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男性生殖のホップ・ステップ・ジャンプ


男性の生殖機能は3つの段階に分けて考えると理解がしやすいです。いずれかの段階がうまくいかないと男性不妊症となるわけですが、その3つの段階のどこに異常があるかで、治療の考え方が変わってきます。

ここでは、この3つの段階を大まかに見てみましょう。


男性生殖機能は三段跳びのよう

三段跳びは、「ホップ」、「ステップ」、「ジャンプ」の3段階のジャンプが、この順番でテンポよく組み合わさった陸上競技です。

男性生殖機能も、3つの重要なプロセスが順序よく、正確に進むことで維持されています。そのプロセスとは、以下の3つです。

  • 精子を「造る」

  • 精子を「通す」

  • 精子を「出す」

精子を造る「ホップ」、精子を通す「ステップ」、精子を出す「ジャンプ」が、正確に進むことで、妊娠へとつながっているのです。

それでは、一つずつ、プロセスを見ていきましょう。

ホップ:精子を「造る」

精子を造るのは精巣(睾丸)の役割

おそらく皆さんご存知だと思いますが、精子を造っているのは、精巣(せいそう)です。睾丸(こうがん)とも呼ばれます。

精巣の機能は2つ。ひとつは男性ホルモンを作ること、そしてもうひとつが精子を造ることです。

精子は一日で1億個以上も造られる

それでは精子は一体どれくらい造られているのでしょうか?

精子の数は、個人により、また同一人物でも時により変動しますので、一概には言えませんが一説によると、1日あたり4,500万~2億700万個(Amann et al. J Urol. 1980. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6772801/)の精子が造られているという報告があります。値には幅がありますが、ものすごい数です。

さらに、1日あたり1億個の精子が造られているとすると、1日は
 24時間 × 60分 × 60秒 = 86,400秒
ありますから、
 1億 ÷ 86,400秒 = 1,157.407・・・
となり、なんと1秒間に約1000個もの精子が造られていることになります。

精巣もなかなかの性能を持っていると思いませんか?

精子を造る司令は脳から出される

精巣は、1秒に1,000個以上の精子を造る、とてつもない臓器なわけですが、精巣が勝手に動いて精子を造っているわけではありません。

「精子を造りなさい」という司令は、実は脳から出されているのです。詳細は別の記事で解説しますが、脳からの司令がなければ精巣は精子を造ることができません。

造られた精子は精巣上体(副睾丸)に蓄えられる

精巣でどんどん造られた精子は、精巣に覆いかぶさるように存在する、精巣上体(せいそうじょうたい)、副睾丸ともいいます、に蓄えられ、外へ出される瞬間を待つこととなります。

ステップ:精子を「通す」

次に、精子を「通す」プロセスですが、ここは比較的短時間のうちに起こるプロセスです。

精子は短時間のうちに長い距離を通される

上にも書きましたが、精巣で造られた精子は、精巣上体で外へ出される(つまり射精です)瞬間を待っています。性的興奮が高まり、オルガスムが近くなると、精子は、精巣上体から精管を通って、精管膨大部というところまで運ばれます。これが精子を「通す」プロセスです。

精管というのは、太さこそ2~3mmという細い管ですが、長さは40~60cmもあります。精子はこの長い距離を比較的短時間のうちに通されます。

精子を通すのは精管の動きによる

精子が精管を通るのは、精子が自分自身で泳ぐわけではなく、精管が「うねうね」動く運動、つまり蠕動(ぜんどう)運動によるものです。この蠕動運動は、精管への神経が司っています。

精管のどこかが詰まっている場合には、精子を通すことができませんし、神経の異常によりうまく司令が伝わらない場合にも、精子を通すことができなくなります。

ジャンプ:精子を「出す」

3段階目のプロセスが、精子を「出す」部分です。通常は、勃起した陰茎(ペニス)から勢いよく精液が射精されます。したがって、精子を「出す」プロセスは、陰茎の勃起と、射精の2つの段階に分けることができます。

陰茎の勃起は神経の司令と血管の拡張による

陰茎の勃起は、時として意図に反して勝手に起きますよね。しかし、実は陰茎が勝手に勃起しているわけでなく、神経の司令によって勃起します。

性的刺激が加わると、勃起中枢と呼ばれる脳または脊髄の部位から、陰茎への血管に司令が出されます。すると血管が拡張(広がって)、血液がたくさん陰茎に流れ込み、固く勃起します。

このように勃起は、神経と血管の機能が重要ですので、これらがうまく働かない場合は、勃起障害(erectile dysfunction, ED)という状態になります。

精液の射精は神経の司令が重要

さて、陰茎に性的刺激が加わり続けると、やがて性的興奮は頂点へと向かい、射精へと至ります。射精の瞬間は、大抵の場合オルガスムを感じています。

射精では、直前に精巣上体から精管膨大部まで通された精子が、精嚢(せいのう)、前立腺(ぜんりつせん)、さらに尿道球腺(カウパー腺)などから分泌される精漿(せいしょう)といわれる液体と混ざり合い、精液となります。

骨盤の筋肉の律動的な(「ビクビク」というような規則的な)な収縮により、尿道を通って陰茎の先端から勢いよく出されます。

射精にも神経が重要です。神経の司令がうまく伝わらないと、射精障害(ejaculatory dysfunction, EjD)という状態になります。

まとめ

  • 男性生殖機能は精子を「造る」「通す」「出す」の3段階

  • それぞれどこに異常があるかが重要


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