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パブコメにおける在日コリアンの意見のまとめ
2022年12月から翌年1月にかけて、大阪府は、「大阪府在日外国人施策に関する指針改正案」について、パブリックコメントを実施しました。
本記事は、このパブコメで提出された意見を、私見により、主要と思われるものをまとめたものです。
この指針は、大阪府における、民族学級の根拠になっています。
当初は2002年に策定されましたが、概ね20年後の2023年3月31日に改正版が策定・公表されました。
この2023年の改正版の策定に先立ち、「改正案」がネットで公開され、上記のパブコメが実施されました。下記の各種意見は、「改正案」に対するパブコメ意見です。
読み易くするため、適宜、改行等を施しています。
パブコメ意見の中で出現した、主要な用語(キーワード)は次のとおりです。
歴史的経緯
植民地
在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針(1998年)
在日外国人教育指導資料 互いに違いを認めあい、共に学ぶ学校を築いていくために(平成18年策定・平成25年修正)
日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書(1991年)
国際連合人権委員会からの勧告
国連の自由権規約委員会(2022年11月)
サンフランシスコ講和条約(1952年)
特別永住者
ゆまにてなにわ (府民文化部人権局発行の大阪府人権白書)
ピースおおさか
朝日新聞
西野弘一 府議(維新)
いじめ防止対策推進法
大阪市外国人住民アンケート調査
1.代表的な意見
代表的な意見は、次の187及び161です。
意見No.187
私は、ある団体の役員として、活動しています。この活動の基盤となるのは、地域住民、行政とも共有してきた在日韓国人の形成過程に関する歴史認識です。
大阪府は府内市町村の規範を示し、在日韓国人の存在に関する府民啓発の推進と相互理解を牽引する重要な役割を担って来られました。そうした点から大阪府政への私たちの信頼はとても大きいものがありました。
しかし、今回の指針改定案では、在日韓国・朝鮮人に関する記述が大幅に削除されようとしていることについて深い憂慮を表明します。
大阪府の指針は教育行政を含む市町村の施策方向を決定づけるものであることから、地域における私たちの取り組みにも大きな影響を与えかねず、大きな衝撃を受けています。
加えて、大阪府議会会派の中でも、在日韓国・朝鮮人をはじめとするオールドカマーへの言及をしっかり行うべきだとする意見が提示されており、そのことを踏まえても現状から大きく後退することは容認することが出来ません。
在日韓国・朝鮮人の形成過程や取り組みに関する記述が後退することで、同じくオールドカマーのカテゴリーで語られる必要のある、戦前の満蒙開拓団を背景とする中国帰国者、さらにベトナム戦争を背景とするインドシナ難民に関する記述も同様に難しくなっています。
そして、施策は歴史の積み上げのうえにあり、その事実を無視したり、度外視することはあらゆる政策検討の過程で同様のことが起こりかねません。部落差別の解消や障がい者の権利保障、また女性の人権についても、歴史を踏まえずして、施策確立は考えられません。
さらに、2002年12月に策定された、現在の「大阪府在日外国人施策に関する指針」のそれぞれの政策が、どの程度、達成されたのか、その総括が記述されていません。その総括を踏まえて、改正案を作成すべきであります。
特に、在日韓国・朝鮮人に対する制度的慣習的差別・障璧は、未だ数多く現存しています。
それを解決するために、引き統き、指針改正案に十二分に記述する必要があると考えます。
今回の指針改正案に、現行の指針に記述されている、在日韓国・朝鮮人に関する、すべての内容を、削除せず、継続して記述することを強く求めます。
具体的には、まず、指針改正案の「第1 指針改正の背景」に次の内容を記述してください。
1 在日韓国・朝鮮人が、大阪府に居住する歴史的な経緯として、過去の植民地支配により、多数の朝鮮の人々が日本に来ることを余儀なくされ、その中の多くの人々が軍需産業や建設作業などに従事させられた。今日の在日韓国・朝鮮人の多くは、戦後帰国できす、日本にとどまることになった人々とその子孫である。
2 在日外国人に関する取り組むべき課題として、就労における差別や入居差別などの問題や、差別を回避するために、その意に反して本名ではなく日本名(通名)で生活せざるをえない在日韓国・朝鮮人もいるといった問題を指摘するとともに、人権意識の高揚を図るための施策や人権擁護に資する施策などが必要である。
3 大阪府域では、在日外国人学校の児童・生徒への嫌がらせや暴言・暴行などの事象が発生したほか、就職に際し、採用面接時に本人の適性とは無関係の国籍等にかかわる質問が行われたり、日本名(通名)の使用を求められるなどの事例や外国人への差別落書きなどの事例が報告されている。
4 福祉サービスについては、歴史的経緯を有する在日韓国・朝鮮人高齢者を中心に、広報等による情報が十分行き渡らなかったり、言葉や食事、生活習慣の違いなどから、サービスの利用が難しい状況も見受けられる。
5 在日外国人高齡者・障がい者の中には、国民年金制度創設時の国籍条項により制度的に年金の受給資格が得られなかった人がおり、所要の救済指置が求められる。それらの人々は、昭和57(1982)年1月1日時点で20歳以上で既に障がいがあるか、あるいは昭和61(1986)年4月1日時点で60歳以上で年金の受給資格を得られなかったことにより、制度的に無年金になっている外国人の高齢者や障がい者のことである。
6 在日外国人教育については、自己の文化、言語、伝統にふれる機会を提供し、在日外国人の児童・生徒が自らの誇りや自覚を高め、本名を使用できるような環境の醸成に努めるとともに、新たに渡日した児童・生徒に対する日本語指導を充実するなど、児童・生徒が将来の進路を自ら選択し自己実現を図ることができるよう指導する必要がある。
7 上記の在日外国人教育、特に、在日韓国・朝鮮人教育については、1991年に締結された、「日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書」の次の内容を新たに記述してください。日本社会において韓国語等の民族の伝統及び文化を保持したいとの在日韓国人社会の希望を理解し、現在、地方自治体の判断により学校の課外で行われている韓国語や韓国文化等の学習が今後も支障なく行われるよう日本国政府として配慮する。
次に、指針改正案の「第3 在日外国人施策の基本的方向」に次の内容を記述してください。
1 在日外国人教育については、「国際人権規約」及び「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」をはじめ、大阪府の「人権教育基本方針・人権教育推進プラン」等の趣旨に基づき、異なる文化、習慣、価値観等を持った児章・生徒が、互いに違いを認めあい、本人のアイデンティティを保ちながら自己実現を図ることができるよう、ともに生きることのできる教育を進める。
2 在日韓国・朝鮮人の児童・生徒については、これまでの歴史的経緯を踏まえ、課外の自主活動を活用して歴史・文化等について学習できる環境を醸成する。これまでの経験と成果を生かし、蓄積されてきたノウハウ等の活用を図りつつ、指導内容・指導方法等を工夫改善するよう努めるとともに、在日韓国・朝鮮人児童・生徒については、課外の自主活動(民族学級等)などを通じて、歴史、文化、言語等について学習できる環境の醸成に努める。
3 在日外国人児童・生徒が、自らの誇りや自覚を高め、本名を使用できるよう環境の醸成に努めるとともに、将来の進路を自ら選択し、自己を実現し得るよう、関係諸機関と連携しながら適切な指導に努めるなど、進路指導の充実を図る。とりわけ、在日韓国・朝鮮人児童・生徒については、「在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針」に基づき指導に努める。
4 外国人学校の振興を図り、国庫補助制度の創設及び国立大学等の受験資格の改善等について、引き続き国に働きかける。特に、国際連合人権委員会から勧告を受けている、朝鮮学校に対する高校授業料無償化からの排除などの制度的差別を速やかに解消する必要がある。
5 府政への参画促進として、幅広い府民の意見を府政推進に生かしていくためには、多様な文化的背景や考え方を持つ在日外国人の意見も求める仕組みの整備に努める。在日外国人にかかわる諸課題及び大阪府が取り組むべき方策について、幅広く意見を求めるため設置されている有識者会議を引き続き活用するとともに、審議会等の委員の選任にあたっては、審議会等の設置目的を踏まえ、在日外国人を含めた幅広い人材の登用に努めるほか、在日外国人も含め実施されている府政に関する世論調査などにより、在日外国人の意見を府政に反映させるよう努める。また、在日外国人が、地域社会の一員として、地方政治への意見反映ができるよう努める。
6 国際連合人権委員会から受けている勧告を実行するために、大阪府および大阪府下の地方自治体が実施する住民投票に外国籍住民が参画出来るようにする必要がある。さらには、定住外国籍住民に地方参政権を付与するように、国に働きかける必要がある。
今回の指針改正案について、私は、以上のような修正を要望致します。
意見No.161
大阪府で暮らす外国人のうち約4割が韓国・朝鮮人です。これまでの府の取り組みの成果・課題を踏まえて指針を改定してください。
1.(p.8下段「~歴史的経緯により~」)
在日韓国・朝鮮人が日本に居住するに至った歴史的経緯が分かるように注釈で記述してください。
【案】「大阪府で暮らしている外国人の約4割は韓国籍・朝鮮籍の人です。その多くは、歴史的経緯(注)により、第二次世界大戦以前から暮らしている人とその子孫であり、戦後、さまざまな事情から帰国できず、日本にとどまることになった方々です。」
【注釈案】「過去の植民地支配により、多数の朝鮮の人々が日本に来ることを余儀なくされ、軍需産業や建設作業などに従事させられた人も多かった。」
2.(p.9「注釈 5」)
在日韓国人は1952年サンフランシスコ講和条約が発効された事により日本政府により一方的に日本国籍を剥奪され外国人として扱われました。日本国籍を離脱したのではありません。歴史的背景により特別永住者となった経緯を表記してください。
【文案】平和条約国籍離脱者(「日本国との平和条約」発効に伴う日本政府の通達により日本国籍を喪失した者で、昭和20年9月2日以前から引き続き本邦に在留する者などをいう。)又は国籍離脱者の子孫をいい、主に韓国・朝鮮や台湾出身者が占めています。
3.(p.21 表「在日外国人の本名使用率」)
未だに民族差別があるため在日韓国・朝鮮人児童・生徒の本名使用率が低いという課題がある事を明示し、本名使用率の表を併記してください。
4.(p.22 小見出し「在日外国人教育の充実」)
課外の自主活動(民族学級、国際クラブ等)に関して、在日韓国人については韓日の覚書に基づいていることを注釈で明記してください。
【文案】注釈
1991年に交わされた「日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書」では「日本社会において韓国語等の民族の伝統及び文化を保持したいとの在日韓国人社会の希望を理解し、現在、地方自治体の判断により学校の課外で行われている韓国語や韓国文化等の学習が今後も支障なく行われるよう日本国政府として配慮する」とされており、これに基づいて大阪府内では今日まで民族学級等の取り組みが行われています。
2.在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針
意見No.1
《パブリックコメント》
《課題》第3 在日外国人施策の基本的方向 「1 人権尊重意識の高揚と啓発の充実」項に新たに盛り込まれた「ヘイトスピーチ解消推進条例」に基づく取り組みについて、「6 国際理解教育・在日外国人教育の充実」項にも同様の記述はあるものの、「外国にルーツのある子どもの人権を守る学校」とは具体的にどういった環境や取り組みを備えた学校なのかが不明確です。また、ヘイトスピーチの問題について国際理解教育・在日外国人教育としてどう取り組むのかのサジェスチョンも不足しています。
《意見》ヘイトスピーチの問題について理解を深める学習活動とは、明らかに侮蔑的・差別的な態度や言動を諫め、「しないように」と心がけを説諭するだけの活動ではないはずです。
改定案でも言及されている「国際人権規約」や「児童の権利条約」では、文化的マイノリティの子どもたちが自身につながる歴史や言語を学ぶことを権利としてとらえています。いわば、外国にルーツのある子ども:日本社会のメインストリームではない文化的ルーツのある子どもたちが、そのことで疎外感を覚えるような学校のデザイン(校舎案内などのハード面も授業や課外活動のプログラムなどのソフト面の双方)があるならば、少数派に対して排除的にはたらく、権利侵害の可能性があるということです。
つまりヘイトスピーチの問題について理解を深めることニアリーイコール身近に「マイノリティを排除する/誰かを取りこぼす」環境や仕組みがないかを考える、自分事としての学習活動でなければならないと考えます。
残念ながら、この「改定案」は、そういった視点がわかりづらく、従前からの教育の取り組みに新たな課題がどう位置づき、発展できるのかが見通しにくいものになっています。
大阪府には『在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針』(昭和63年策定・平成10年一部改訂)や『在日外国人教育指導資料 互いに違いを認めあい、共に学ぶ学校を築いていくために』(平成18年策定・平成25年修正)で既に文書として整理されたものもあるので、その成果をふまえ、前述の不十分さを克服していただきたいです。ご検討ください(元の指針では言及されている文書ですが、改定案では言及がありませんでした。ヘイトスピーチ等の新たな課題に取り組むために、いまこそ必要な文書だと考えます)。
意見No.36
改正案の在日外国人教育の中で「在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針」が抜け落ちている。
在日外国人が増えるなか、未だに在日朝鮮人に対する偏見、差別でさえも解決されていないことを大いに反省するとともに改正案のなかで上記指針が未だに必要な状況であることを明言されたい。
また在日外国人の母語母文化を尊重するとの記述があるが、合わせて歴史(来歴)を伝えることが在日外国人児童・生徒の自尊心を養うためには必要である。在日外国人に対する差別・偏見にあったとき、どういった経緯で自分が日本に在住しているのか、存在していてもなんら悪いことではないということを理解できることが重要である。
意見No.117
22ページ「在日外国人教育の充実」2行目 「努めるとともに、在日外国人の児童・生徒が、…」の箇所を「努めるとともに、在日韓国・朝鮮人児童生徒をはじめ、在日外国人の児童・生徒が、…」に修正することを提案します。
【理由】
大阪府では教育現場における重要な課題の一つとして在日韓国・朝鮮人問題を掲げており、そのための指針として「在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針」(1998年一部改訂、以下指針)を策定しています。
その前文において、「在日韓国・朝鮮人問題については、日本と韓国・朝鮮をめぐる近代以降の歴史的経緯や社会的背景のもとで生み出されてきた偏見や差別が、日本人の児童・生徒の在日韓国・朝鮮人に対する意識形成や行動様式に影響を与えるとともに、在日韓国・朝鮮人児童・生徒にとっても自らの誇りや自覚を身につけることが困難な状況を生み出してきた」との認識にもとづいて、「すべての児童・生徒に対し、在日韓国・朝鮮人児童・生徒が在籍している歴史的経緯や社会的背景を正しく認識させるとともに、朝鮮半島の文化や歴史についての理解を深めさせるよう努める」取り組みを行ってきました。
そのなかで改定案に示されている「課外の自主活動(民族学級、国際クラブ等)」があります。
改定案ではこうした歴史的な背景や取り組みの意義、指針との整合性について明確にされているとは言い難い内容になっていると言わざるをえません。確かに大阪府における外国人も多様化しており、在日韓国・朝鮮人が減少傾向にありますが、それでも大阪府で暮らす外国人の4割が韓国・朝鮮籍であり、学校現場における重要な課題の一つとして指針にある在日韓国・朝鮮人児童・生徒の民族教育があることはいうまでもありません。今後を見据えてより多様な外国人の児童・生徒が活き活きできる在日外国人教育の充実をはかる必要性を踏まえつつ、その歴史的積み重ねを継承していくことも重要であると考えます。
以上の理由から、上記のように改定案を修正することを提案いたします。
3.ゆまにてなにわ
意見No.5
有識者会議の議事録でも、「「歴史的経緯を有する韓国・朝鮮の方々」の表現を考えるにあたって、改正案ではそれ以上の説明が書かれていない。せめて府の人権啓発資料「ゆまにてなにわ」に書かれている内容と同程度の記載が必要と思う。「歴史的経緯を有する」では意味が分からない。」との指摘がされており、私も同感です。
私の住む鶴橋近辺でどれほど激烈に韓国・朝鮮の方々へのヘイトスピーチがなされ、また、朝鮮系の学校の児童・生徒への嫌がらせなどの差別言動があからさまに行われていたかを知るものとしては、歴史的経緯を明確に周知・啓発・教育できるよう記述を詳細にしていただきたいと考えます。
意見No.80
1.指針改正案 2 大阪で暮らす在日外国人の状況 (2)国籍・地域別の状況において「大阪府で暮らしている外国人の約4割は韓国・朝鮮籍の人です。その多くは、歴史的経緯により、第二次世界大戦以前から暮らしている人とその子孫であり、戦後、様々な事情から日本にとどまることとなった方々です。」と記述していますが、「歴史的経緯」の内容について何らの説明もされていません。
2.つきましては府民文化部人権局発行の大阪府人権白書「ゆまにてなにわ36」の「外国人の人権」の項目での記述である「大阪府で暮らしている外国人の約4割は韓国・朝鮮籍の人です。その多くは日本が朝鮮半島を領土としていた歴史的経緯により、第二次世界大戦以前から暮らしている人とその子孫です。戦後、さまざまな事情により多くの人が日本にとどまることになりましたが、その後の制度改正により、外国籍の人=外国人であるとされたのです。現在、この人たちの中には、差別を避けるために、本名ではなく日本名(通名)で生活する人もいます。」との在日韓国・朝鮮人の歴史的経緯を正しく記述したものに差し替えることを求めます。
4.朝日新聞記事(2022年12月23日)
意見No.78
当該指針案中の「在日韓国・朝鮮人」(以下、在日)の記述について
朝日新聞(2022年12月23日朝刊)によれば、案には在日の歴史的経緯の注釈などがなくなっているとありました。それに関する府人権局長のコメントに対して次のように異議を申します。
1 在日外国人の国籍は多様化している。その通りです。だからこそ、在日の歴史的背景の注釈は必須です。他の外国人住民とは違い、在日の存在は日本と深く関わっているからです。
また、昨今の韓流ブームの影響で韓国との交流も盛んになってきましたが、在日は本国の韓国人と同一視できません。
2 歴史認識には様々な見解がある。確かにそうですが、どういう点で、在日の歴史に様々な見解があるとお考えですか?日本は朝鮮半島を植民地支配した。戦前は「日本人」、戦後は「外国人」と一方的にした。その結果で在日が存在しているのではないですか?歴史認識には様々な見解云々は、日本の植民地支配を否定する場合に、よく使われる言説ですよね。たしか、どこかの首長もよく口にしています。
3 したがって、書きすぎるぐらいの注釈が必要です。
それは、すでに人権局長のこのコメントが示唆しています。
記載が不要になるのは、在日の問題が解消した時です。今はまだその時ではありません。
意見No.113
在日朝鮮人は日本の朝鮮植民地支配に起因する存在であり、日本の各地に在日朝鮮人の集住地区があるように、日本社会とこれまで深い関係性を持ち続けています。
なにより大阪府は、在日朝鮮人が統計上最も多い自治体であり、在日外国人について考えるとき、その存在を避けて通ることはできません。
しかし、たとえばピースおおさかにおいて、植民地支配の歴史など加害の歴史を未来にしっかりと継承しようとしてきた展示を撤去するという動きが大きな問題となりましたが、今回もそれと同様、在日朝鮮人の記述がなくなった背景には「在日韓国・朝鮮人や植民地支配に関わる歴史を政治的な問題と捉え、触れないようにする考え方があるのではないか」(朝日新聞2022.12.23付)とする専門家の意見もあがっています。
もちろん、さまざまな国・地域からの外国人住民が急速に増えており、多種多様な外国人住民に対応するための施策の策定は重要な課題です。
しかし、そのことで在日朝鮮人の存在が語られなくなることは、先述した歴史を忘却するに等しいことです。
大阪府が多文化共生社会や多様性の実現を掲げるのであれば、深い関りのある在日朝鮮人の歴史の蓄積から、学ぶべきことが多くあるはずです。
実際、様々な公的制度からの排除や入居差別などの民間における差別といった、あらゆる「外国人差別」を経験し、また「民族学級」などのマイノリティー教育の実践を先駆けて展開してきたのが在日朝鮮人でした。
改定案では、外国人学校についても、その振興のための支援について、また国庫補助がないことや外国人学校卒業生の受験資格がない問題について現指針で言及していた部分が削除されていますが、これも容認することができません。
以上から、私たちは、大阪府が、在日朝鮮人の存在と、その歴史的背景を踏まえた指針を策定することを求めます。
意見No.155
この度の在日外国人施策に関する指針の改定案について、意見を述べます。
近年、大阪でも外国人労働者の増加や多国籍化などが見られ、府の施策も見直していく必要があることは認めます。
しかし、依然として人数が圧倒的に多いのは在日韓国・朝鮮人であることに変わりはありません。
これまで使われてきた指針にはそのような状況について、注釈で歴史的な経緯を比較的丁寧に示していました。
今回の改訂ではこのあたりの説明が消えています。
時間の経過と共に、現状に至る時代背景がわかりにくくなるからこそ、きちんと説明しておく必要があるように思います。
このような背景を十分理解していないことが、ヘイトスピーチなどの拡散につながるのではないでしょうか。
人権局長が「これまでの注釈は書きすぎていることは事実なので記載しなかった」と述べたと報道されていますが、どこが書きすぎているのか、全く理解できません。
大阪の教育に根付いてきた人権教育の歴史を大切にして、共生できる社会作りを目指すためにも、これまでの注釈の記述を残してください。
5.西野弘一府議(維新)
意見No.146
この指針の改訂作業のきっかけは、西野弘一府議(維新)の質問とのこと。
彼は、現行の指針の「過去の植民地支配により、多数の朝鮮の人々が日本に来ることを余儀なくされ、その中の多くの人々が軍需産業や建設作業などに従事させられた。今日の在日韓国・朝鮮人の多くは、戦後帰国できず、日本にとどまることになった人々とその子孫である。」との記載が「全くの事実誤認」で、その根拠として、「朝鮮半島から日本の内地に移入してくる方があまりにも多かったので、どちらかというと移入を制限するような政策が取られてました。例えば、1934年当時の岡田内閣は、「朝鮮人移住対策ノ件」を閣議決定しまして、朝鮮からの移入を阻止するために~~「余儀なくされた」ということであれば、移入を阻止する政策を打つはずがない」と述べ、さらに「外務省の発表によりますと、戦時徴用は実際のところ 242人だけだった」ので「余儀なくされたという表現はちょっとやっぱり実態と合ってない」と述べられています。
しかし西野氏のこの発言はその根拠が極めて薄弱だと思います。
1934年当時の内閣が「朝鮮からの移入を阻止」したならなぜ、終戦時に 210 万人もの朝鮮人が日本にいたのか?
なぜ、70万人もの人が日本に職を求めて日本に来ざるを得なかったのか、という説明が必要です。
いわば、朝鮮は貧しかったから豊かな日本で働きたい人たちが好んでやってきた。日本の植民地支配は、朝鮮に恩恵をもたらしたというヘイトスピーチにつながる朝鮮蔑視観に基づく言説にほかなりません。
このような差別的な発想に基づく質問によって今回の指針の改訂が行われ、大阪の行政がゆがめられることに大いに危惧を抱きます。
私は現行の指針ができてから20年を経過しており在日外国人も多様化しているので、改訂の必要性を否定しません。ただ、在日韓国・朝鮮人が日本に多数居住している歴史的経緯については現行以上に詳しく記述する必要があると考えます。
なぜなら、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムのターゲットにされている多くが在日韓国・朝鮮人だからです。日本人の多くはなぜ韓国・朝鮮人が日本にたくさん住んでおられるのかの理由を知らないことが「いやなら日本から出ていけ」「たたき出せ」などというヘイトスピーチの基盤になっているからです。
意見No.177
・現行の『大阪府在日外国人施策に関する指針』策定から20年が経ち、昨今の技能実習生のことなどもあって外国人施策の見直しの必要性は賛成しますが、改定議崘の発端となった一昨年12月大阪府議会本会議での西野弘一議員の質問内容及質問行為がヘイトだと考えますので、そういった流れで指針を改定することには反対します。
・在日韓国・朝鮮人についての「歴史的な経緯」の注釈にある「余儀なくされ」「とどまることになった」を巡って、「全くの事実誤認だらけ」「でたらめなこと」と西野議員は同会議で述べ、一方的に徴用問題とすり替え且つ「誤解や中傷が世間一部で行われている」としていますが、西野議員や1934年に閣議決定された「朝鮮人移住対策ノ件」のような排外的な言動や施策をするからこそ「誤解や中傷が世間一部で行われている」のであって、それを改定理由とすることが「全くの事実誤認だらけ」「でたらめなこと」であり、官製ヘイトであると考えるのが指針改定に反対する理由です。
・現行の「歴史的な経緯」の注釈にある、「余儀なくされ」「とどまることになった」背景に府民一人ひとりが想いを巡らすことが「多文化共生社会」には必要であって、未だ本名ではなく通名を使わざるを得ない状況があるということは現行の『大阪府在日外国人施策に関する指針』では十分でなかった証左であり、より「余儀なくされ」「とどまることになった」背景に想いを巡らすことができるような流れの中で指針を改定をしなければ、技能実習生についてもまた「誤解や中傷が世間一部で行われ」るのではないでしょうか。
排他的な言動や施策の行き着く先は戦争だと考えますので、今の指針改定案には断固として反対します。
6.「資料」について
意見No.59
現行「指針」の「第 1 大阪府における在日外国人の状況」(P2~P6)及び「資料」(P17~P29)部分からなる18ページ分の記述・資料には、外国人に対する雇用における差別的扱い、嫌がらせ、差別表現などの人権侵害、在日外国人学校の児童・生徒への嫌がらせや暴言・暴行などの事象、就職の採用面接における国籍に関する差別的な質問、外国人労働者に対する賃金・労働条件の差別的扱い、意に反する日本名(通名)で生活でざるを得ない実態等の具体的な事実を述べ、その現状に照らした「指針」策定の理念とそれを根拠付ける資料(毎年確認すべき統計上の資料を含め)が挙げられています。
しかし、この計18ページに及ぶ記述・資料が、改正案では「第1 指針改正の背景」(改正案P2~P10)の9ページに圧縮されています。しかも、9ページの内5ページ分は、2006年以降の国及び大阪府等の条例や方針の「動き」を羅列的に記述するだけとなっています。
したがって、現行「指針」にある根拠事実の確認と施策に向かう大阪府の考え方や理念がすっぽり削除されてしまっています。
すなわち、現行「指針」で18ページにわたって記述され、大阪府の基本的な考え方として記述されてきた部分の多くが削除され、残された部分は統計資料等を含めて僅か4ページしかありません。
圧縮された部分は、「指針」がなぜ策定されなければならないのかは、今後の施策の方向性を規定するものであり、最も重要な部分です。よって、改正案は、現行「指針」以降の新たな事実及び法や施策の進捗を書き加えるべきですが、これまでの「指針」の根幹をなす事実と理念を詳細に記述し続けることが必要だと思います。
7.歴史的経緯の表現
意見No.67
大阪府は、全国に先駆けて、2000年以前から在日外国人施策を先進的に行われてきたと思います。
なにより、在日韓国朝鮮人を、同じ町に住む外国人、身近な多文化共生社会の仲間として、手を取って大阪の発展に寄与してきたと思います。それは、行政が、政策として、歴史的経緯を無視することなく、真摯に向き合うという姿勢をもって、在日外国人施策に取り組んでこられたからだと思います。
よって、「在日外国人施策に関する指針」改定案において、在日朝鮮人に関する記述が大幅に削減されていることに反対します。
過去の植民地支配に起因する在日朝鮮人の歴史的背景を希薄化するような記載は、再び戦争による痛ましい歴史を繰り返さないためにも、断固としてやめるべきです。
改定案の中の、在日朝鮮人の説明から「植民地支配」の言葉を削除して記述しているが、削除せずこれまでどおり記載すべきです。
大阪とも深い関りのある在日朝鮮人の歴史の蓄積から、これまでも多文化共生社会の未来を作ってきたと思います。
互いを尊重してこそ、共に歩んでいけます。
過去を、“なかったこと“のように、記載を削除することを、強く反対します。
意見No.77
広く外国人を対象にした指針が策定されることにはもちろん賛成ですが、在日朝鮮人は歴史的経緯から見て、同等の説明では説明できるものではないはずです。
改定案では、在日朝鮮人の説明から「植民地支配」の言葉を削除して記述していますが、削除せずこれまでどおり記載すべきです。
大阪府が多文化共生社会や多様性の実現を掲げるのであれば、大阪と一番深い関りの深い、人口比率でも大阪は一番多いであろう在日朝鮮人(元朝鮮籍で現在韓国籍や日本籍の方たちも含め)の歴史を、大阪の若者たち、子どもたちに語り続けていく必要があるのではないでしょうか。
その上で手を取り合ってより良い日本社会、より良い大阪のまちを作っていくことが、真の多様性を認める豊かさを実現することに繋がると信じています。
意見No.116
8ページ6行目 「その多くは、歴史的経緯により、…」の箇所を「その多くは、朝鮮半島植民地という歴史的経緯により、…」に修正することを提案します。
【理由】
2002年では注釈において「歴史的経緯」の内容が示されていましたが、改定案ではその内容が示されておらず、具体性にかけます。
在日韓国・朝鮮人が移り住んだ歴史の評価についてはさまざま異論があるとはいえ、日本が朝鮮半島を植民地支配した歴史に起因することは2002年の注釈にあるように歴史的事実として確認されている内容です。
しかしながら2002年の注釈にあるような認識を否定、歪曲するような議論がいまだにインターネットや一般書籍などで広がりを見せています。
こうした現状が「在日特権」なる虚構につながり、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムという深刻な人権侵害が大阪でも多発していることは改定案の「在日外国人の人権をめぐる国内外の動向」で示されている通りです。
2016年には「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が制定され、自治体においてもヘイトスピーチを許さない取組が求められるところであり、大阪府でも2019年に「大阪府人権尊重の社会づくり条例」が制定され、その推進がもとめられるところであります。こうした点から、歴史的経緯についてより具体的に記述し、その認識を明確にすることは今日的にも重要な課題であると考えます。
また外国人の人権尊重を図るためには、その個人の社会的、歴史的、文化的背景が正しく理解されなければならず、とりわけても在日韓国・朝鮮人のさまざまな人権課題はその歴史的な背景を正しく理解することなしに正しく解決を図ることは困難であると考えます。そうした観点から、大阪府民が歴史に根ざした視点から外国人の人権課題に向き合えるよう、改定案に歴史的経緯を具体的に記述することが必要と考えます。
以上のような理由から、改定案の修正を提案するものです。
意見No.156
私は、公立中学校に勤務していました。大阪には在日の方がたくさん住んでおられ子ども達も日々在日として生きる中で、色々な壁にぶつかり、差別や貧困など困難な社会状況に直面しながら生活しています。その中で、今回の改正案は、改悪案と言えるのではないでしょうか。
在日韓国・朝鮮人の歴史と問題について記載されているのは、「2 大阪で暮らす在日外国人の状況(2) 国籍・地域別の状況」のみであり、その内容も現行に比して甚だ不十分です。
現行には、注釈として「過去の植民地支配により、多数の朝鮮の人々が日本に来ることを余儀なくされ、その中の多くの人々が軍需産業や建設作業などに従事させられた。今日の在日韓国・朝鮮人の多くは、戦後帰国できず、日本にとどまることになった人々とその子孫である。」と、短くとも歴史的な経緯が書かれています。
しかし、改正案は、「その多くは、歴史的経緯により、第二次世界大戦以前から暮らしている人とその子孫であり、戦後、様々な事情から日本にとどまることとなった方々です。」と、過去の植民地支配の歴史や、戦後帰国することができずに日本にとどまることになった歴史や社会的状況もまったく触れられていません。
日本社会で暮らすニューカマーの抱える問題について考える時、つまり、在日外国人施策の指針を定める時、まず軸に据えるべきは在日韓国・朝鮮人の問題です。
今回の改定案は、その点を更に曖昧化し、行政の担うべき社会的責務を後退させるものであり、反対です。
意見No.168
大阪府における在日外国人施策の軸は、日本の朝鮮植民地支配の結果としての形成過程をもち、その後、過酷な民族差別に晒されてきた在日コリアンの人権問題であったはずである。
それは長年の大阪府と在日コリアン当事者達との協働によって積み重ねられてきた社会的財産であった。
しかし、今改訂案では、在日コリアンの人権問題にかかわる記述が大幅に削除されようとしている。このような行為は、在日コリアン当事者たちとこれまで築いてきた信頼関係を、一方的に踏みにじるものとして、到底看過できない。
特に懸念するのは、大阪府の在日コリアン形成過程における歴史認識の問題である。現指針においては、注釈ではあるが「過去の植民地支配により、多数の朝鮮の人々が日本に来ることを余儀なくされ、その多くの人々が軍需産業や建設作業などに従事させられた。今日の在日韓国・朝鮮人の多くは、戦後帰国できず、日本にとどまることになった人々とその子孫」と明記している。
しかし、今改訂案ではこの文書が削除・改訂されてしまっている。
新聞報道では、大阪府の三ツ石浩幸・人権局長が「歴史認識には様々な見解があり、今の注釈が書き過ぎているのは事実なので、記載しなかった」と発言されたようだ。
しかしその発言は、在日コリアンの特殊な歴史性を否定するものとして、到底容認できない。
大阪府は、昨今、日本社会を覆い尽くす「歴史修正主義」に加担するつもりなのか?その「歴史修正主義」がさまざまなヘイトスピーチを生み出しているのは言うまでもない。今改訂案で、大阪府はヘイトスピーチをさらに拡大するつもりなのであろうか?在日コリアンの人権課題は、すべての在日外国人問題の原点であり、その克服がなければ、民族差別は連鎖するという認識を持つべきである。
例えば、未だに本名を名乗れない在日コリアンが多く存在することが、在日ベトナム人をはじめとするその他の外国人にも影響を及ぼしている。本名ではなく、日本名を使用するベトナム人2世が増えていることを大阪府は把握しているはずである。原点の問題を克服しない限り、差別は延々と連鎖していくのである。今改訂案では、その原点を断ち切ろうとしている。これでは、差別の克服などできるはずはない。
また、今改訂案では、世界人権宣言や国連のさまざまな人権規約を重視している。そうであるならば、なぜ在日コリアンの歴史性や人権課題を削除するのか。
2022年11月、国連の自由権規約委員会が日本政府にたいして示した総括所見で、「植民地時代から日本に居住している一部の在日コリアンとその子孫」は「国家的または民族的少数派として認識されるべき人々」であるにもかかわらず、「社会保障制度や政治的権利の行使から排除されるという結果をもたらしているとされる差別的な政策運用」にたいして懸念が示された。
大阪府が国連の人権諸条約を重視するのであれば、当然、在日コリアンの人権課題を指針の中心に添えなければならないはずである。今改訂案は、国連の指針にも反するものであると言わざるを得ない。
このような認識の下で改訂される指針では、とても在日コリアンをはじめとする在日外国人の人権状況が改善されるとは思えない。
したがって、今改訂が、真の多民族・多文化共生社会を築く礎になることを願い、以下について改善を要請する。
1.在日コリアン形成の歴史を少なくとも現指針の通りに記載するべきである。
2.在日コリアンの人権課題があらゆる在日外国人問題の原点であることを再度認識し、そのことを記載すべきである。
3.在日コリアン高齢者の福祉サービスにおける課題は、今も同様に存在する。今後、その他の外国人の高齢化問題にも繋がることから、現指針の記載通りに、その課題について記載するべきである。
大阪府が1998年に策定した「在日韓国・朝鮮人問題にかんする指導指針」を活かすべきである。
4.さらに、在日コリアンは世代を重ね、多様化する中で、日本国籍者が増加している。その状況を鑑みて、「国籍」だけでなく「ルーツ」を大切にできる教育を積極的に進めるための方策を定めるべきである。ヘイトスピーチは「国籍」だけでなく、「ルーツ」も攻撃していることは大阪府も承知のはずである。
8.オールドカマー
意見No.35
近年増加している渡日の外国人に対する施策を充実させようという意図は伝わってきましたが、在日コリアンをはじめ、日本での生活が長い、いわゆるオールドカマーの方々に関する問題に対しての記述が希薄です。
大阪は、他府県と違い歴史的な経緯から在日コリアンの方が多いです。割合として減ってはきているものの、依然として最も多いのが在日コリアンの方々です。
世代が進むにつれ帰化してしまう人が増えていることが、割合の減少に少なからず影響を与えていると思います。帰化する理由は様々でしょうが、私の周りには国籍が日本ではないことで不利益を被ったり、国籍を明かすと差別を受けたりするのではないかと恐れて帰化する人もいました。
差別がなくなったのではなく、当事者が内面化してしまい見えなくなっているだけだと思います。今一度、現状を捉え、在日コリアンをはじめとし、大阪で自分のルーツに誇りを持てないでいる外国ルーツの方々の存在を明記していただきたいです。
9.保険・年金
意見No.3
私は令和元年に日本に帰化した在日韓国人三世です。
年金については国が定める法律に順守すべきであり、年金の未受給者に補填するその財源が大阪府民の税金であるなら絶対に反対です。
意見No.7
諸処の事情から無保険状態になった外国人住民に対して、200%、300%もの診療報酬を請求する医療機関が府内にも存在します。外国人住民の生命に係わる問題であり、大阪府として、適切な請求をするよう、医療機関に求めていくことが重要であると考えますので、その旨を書き加えることを希望します。
10.ヘイトスピーチ
意見No.7
ヘイトスピーチは、実態として広く外国人住民一般に対して向けられるものではなく、多くは在日コリアンに対する差別的言動を指しています。具体的に解消を目指すためには、在日コリアンが日本で暮らすに至った、朝鮮半島を日本が植民地統治してきた歴史的経緯、戦後日本社会で法制度上の差別的待遇を受けてきたことなどを具体的に教育・啓発していくことが重要であると考えますので、その旨を書き加えることを希望します。
11.入居差別
意見No.8
「5 安心して生活できる住宅・就労支援の充実」について、2017年に法務省人権擁護局が発表した「外国人住民調査」で大阪府内で対象となった、大阪市、東大阪市、堺市が対象となっています。
そのうち、入居差別について、「外国人であることを理由に入居を断られた」経験の有無に対する回答を、全国平均/大阪市/東大阪市/堺市の順にみると、39.3%/18.3%/16.3%/22.7%であり、大阪府内の自治体では、直接的な入居差別被害が、全国平均の半分以下となっており、行政による啓発の効果がうかがえます。
一方で、「日本人の保証人がいないことを理由に入居を断られた」経験の有無は、41.2%/41.7%/34.9%/30.2%であり、全国平均との差が殆どみられません。国による調査の知見を活用するならば、直接的入居差別に対する啓発を継続していくことはもちろん、間接的入居差別(日本人の保証人がいないことを理由に入居を断ることは、結果として、日本人の親族等がいない外国人住民に対して入居を断ることにつながる、間接差別です)の不当性を周知する啓発が重要であると考えますので、その旨を書き加えることを希望します。
12.いじめ
意見No.9
外国人住民調査によれば、「子どもの教育に関して希望すること・心配していること」という質問に対して、「学校で子どもが名前(本名)や国籍などを理由にからかわれたり,いじめにあったりしないか心配である」と回答した人が、30.1%で、在日コリアンがほとんどを占める特別永住者も22.7%にのぼっている。
現に「職場・学校で,外国人であることを理由にいじめを受けた」との質問に対しては、全体で13.6%、特別永住者で10.1%が「よくある」もしくは「ある」と回答しています。
外国人の児童・生徒が、いじめによる被害を受けやすい集団であることは明らかであると考えます。
旧指針成立後の、2013年に施行されたいじめ防止対策推進法(平成二十五年法律第七十一号)に係わり策定された「いじめの防止等のための基本的な方針」においては、「海外から帰国した児童生徒や外国人の児童生徒,国際結婚の保護者を持つなどの外国につながる児童生徒は,言語や文化の差から,学校での学びにおいて困難を抱える場合も多いことに留意し,それらの差からいじめが行われることがないよう,教職員,児童生徒,保護者等の外国人児童生徒等に対する理解を促進するとともに,学校全体で注意深く見守り,必要な支援を行う」と明示されている(別添 2「学校における「いじめの防止」「早期発見」「いじめに対する措置」のポイント」の 3 頁)。
このことから、在日コリアンをはじめとした外国人児童・生徒の、いじめ対策としても、在日外国人教育の充実が必要であると考えますので、その旨を書き加えることを希望します。
13.府の考え方のまとめ
歴史的経緯
〇歴史的経緯については、多くの韓国・朝鮮人の方が日本で暮らすこととなった歴史的事実について、追記しました。
〇当事者のデータとして、「大阪市外国人住民アンケート調査」の結果を引用することとしました。
〇パブリックコメント案では、大阪における外国人の多国籍化が進んでいることなどを踏まえ、在日韓国・朝鮮人の方を含め、「在日外国人」としていましたが、ご意見を踏まえ、大阪の実情に沿った表現に修正しました。
〇日本で生まれ育った外国人の方々や、国籍は日本であっても親が外国籍である方や海外から帰国した方など、外国籍の方と同様の課題を抱えている方々についても、本指針の対象とすることを明記いたしました。
〇特別永住者の注釈については、昭和27年4月19日付け法務府(当時)の通達「平和条約に伴う朝鮮人、台湾人等に関する国籍及び戸籍事務の処理について」で使用された表記である「喪失」に修正しました。
〇在留資格については、最も多い「特別永住者」と次に多い「永住者」について、注釈を入れています。また、資料編に在留資格別外国人数の状況を掲載しました。
〇新たな在留管理制度に対する国への要望については、現在、市町村等と連携して国に要望している内容について、引き続き要望していくことを記載しています。
〇在日韓国・朝鮮人の中には、本名ではなく日本名(通名)で生活する人もいることについても、追記しました。
教育
〇在日外国人教育においては、異なる文化、習慣、価値観等を持った児童・生徒が互いに違いを認めあい、共に生きようとする態度を身につけていくことを目標とし、本名指導、課外の自主活動(民族学級等)、ヘイトスピーチ解消のための取組み等を進めてきたところです。指針改正にあたっては、これまでの経験と成果を生かしていくことをより明確に表現することとしました。
〇大阪で暮らす外国人の状況や外国人児童・生徒数などの統計資料を巻末に付けることとしまし た。
〇地域日本語教育の推進については、 今後も各市町村と連携を深め、日本語教育を必要としている外国人の方が学 ぶ機会を得ることができるよう支援に努めます。
ヘイトスピーチ
〇ヘイトスピーチについては、大阪には全国で最も多く在日韓国・朝鮮人の方が暮らしている現状を踏まえ修正しました。
〇特定の民族や人々を排斥するヘイトスピーチや、偏見や差別意識を背景とした暴力行為は、決してあってはならないものであることについても、追記しました。
〇災害時などに、「外国人による犯罪が横行している」などのデマが拡散することに関しては、特定の人々に対する差別や偏見をあおる意図で虚偽の情報を投稿する行為は決して許されないことであると追記をしました。
〇大阪府では、令和元(2019)年11月に「大阪府人種又は民族を理由とする不当な差別的言動の解消の推進に関する条例」を施行しており、ヘイトスピーチの対象を「本邦外出身者(外国人)」に限定せずに、「人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団」と規定しています。今後とも同条例に基づき、ヘイトスピーチの解消に向け、取組みを進めてまいります。
生活支援
〇今回の改正では、施策の基本的方向に、新たに「安心して生活できる住宅・就労支援」を加えるなど、住宅・就労を重要項目と位置づけています。また、採用拒否や入居拒否の事例が見られることにも触れています。
〇福祉サービスについては、ご意見を踏まえ、在日韓国・朝鮮人をはじめ在日外国人の高齢者に、様々な事情から利用が難しい状況も見受けられることを追記しました。
〇介護保険制度においては、外国籍の方で、日本に3か月以上滞在される方のうち、65歳以上の方または40歳から65歳未満の医療保険加入者などの要件を満たす方については、介護保険に加入することになります。
〇福祉サービス体制の充実として、介護保険制度を在日外国人の方への説明に活用していただけるよう、高齢者の支援に携わる方向けのパンフレットの外国語版(英語、中国語、韓国語)を作成し、各保険者や社会福祉協議会、地域包括支援センター等に配付するとともに、府ホームページにも掲載するなど制度の周知を図っているところです。今後も引き続き、在日外国人の方及び関係機関等へ制度の周知を図ってまいります。
〇健康保険に加入していないために医療費が高額となり、支払いが滞るケース等の課題については、医療機関単独で解決することが困難であり、医療機関に対する効果的な支援や、在日外国人に対する情報発信等が求められるところです。外国人患者受入れ体制の推進について、引き続き国へ要望してまいります。
〇在日外国人高齢者・障がい者の中には、制度的に年金の受給資格が得られなかった方々がおり、所要の救済措置が求められることについては、「3 安心のための医療・保健・福祉サービス体制の充実」において記載しています。
〇ご意見を踏まえ、日本人の保証人がいないので入居を断られるといった間接的な入居差別について、「大阪市外国人住民アンケート調査」の結果を用いて、追記しました
〇外国人の就労支援については、外国人へのきめ細やかな就労相談支援に努めることや外国人が働きやすい労働環 境の整備を促すことについて記載しています。
参政
〇今回の改正では、施策の方向性に「地域社会への参画支援」を新たに加えたところでしたが、ご意見を踏まえ、外国人は、共に地域社会を構成する主体的な存在であり、そのような多様性が地域の豊かさにつながることについて追記しました。
〇府政への参画については、「大阪府在日外国人施策有識者会議」を設置し、外国にルーツのある委員の方々のご意見をお聴きしています。
〇在日外国人の参政権については、地方自治法では、地方公共団体の議会の議員及び長は、日本国民である住民が、直接選挙することができ、また、一定数以上の署名を集めることで、その代表者から条例の制定等を請求することができるとなっています。
〇市町村職員の任用については、各市町村において法令や公務員に関する国の基本原則等を遵守のうえ、責任をもって自主的かつ適切に行っていただいているものと考えています。
〇現在設置している「大阪府在日外国人施策有識者会議」の委員の半数は外国にルーツのある方で、毎年、会議の場において、「大阪府在日外国人施策の実施状況」について、委員の意見をお聴きしているところです。
以上