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ゲームサントラ紹介#1 「ファイナルファンタジー」OST(FC・PS・PR)


経営難に陥っていた会社スクウェアが最後の望みを託して作られたと言われている『ファイナルファンタジー』、この作品がシリーズの始まりであった。そして本格的なゲーム音楽もこの作品から始まったと言えるかもしれない。

曲を聞いていて思うのは、やはりどこか荒っぽく未熟さがあるということである。やはりまだ作曲者がキャリアを始めたばかりの頃だからだろう。音源がファミコンであるからというのもそうだが、同じファミコンである『Ⅱ』や『Ⅲ』と聞き比べてみても、旋律や音遣いの点で本作は特に粗っぽさが感じられる。とはいえそれがまた独特な魅力を形成したりもするものだ。曲目は少ないながらも、個性的な曲が多数あり、またシリーズを通しても本作の曲調は明るい。

曲でまず有名なのは「マトーヤの洞窟」である。軽快でコミカルながらも独特な味わいを持った旋律から曲は始まり、謎めいたような調子で曲は続いていく。全体は不思議な雰囲気に包まれており、明るいわけでも暗いわけでもない、言葉にするのが難しいような、ユニークな曲である。

フィールドの曲である「メインテーマ」は底抜けに明るく生き生きとしていて、冒険しているのだという雰囲気を感じさせる。「街」の曲は、旋律はとてもいいが、音源の調子が曲の良さを殺しているような気がする。後のリメイクとかではその良さが存分に発揮されている。また「戦闘シーン」はシリーズを象徴するイントロから始まり、どこか不気味ながら勢いのある曲が続いていく。本作では戦闘曲が一つしかなく、ゲームをプレイしていると「メインテーマ」と同じかそれ以上に耳にする曲であり、こちらの方が本作の代表曲と言えるかもしれない。

あまり注目されないが、爽やかな雰囲気の「船」、旋律がとても荘厳な「コーネリア城」、コミカルな「店」、不気味さをストレートに表した「ダンジョン」など、わかりやすく聴き易い曲もかなりある。

戦闘シーン


(2)PS版

『ファイナルファンタジーI』(と『Ⅱ』)が初めてリメイクされたのは携帯機のワンダースワンであった。そこでは色々な面でブラッシュアップされ、更にそれがプレイステーションに移植されたが、その際音楽は本格的にリニューアルされ新たにサウンドトラックとして発売された。雰囲気がガラリと変わった曲もあり、元々のFC版では全体的に単一的だったのが、色々な表現の幅がもたらされている。とはいえ、全てがグレードアップしたわけでもなく元々の魅力が削がれたと思われる部分もあると私は思っている。 

「街」はメロディーがとてもよく奏でられ、原曲の良さをうまく引き出している。「店」「ダンジョン」もうまく原曲からグレードアップさせられているように感じる。特に「海底神殿」は原曲の良さを引き出した上に更に独特な表現が加わり、申し分ない。

他方で「戦闘シーン」や「飛空挺」は原曲の良さが削がれているような気がする。これらやこれら以外の曲(「メインテーマ」など)もオーケストラ調になっているが、どうもそれが安っぽく感じられる。「メインテーマ」はまだ原曲の雰囲気に合っているが、それ以外は聞いていてついつい安っぽいと思ってしまうのだ。

また本作では新規曲が幾つか追加された。「教会」や「コーネリア城」のアレンジである「廃れた城」は隠れた良曲で、耳を傾けてみる価値はある。

街(PS版)


ピクセルリマスター版

二〇二一年にFFシリーズがIからVIまでが再度リメイクされた。音源も新たに作られていて、以前のものとは異なった味わいになっている。

ピクセルリマスターシリーズ全般に言えるが、かなり本格的にオーケストラ風になっており、特に弦楽器が目立つ。鑑賞用としてはともかくゲームプレイ用の曲としてはあまり合っていないかもしれない。

曲では特に「コーネリア城」が素晴らしい。パートも付け加えられ、前のリマスターに合った安っぽいドラムもなくなった。また、「カオスの神殿」の静粛さもとてもいい。どちらも原曲の荘厳さが存分に引き出されている。他には「宿屋」の眠ったるい雰囲気は印象的。「マトーヤの洞窟」はスローテンポになり、人によって評価は分かれるだろう。

ただ「街」や「店」は前のリマスター版の方が良かったかなぁという感じで、「船」や「海底神殿」は明確な劣化である。

 全体として良い悪いがはっきりしている感じである。

コーネリア城(ピクセルリマスター版)


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