「練習のように試合をしろ、試合のように練習をしろ」なのか?(全文無料)
今日も今日とて柔術は楽しい。
あまり好きな言葉ではないんですが、便宜上自分より実力が劣る相手を「格下」と表記してます。
1.結論
「練習のように試合をしろ、試合のように練習をしろ」
は一部、正しいです。
試合を想定した練習をするのが大事ですし、試合ではいつも通りの練習のような動きができるようにしたいです。
でも、100%練習のように試合をしていたら勝てないし、100%試合のように練習したら強くなりません。その理由を書いていきます。
2.試合の目的
基本的に試合の目的は勝つことです。勝ちというゴールに向かって競うことで競技は成立します。(楽しむとか人生を豊かにするといった話は一旦置いておきます)
とくにアマチュア競技である柔術はなおさらそうです。プロ格闘技であれば「面白い試合をすること」が勝つ以上に大事になることもあるかもしれませんが。
ルールの範囲内であれば、膠着しようが、反則スレスレのことをしようが、相手をぶっ壊そうが、技術的に課題があっても勝てばいいのです。
理想の試合
相手と攻防をしない、主導権を取って攻防が発生する前段階で制圧してしまうのがベストです。先手必勝で相手の形を作らせずそのままフィニッシュしたいです。
また、試合では、相手の得意を潰して、自分の得意を出したいです。
以下の攻防も試合で勝てば正解です。
では練習なら上記の攻防はありでしょうか?
2.練習(スパーリング)の目的
練習の目的は上達することです。(楽しむとか人生を豊かにするといった話は一旦置いておきます)
<練習の目的>
上達すること
→できないことをできるようにすること
→一回のスパーの中で攻防をたくさんする。
自分のできないこと(多くの場合苦手な技)を多めにやったり、相手の得意であえて攻防をしたりすることも多いです。
また、ケガをしないさせない、というのは練習において最優先事項なのでタップ早め、無理に極めないというのも大事です。
理想の練習
一回のスパーリングでなるべく多くの攻防をするのが理想です。攻防が多いと収穫が多く上達につながります。スパーはデータ収集、ストック集めです。
なので格下相手に何もさせずボコボコにしたり、得意技ばかりで毎回同じようなスパーをしたり、一本を取られたくないからと固まったり、リスクを恐れて攻防をせずずっとディフェンシブになるのは理想の練習とはいいがたいです。
3.練習と試合の相反する部分
青木真也選手がよく言うのが「練習は攻防をしろ」ということです。本当にその通り。ものすごく雑に言えば動け、攻めろ、です。
試合の動いたらやられる場面で無理に攻防を起こす必要はありません。ディフェンシブもアリです。でもそれを練習でやったら収穫がありません。
4.練習はいろいろある
「3.練習と試合の相反する部分」はやや誇張して書いてますので、実際はそうならないこともあります。テクニカルな技の交換だけが攻防とは限りません。ガチスパだって攻防、膠着だって攻防、同じ技ばかりに見えても攻防、勝負を避けてるように見える組手争いも攻防です。
ガチスパ
強度が高いのでお互い様精神で極めが強くなることもありますし、ケガのリスクがあがることもあります。シビアなグリップファイトをして主導権をとりにいくこともあります。勝ち負けやポイントを意識することもあります。
試合に近い内容になります。でも攻防を起こすことを意識するのは試合とは違います。
膠着もいろいろある
基本的に練習の膠着は好ましくありません。365日毎回クローズドに閉じ込めたり、カメで固まっているスパーをしている人が強くなることはないでしょう。
でも、膠着も攻防です。一見止まっているように見えて細かい重心の崩し合いやタイミングをはかったりしているかもしれません。それに試合で膠着が起きたときのために膠着での攻防の練習もある程度は必要です。
毎回膠着スパーしかしないのはダメですが、多少は必要です。
毎回同じ技をしているように見えて
同じことをずっとやるのは練習として好ましくありません。できないことをできるようにするのが練習なのでできることをずっとやっていても強くなりません。しかし、同じことをやっているように見えて実は細かいアップデートをしていたり、微妙な違いのバリエーションのデータ収集をしていることもあります。
実力差があるスパー
試合さながらに「いかなる相手でも手は抜かない!」と格下や体重差のある相手をボコボコにするのはよくないです。かといって下手に受けてばかりなのもよくないです。お互いの練習になりません。ここも攻防を起こすことが大事です。
オススメは、精度の低い新技や苦手な技や形を試すことです。いわゆる”舐めプ”をするわけではなくお互いの練習になります。
形を作ったところから?形を作るまで?
柔道では「練習はしっかり組みあってやるべし、それで地力が養われる。組手を切ってばかりの小手先の技術では成長できない」という価値観があるそうです。要は勝負しろ、攻防をしろ、という考えです。
でも、組手争いも攻防です
柔術の試合では形(ガードや組手)を作るまでのパートがとてもシビアです。道場の練習では形に入るまでの攻防をなんとなく引き込んでガード作って「さあ行くぞ」みたいに始まることも多いですが、試合ではそうはいきません。
形を作るまでの攻防を練習するのも大事です。
かといって、練習でずっとグリップを切り続けているのももったいないです。その攻防も大事だけどそれだけでもダメ。
ガードや組手など形を作らせてそこからの攻防を練習するのも大事ですし、形を作るまでのスタンドの攻防やグリップファイト(組手争い)をシビアにやるのも大事です。
一概に「練習はかくあるべき!」とは言い切れないですね。
5.オススメの練習方法
練習スタイルを時期で分ける
試合は相手にやりたいことをさせずに勝ち切る、練習はいろんな攻防をする。なのでどうしても練習と試合でスタイルに差が生まれます。それを解消するために時期で練習スタイルを分けることをオススメします
①試合がない時期
ここまで書いてきたような攻防を起こす練習を意識して相手の得意に付き合ったり自分の苦手に取り組んだり、「できないことをできるようにする」スパーリングをします。基本的に練習はこれです。
②試合直前期
人によりますが1週間ぐらいでしょうか。この時期は相手の得意に付き合わず主導権を取って自分の得意を出せる練習をします。「できることの精度を上げる」「試合のように動く」練習です。
年中②だと成長しませんが、試合直前まで①だと「受け癖」がついて主導権がとれずに試合で負けてしまうこともあります。
5.まとめ
練習は考えていろんな攻防をしてできないことをできるようにします。試合は頭で考えなくてもできる技で勝負します。
「試合のように練習して、練習のように試合をする」は時期によっては正しいですが、毎回それだと成長しません。
練習の取り組み方を考えるきっかけになればうれしいです。
2024/10/1 アンディ
もし、良いと思ったら投げ銭をいただけたら嬉しいです。柔術の教則購入や遠征費用やパーソナルトレーニングに使わせていただき、よりよい記事を書く材料にします。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?