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“Now or never, it's never too late to try.”(何歳になっても挑戦は遅くない)

「スポーツの力を信じて、新たな挑戦を続ける裕太が語る未来図」

前回、ANDTOKYO issue 2でオリンピックやパラリンピックを目標に歩んできた軌跡を語ってくれた裕太。あれから数年、彼は新たなフィールドでの挑戦を重ね、ビジネスやスポーツの可能性を広げてきました。

今回のインタビューでは、GoogleやAmazonでの経験を活かして立ち上げたポッドキャスト、仲間との起業、そしてグローバルな視点で見据える次の目標について語ってもらいました。「打席に立つ回数を増やすことでヒットを打つ確率を上げる」という彼の信念とともに、スポーツを軸に展開するビジネスの可能性を探ります。


1.エンターテイメントとして、スポーツの可能性に挑戦したい

パット: 前回話してから、最近どうですか?

裕太: ANDTOKYOで最初に話したように、ずっとオリンピックとパラリンピックを目標にやってきたんだけど、それが2021年9月にパラリンピックが終わって、一段落ついたんだ。それで、次のステージに進みたいって思いながら、3か月くらい色々と模索してた。

パット: なるほど、それで?

裕太: 結論から言うと、Googleを辞めたんだ。そして、2022年2月からAmazonに入社したよ。また外資系なんだけどね。

パット: どうしてAmazonを選んだの?

裕太: 自分の中でスポーツにはずっと関わり続けるって決めてた。でもオリンピックやパラリンピックまでやりきった時に感じたのが、キャリアの中で足りない部分があったんだ。それが「マーケティングの領域をもっと極めたい」ということと、「エンターテインメント全体を理解したい」ということ。スポーツはエンターテインメントの一部だと思っていて、スポーツだけじゃなく、エンタメ全体を扱える環境が必要だと感じたんだ。

パット: それがAmazonに繋がったんだね。

裕太: そう。スポーツを「コンテンツビジネス」として捉えていて、それが全部できる場所を探してたらAmazonがピッタリだったんだ。そこでポッドキャストの立ち上げを担当して、2年間いろいろやったよ。例えば、メジャーリーグのイチロー選手やサッカーの長友選手をフィーチャーしたポッドキャストを作ったりしてね。

パット: イチローや長友選手? すごい!

裕太: うん、イチローさんのポッドキャストは、Apple Podcastでスポーツドキュメンタリーとして初めて日本の全カテゴリーの中で1位を取ったんだ。これは日本初のことだと思う。そんな新しい試みに挑戦できて、ポッドキャストがすごく好きになったし、可能性を感じたよ。それで、自分でもやりたいなと思って、最近は自分のポッドキャストを始めたんだ。

パット: 自分のポッドキャスト? それも興味深いね!自分のポッドキャストを始める理由って何だったんですか?

裕太: まず、Amazonで2年間マーケティングを学んだのが大きかったんだ。そして、今年(2024年)の3月でAmazonを辞めたんだけど、もともと2年くらいで次のステップに進むと決めてたからね。今はGoogle時代から続けてるプロジェクトのスタートアップにJoinしたんだ。

パット: スポーツやマーケティングを軸に、どんなことを目指してるの?
裕太: アスリートと働きながら、ブランディングやマーケティングを活用して、コンテンツビジネスをやりたいんだ。具体的には、アスリートを起点としたコンテンツやIP(知的財産)を作り、それをブランドやファン(お客さん)に提供するような仕組みを考えてる。それには「コンテンツスタジオ」みたいなものを作るのが理想かな。その第一歩として、まず自分自身でコンテンツを作ることが必要だと思ってポッドキャストを始めたんだよ。

パット: 自分でコンテンツを作ることに抵抗はなかった?

裕太: 実際、プライバシーをネット上に出すことには正直抵抗があった。でも、自分のやりたいビジネスのためには避けて通れないと思ったんだ。それに、最初は小さいコミュニティでもいい。友人や家族、50人くらいの人たちにまず届けて、それをどうやって100人、1000人、1万人へと広げていくか。それが鍵だと思ってる。それって、有名なアスリート、例えばイチローさんとかにも通じる話で、すでに多くのファンを持っている人でも、そこからさらに広げていく方法を考える必要があるからね。そのプロセスを体系的に学びたくて、ポッドキャストを始めたんだ。

パット: ポッドキャストのタイトルは何て言うんですか?

裕太: 「スロースターターズ」。ポジティブなコンテンツを作りたいと思っていてね。Google検索やインターネットで簡単に調べても出てこないようなヒューマンストーリーを伝えたいんだ。聞いた人が何か持ち帰れるものがあって、前向きになれるような内容を心がけてる。

パット: 「スロースターターズ」って、どういう意味が込められてるの?

裕太: “Now or never, it's never too late to try.(何歳になっても挑戦は遅くない)” ってメッセージを伝えたいんだ。たとえ遅いスタートでも、今から始めることで人生を変えられる。そんなポジティブなコンセプトを軸にしてる。

slow starters

2.ビジネスの楽しさは、信頼の深さに比例する

パット: 友達のたつさんと一緒にポッドキャストをやっているんだよね?

裕太: そう。たつは中国人とのハーフで、日本と中国の両方で育ったインターナショナルなバックグラウンドを持っているんだ。僕たちの出会いは2017年ぐらいで、友人の結婚式で顔を合わせたんだけど、その時はまだ友達じゃなくて。ただ、2018年に共通の友達を通じて仲良くなった。沖縄旅行に一緒に行ったり、台湾にも何度も一緒に行ったりして、その中で関係が深まっていったんだ。

パット: それで一緒にポッドキャストを始めることになった?

裕太: そうだね。たつは映像プロダクションの仕事をしていて、コンテンツ制作のスキルがあって。ある時、シーシャを吸いながら雑談していたら、「ポッドキャストやりたくない?」って話になって、「やろう!」って盛り上がったのがきっかけ。たつも、自分のバックグラウンドを活かして、日本と中国、さらには日本と海外を繋ぐようなことをしたいというモチベーションがあって。まだ日本ではポッドキャスト文化があまり根付いていないので、「これ、俺たちが最初にやろうぜ!」って感じで始めた。

パット: 友人とビジネスをするのってどう?

裕太: 良い面と悪い面の両方がある。ただ、僕は友人とビジネスをするのは基本的にいいことだと思っている。友人の違う一面を見られるのも面白いし、結局は信頼できる人と一緒にやるのが一番大事だと思うんだ。信頼がないとビジネスなんて面白くないからね。

パット: 信頼がポイントなんですね。

裕太: そう。もちろん、友人だからといって必ずしもビジネスが上手くいくわけではないけれど、信頼できる相手であれば友人だろうと関係ないはず。逆に、信頼できない人とビジネスをしても面白くないし、いずれトラブルになることも多いでしょう。まあ、機械的に割り切ってビジネスをやるっていうのも、僕にはちょっと合わないしね。笑

パット: 信頼の深さに、ビジネスの楽しさが比例すると?

裕太: まさにそう。スポーツビジネスでも同じで、仕事を通じて生涯の友人や家族のような関係を築くことがよくある。僕の父親もそういう人間関係を大事にしてきたので、その考え方に影響を受けているのかも。友人とはビジネスをやらない方がいいって言う人もいるけど、僕には当てはまらない。大事なのは、その相手を信頼できるかどうか。それに尽きると思う。

3.打席に立つ回数を増やすことで、ヒットを打つ確率を上げる

パット: 前に話してたSQUARE ONEのこと、すごく楽しみにしてたけど、その後どうなったの?

裕太: SQUARE ONEはね、2021年6月から2023年6月までの2年間やってたんだけど、閉じたよ。理由はシンプルで、店長が独立して、今はSQUARE ONEから300~500メートルくらいの場所で新しいお店をやってるんだ。彼女の独立は最初から応援するつもりだったし、むしろ「行けるなら行くべきだよね」って話してたくらいだから。だから快くOKしたよ。
彼女以外と店を続けるイメージが持てなかったから一回締めたんだけど、結果的に彼女が今も飲食店を続けられているのは嬉しいね。役割は果たしたって感じ。今も月に2回くらい顔を出してるし、友達とか家族のイベントもそこでやるんだ。
飲食店の経営ってすごくお金がかかるし、簡単じゃないけど、もう一回やりたい気持ちはある。ただ、今は他の優先順位もあるからタイミングが来たらかな。自分にとって、人とつながる場所を作るのはプラスになるから、いつかまたやりたいと思ってるよ。

パット: 本当、いろんなことに挑戦してるよね。言葉が適切かわからないけど、何かが上手くいかなくても、それを学びに変えて次に進む姿勢がすごいなって思う。

裕太: 確かにね。「ダメになっても次へ」みたいな考え方かも。

パット: うん、そういう印象を受けるよ。いつも次のことに行こうとしてる感じがすごいね。

裕太: ありがとう。でも、人によっては「こいついろいろやりすぎじゃない?」って思うかもしれないよね。でも俺の中では、目指したい最終的な山は決まってて。スポーツマーケティングの分野でグローバルに挑戦したいし、オリンピックやワールドカップにも関わりたい。それは変わってないんだ。
あとは、日本のアスリートを世界に送り出すためのエージェントになりたいっていうのも大きな目標。だからその山に登るために、いろんな登り方を試してる感じ。道が行き止まりになったら、また別のルートを探すだけ。失敗しても、それはもうデフォルトだと思ってて。むしろ打席に立つ回数を増やすことで、ヒットを打つ確率を上げるイメージかな。
人生で打席が回ってくるのをただ待ってても、一度しかチャンスが来ないかもしれない。でも、自分から積極的に取りに行けば、打席に10回立てる。その中で1本でもヒットを打てれば、それでOKだと思ってるよ。

パット: やっぱりスポーツを例えに出してくるよね(笑)。そういえば、トライアスロンとか山の挑戦もしてるんだよね?

裕太: そうだね。トレイルランは昔からやってたけど、今年初めてトライアスロンに挑戦したんだ。理由はシンプルで、人生をちょっとエクストリームにしたいっていうのと、自然に触れることで自分が悩んでたことが小さく感じられるんだよね。山とか自然のスケールってすごく大きいじゃん。それを体感すると、「こんな小さいことで悩まなくてもいいかも」って思える。
それと、トライアスロンや山登りってすごく人生に通じるレッスンを教えてくれるんだ。一歩一歩を積み重ねることは簡単に思えるけど、実際にやり続けるのはめちゃくちゃ難しい。でも、それを続けていけば、いつかゴールにたどり着ける。
トライアスロンも、泳ぐ、漕ぐ、走るって一つひとつはシンプルだけど、それを続けていけば完走できる。人生も同じで、一歩がきつくても、ただ続ければいつか結果が出る。だから、その感覚を得るためにやってるんだよね。

4.次のジャンプに向けて、しゃがんで準備中 

パット: 最後の質問かな。前回話したときは東京オリンピックの時期だったよね。それからスポーツの世界って、東京とか世界で何か変化はあった?

裕太: 世界的にはね、やっぱりコロナの影響でスポーツ熱とか投資が一時期冷え込んだ感じだったけど、今は完全にコロナ前より盛り上がってる。ただ、日本の企業に関しては、スポーツへの投資がちょっと慎重になってるかな。
でも例えば、パリオリンピックで日本がメダルを取ったり、チームが良い成績を出すと、流れが変わるきっかけにはなると思う。

パット: 日本は獲得メダル数3位だったよね!

裕太: うん、めっちゃすごい。でも、スポーツビジネスの分野で言うと、俺も今は日本国内でがっつりやってるわけじゃないから具体的なことは分からないけど、次のLAオリンピックとかパラリンピックでは、アメリカや他のグローバル企業の動きがすごく注目されてるのを感じるよね。スポンサーシップへの投資とかもどんどん増えるだろうし。
ただ、日本の企業がそこにどれくらい絡んでくるかっていうと、目立った動きはあまり見えてこないな。だから、そういうところにもっと積極的に仕掛ける人や会社が出てきてほしいなって思ってるし、俺自身もそこに食い込んでいきたいから、今いろいろ準備してる。いわゆる「しゃがんでる」状態で、次のジャンプに向けて準備中だよ。

パット: 4年間って短いよね。

裕太: 本当に短い!昔は長いと思ってたけど、やることや方向性が決まってないと一瞬で過ぎちゃう。俺の場合はもうやりたいことはほぼ決まってるから、あとはそれを進めていくだけだね。

パット: 東京についてだけど、何か最近感じたこととか気づいたことはある?

裕太: 東京は今、観光客がすごく多いね。オリンピック前よりも多いんじゃないかな。円安の影響もあるけど。東京にいるとそこまで実感しないんだけど、逆にパリオリンピックに行ったとき、日本人観光客がすごく少なくてびっくりした。昔はロンドンとかに行ったら日本人がたくさんいたのにね。
円安の影響もあって、飛行機代やホテル代が高いから迷う気持ちは分かるけど、それでも行くことには意味があると思うんだよね。例えば、LAオリンピックに向けての動きとか、パリでオリンピックを経験した企業がどう変わっていくかとか、現地で感じられることって絶対にある。でも、日本だとそういう視点自体があまり持たれてない気がする。

パット: たしかに、グローバルな視点って大事だよね。

裕太: そうなんだよね。今の時代、戦争も起きてるし、世の中全体がどう動いているかをちゃんと知っておかないといけないと思う。日本は「元気がない」ってよく言われるけど、それを変えるためには、もっと積極的にリスクを取って挑戦する人や会社が増えていく必要があるんじゃないかな。


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