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vivo X100 Ultra レビュー


1. はじめに

昨年のvivoのフラッグシップモデルだった X90 Pro+は、一強という程ではないものの、夜景撮影性能の高さなどが同時期の他機種に比べて際立っており、固い支持を得ていた一台だった。

しかし今年のvivo X100 Ultraは、昨年のvivo X90 Pro+に比べてあまり目立っていない印象である。その背景には、Xiaomi 14 Ultraの日本上陸や、より安価な上にソフトウェアアップデートによってカメラ性能が大幅に強化され、中国版でも使いやすいUIのOPPO Find X7 Ultraなどライバルが台頭したことと、それらライバルに比べvivo X100 Ultraの登場時期が大幅に遅れたことがあると考えられる。

2. vivo X100 Ultraの長所

あまり目立たなかったとはいえ、vivo X100 Ultraのカメラ性能が退化したわけではなく、寧ろX90 Pro+から目に見えて大きく進化している。最大のアップデートは望遠性能である。

85mm 1/1.4" 2億画素という大口径ペリスコープは、他機種にはない強みであり、デジタルズームや暗所における望遠性能の高さは他社の追随を許さない。加えて、2024年の中華フラッグシップスマートフォンでは最早定番となっている、テレマクロ撮影にも対応している。

またvivo X100 Ultraは可変絞りなど目を引くギミックこそ無いものの、大型センサーやZEISSレンズといった純粋に高性能なハードウェア、そして定評のある高度なソフトウェア処理によって、ディティールやノイズ、手ブレ補正やダイナミックレンジといった画質の根幹に関わる基礎的な要素において、依然スマートフォンカメラを牽引する存在であると言える。

更に、撮影モードや撮影機能が更に強化されたことや、専用のカメラキットが用意されたことで、撮影の幅が大きく広がった点も高く評価できる。特に、iPhone同様ズームボタンをタップすることで画角を切り替えられるようになったが、14mm・23mm・28mm・35mm・45mm・50mm・85mm・135mm・230mm・300mm・600mmと非常に多様な倍率へすぐアクセスできるようになったことは、使い勝手に大きく影響したと感じている。

カメラ性能以外の面では、
・高密度バッテリーの採用により大型のカメラモジュールを搭載しながら大幅にバッテリー容量が向上した
・レザー背面が廃止され、よりシンプルかつ高級感のあるデザインになった
・スピーカーの音質向上
など、X90 Pro+の弱点を克服しスマートフォン全体としての完成度が向上していた。
勿論処理能力についても、Snapdragon 8 Gen 3の採用と冷却性能の向上により、原神のプレイの快適さが体感できるレベルで改善している。

このようにvivo X100 Ultraは、カメラも、カメラ以外も魅力的な一台に仕上がっているが、それでも評価が上がりきらない理由について、性能面及び機能面から次のように考察する。

カメラキットを装備したXiaomi 14 Ultraとvivo X100 Ultra

3. vivo X100 Ultraの短所

まずカメラについて、カメラの機能が増えすぎた結果、使いにくくなってしまっている点が気になった。X100 Ultraで追加された「ステージモード」や「水中モード」は、有用な撮影シーンがあまりに限定的であり、こういった機能を無闇に増やしていくべきではないと考える。尚、X200シリーズでは一部の撮影モードが統合されたとのことなので、X200 Ultraでは機能の取捨選択やUI改善による使い勝手の向上に期待したい。

またvivo X100 Ultraでは、X90 Pro+から絵作りが大幅に変更され、過剰にシャドウを持ち上げるような画像処理は見られなくなった。これは概ね改善だと捉えられるものの、「vivoらしい」絵作りとは何か分からなくなってしまったことに問題を感じている。昨今の中華フラッグシップスマートフォンのカメラでは、一昔前から画質が大幅に向上したことで、単純な画質の勝負は概ね横並びになってしまい、それよりも「自分好みの写真を撮れるかどうか」が重視されるようになってきている(これは一眼カメラ市場において既に見られる傾向である)。従って、現在の中華フラッグシップスマートフォンでは絵作りが重要であり、各社の独自性が問われているが、この点においてvivo X100 UltraはXiaomi 14 Ultraに比べて遅れを取っていると感じる。以前であれば、極めて明るい夜景撮影が良くも悪くも独自性になっていたが、それを辞めた今、Xiaomi 14 UltraのLeicaチューニングや可変絞りに比べ、vivo X100 Ultraのカメラ機能は没個性に感じる。使い込めばわかる長所も多いのだが、やはりインパクトに欠けると言わざるを得ない。

次にカメラ以外の要素について、
・Qualcomm 3D Sonic Maxが廃止され、画面内指紋認証のエリアが縮小した
・ディスプレイスペックがX90 Pro+からほぼ据え置き
・付属の充電器のUSB-A端子のPD充電非対応なものにダウングレードされた
・ワイヤレス充電の最高速度が低下した
など、いずれも致命的ではないものの、フラッグシップスマートフォンらしからぬコストカットや他社に遅れをとる面も見られた。筆者のようにほぼカメラ専用のスマートフォンとして割り切っている方であれば気にならないが、1台のスマートフォンとして評価した場合はイマイチに感じてしまうかもしれない。

筆者の考察としては、このような欠点はあるものの、いずれも致命的なものではないため、やはり冒頭で述べたように、Xiaomi 14 UltraやFind X7 Ultraといった競合他機種の評価が高まった結果、相対的にX100 Ultraが目立たない存在となってしまったように思う。またX100 Ultraより半年ほど発売が早く、フラッグシップではないものの完成度が高かった、vivo X100 Proに関心を奪われてしまった可能性もあると考えられる。

4. さいごに

-vivo X100 Ultraに見る、2024年の中華フラッグシップスマートフォン

筆者としては、vivoのスマートフォンにはとにかくカメラ性能を求めており、シンプルな画質の良さや、カメラへの向き合い方を高く評価しているため、vivo X100 Ultraを購入したことにとても満足している。2024年の個人的ベストカメラスマートフォンはvivo X100 Ultraだと思っているし、vivoを贔屓して評価するつもりは一切ないが、来年もvivoのフラッグシップモデルが一番だろうと、実際のところ思っている節がある。

一方、他のスマホオタクたちによる評価に目を向けてみると、2024年の中華フラッグシップスマートフォンは、カメラ画質が良ければそれだけで持て囃されるものではなくなってしまったように思われる。Xiaomi 14 UltraやOPPO Find X8が日本で販売されたことで、中華フラッグシップスマートフォンは最早「海の向こうのヤバいスマートフォン」ではなくなり、カメラ以外の普段使いにおける実用性も問われるようになった印象だ。また先述したように、単純な画質の良さよりも、絵作りや撮影機能と自身の好みや撮影スタイルが一致しているかどうかが問われるようになり、スマートフォンカメラに対するスマホオタク達の評価基準が変化してきているように感じる。

2024年12月現在、既にvivo X200 Ultraのリークが出始めている。Digital Chat Stationによると、vivo X200 Ultraは1インチセンサーを廃止し、メインカメラは1/1.3" 35mmとなるようだ。センサーサイズ競争は1インチで一旦頭打ちとなり、来年はXiaomiも2億画素カメラを採用すると噂されている中、vivoは差別化のため大きな決断に踏み切ったとみられる。vivo X200 Proは更に高密度なバッテリーや、トレンドのベゼルレスフラットディスプレイを採用しており、スマートフォン全体の完成度に磨きがかかっている。バッテリーやディスプレイはオウガ系のスマートフォンが力を入れている分野だが、それに追随できるのか。2025年のスマートフォン市場における新たなトレンドと、vivo X200 Ultraの登場が楽しみだ。

5. 筆者が撮影したvivo X100 Ultraによる作例

23mm 21:9
23mm 夜景モード
23mm 星空撮影モード
45mm
45mm 16:9
50mm
14mm 夜景モード
85mm
85mm
85mm
85mm
85mm
85mm
85mm
85mm
85mm 夜景モード
85mm 夜景モード
85mm 夜景モード 21:9
85mm Proモード SuperRAW
85mm ポートレートモード
85mm ポートレートモード
85mm ポートレートモード


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