柔術教則レビュー「高杉魁セミナー ギ・キャンピングパス」(全文無料)
今日も今日とて柔術は楽しい。今日は教則レビュー。寝かしつけをしながら教則見ました。めちゃくちゃ良かったです。
選手の紹介
高杉魁
細川顕先生が代表の名古屋のALMA FIGHT GYM HOMIES所属。軽量級の若手の新星。その実力で数々のタイトルを獲得。分かりやすいインストラクションにも定評があります
小さい頃にドラマのSPにあこがれて柔術を始めたそうです。体が小さくやられることも多かったがやめたいとは思わなかったとのこと。当時から競技者としてのマインドがあったんですね。
高杉選手は体が小さかったため、自分の体と相手の体の位置関係など体格差があっても勝てるよう日々考えながら練習しており、特に相手が力の入らないポジションで戦うよう考えていたそうです。
自身も出稽古でお邪魔したときにスパーをさせてもらいましたがめちゃくちゃ強かったです。階級だいぶ下なのにボコボコにされました。。。終わった後の挨拶もさわやかなナイスガイでした。
自分は昨年のJBJJF全日本で試合を生観戦してからファンになりました。自分も名古屋にいたので名古屋の選手である高杉選手は応援してます。さらに元々指導してもらっていた細川先生のHOMIES所属ということで、今回、応援の意味も込めて買いました。もちろん内容もよかったです。
内容紹介 (フローチャート)
キャンピングポジション、キャンピングパスは聞きなれないポジションですが、相手の横について遠い側の骨盤を押さえてる形です。(文章だとわかりづらいですね)
約30分と短めで見やすいです。30分の中にキャンピングポジションの大事なテクニックやコンセプトがつまっています。
前半のキャンピングポジションからのパスはもちろん、後半のスパイダーラッソの解除も勉強になります。ガード巧者が多くパスの難易度が高い軽量級で磨かれた高杉選手のパステクニックは必見です。
キャンピングポジションは英語だと「J-point 」「J-point camping」と呼ばれるようです。ゴードンライアンが得意としています。YouTubeで日本語で「キャンピングパス」「キャンピングポジション」と検索してもほとんどでませんが「J-point 」「J-point camping」ならたくさん見つかります。
おそらく「jeopardy(ジェパディ、危険な)」の「J」を取って「J-point」です。campはキャンプする、陣取る、拠点を作るといったニュアンスです。
キャンピングパスのコンセプト・メリット(なぜキャンピングパスなのか)
コンセプト
教則を見て感じた私の考えるキャンピングパスのコンセプトは
「パスの拠点(ベースキャンプ)を作る」
パスの名前のままですね。。。登山では初日に一気に上るのではなくベースキャンプ(拠点)を張ってそこから頂上を目指します。これをパスでやるのがキャンピングポジションです。
一気にオープンガードからパスできるのならそれがいいです。もしくはずっと左右に動き続けてパスをするのもいいです。それがいわばベースキャンプをとらずに一気に登頂を目指す弾丸登山タイプ。でも弾丸登山タイプのパスはハードモードです。フィジカルやスタミナに依存します。また、弾丸登山パスを防がれた後はスタミナ切れで逆にこちらのピンチになります。
逆にスタミナとフィジカルに自信があるなら弾丸登山のパスをしかけるのもアリです。たまにいる左右にバンバン飛んで動き続けるタイプの人ですね。でも自分にはあのスタイルちょっと厳しいです。。。
フィジカルとスタミナで確実に上回る自身がないならば、まず拠点(ベースキャンプ)を取りましょう。一気にパスを狙うよりもまずそこを目指すことでリスクを減らし成功率が上がります。
余談ですがキャンピングポジション(J-poit)でなくとも拠点はあります。例えばハーフガードやヘッドクウォーターポジションや片足をマットにつけさせた形などを拠点としてそこから展開を作ることができます。
このキャンピングポジションまでたどり着ければそこからクロスニーや腰切パス(ロングステップ)、膝で弾くニーオン、フレーム突破などのアタックのルートに進めます。
メリット
キャンピングポジションの最も大きいメリットは
「カウンターを受けない」(リスクが少ない)
キャンピングポジションから相手ができるアタック(カウンター)はほとんどありません。キャンプを経由することでカウンターのリスクを減らせます。
デメリット
完成度の低いキャンピングポジションはデメリットはありますが、ちゃんとした形を作ればデメリットはほとんどありません。
向いている人
遠距離パスをあと一歩のところで戻される人、ハーフガードにつかまってしまう人はこのキャンピングポジションを経由すると完パスができるかもしれません。
有効な相手
相性のいいテクニック・合わせて覚えたい技
ハーフガードとキャンピングポジション
ハーフガードもパスの拠点(ベースキャンプ)になりますが、キャンピングポジションとは似て非なるものです。
どちらも腰のラインを越えていてパスに近いので有利なポジションでパスの拠点(ベースキャンプ)になります。しかし、実際のスパーや試合を見ても分かる通りハーフからパスを取るのはなかなか大変です。足を挟まれているので固定されていますし、脇を差したり潜られるカウンターもあります。
キャンピングポジションはカウンターのリスクがほとんどなくパスに時間もかからないため、試合終盤時間がない時でも有効です。のこり30秒でパスするならハーフパスよりもキャンピングポジションの方が有効です。
逆に時間をかけてじっくり削ってパスしたいならハーフパスが有効です。
基本的な戦略としてはキャンピングポジションを取れたなら、足を絡まれてハーフにされないようにパスアタックします。
ルースパスとキャンピングポジション
さきほどメリットで「スタミナを削れる。→相手がガードで戻そうとして脚を上げ続けて腹筋を使い続けると消耗する。」を紹介しましたが、これは岩本健汰選手のルースパスのコンセプトと同じです。どちらも相手の足を上げ続けて腹筋を消耗させて最終的にパスにつなげるものです。
しかしルースパスの場合、道着ありだとつかまれてしまい左右にステップできないことがあります。その点、本教則の道着アリのキャンピングパスは道着でも使いやすいです。本教則では「削るテクニック」というタイトルの技は紹介していませんが、リカバリーしづらい形の作り方や相手のリカバリーのフレーム解除テクニックが学べるので結果的に相手を削ることができると思います。
参考 ↓
使ってみた感想
・スパーで試したところ、シンプルに相手が知らないことが多いので知らない相手だと対応が分からずすぐにパスできます。
・ノーギと違って襟を取れると上半身のコントロールが強いです。
・自分が思っている以上にしっかりと体重をかけないとラッソをかけられたり、正面に戻されたりします。
・最初は頭の位置が慣れないですが、実際あの位置に頭を置くと足回しされづらいです。
・道着だと、ついついスソや襟などを握ってしまいます。今回の教則で使われているスネや骨盤など体(骨)を直接抑えるコントロールは速くて強いと感じました。道着はグリップを切られにくいですが、作るのに時間がかかるのと、グリップに遊びがあるのでコントロールが弱いです。
・意識しないとすぐにハーフに捕まえられてしまいます。ハーフに入るのは悪くはないのですが、せっかくキャンピングパスをしかけたなら一気にパスしたいです。しっかり対角のスネとスネを合わせてプレッシャーをかけてハーフに捕まえられないようにしたいです。
個人的に好きなテクニック
・キャンピングパス(クロスニー)からの相手の膝が入ってこないテクニック
→腰を切るクロスニーをやると相手の膝が足が入ってきます。それをされないようにするテクニックが面白かったです。
・膝で弾くニーオン
→体格のスネとスネを合わせた状態から弾くのは、最小限に力でパスできる上にリスクも少ないので便利でした。膝の代わりに手でかき出すのも強力でした。相手の膝と胸が離れるとパスにつながるので、その胸と膝のコネクトを壊すテクニックでした。
・スパイダーラッソの解除
→後半のスパイダーラッソの解除は「あるある」な解除できないラッソやスパイダーの潰し方が学べてめちゃくちゃ実戦的でした。
まとめ
どのパスにもメリットデメリットがありますが、キャンピングパスはリスクやスタミナの消費少なく、早くパスできます。
キャンピングパスの日本語の教則や動画は少ないので、本作のような教則は貴重です。
こちらの収益は高杉選手の海外遠征の費用に充てるとのことで。若い選手を応援したいオッサン柔術家はぜひ購入しましょう!!!パスのレベルを上げたい競技者、柔術をより楽しみたい柔術愛好家、こちらの教則おすすめです!
最後に 高杉選手のコメント
インスタのDMでお願いしたら、コメントをいただけました。。。ありがとうございます!!!
応援してます!頑張ってください!
2024/3/19 アンディ
日本語ではキャンピングポジションの情報があまりなかったので英語で検索したら出てきました。こちらのサイトが分かりやすかったです。
参考
The J-Point Camping Strategy | BJJ Reflections
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