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プロジェクトでBIM活用前に知っておきたい、「LOD」について歴史からまとめてみた

こんにちは、ANDPAD ZERO の曽根勝です。
これまでANPDAD ZERO noteで度々テーマとして取り上げてきたBIM。毎回読んでくださっている方にとっては身近に感じてもらえるようになってきたのではないでしょうか。

さて、今回のnoteでは、BIMに関する業務に携わる方々には避けては通れない「LOD(エルオーディー)」という言葉について取り上げたいと思います。BIMは知ってはいるけど、実際には触ったことがない…という方々にとっては「ニッチな話題」と思われるかもしれませんが、なるべくわかりやすく書いていきますのでぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。


LODとは

LODとは、ずばり「BIM表現の詳細度」を定義する言葉です。
よく「LOD300でモデルをつくって」といったように、『LOD+数字』という表現で詳細度を表します。

では、「LODってなんの略なの?」という問いにすぱっと答えられる方は意外と多くないのではないでしょうか。実は、「LOD」という概念は、整備をする団体/国ごとにその規定が異なっており、LODを「モデル要素が三次元形状で、どの程度詳細に表現するか」という意味合いの「Level of Detail」の略とする場合もあれば、「プロジェクト各関係者による、モデルの作り込みの進捗度、情報の確定度合い」という意味合いの「Level of Development」の略とする場合もあります。

LODの歴史に触れる

少し歴史を紐解いてみます。
初めてLODという概念が生まれたのは、ちょうど20年前の2004年。当時は、積算の精度を意図した「Level of Detail」の略語として誕生しました。その後、2008年にアメリカ建築家協会(AIA)が、BIMプロジェクト全体を通して利用できるものとして、「Level of Detail」を発展させた概念として「Level of Development」という意味での「LOD」を発表しました。その後も、様々な団体/国において、LODの定義付け、再解釈が行われ、独自の進化を遂げています。日本では標準的な仕様はまだ定められていませんが、Level of Deveiopment=LODが一般的です。

LOD+数字で詳細度を表現する

冒頭に「LOD300」という表現をしましたが、こうした「LOD+数字」という表現も「BIMForum LOD Specification」を参考にしている表現です。数字が大きくなればなるほど、モデルの作り込みの進捗度、情報の確定度合いが高まっていくことになります。

参照:平野 陽, 川島 範久, 安田 幸一(2018) 日本におけるBIM活用プロジェクトでのLevel of Development(LOD)策定の実態 日本建築学会技術報告集 24巻56号 333-338
参照:BIMForum Level of Development (LOD) Specification

「日本におけるBIM活用プロジェクトでのLevel of Development(LOD)策定の実態」によれば、LOD200は基本設計相当、LOD300は実施設計1相当などと示されています。上記の鉄骨階段の事例を見るとイメージが湧くのではないでしょうか。

ここでポイントとなるのは、LODは部材ごとに詳細度を定義されているため、BIMモデル内のそれぞれの部材LODは異なる場合があるということです。
例えば、屋上の設備機器の検討において、
・キュービクルは形状が分かればよい
・ダクトや配管は詳細な形状も検討したい
といった段階においては、キュービクルよりも詳細な検討が必要なダクト・配管についてはLODを高めるなどメリハリをつけてBIMモデルを作成することで、目的に応じたBIMの活用ができるようになります。

LODをうまく活用する

さて、ここからは、LODという定義が存在するメリットについてもお話します。
さきほどの鉄骨階段の事例や屋上の設備機器の事例をイメージすると理解しやすいと思いますが、LODを定めるメリットはBIMをモデリングする詳細度と必要要素について関係者が「共通認識を持つことができる」という点にあります。

プロジェクトの各段階において必要情報を定義することで手戻りを無くしたり、情報の信頼性、信用度の共有により設計瑕疵なども防ぐことができます。また、プロジェクト全体で関係者が多岐にわたる場合でもコミュニケーションを円滑に進めることにもつながります。

実際のプロジェクトでは、各フェーズにおける必要情報は、BIM実行計画書(BEP)で定義します。もし定義していない場合、モデルを詳細に作りすぎてしまったり、逆に属性情報の不足により品質が担保できなかったりといった手戻りが発生し工数の増大につながります。
BIM実行計画書は、日建連が発行しているひな形がありますので、作成されていない場合は参考にして作ってみてもよいと思います。

LODの参考例:日建連_設計BIM作成ガイド(第1版)

自社でLODを導入したいと思った際の参考例として、日建連が発行している設計BIM作成ガイドをご紹介します。

日建連の設計BIM作成ガイドでは、モデルの形状情報と属性情報について、意匠、構造、設備の設計について、基本設計・実施設計といった各フェーズで用いるべきLODの目安などが示されています。
例えば、意匠設計については、Archicadでの入力例が示されており、基本設計と実施設計時に入力すべき情報と形状が記載されているほか、構造設計については、構造計算システムのデータをベースに、基本設計と実施設計で実際に行うべき段取りが示されています。

どの段階でどのようにのLOD基準を定めればよいのか迷った際に、実務に即した方法や段取りを参照できるガイドになっていますので、ぜひ一度参照してみていただけたらと思います。

まとめ

少し専門的な話題でしたが、いかがでしたでしょうか。
LODの内容について、概念、歴史から始まり、実務レベルでの適用方法までまとめてみました。LODはBIMを活用すればするほど重要さを実感する定義だと思っています。BIMの精度や作り込み具合について関係者とうまくコミュニケーションをとるためにも、LODがまだ定義していない場合は、自社のBIM関係者とLODについてどう認識しているかを会話してみてはいかがでしょうか。

今後も、実務的かつ分かりやすい話題をお届けしていきたいと思います。
以上、ANDPAD ZEROの曽根勝でした。


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