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ゲームエッセイ#14 『ドラゴンクエスト』シリーズの音楽に関する雑感

 今30代、40代でゲーム好きなら誰もが知っている『ドラゴンクエスト』シリーズ。その作品自体は高い評価を受けているが、すぎやまこういち氏作曲による音楽面においても大きな評価を受けている。
 先日すぎやま氏は逝去され、ドラクエシリーズの曲はⅪまでとなった。
 
 さてここではドラクエシリーズ全体の曲は実際のところどうなのか、冷静な目で見ていきたい。どこか辛辣な評価を書くところもあるが、あくまで私個人の感想である。また曲は『交響組曲ドラゴンクエスト』シリーズに準拠する。

ロト三部作 Ⅰ〜Ⅲ

 最初のドラゴンクエストシリーズ三作は文句なしの出来である。特に三作目の完成度がとても素晴らしく『交響組曲ドラゴンクエストⅢ』はゲームサントラでもトップレベルに入る出来だと言っていい。RPGの様々な場面に合わせた色彩豊かな曲が展開され、バランスもよく、サントラ全体が芸術作品とすら言える。
 他の二作もやはり素晴らしい。初代の曲は8曲しかなく、また一曲あたりがそこまで長くなく(交響組曲シリーズでも唯一メドレーがない)、全体として三十分足らずだが、その一曲一曲が濃厚。フルバージョン収録された「序曲」、バロック色濃厚な「ラダトーム城」、素敵なダンスのようなメロディーの「街の人々」、緊張感が充満する「戦闘」等々。
 二作目では特に「王城」が美しい。ゲーム音楽でここまで美しい曲はそうそうない。

天空三部作 Ⅳ〜Ⅵ

 新しいシリーズとして再度出発した四作目もやはり素晴らしい出来である。特に各章に分かれ、フィールドにて使用されている曲が異なっていて、そこが曲として最大の特徴。十分に及ぶ広大なメドレー「勇者の仲間たち」はとても多彩な曲調である。特にスペイン的な「ジプシーダンス」はそれまでの戦闘曲とは一線を画すレベルの出来である。通常戦闘の曲も、今まで以上に勢いがある。
 SFC版としてでた五作目の出来もやはり優れている。どことなく『交響組曲』版において音色が柔らかくなり、全体的に「勇者」という感じの曲調が薄まった。「街角のメロディ」や「街は生きている」にてそのふんわりした曲調は特に生きている。ただ戦闘曲はかつてないほど疾走感があり、とても印象に残る。

このようにドラクエシリーズは五作目までは申し分ない。だが私の捉え方としては六作目から質が落ちてきたように思えてならない。

 六作目になると、どこか「薄い」と思ってしまう曲が増えた。フィールドの曲はなんか鈍重、それまでは大きな威容を放っていた城の曲「王宮にて」も(悪くはないけど)どこか地味、通常戦闘曲も当時リアルタイムでプレイしたのに全然印象に残っていなかった。何せプレイしてから十年後くらいに『交響組曲ドラゴンクエストⅥ』を一通り聴いてもどれが戦闘曲か分からなかったくらいである。(まあ何回も聞くと、リズム感があってこれはこれで味わいはあるけれど)
 街の曲(「木漏れ日の中で」)はとてもいいが、交響組曲版ではあまりオーケストラ編曲・演奏においてあまりその良さが生かされていない感じがする。

 このようにどこか曲の出来が落ちたかな〜と六作目から思うようになった。とはいえ六作目もムドー戦の「敢然と立ち向かう」と言った、魅力ある曲もまだそこそこはあったし、城の曲とかもなんだかんだで相応の完成度である。

七作目以降本格的に衰えていくように私は思える

Ⅶ〜Ⅸ

 ただ七作目になるとさらに落ちていったような気がする。というか今七作目の曲を思い出そうとしてもほとんど思い出せない。ちゃんと最後までゲームをクリアして(プレイ時間百時間)、交響組曲も他のドラクエ作品と合わせて聴いたいたのだが、城の曲と街の曲以外は思い出せない。何回も聴いたはずの通常戦闘曲すら思い出せない。六作目含め戦闘曲はくっきりと思い出せていたのに、思い出せない。城の曲もなんかそれまでに比べてあまり味のないものになっている。

Ⅷになるとだんだん質が悪い、というより空気になる曲が増えてきた。まあ完全に3Dになったことであり、時代の流れなのだから仕方がないのだろう。ただ七作目よりは優れた出来になったとは思う。最終戦闘曲「おおぞらに戦う」とかは名曲。ただ交響組曲版の収録が劣悪。

ⅨはDSで発売され、2Dにまた戻った。合わせて曲もかつてのFC シリーズのようなわかりやすい曲調になったのだが……だからこそ「あー衰えたなぁ」とはっきりとした感想を抱くようになった。街の曲、フィールド曲、戦闘曲、かつてのFCシリーズと同じ雰囲気で作曲されるからこそ、衰えが感じざるを得ない(町の曲はまだ味わいがあるが)
 ただ城の曲「王宮のオーボエ」は名曲。かつてのFCシリーズに並ぶレベルの完成度で、特に歯切れのいい交響組曲でぜひ聴いてほしい。あとは「酒場のポルカ」と村の曲「陽だまりの村」も。

Ⅹはオンラインゲームのため省略

遺作Ⅺ

遺作Ⅺは、正直いえば、最初フィールドの曲を聴いた時耳を疑った。どうしても「すぎやまさん、高齢で辛そうだなぁ」と曲の出来以前に心配になってしまう。正直この作品の曲を賞賛しているのは、かつてのシリーズの権威によって賞賛しているとしか私にはどうしても思えない。唯一「愛のこもれび」がまだいい感じの曲だなと思った。まあそれでも名曲ではないけど。

以上少々長くなったがドラクエの曲のざっくりとした感想。

参考記事
交響組曲ドラゴンクエスト

交響組曲ドラゴンクエストⅡ

交響組曲ドラゴンクエストⅢ

交響組曲ドラゴンクエストⅣ



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