しようとする動きに合わせてパスを狙える。
・慣れないとエントリーで頭が下がって三角を取られる。
→しっかり作ったキャンピングポジションは三角はとられない。近い足はスネで、遠い足は前腕で内側を制しているので三角は入れない。
・慣れないと距離を作られてフルガードに戻される
→教則内でも言っていたように、しっかりと体重をかけて距離を詰める。
向いている人
・手の長い人
・遠距離パスを取り切れない人
・スタミナ・フィジカル勝負をしたくない人
・パスのカウンターでサブミッションやスイープをされる人
遠距離パスをあと一歩のところで戻される人、ハーフガードにつかまってしまう人はこのキャンピングポジションを経由すると完パスができるかもしれません。
有効な相手
・足が効く相手
・ハーフガーダー
・エビが強い相手
相性のいいテクニック・合わせて覚えたい技
・遠距離パス(トレアナ、レッグドラッグ)
・クロスニー、腰切パス(ロングステップ)
・クロスグリップパス(クレイジードッググリップパス)
・サイドコントロール、ノースサウスコントロール、ニーオン
ハーフガードとキャンピングポジション
ハーフガードもパスの拠点(ベースキャンプ)になりますが、キャンピングポジションとは似て非なるものです。
ハーフガードのトップ
・固定できる(固定されている)
・カウンターがある
・パスに時間がかかる
・相手を削れる(体重をかけて上半身にプレッシャーをかける)
・よくある展開なので、得意な人や慣れている人が多い。
キャンピングポジション
・固定できない(固定されていない)
・カウンターがない
・すぐパスに行ける
・相手を削れる(足を上げさせて腹筋を疲れさせる)
・見慣れない形なので、慣れていない人が多い。
どちらも腰のラインを越えていてパスに近いので有利なポジションでパスの拠点(ベースキャンプ)になります。しかし、実際のスパーや試合を見ても分かる通りハーフからパスを取るのはなかなか大変です。足を挟まれているので固定されていますし、脇を差したり潜られるカウンターもあります。
キャンピングポジションはカウンターのリスクがほとんどなくパスに時間もかからないため、試合終盤時間がない時でも有効です。のこり30秒でパスするならハーフパスよりもキャンピングポジションの方が有効です。
逆に時間をかけてじっくり削ってパスしたいならハーフパスが有効です。
基本的な戦略としてはキャンピングポジションを取れたなら、足を絡まれてハーフにされないようにパスアタックします。
ルースパスとキャンピングポジション
さきほどメリットで「スタミナを削れる。→相手がガードで戻そうとして脚を上げ続けて腹筋を使い続けると消耗する。」を紹介しましたが、これは岩本健汰選手のルースパスのコンセプトと同じです。どちらも相手の足を上げ続けて腹筋を消耗させて最終的にパスにつなげるものです。
しかしルースパスの場合、道着ありだとつかまれてしまい左右にステップできないことがあります。その点、本教則の道着アリのキャンピングパスは道着でも使いやすいです。本教則では「削るテクニック」というタイトルの技は紹介していませんが、リカバリーしづらい形の作り方や相手のリカバリーのフレーム解除テクニックが学べるので結果的に相手を削ることができると思います。
参考 ↓
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使ってみた感想
・スパーで試したところ、シンプルに相手が知らないことが多いので知らない相手だと対応が分からずすぐにパスできます。
・ノーギと違って襟を取れると上半身のコントロールが強いです。
・自分が思っている以上にしっかりと体重をかけないとラッソをかけられたり、正面に戻されたりします。
・最初は頭の位置が慣れないですが、実際あの位置に頭を置くと足回しされづらいです。
・道着だと、ついついスソや襟などを握ってしまいます。今回の教則で使われているスネや骨盤など体(骨)を直接抑えるコントロールは速くて強いと感じました。道着はグリップを切られにくいですが、作るのに時間がかかるのと、グリップに遊びがあるのでコントロールが弱いです。
・意識しないとすぐにハーフに捕まえられてしまいます。ハーフに入るのは悪くはないのですが、せっかくキャンピングパスをしかけたなら一気にパスしたいです。しっかり対角のスネとスネを合わせてプレッシャーをかけてハーフに捕まえられないようにしたいです。
キャンピングパスの考え方
◎パス
△ハーフにつかまる
✖フルガードに戻される
個人的に好きなテクニック
・キャンピングパス(クロスニー)からの相手の膝が入ってこないテクニック
→腰を切るクロスニーをやると相手の膝が足が入ってきます。それをされないようにするテクニックが面白かったです。
・膝で弾くニーオン
→体格のスネとスネを合わせた状態から弾くのは、最小限に力でパスできる上にリスクも少ないので便利でした。膝の代わりに手でかき出すのも強力でした。相手の膝と胸が離れるとパスにつながるので、その胸と膝のコネクトを壊すテクニックでした。
・スパイダーラッソの解除
→後半のスパイダーラッソの解除は「あるある」な解除できないラッソやスパイダーの潰し方が学べてめちゃくちゃ実戦的でした。
まとめ
①走りまくる弾丸登山タイプのパス
→スタミナ消費:大。カウンターあり。パスの時間速い。固定力弱い。フィジカルに依存。
②ハーフパス(ハーフを拠点にするハーフパス)
→スタミナ消費:中。カウンターあり。パスの時間長い。固定力強い。
③キャンピングパス(キャンピングポジションを拠点にするパス)
→スタミナ消費:小。カウンターなし。パスの時間速い。固定力弱い。
どのパスにもメリットデメリットがありますが、キャンピングパスはリスクやスタミナの消費少なく、早くパスできます。
キャンピングパスの日本語の教則や動画は少ないので、本作のような教則は貴重です。
こちらの収益は高杉選手の海外遠征の費用に充てるとのことで。若い選手を応援したいオッサン柔術家はぜひ購入しましょう!!!パスのレベルを上げたい競技者、柔術をより楽しみたい柔術愛好家、こちらの教則おすすめです!
最後に 高杉選手のコメント
インスタのDMでお願いしたら、コメントをいただけました。。。ありがとうございます!!!
[教則を買っていただいた皆様に]
購入ありがとうございます‼︎
キャンピングパスはかなり有効なパスガードなので是非習得して柔術ライフ楽しんでください!
[今後の目標]
来年の世界選手権出場のためにibjjfアジア絶対優勝します。また、jbjjf全日本選手権、KIT9優勝し国内ルースター級トップになります。
応援してます!頑張ってください!
2024/3/19 アンディ
日本語ではキャンピングポジションの情報があまりなかったので英語で検索したら出てきました。こちらのサイトが分かりやすかったです。
参考
The J-Point Camping Strategy | BJJ Reflections
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