お金では買えないものが大切な時代
戦後から同じ場所で72年営業を続けた大衆寿司、次郎長寿し。JRの高架耐震工事の為2019年に閉店。その後どうなったかと調べてみたら近くに移転していることが判明したので、長く付き合いのある三ッ星料理屋のマネージャーと先輩と共に潜入。
店の雰囲気が以前は魔窟のような何とも独特の雰囲気から(当時のドリンクは後ろのスナックるりから運ばれていた笑)一気に明るくなった。
でも雰囲気も店の味の一つだな。
この前日本酒の専門店あまてらすの哲郎先輩が「酒の味をより美味しくするのは5W1Hが重要だ」と話していた。
いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように
今回は
初夏に、
神田の次郎長寿しで、
三ッ星料理屋のマネージャーと先輩と、
ビールとチューハイを、
将来の話をする為、
寿司をつまみながらハイペースで飲んだ
という訳だ
名物でもある刺身盛り合わせは忘れず必ずオーダーしたい。
この下駄に溢れんばかりに盛られた刺身達は初見の人は歓喜の声を上げる。
このワクワク感は下駄ならでは。刺身が食べたいというより、この下駄に盛られた姿を見ながら飲みたい、という感じ。
下駄盛りをつまみながらも、目の前のショーケースから気になるものはどんどんオーダーしていく。
この日は食事というより話がメインだった為、お酒が中心に来るようなお店だと都度会話が途切れてしまうような気がして、酒のプロ達だったがあえてここに設定した。
マネージャーが普段絶対飲まないであろう、ウーロンハイ、抹茶ハイなどを飲みながら結果1人7~8杯飲んで5,000円であがるって凄いことだな。
蟹の市場価格の恐ろしいほどの高騰が大変だと話していたのが印象的だった。別にお店が高く取りたいのではなく、素材が高騰している、と。
お金があれば何でも買えるという状況になってしまうと、日本を代表するレストランでも海外の市場に買い負けてしまうということが起こってしまう。
だから職人が昔から大切にし続けているのはお金で買えない信頼・繋がりなのだと思った。毎朝豊洲に顔を出すのも密なコミュニケーションを取るのも。
その繋がりでより良い食材を高すぎない価格で消費者は楽しめることに感謝をしたい。お酒もそうだ。
誰も、手に入らない高価な幻のお酒を飲みたいのではなくて、その店の料理に一番適したお酒を消費者は飲みたい、ということ。
家は買えるが家族は買えない。
時計は買えるが時間は買えない。
ベッドは買えるが睡眠は買えない。
食事は買えるが食欲は買えない。
病院は行けるが健康は買えない。
物質的な豊かさはお金では買えない。
酒は買えるがお店の料理に合う酒は買えない。
その為に我々酒屋業は料理の実践知を積み上げていく必要がある。
そうです。